弁護士 師子角允彬のブログ

師子角総合法律事務所(東京:水道橋駅徒歩5分・御茶ノ水駅徒歩7分)の所長弁護士のブログです

2023-10-01から1ヶ月間の記事一覧

労働組合に対して情報提供するにあたり、インターネット掲載の対象からの秘密情報の除外や匿名化を要求すべき注意義務

1.労働組合への情報提供 何か特殊な事情でもない限り、弁護士は、自分が受任している事件に関する情報を不特定多数の第三者に公開することはありません。法令上の守秘義務があることもさることながら(弁護士法23条)、主張や供述の変遷を指摘されたり、…

違法な定年後再雇用拒否に対し、地位確認請求を認めてもらうために必要となる賃金の特定性

1.違法な定年後再雇用拒否 65歳未満の定年を定めている事業主の多くは、高年齢者雇用安定法9条に基づき、本人が希望すれば65歳まで安定して働けるよにするため、継続雇用制度を導入しています。 この継続雇用制度から違法に弾かれてしまった人につい…

勤務先に批判的なツイートを理由とする懲戒解雇を避けるには

1.SNSへの書き込みに起因するトラブル SNS、特に不特定多数に開かれているツイッターでの書き込みがトラブルになる例は、後を絶ちません。労働事件との関係でいうと、勤務先の社会的評価を低下させる事実を書き込んだり、勤務先の内部情報を書き込ん…

理事会と対立している前学長の記者会見に同行したことは懲戒解雇の理由になるか?

1.内部告発的な記者会見は揉めやすい 記者会見をして組織内の不祥事を公表することは、しばしば組織からの苛烈な報復を招きがちです。公益通報者保護法などで解雇や不利益取扱の禁止が規定されてはいるのですが、マスコミに対する情報提供は法律で保護して…

雇用期間の定めが試用期間であると認定された例

1.試用期間後の本採用拒否に係る規制の潜脱手段としての有期雇用 試用期間の定めが解約留保権付労働契約と理解される場合、本採用拒否(留保解約権の行使)は解雇として理解されます。この場合、試用期間中であったとしても、客観的合理的理由・社会通念上…

解雇回避努力の判断にあたり、労働者の対応の不誠実さが考慮要素にされた例

1.労働者の帰責事由と経営上の理由が複合する解雇 「企業が経営上必要とされる人員削減のために行う解雇」を整理解雇といいます(佐々木宗啓ほか編著『類型別 労働関係訴訟の実務Ⅱ』〔青林書院、改訂版、令3〕397頁参照)。 整理解雇の有効性は、①人員…

直ちに医療機関を受診せず、業務を優先したことが過失相殺事由にならないとされた例

1.過失相殺 民法418条は、 「債務の不履行又はこれによる損害の発生若しくは拡大に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。」 と規定しています。 また、民法722条2項は、 「被害者に過失…

安全配慮義務と公立学校の部活動顧問

1.安全配慮義務 労働契約法5条は、 「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」 と規定しています。これを安全配慮義務といいます。 労働契約法は公務員には適用…

部活動顧問に従事していた時間について業務の質的過重性が認められた例

1.脳・心臓疾患の業務起因性・公務起因性と公立学校教員の部活動顧問 脳血管疾患や心疾患等が労災として認められるのか否かは、令和3年9月14日 基発0914第1号「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準に…

部活動顧問に従事していた時間を含め、業務の量的過重性を評価するのが相当とされた例

1.脳・心臓疾患の業務起因性・公務起因性と公立学校教員の部活動顧問 脳血管疾患や心疾患等が労災として認められるのか否かは、令和3年9月14日 基発0914第1号「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準に…

合理的期待が高くなくても、全く採用できない理由による雇止めは認められないとされた例

1.雇止めの二段階審査 労働契約法19条2号は、 「当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められる」 場合(いわゆる「合理的期待」が認められ…

厳格に成績評価を行うように指示された大学教員が、厳格な成績評価を行ったところ、不合格者が出すぎて雇止めされた例(消極)

1.成績評価の厳格化 文部科学省は、繰り返し、大学の成績評価を厳格にすべき方針を打ち出しています。 例えば、 ・平成12年度以降の高等教育の将来構想について(答申)(平成9年1月29日 大学審) 「卒業に関しては、教育の内容・方法の一層の充実を図…

学生の授業評価アンケートの悪さを理由に大学教員をクビにできるのか?

1.学生からの授業評価アンケート 大学生の時、単位の認定が厳しいことで評判の教授がいました。難解な法律科目を難しい言葉で話すうえ、単位認定も厳しいということで、学生からの評判が頗る悪かったことを記憶しています。 しかし、法解釈学に関していう…

退職届を書いたかと尋ね、自分の辞表を部下にって渡したことが、自ら退職するよう精神的に圧をかける行為とされた例

1.退職勧奨/退職強要 「使用者は退職勧奨を原則として自由に行うことができるが、その勧奨行為には限界があり、人選が著しく不公平であったり、執拗、半強制的に行うなど社会的相当性を逸脱した手段・方法による退職勧奨は違法とされる可能性」があります…

部下の髪をいじって髪型を変えたことが、屈辱感を与え人格的利益を侵害するものとして違法と判断された例

1.髪をめぐる問題 たかが髪と思われる方がいるかも知れませんが、髪をめぐる法的紛争は、意外とあります。 従業員の帰社が遅れたことに腹を立て、原告の頭頂部及び前髪を刈り、落ち武者風の髪型にした上、洗車用スポンジで原告の頭部を洗髪し、最終的に原…

