弁護士 師子角允彬のブログ

師子角総合法律事務所(東京:水道橋駅徒歩5分・御茶ノ水駅徒歩7分)の所長弁護士のブログです

フリーランスの労働事件

業務委託契約扱いされていた労働者からの国民健康保険料の半分に相当する額の損害賠償請求が認められた例

1.労働者性が争われる事件 労働者かどうか(労働基準法、労働契約法をはじめとする労働法の適用があるか)は契約の名称によって決まるわけではありません。就労の実体で決まります。したがって、業務委託契約(準委任契約)という表題のついた契約書のもと…

業務委託契約に変更されていても、なお労働者であると認められた例(自由な意思の法理の適用?)

1.労働契約から業務委託契約への切替え 少し前に、ある企業が社員を個人事業主化することを発表して話題に上ったことがありました。 その影響か、近時、労働契約(雇用契約)を業務委託契約(準委任契約)に切り替えられたという相談が増えているように感…

業務委託先個人事業主によるセクハラ被害を訴える供述の信用性評価

1.セクハラの立証-供述の信用性評価に係る裁判例を検討する意義 一般論として言うと、セクシュアルハラスメント(セクハラ)は、第三者の目に触れない場所・態様で行われる傾向にあります。そのため、セクハラに関しては、主要な証拠が被害者の供述しかな…

会社は業務委託先である個人事業主に対するセクハラを許さない義務を負う

1.雇用管理上の措置 男女雇用機会均等法11条1項は、 「事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることの…

なしくずし的に業務に従事していた場合に雇用契約の成否を考えるうえでの着眼点

1.労働契約の成否は必ずしも明確ではない 民法623条は、 「雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。」 と規定しています。つまり、労働契約…

労働契約と業務委託契約の差-事実認定論を意識して契約の法的性質を議論することの重要性

1.労働契約と業務委託契約 労働契約なのか業務委託契約なのかで、働く人の立場は大きく異なってきます。労働契約であれば、労働基準法や労働契約法をはじめ、各種労働関係法令の保護を受けることができます。他方、業務委託契約であれば、契約自由の原則の…

芸能人養成スクールの退学等によりスクール側に発生する平均的損害

1.消費者契約における損害賠償額の制限 消費者契約では、同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える損害賠償額を予定しても、そのような条項の効力は否定されます(消費者契約法9条1号)。 この条項の適用ができれば、…

芸能人養成スクールの受講契約が消費者契約と認められた例

1.フリーランス(個人事業主)と消費者保護法 フリーランス(個人事業主)が企業から仕事を受注するにあたっては、交渉力の格差から不公平な取引条件を押し付けられがちです。こうした不公平な状況を是正するため、消費者契約法などの各種消費者保護法を適…

業務委託契約の更新拒絶-雇止め法理の類推はありえるか?

1.業務委託契約と労働契約 有期労働契約は、期間の満了により終了するのが原則です。しかし、契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められる場合、客観的合理的理由・社会通念上の相当性が認め…

芸能人の労働者性-出演機会への諾否の自由をどうみるか?

1.労働者性の判断基準 契約当事者の一方が労働者はでない場合、立場の強い側が立場の弱い側に一方的な契約条件を押し付けたとしても、両者間の法律関係は、基本的に契約書に書かれているとおりに規律されます。 立場の弱い側が、こうした状況を打開する方…

業務委託契約で働いているエステシャン等の労働者性

1.エステシャン等の労働者性 このブログでも何度か言及したことがありますが、私の所属している第二東京弁護士会では、厚生労働省からの委託を受けて、フリーランス・トラブル110番という相談事業を実施しています。 フリーランス・トラブル110番【厚生…

期間途中で業務委託契約を解除された業務受託者は、残期間に得られたはずの報酬を請求できるのか?

1.期間途中での業務委託契約の解除 業務委託契約に基づいて働いているフリーランスの方からよく寄せられる相談類型の一つに、取引先から契約を切られたというものがあります。 業務委託契約の多くは、準委任契約という契約類型に該当します(民法656条…

中小事業主の労災の特別加入制度での留意点-事業主の立場で行われる業務は対象外

1.特別加入制度 労働者災害補償保険法には「特別加入」という制度があります。 これは、 「労働者以外の方のうち、業務の実態や、災害の発生状況からみて、労働者に準じて保護することがふさわしいと見なされる人に、一定の要件の下に労災保険に特別に加入…

労働者安全衛生法の保護範囲に労働者以外の者まで含められた例

1.労働安全衛生法 労働安全衛生法という法律があります。これは、 「労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)と相まつて、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画…

配送業務従事者の労働者性が問題になった事案

1.フリーランスの法律問題 第二東京弁護士会では、フリーランス・トラブル110番という事業を行い、フリーランスの方からの法律相談に応じています。 フリーランス・トラブル110番 法律相談は多数の弁護士が持ち回りで担当しています。私も相談担当弁護…

専門的業務における指揮監督関係

1.労働者性の判断基準 労働法の適用を逃れるために、業務委託契約や請負契約といった、雇用契約以外の法形式が用いられることがあります。 しかし、当然のことながら、このような手法で労働法の適用を免れることはできません。労働者性の判断は、形式的な…

