弁護士 師子角允彬のブログ

師子角総合法律事務所(東京:水道橋駅徒歩5分・御茶ノ水駅徒歩7分)の所長弁護士のブログです

2019-11-01から1ヶ月間の記事一覧

債務不履行に基づいて損害賠償を請求する場合でも弁護士費用を請求できる事件類型

1.弁護士費用の損害賠償請求 損害賠償を求める法的根拠は、大きく言って二つあります。不法行為に基づく場合と、債務不履行に基づく場合です。 不法行為に基づいて損害賠償を請求する場合、弁護士費用の一部を損害として相手方に負担させることができます…

職場でのハラスメント、加害者への懲戒処分を求めることへの権利性

1.ハラスメントの防止・対策として望まれていること 今年の9月10日、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会が 「フリーランス・芸能関係者へのハラスメント実態アンケート」 という資料を公表しました。 https://blog.fr…

鬱病の従業員への対応-心理的負荷を与えてはダメ・程度の低い業務しかさせないのもダメ

1.メンタルヘルスの問題は誰にでも生じ得る 厚生労働省が、 「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き~メンタルヘルス対策における職場復帰支援~」 というリーフレットを公刊しています。 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/…

揺れ動く暴行の態様・山口氏の供述からの後退(NGT裁判)

1.NGT裁判 ネット上に、 「【元NGT山口真帆暴行裁判】重要“証拠”開示請求へ 不起訴理由が明らかになる?」 という記事が掲載されていました。 記事には、 「まさに一進一退の攻防だ。『NGT48』の元メンバー・山口真帆(24)への暴行事件をめ…

多少迎合してしまっていたとしても、セクハラを事件化することは可能(対管理職、対顧客、対教授)

1.明示的な拒否がないことに関する経験則 セクシュアル・ハラスメント(以下「セクハラ」といいます)を理由に加害者の責任を追及する時、加害者側から、 「同意していた。嫌がっていなかった。」 という反論がなされることがあります。 しかし、セクハラ…

詐欺的サクラサイト商法-面談相談なく依頼を勧誘する自称弁護士には要注意

1.詐欺的サクラサイト商法 ネット上に、 「『人生、終わった』副業サイトに登録した主婦 ポイント購入を繰り返し数日で30万被害…電子マネー詐欺の実態」 との記事が掲載されていました。 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191124-00000004-ryu-oki 記…

身だしなみ基準-基準を定めること自体の可否と、それに準拠して不利に取り扱ってよいかは別問題

1.身だしなみ基準 ネット上に、 「従わないと最悪の場合解雇!? 『女性のノーメイク禁止』など服装や身だしなみのルールがある企業が57.1%」 という記事が掲載されていました。 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191121-00010017-abema-soci 記…

試用期間中の解雇-職務経歴書を盛っていなければ簡単には解雇されない

1.試用期間中の解雇 試用期間中の解雇は自由に認められるわけではありません。 試用期間付の労働契約が、解約留保権付労働契約であると理解される場合、留保解約権の行使は、 「解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し社会通念上相…

取締役に就任したら退職するという就業規則-これにより自動的に退職したことになるか?

1.役員就任と同時に行われる合意退職 従業員を取締役などの会社の役員に就任させるにあたり、一旦退職合意を交わして従業員の地位を整理してから役員になってもらうことがあります。 現行法上、従業員と取締役を兼務することは禁止されていません。 それで…

司法記者の倫理(NGT裁判の報道の在り方)

1.NGT裁判の報道 ネット上に、 「山口真帆『襲撃犯ツーショット写真』流出! 裁判隠し玉は『交際日記』」 という記事が掲載されています。 https://taishu.jp/articles/-/70166?page=1 記事には、 「5月にNGT48を卒業した山口真帆(24)。昨年…

他社で働きながらでも解雇や雇止めの効力は争える

1.他社就労の評価 解雇されたり雇止めをされたりすると、それが違法なものであったとしても、勝訴するまでの間、収入が閉ざされてしまいます。訴訟を提起してから判決が得られるまでには1年を超える時間がかかることも珍しくなく、その間、どのように生計…

整理解雇における交渉、無理のある回答期限の設定はリスクでしかない(労働条件の切り下げに応じるか、さもなければ解雇する)

1.無理のある回答期限の設定には、害はあっても益はない 労使紛争に限らず、紛争の一方当事者が他方当事者に何等かの要求をする場合、回答期限を設定することがあります。 例えば、 「本通知の到達後、2週間以内にご回答を頂けない場合、やむを得ず法的措…

「もう来なくてもいい」系の言動への対応-働く気はないけれどもクビになるのは納得できない方へ

1.「もう来なくていい」系の言動への対応 「『もう来なくてもいい』と言われた。こんな会社で働く気はないけれども、クビになるのは納得できない。」という相談を受けることがあります。 こうした場合でも、解雇を争うことには一定の実益があります。 解雇…

導入に失敗して基本給化した固定残業代は、一方的には減らされない

1.固定残業代の導入の失敗 適法要件を満たさない固定残業代は、残業代の支払としての効力を持ちません。その結果どうなるかと言うと、労働者は固定残業代部分も含めた金額を前提に時間単価を計算し、改めて使用者に残業代を請求できることになります。 こ…

職場内不倫は危険(セクハラで訴えられた時、防御することが難しい)

