弁護士 師子角允彬のブログ

師子角総合法律事務所(東京:水道橋駅徒歩5分・御茶ノ水駅徒歩7分)の所長弁護士のブログです

2024-04-01から1ヶ月間の記事一覧

人材紹介会社が提示した労働条件が変更されたかどうかは慎重に検討するべきであるとされた例

1.人材紹介会社(職業紹介事業者)が流す不正確な求人情報 人材紹介会社(職業紹介事業者)が出している求人情報を見て応募したところ、それとは異なる労働条件を使用者から提案されたとして、トラブルになる例は少なくありません。 ただ、法も、こうした…

求人票上の「3~5時間分の残業手当を固定残業代として支給する」との記載では判別可能性がないとされた例

1.固定残業代の有効要件 最一小判令2.3.30労働判例1220-5 国際自動車(第二次上告審)事件は、固定残業代の有効要件について、 「通常の労働時間の賃金に当たる部分と同条の定める割増賃金に当たる部分とを判別することができることが必要であ…

労働者が10分単位又は15分単位で入力していた機械的正確性のない出勤簿に基づいて労働時間が認定された例

1.業務関連性は明白であるが、機械的正確性のない証拠 残業代を請求するにあたり、労働時間の立証手段となる証拠には、 機械的正確性があり、成立に使用者が関与していて業務関連性も明白な証拠 成立に使用者が関与していて業務関連性は明白であるが、機械…

在籍出向の規定を欠く会社との間では、出向することが記載されている雇用契約書の取り交わしに応じなくても問題ないとされた例

1.出向 最二小判平15.4.18労働判例847-14 新日本製鐵(日鐵運輸第2)事件は、労働者の同意を前提としない出向命令の可否について、 「(1)本件各出向命令は、被上告人が八幡製鐵所の構内輸送業務のうち鉄道輸送部門の一定の業務を協力会社…

出向先や労働条件が不明確であるとして出向命令が無効とされた事例

1.出向を命ずることができる場合 労働契約法14条は、 「使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該…

「退職するとなったときにはそれらの費用(就労準備費用)を負担してもらいますが大丈夫ですか」⇒「大丈夫です」では、費用の返還義務は生じないとされた例

1.就労準備費用の返還請求 少子高齢化ほか様々な要因により、本邦では至るところで人手不足・人材不足が進行しています。人手不足・人材不足が深刻化すると、労働者の調達コストが上昇します。労働者の調達コストが上がると、採用にあたり、使用者から、 …

退職合意書の清算条項が労働者の有利に働いた事例

1.清算条項 退職の時、清算条項付きの合意書の取り交しを求められることがあります。 清算条項とは、 「甲と乙は、本合意書に定めるほか、甲と乙との間に、何ら債権債務のないことを、相互に確認する」 といった趣旨の条項です。 会社側が労働者に清算条項…

労働者に対して行われる研修費用の本来的な負担者は誰なのか?

1.研修費用の取扱い 労働者に対して行われる研修には、二面性があります。 一つは、使用者が自分の業務を遂行するために行っているという面です。 もう一つは、労働者自身の職業能力の向上という面です。 前者の面を強調すれば、労働者に対して行われる研…

勤務時間が定められていなかったとしても元からであったとして、労働契約を合意解約して業務委託契約を締結したとの主張が排斥された例

1.労働者と業務受託者 労働者は労働基準法をはじめとする労働関係法令の保護を受けます。 これに対して、業務委託契約を交わして業務を遂行する個人事業主(フリーランス)は、労働関係法令の保護を受けることができません。昨年、「特定受託事業者に係る…

会社が倒産状態にないのに従業員に対する賃金不払いに代表取締役の個人責任(損害賠償責任)が認められた例

1.賃金の不払と取締役の個人責任 会社法429条1項は、 「役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。」 と規定しています。 賃金を払ってもらえない労働者…

時間外勤務手当等の弁済として認められなかった「残業手当」(売上の10%相当額)は「出来高払制の賃金」になるのか?

1.残業代のダブルパンチ 固定残業代の有効性が否定されると、固定残業代の支払に残業代の弁済としての効力が認められなくなるほか、使用者は固定残業代部分まで基礎単価に組み込んで計算した割増賃金を改めて支払うことになります。このことが使用者側にも…

時間外勤務手当等の法定外計算(売上の10%に相当する「残業手当」の支払)に、時間外勤務手当等の弁済としての有効性が認められなかった例

1.時間外勤務手当等の法定外計算 割増賃金の計算方法は労働基準法37条やこれを受けた労働基準法施行規則19条等に規定されています。 しかし、 ①労基法37条や労規則19条等に規定された計算・支払方法によらない計算・支払方法(法定外計算) ②基本…