フリーランスの法的保護:業務提供誘引販売取引であることを理由とするクーリングオフの可能性

1.業務提供誘引販売取引 特定商取引法に「業務提供誘引販売取引」という取引類型が規定されています。 これは、 物品の販売・・・又は有償で行う役務の提供・・・の事業であつて、 業務提供利益を収受し得ることをもって相手方を誘引し、 その者と特定負担…

運転代行業に従事するドライバーの労働者性

1.労働者か個人事業主かが微妙な事案 第二東京弁護士会では、フリーランス・トラブル110番という事業を行い、フリーランスの方からの法律相談に応じています。 フリーランス・トラブル110番 法律相談は多数の弁護士が持ち回りで担当しています。私も相…

係争中のSNSの使用は要注意(ツイッターでのつぶやきが墓穴を掘った事案)

1.時短営業に踏み切ってフランチャイズ契約を解除された事件 以前、時短営業に踏み切ったコンビニオーナーがフランチャイズ契約を解除されて、マスコミ等で話題になりました。 24時間営業を求めることと優越的地位の濫用(独占禁止法2条9項5号、19…

健康保険に加入させなかったことを理由とする疑似労働者の慰謝料請求

1.健康保険に加入させてもらえないという問題 健康保険法上の「被保険者」は「適用事業所に使用される者及び任意継続被保険者をいう」と定義されています(健康保険法3条1項参照)。 事業所との間で業務委託契約を締結し、個人事業主として働いている人…

疑似労働者に対する有給休暇の取得妨害の認定

1.擬似労働者への年次有給休暇の取得妨害 労働者の年次有給休暇の取得を妨害することは、不法行為を構成することがあります。ここでいう取得妨害とは、典型的には、労働者の年次有給休暇を取得する意思表示に対し、「事業の正常な運営を妨げる場合」(労働…

業務委託契約の形がとられている英会話講師の労働者性

1.業務委託契約か労働契約か? 厚生労働省から委託を受けて、第二東京弁護士会では、フリーランス・トラブル110番という相談・紛争解決事業を実施しています。 『フリーランス・トラブル110番』の開始について|第二東京弁護士会 フリーランス・トラ…

従業員間の男女交際を違約金で禁止することはできるのか?

1.男女交際禁止の約定 芸能事務所とアイドルとのマネジメント契約書や、クラブがホステスに対して適用している就業規則を検討していると、男女交際を禁止する条項を目にすることが少なくありません。 一般企業の就業規則に目を通している中でも、セクシュ…

労働者性の検討要素としての諾否の自由-断りたくない場合も自由がないといえるのか?

1.労働者の判断基準 労働基準法上の「労働者」に該当するのか否かは、昭和60年12月19日に作成された「労働基準法研究会報告(労働基準法の『労働者』の判断基準について)」に基づいて判断されています。 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520…

社員・従業員の個人事業主化-自発的に同意してしまったら、それまでか?

1.社員・従業員の個人事業主化 近時、一部企業の間で、社員・従業員を個人事業主化する動きがあります。名実ともに働き方を変えるもので、社員・従業員の納得のもとで進められるのであれば問題ありませんが、こうしたスキームは、往々にして労働基準法ほか…

劇団員の労働者性が一歩前進した事例-稽古・出演の時も労働者

1.劇団員の労働者性 昨年の2月、入団契約を結んだ劇団員の労働者性について判示した裁判例を紹介しました(東京地判令元.9.4労働判例ジャーナル95-48 エアースタジオ事件)。 https://sskdlawyer.hatenablog.com/entry/2020/02/20/010316 エアー…

業務委託契約を利用した脱法的労働者派遣で被派遣者に労働者性が認められた事例

1.労働者派遣法の脱法スキーム 労働者派遣事業は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(労働者派遣法)によって、業務が適正に行われるように規制されています。 こうした法規制を逃れるための古典的な方法に、業務委…

報酬が勤務時間と関係なく定められ、兼業が認められている取締役でも、労働者性を主張できる可能性はある

1.労働者性の判断基準 取締役、請負人、業務受託者など、雇用以外の法形式のもとで働いている人がいます。こうした方々の働き方に関わる問題を考えるにあたっては、労働者かどうかが重要な意味を持ちます。労働者性が認められれば、労働基準法や労働契約法…

第二東京弁護士会研修「フリーランスの実態、法的規制の現状と実務対応」研修講師を終えて

12月23日、第二東京弁護士会の会員向け研修「フリーランスの実態、法的規制の現状と実務対応」の研修講師を務めました。 研修の全体像は次のとおりです。 第1部 フリーランスの実態 1.統計からみるフリーランスの実態 2.フリーランスの保護の在り方…

仕事で病気・怪我をしたフリーランスの方へ-労働者性を争うことにより手厚い補償を受けられる可能性がある

1.フリーランス・個人事業主の病気や怪我に対する脆弱性 フリーランス・個人事業主(以下「フリーランス等」といいます)は、病気や怪我に対して労働者よりも遥かに脆弱です。それは社会保険や労働保険が不十分だからです。 業務上の災害に対し、労働者は…