1.セクハラに関する経験則 セクハラの被害者は、明示的な抵抗を示せないことが少なくありません。そのため、損害賠償を請求する訴訟を提起しても、加害者から「同意があった。」という反論が出されることがあります。 同意の有無を判断するにあたっては、…

忘年会が禁止されていたとしても、忘年会で同僚から暴力を振るわれた方には、会社に責任を追及できる可能性がある

1.使用者責任 民法715条1項本文は、 「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」 と規定しています。 これは、簡単に言うと、従業員が事業活動に関連して第三者に損害を与えた…

定年後再雇用を拒否された人の地位確認請求

1.定年後再雇用を拒否された人の地位確認請求 高年齢者等の雇用の安定に関する法律9条1項により、事業主は、高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、 ① 65歳までの定年の引き上げ、 ② 継続雇用制度の導入、 ③ 定年制の廃止、 のいずれかの…

業務に起因して鬱病を発症した従業員への対応を誤り、3000万円以上の損害賠償を支払うことになった会社

1.高額の損害賠償請求の認容事例 一般論として、業務に起因して鬱病になったからといって、何千万円もの損害賠償が認められる例は稀だと思います。 そうした稀な事案が近時公刊された判例集に掲載されていました。 札幌地判平31.3.25労働経済判例速…

つながらない権利-法制化は必要か?

1.つながらない権利 ネット上に、 「会社と『つながらない権利』法制化を急げ 休日深夜対応で不眠や健康被害拡大」 との記事が掲載されていました。 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191109-00000502-fsi-bus_all 記事には、 「NTTデータ経営研究…

神戸市教員間暴行・暴言問題-給与差止条例の合法性

1.給与差止条例 ネット上に、 「加害教員が給与差し止め不服で審査請求 教員間暴行」 という記事が掲載されていました。 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191108-00000013-kobenext-soci 記事には、 「神戸市立東須磨小学校(同市須磨区)の教員間暴…

パンプス・ハイヒールの着用義務は性差別の問題だろうか?

1.パンプス・ハイヒールの強制問題 ネット上に、 「#Kutoo は労働環境だけの問題じゃない 石川優実さん『性差別でもある。なぜ1つの問題にしたがるの』」 という記事が掲載されていました。 https://www.bengo4.com/c_23/n_10362/ 記事には、 「職場でヒー…

整理解雇の規制は本当に厳しいのだろうか

1.整理解雇の規制 整理解雇の可否は、①人員削減を行う経営上の必要性、②使用者による十分な回避努力、③被解雇者の選定基準及びその適用の合理性、④被解雇者や労働組合との間の十分な協議等の適正な手続、という4つの観点から判断されるとされています。 h…

注意を要する弁護士を見分けるポイント

1.無断で和解、解決金を着服 ネット上に、 「無断で和解、『訴訟終わってない』とウソ…弁護士が解決金を着服」 という記事が掲載されていました。 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191107-00050114-yom-soci 記事には、 「民事訴訟で依頼人に無断で…

代引き(代金引換)での注文-「商品を受領する義務」は生じるのか?

1.「代引き」注文で受取拒否される問題 ネット上に、 「大迷惑!『代引き』注文で受取拒否…トンデモ客を排除できる?」 との記事が掲載されていました。 https://www.bengo4.com/c_18/n_10334/ 記事には、 「ネットショッピングは浸透してきたが、その支払…

過労死-理不尽な叱責をする大口取引先社長と付き合うのは、気に入られていたとしても緊張する

1.脳・心臓疾患の労災認定基準 基発第1063号 平成13年12月12日 改正基発0507第3号 平成22年5月7日「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」という文書があります。俗に、脳・心臓疾患の労災…

企業組合の組合員の労働者性

1.企業組合 企業組合という組織があります。一般の方はもちろん、法律専門職にも、それほど良く知られている仕組みではないと思います。 企業組合は、中小企業等協同組合法という法律に根拠があり、中小企業等協同組合の一類型として位置づけられています…

義務者の年収が高い場合の婚姻費用の算定-よくある間違ったアドバイス

1.義務者の年収が高い場合の婚姻費用の計算 ネット上に、 「小室哲哉氏は“8万円”提示? 別居中の生活費『婚姻費用』はどう決まるのか」 という記事が掲載されていました。 https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191103-00052418-otonans-soci&p=1 ht…

裁判資料の横流し? 訴訟記録と非当事者の名誉・プライバシー保護の問題

1.NGT裁判と山口真帆氏の立ち位置 ネット上に、 「『山口真帆に集団訴訟も』NGTメンバー保護者会が激怒 暴行事件裁判で”場外乱闘”勃発」 という記事が掲載されていました。 https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191101-00015183-bunshun-ent 記…

労災の認定基準の適用・運用-裁判所の運用は行政の運用よりも緩やか?

1.精神障害の労災認定基準 精神障害の労災認定に関して、行政は、 「心理的負荷による精神障害の認定基準について(平成23年12月26日付け 基発第1226第1号)」 との名前の文書を作成・公表しています。 https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun…

新人がパワハラ上司と二人きりはきつい-協力者が確保できたことで、適応障害の発症が上司からのパワハラによる労災と認められた例

1.精神障害の労災認定 精神障害が労災になるというと、長時間労働で欝病になったような場面を想定される方が多いのではないかと思います。しかし、精神疾患で労災が認められるパターンは長時間労働の場面に限られるわけではありません。いじめや嫌がらせに…