弁護士 師子角允彬のブログ

師子角総合法律事務所(東京:水道橋駅徒歩5分・御茶ノ水駅徒歩7分)の所長弁護士のブログです

2024-06-01から1ヶ月間の記事一覧

弁護士法人・経営者弁護士の勤務弁護士に対するセクシュアルハラスメント防止義務の存在が認められた例

1.経営者弁護士と勤務弁護士の法律関係 男女雇用機会均等法11条1項は、 「事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環…

大学教授に対するアカデミックハラスメントを理由とする懲戒処分-教授会の議を経ていないとして効力が否定された例

1.弁明とは異なる手続規定への違背をどう見るか? 懲戒処分の効力を判断するにあたっての手続違反の位置付けは、次のように理解されています。 「就業規則や労働協約上、懲戒解雇に先立ち、賞罰委員会への付議、組合との協議ないし労働者の弁明の機会付与…

外国語の発声ができなかったことを理由に罰金を徴求したり、洋菓子の購入を要求したりしたことが、アカデミックハラスメントに該当しないとされた例

1.アカデミックハラスメント 大学等の教育・研究の場で生じるハラスメントを、アカデミックハラスメント(アカハラ)といいます。 アカデミックハラスメントを理由とする懲戒処分の効力が訴訟で争われることは少なくありません。しかし、懲戒処分にまで発…

アカデミックハラスメント-学生が公務員試験に落ちて休学したことを他の学生に話したことがハラスメントに該当するとされた例

1.アカデミックハラスメント 大学等の教育・研究の場で生じるハラスメントを、アカデミックハラスメント(アカハラ)といいます。 アカデミックハラスメントには色々な態様がありますが、その中の一つに、ある学生の機微情報を他の学生に漏らしてしまうと…

アカデミックハラスメント-学生が笑っていたとしても、他の受講者の前で成績を揶揄してはダメ

1.アカデミックハラスメント 大学等の教育・研究の場で生じるハラスメントを、アカデミックハラスメント(アカハラ)といいます。 学生に対するアカデミックハラスメントが問題になった時、大学教員の側からは、しばしば「嫌がっている様子はなかった」と…

アカデミックハラスメント-学生の態度に問題があっても、教育を放棄する姿勢を見せることは指導ではない

1.アカデミックハラスメント 大学等の教育・研究の場で生じるハラスメントを、アカデミックハラスメント(アカハラ)といいます。 アカデミックハラスメントとの関係で特に問題になりやすいことの一つに、学生への指導との関係があります。高等教育の場面…

公務員の死亡逸失利益-67歳まで同一の基礎収入(同等・上位にあった行政職員の給与平均額)が用いられた例

1.逸失利益を計算するうえでの労働能力喪失期間の終期 事故や事件で死亡したり、後遺障害が残ったりした場合、被害者は、加害者に対し、減収分に対応する逸失利益の賠償を請求することができます。 この場合、就労による逸失利益の終期をどこで画するのか…

労災民訴(公務災害民訴)で死亡逸失利益の基礎収入が死亡者と同等又は上位にあった行政職員の給与平均額とされた例

1.労災民訴 労働災害(労災)や公務災害の被災者が、労働者災害補償保険法や国家公務員災害補償法、地方公務員災害補償法等で補償されなかった損害について、使用者に損害賠償を請求することを、一般に「労災民訴」といいます。 労働者災害補償保険法等に…

制服への更衣時間に労働時間性が認められた例

1.更衣時間の労働時間性 制服や作業服への更衣時間の労働時間該当性については、一般に、次のとおり理解されています。 「労働者が就業を命じられた業務を行う前段階の・・・作業服・作業靴への着替え・履替えなどの業務の準備行為は、労務提供そのもので…

主観的に性的関心に基づいていればセクハラ?-好意を持った部下の勤務中の横顔や後ろ姿を撮影することが不法行為に該当するとされた例

1.客観的に「性的な言動」といえるか疑義のあるタイプのハラスメント 平成18年厚生労働省告示第615号「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」【令和2年6月1日適用】は、 職場におけるセ…

好意を示す型のセクハラ-好意を伝えるメッセージ(「本当に好きだ花子」「ありがとう。好きだ♪」)が不法行為に該当するとされた例

1.セクシュアルハラスメント-好意を伝えるのもダメなのか? 平成18年厚生労働省告示第615号「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」【令和2年6月1日適用】は、 職場におけるセクシュア…

一方的に資料を全従業員に周知させても、書かれている内容は労働契約の内容にはならないとされた例

1.会社で作成される様々な社内文書 会社では様々な内規が作成され、従業員に周知されています。それは、必ずしも就業規則の形には限られません。 それでは、このような内規類、内規的な文書は、労働契約の内容となり、労働者を法的に拘束する効力を持つの…

就業規則かそうでない文書かは、どのように区別されるのか?