外形上雇用契約が存在していても、雇用契約が存在しないとされた例

1.雇用契約が存在するかのような外観が作られるケース 家族経営の法人や会社では、身内を役員や従業員にして、役員報酬や賃金の名目で金銭を支給している例が、しばしば見受けられます。 また、代表者等社内の有力者が、交際相手等を従業員にして、賃金の…

会計年度任用職員の雇止めに対する法律構成-義務的経費の支出のための手続を行わなかったことを理由とする国家賠償請求

1.有期任用公務員の雇止め 有期任用公務員に対する雇止め(再任用拒否)が問題になった事案で、地位確認請求が認められることは普通ありません。公務員は労働契約法の適用除外となっており(労働契約法22条1項)、同法が規定する雇止め法理は適用も類推…

大学教授の復職-模擬授業の実施を提案されたら・・・

1.休職からの復職 休職している方が復職するためには、傷病が「治癒」したといえる必要があります。 ここでいう「治癒」とは「従前の職務を通常の程度に行える健康状態に回復したこと」をいいます(佐々木宗啓ほか編著『類型別 労働関係訴訟の実務Ⅱ』〔青…

懲戒処分と懲戒事由との結びつきが厳格に理解された例-不祥事委員会や理事会における議論の経過を確認する

1.懲戒事由の追加 懲戒事由の追加は基本的に認められていません。 例えば、西谷敏『労働法』〔日本評論社、第3版、令2〕240-241頁には、 「懲戒処分は、労働者の具体的な非違行為に対して行われる制裁であり、処分の適法性は、その理由とされた非…

「あなたは○○だって、みんな言ってるぜ」が悪質な人格否定だと評価された例

1.職場の総意であるかのように悪感情を伝える言葉 職場で上長から発せられる労働者を傷つける言葉には様々なものがありますが、その中の一つに「あなたは○○だって、みんな言ってるぜ」という言い方があります。「○○」の中には、「仕事ができない人」「頭の…

過剰申告があったとしても、パワハラの存否に関する労働者の供述の信用性は否定されないとされた例

1.過剰申告の危険 ハラスメントに関連する事件を処理する際に気を付けなければならないことの一つに、過剰申告があります。 これは、労働者が実際に受けた被害よりも、ハラスメントの内容を盛ってしゃべってしまうことを言います。 過剰申告の何が問題なの…

人材紹介会社・ヘッドハンティング業者の言葉を信じるのは慎重に-職種限定合意の否定例

1.人材紹介会社・ヘッドハンティング業者が介在している労働契約 労働事件を処理していて思うことの一つに、人材紹介会社・ヘッドハンティング業者(人材紹介会社等)の問題があります。 具体的に言うと、転職を勧誘する時に、誤解を招くような言動をとっ…

自分の指導態様について部下が上司からどのようなヒアリングを受けたのかを聞きだそうとしたことがパワハラに該当するとされた例

1.職場におけるパワーハラスメント 令和2年厚生労働省告示第5号「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」は、職場におけるパワーハラスメントを、 「職場において行われる ①…

対象者以外の者を宛先やCCに入れて叱責のメールを送信したことがパワハラに該当するとされた例

1.職場におけるパワーハラスメント 令和2年厚生労働省告示第5号「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」は、職場におけるパワーハラスメントを、 「職場において行われる ①…

固定残業代の効力-想定残業時間があまりにも長い固定残業代は通常の労働時間に対応する業務の対価が含まれているとされた例

1.固定残業代の有効要件 最一小判令2.3.30労働判例1220-5 国際自動車(第二次上告審)事件は、固定残業代の有効要件について、 「通常の労働時間の賃金に当たる部分と同条の定める割増賃金に当たる部分とを判別することができることが必要であ…

年俸決定権の濫用-賃金の評価、査定に理由の説明を求めることができるのか?

1.賃金額の理由が知りたい 労働契約は労務を提供して賃金を得ることを内容とする契約です。賃金は労働契約の本質的な要素であり、労働者の大きな関心事です。 賃金額について、査定により増減する仕組みをとっている会社は少なくありません。しかし、どの…

「即レスしないならガラケーで十分だ」貸与したスマートフォンを取り上げたことが違法だとされた例

1.会社の物品の貸与 会社が従業員に対してどのような備品を貸与するのかは、基本的に会社が自由に判断すべき事柄です。そのため、貸与した備品の返却を求めることが問題視されることは普通ありません。 しかし、近時公刊された判例集に、従業員に貸与した…

約30年に渡ってシステム関連の業務に従事してきた労働者を他職種に配転することは著しい不利益ではないのか?

1.配転命令権の濫用 一般論として、配転命令には、使用者の側に広範な裁量が認められます。最二小判昭61.7.14労働判例477-6 東亜ペイント事件によると、配転命令が権利濫用として無効になるのは、 ① 業務上の必要性がない場合、 ② 業務上の必…

約30年に渡ってシステム関連の業務に従事していても、職種限定合意の成立が否定された例

1.配転命令と職種限定合意 一般論として、配転命令には、使用者の側に広範な裁量が認められます。最二小判昭61.7.14労働判例477-6 東亜ペイント事件によると、配転命令が権利濫用として無効になるのは、 ① 業務上の必要性がない場合、 ② 業務…

公務員の懲戒処分-弁明の機会を放棄させられそうになったら証拠化を図ること

1.公務員の懲戒処分と弁明 手続の内容は法定されていないのが普通ですが、公務員に懲戒処分を行うにあたっても、基本的には弁明の機会を付与することが必要になると理解されています。 弁明の機会を与えられられなかったことだけで懲戒処分の取消事由にな…