弁護士 師子角允彬のブログ

師子角総合法律事務所(東京:水道橋駅徒歩5分・御茶ノ水駅徒歩7分)の所長弁護士のブログです

フリーランスの労働事件

社員・従業員の個人事業主化-自発的に同意してしまったら、それまでか?

1.社員・従業員の個人事業主化 近時、一部企業の間で、社員・従業員を個人事業主化する動きがあります。名実ともに働き方を変えるもので、社員・従業員の納得のもとで進められるのであれば問題ありませんが、こうしたスキームは、往々にして労働基準法ほか…

劇団員の労働者性が一歩前進した事例-稽古・出演の時も労働者

1.劇団員の労働者性 昨年の2月、入団契約を結んだ劇団員の労働者性について判示した裁判例を紹介しました(東京地判令元.9.4労働判例ジャーナル95-48 エアースタジオ事件)。 https://sskdlawyer.hatenablog.com/entry/2020/02/20/010316 エアー…

業務委託契約を利用した脱法的労働者派遣で被派遣者に労働者性が認められた事例

1.労働者派遣法の脱法スキーム 労働者派遣事業は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(労働者派遣法)によって、業務が適正に行われるように規制されています。 こうした法規制を逃れるための古典的な方法に、業務委…

報酬が勤務時間と関係なく定められ、兼業が認められている取締役でも、労働者性を主張できる可能性はある

1.労働者性の判断基準 取締役、請負人、業務受託者など、雇用以外の法形式のもとで働いている人がいます。こうした方々の働き方に関わる問題を考えるにあたっては、労働者かどうかが重要な意味を持ちます。労働者性が認められれば、労働基準法や労働契約法…

第二東京弁護士会研修「フリーランスの実態、法的規制の現状と実務対応」研修講師を終えて

12月23日、第二東京弁護士会の会員向け研修「フリーランスの実態、法的規制の現状と実務対応」の研修講師を務めました。 研修の全体像は次のとおりです。 第1部 フリーランスの実態 1.統計からみるフリーランスの実態 2.フリーランスの保護の在り方…

仕事で病気・怪我をしたフリーランスの方へ-労働者性を争うことにより手厚い補償を受けられる可能性がある

1.フリーランス・個人事業主の病気や怪我に対する脆弱性 フリーランス・個人事業主(以下「フリーランス等」といいます)は、病気や怪我に対して労働者よりも遥かに脆弱です。それは社会保険や労働保険が不十分だからです。 業務上の災害に対し、労働者は…

男性差別-性犯罪の発生傾向を理由にプラットフォームから一律に男性を排除することは許されるのか?

1.男性シッターによる新規予約受付の一時停止 ネット上に、 「キッズライン、男性シッターの予約受け付けを停止 登録者の強制わいせつ事件が問題に」 という記事が掲載されていました。 https://news.yahoo.co.jp/articles/a2d5b7840a991d3a5df06abcc2989b…

女子プロレスラーの自殺問題-番組制作・放送側に法的責任はないのか

1.問題は発信者情報開示だけか? ネット上に、 「木村花さんを苦しめたSNSの誹謗中傷。匿名の相手を訴える方法は?」 という記事が掲載されています。 https://news.yahoo.co.jp/articles/560d0eb9adaa2825d52f51e58b4baa978dbfc873 記事には、 「プロレス…

雇用保険の手続不履践による疑似労働者の救済手続-損害賠償請求か確認請求か?

1.雇用保険の未加入と債務不履行責任 事業主は、雇用保険の対象となる労働者を雇入れた場合、その者が被保険者になったことを公共職業安定所長に届出る義務があります(雇用保険法7条、雇用保険法施行規則6条参照)。 しかし、実体は労働契約であるにも…

出来高払制(歩合制)の労働契約と最低賃金

1.歩合制の労働契約 労働基準法27条は、 「出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。」 と規定しています。 こうした規定があることから分かるとおり、賃金を出来高払(…

フリーランスの中には労働者性の認められる方が混ざっている

1.擬似労働者の問題 ネット上に、 「フリーランスや自営業者にも休業補償…政府が支援対象拡大へ」 という記事が掲載されています。 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200304-00050158-yom-pol 記事には、 「菅官房長官は4日午前の記者会見で、新型コ…

入団契約を結んだ劇団員の労働者性-稽古・出演の時は労働者でなくても裏方業務をしている時は労働者

1.劇団員の労働者性 小規模な劇団では、劇団員が、出演者と、装飾・衣装・音響照明・大道具小道具などの裏方作業員とを兼任していることが珍しくありません。 この場合、出演に関しても上命下達の指揮命令系統がはっきりしていれば話は早いのですが、演じ…

「残業好き」の人たちはフリーランスになればよいのではないだろうか

1.「残業好き」の人たちと働き方改革 ネット上に、 「『残業好き』の人たちにとって働き方改革とは何なのか?」 という記事が掲載されていました。 https://news.yahoo.co.jp/byline/yokoyamanobuhiro/20200207-00162075/ 記事の著者は、 「働き方改革は、…

中小企業主等の特別加入者の労働者性と労災認定

1.特別加入制度 労災には特別加入という仕組みがあります。 これは、大雑把に言えば、労働者でない方であったとしても、一定の要件のもとで労災に入ることができる仕組みをいいます。 厚生労働省の資料では、次のような説明がなされています。 (厚生労働…

合同会社の社員の除名と信頼関係の毀損

1.合同会社の社員の除名 あまり有名ではありませんが、合同会社という組織形態があります。 有限責任制で出資者のリスクが限定されていること(会社法576条1項5号、同条4項)、内部ルールを出資者が柔軟に設定できることなどの特性があります。 http…