1.就業規則の意義 民間企業で働いている人の多くは「就業規則」という言葉を聞いたことがあるのではないかと思います。 しかし、何を以って就業規則と言うのかは、実は、それほど良く分かっているわけではありません。例えば、水町勇一郎『労働法』〔東京…

間接選挙型の過半数代表者の選出が否定された例

1.過半数代表者 労働基準法は過半数代表者に対し、様々な役割を与えています。 例えば、1年単位の変形労働時間制を定める労働基準法32条の4第1項は、 「使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、…

1か月単位変形労働時間制-業態、規模、職員数等からして就業規則において予め始業終業時間を決め手おくことが困難との主張が排斥された例

1.1か月単位の変形労働時間制 労働基準法32条の2第1項は、 「使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書…

自身が日々出勤時刻や退勤時刻等を書き写していたノートの記載をもって実労働時間が認定された例

1.労働時間立証と「機械的正確性がなく、業務関連性も明白でない証拠」 残業代を請求するにあたり、労働時間の立証手段となる証拠には、 機械的正確性があり、成立に使用者が関与していて業務関連性も明白な証拠 成立に使用者が関与していて業務関連性は明…

ツイッターのツイートによる労働時間立証が認められた例

1.労働時間の立証 残業代(時間外勤務手当等)を請求するにあたっては、 「日ごとに、始業時刻、終業時刻を特定し、休憩時間を控除することにより、(時間外労働等の時間が-括弧内筆者)何時間分となるかを特定して主張立証する必要」 があるとされていま…

無期契約から有期契約への切り替えについて、自由な意思の法理の適用可能性が認められた事例

1.自由な意思の法理 最二小判平28.2.19労働判例1136-6山梨県民信用組合事件は、 「使用者が提示した労働条件の変更が賃金や退職金に関するものである場合には、当該変更を受け入れる旨の労働者の行為があるとしても、労働者が使用者に使用さ…

正社員として募集され、就労を開始した後、有期の雇用契約書に署名、押印したとしても、有期労働契約であるとはいえないとされた例

1.求人票(募集要項)の記載、雇用契約書の記載 求人票(募集要項)の記載と、使用者から示された雇用契約書の労働条件が異なっていることがあります。 こうした場合、雇用契約書にサインしてしまった労働者は、求人票に書かれていた労働条件を主張するこ…

雇止めの通知は解雇の意思表示を兼ねられるか?

1.有期労働契約なのか、無期労働契約なのかをめぐる紛争 契約を更新することなく期間満了により有期労働契約を打ち切ることを「雇止め」といいます。この「雇止め」を通知することに、解雇の意思表示が含まれているといえるのかという論点があります。 読…

明示に合意したと認めるに足りる的確な証拠がないとして、3年に渡り異論を唱えていなくても合意退職の成立は認められないとされた例

1.合意退職の争い方 労働者と使用者とで退職を合意することを合意退職といいます。 合意退職は契約であって解雇ではありません。したがって、解雇権の行使を厳しく制限する労働契約法16条の適用を受けることはありせん。契約として民法上の意思表示理論…

不動産鑑定士の労働者性が問題になった事案(労働者性肯定)

1.契約書が作られていなくて雇用されているのかが分からないケース 業務委託契約を交わして働いている業務受託者(個人事業主)と労働契約を交わして働いている労働者とでは、法的な立場が全く異なります。より具体的に言うと、労働者は業務受託者よりも、…

「これが最後の練習です」では、能力が向上しなければ解雇する旨の注意や警告とは認められないとされた例

1.能力不足、職務適格性の欠如を理由とする普通解雇 勤務成績・態度が不良で、職務を行う能力や適格性を欠いていることを理由とする普通解雇の可否は、「①使用者と当該労働者との労働契約上、その労働者に要求される職務の能力・勤務態度がどの程度のもの…

教師の過労自殺事案において、部活動顧問は亡教師の生きがいであったとの過失相殺の主張が否定された例

1.過失相殺 民法418条は 「債務の不履行又はこれによる損害の発生若しくは拡大に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。」 と規定しています。 民法722条2項は、 「被害者に過失があった…

仕事(部活動指導)は自殺した教師の生きがいだったとの主張が排斥された例

1.部活動指導・部活動顧問業務 昨日お話させて頂いたとおり、公立学校教師の部活動指導・部活動顧問業務については、 法律上は業務(残業)として位置付けられていないにもかかわらず、 実体としては個々の教師に業務として重くのしかかっている、 という…