非典型的な被告の行動・陳述書に基づいた事実拡散の危険性(NGT裁判)

1.被告による動画配信 ネット上に、 「元NGT山口真帆事件の被告男性『動画配信で80分独白』の衝撃」 という記事が掲載されています。 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191225-00000006-tospoweb-ent 記事はNGT裁判の被告がどのような話をし…

揺れ動く暴行の態様・山口氏の供述からの後退(NGT裁判)

1.NGT裁判 ネット上に、 「【元NGT山口真帆暴行裁判】重要“証拠”開示請求へ 不起訴理由が明らかになる?」 という記事が掲載されていました。 記事には、 「まさに一進一退の攻防だ。『NGT48』の元メンバー・山口真帆(24)への暴行事件をめ…

司法記者の倫理(NGT裁判の報道の在り方)

1.NGT裁判の報道 ネット上に、 「山口真帆『襲撃犯ツーショット写真』流出! 裁判隠し玉は『交際日記』」 という記事が掲載されています。 https://taishu.jp/articles/-/70166?page=1 記事には、 「5月にNGT48を卒業した山口真帆(24)。昨年…

企業組合の組合員の労働者性

1.企業組合 企業組合という組織があります。一般の方はもちろん、法律専門職にも、それほど良く知られている仕組みではないと思います。 企業組合は、中小企業等協同組合法という法律に根拠があり、中小企業等協同組合の一類型として位置づけられています…

マネジメント契約とは何だろうか?

1.ピンハネされる契約 ネット上に、 「自分で営業したのに『ピンハネ』される契約、有効なのか? フリー『放送作家』の悩み」 という記事が掲載されていました。 https://www.bengo4.com/c_23/n_10231/ 記事は、 「都内在住のAさんは、あるマネジメント会…

作家のもとに一方的に送られてきたアイディア、注意が必要?

1.ラノベ作家に届いた「迷惑DM」 ネット上に、 「クリエイターは要注意! ラノベ作家に届いた『迷惑DM』とは」 という記事が掲載されていました。 https://news.livedoor.com/article/detail/17205989/ 記事によると、 「10月8日、ライトノベル作家の不確…

専門職が独立前に掴んだ顧客から、仕事を受けることの可否

1.専門性の高い業務受託者の独立 楽器の販売等を業とする事業者から、ピアノの調律等の業務を受託していた調律師の方が訴えられた事件が公刊物に掲載されていました(青森地判平31.2.25判例時報2415-54)。 原告事業者は、被告となった調律…

労働法に部分的適用の可能性はないのだろうか-「雇用契約類似の非典型契約」の持つ可能性

1.「雇用契約類似の非典型契約」の概念 「雇用契約類似の非典型契約」という概念に言及した裁判例が、2019年10月号の判例タイムズに掲載されています。 東京地判平30.1.26判例タイムズ1463-190です。 この事案の原告は諸種設備工事の…

相談しても解決しない? フリーランスのハラスメント被害

1.フリーランスのハラスメント ネット上に、 「フリーランスの6割パワハラ、4割セクハラを経験 相談機関なく泣き寝入りも」 という記事が掲載されていました。 https://news.yahoo.co.jp/byline/iijimayuko/20190910-00142072/ 記事は、 「特定の企業や組…

業務委託先からの「パワハラ」-安全配慮義務違反に基づく責任は追及できない?

1.業務委託先からのパワハラと安全配慮義務 ネット上に、 「業務委託先からのパワハラ、もう耐えられない…違約金なしで契約は切れるか」 との記事が掲載されています。 https://www.bengo4.com/c_5/n_10050/ 記事は、 「パワハラを理由に、業務委託契約を…

社員の個人事業主化

1.社員の個人事業主化 ネット上に、 「タニタ社長『社員の個人事業主化が本当の働き方改革だ』という記事が掲載されています。 https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190723-66668864-business-soci&p=1 記事によると、 「対象はタニタ本体の社員の…

死亡しても吉本興業に責任追及を行わない・訴訟の提起を行わないとの誓約書の効力

1.吉本興業の誓約書 ネット上に、 「吉本、NSC合宿の『死亡しても責任負わない』誓約書は『無効』 芸能弁護士が批判」 との記事が掲載されていました。 https://www.bengo4.com/c_23/n_9947/ 記事には、 「吉本興業が運営する芸人養成所『NSC』の研修生に…

吉本興業は下請法違反?

1.吉本興業は下請法違反? ネット上に、 「吉本興業は下請法違反? ギャラの認識で芸人と食い違い、書面のやりとりもなし」 という記事が掲載されていました。 https://www.bengo4.com/c_5/n_9922/ 記事は、 「仮に下請法の適用対象となる場合、ギャラにつ…

脱サラしてフランチャイズ契約を結ぶ方への情報提供義務

1.ビジネスセミナーでの起業の勧め サラリーマンを対象に起業を勧めるセミナーが行われることがあります。 セミナーでは、フランチャイズ契約を結べば、簡単に高収入が得られるなどとして、独立・起業が勧められます。 これを真に受けて会社を辞め、高額の…

準委任契約類似の無名契約の解除の可否の判断に解雇権濫用法理の考え方が取り入れられた例

1.準委任契約と解雇権濫用法理 法律行為を委託することを委任契約といいます(民法643条)。法律行為とはいえない事務を委託することを準委任契約といいます。準委任契約には委任契約に準じたルールが適用されます(民法656条)。 企業とフリーラン…