弁護士 師子角允彬のブログ

師子角総合法律事務所(東京:水道橋駅徒歩5分・御茶ノ水駅徒歩7分)の所長弁護士のブログです

公務員の労働事件

地方自治体は職員が記者など一般市民に対してセクシュアルハラスメントに及ぶことを防止すべき注意義務を負うのか?

1.一般市民に対するセクシュアルハラスメントの防止義務 平成18年厚生労働省告示第615号「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針【令和2年6月1日適用】は、 「事業主は、職場におけるセク…

公務員-転任と同じ内容の職務命令の発令は許されるのか?

1.職務命令と転任 地方公務員法32条は、職務命令について、 「職員は、その職務を遂行するに当つて、法令、条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない」 と規定していま…

精神疾患で休職していた労働者に対し、復職後に何の配慮もしないことは許されるのか?

1.復職要件 休職している方が復職するためには、傷病が「治癒」したといえる必要がありま。 ここでいう「治癒」とは「従前の職務を通常の程度に行える健康状態に回復したこと」をいいます(佐々木宗啓ほか編著『類型別 労働関係訴訟の実務Ⅱ』〔青林書院、…

公務員の飲酒運転-一審で違法とされた退職手当全部不支給処分が二審で適法とされた例

1.公務員の飲酒運転 公務員の飲酒運転に対し、行政はかなり厳しい姿勢をとっています。例えば、国家公務員の場合、酒酔い運転をしたら、人を死傷させなくても免職か停職になるのが通例です。 https://www.jinji.go.jp/kisoku/tsuuchi/12_choukai/1202000_H…

標準例に掲げられていない非違行為(ハラスメント加害者による関係者に対する圧力)の処分量定Ⅲ

1.一審・二審で判断が分かれた氷見市・氷見市消防長事件 以前、「標準例に掲げられていない非違行為(ハラスメント加害者による関係者に対する圧力)の処分量定」という記事を書きました。 標準例に掲げられていない非違行為(ハラスメント加害者による関…

懲戒免職処分を受けた公務員の退職手当-一般労働者との均衡を考慮すべきとされた例

1.懲戒免職処分を受けた公務員の退職手当-民間との違い 民間の一般労働者の場合、懲戒解雇された労働者であっても、退職金が全額不支給となる場面は限定されています。退職金の全額不支給が適法と認められるのは「当該非違行為がその労働者の過去の功労を…

管理運営事項と行政措置要求の対象としての適格性Ⅲ

1.行政措置要求 公務員特有の制度として「行政措置要求」という仕組みがあります。 これは、 「職員は、俸給、給料その他あらゆる勤務条件に関し、人事院に対して、人事院若しくは内閣総理大臣又はその職員の所轄庁の長により、適当な行政上の措置が行われ…

ハラスメントの調査を求めるメール類は文言や内容が攻撃的になっても、かなりの程度までは許容される

1.ハラスメントの相談と不利益取扱い 男女雇用機会均等法11条は、1項で、 「事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業…

助教の取得した科研費(科学研究費補助金)を講座全体で管理・費消したことに違法性が認められた例

1.科研費(科学研究費補助金) 「人文学、社会科学から自然科学まで全ての分野にわたり、基礎から応用までのあらゆる『学術研究』(研究者の自由な発想に基づく研究)を格段に発展させることを目的とする『競争的研究費』であり、ピアレビューによる審査を…

無分別に連帯責任を問うことが失態を犯した者に対する安全配義務違反とされた例

1.指導・教育の場面での連帯責任 集団に対して指導・教育が行われる場面で、一人の失態の責任を全員に負わせることがあります。時代によるかも知れませんが、子どもの頃、学校等でこうした指導を受けた方も、少なくないのではないかと思います。 このよう…

訴訟と行政措置要求の手続的相違点-行政措置要求では受理段階で実体審査・実質的審査が可能

1.行政措置要求 公務員特有の制度として「行政措置要求」という仕組みがあります。 これは、 「職員は、俸給、給料その他あらゆる勤務条件に関し、人事院に対して、人事院若しくは内閣総理大臣又はその職員の所轄庁の長により、適当な行政上の措置が行われ…

管理運営事項と行政措置要求の対象としての適格性Ⅱ

1.行政措置要求 公務員特有の制度として「行政措置要求」という仕組みがあります。 これは、 「職員は、俸給、給料その他あらゆる勤務条件に関し、人事院に対して、人事院若しくは内閣総理大臣又はその職員の所轄庁の長により、適当な行政上の措置が行われ…

雇用(任用)継続の可否を判断するにあたり、反省等を過度に重視することを戒めた例

1.雇用継続の可否の判断と改善可能性(反省) 問題行動を理由とする普通解雇や懲戒解雇の可否を判断するにあたり、しばしば「改善可能性」という概念が登場します。「事前の注意・指導による改善の可能性が残されている以上、解雇をするのは行き過ぎではな…

公務員の定年後再任用の可否-裁判例の変化の兆候?

1.公務員の定年後再任用 民間企業は、高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、 ① 65歳までの定年の引き上げ、 ② 継続雇用制度の導入、 ③ 定年制の廃止、 のいずれかの措置を講じることになっています(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律…

給与減を伴う職務命令の適法性-不利益性は考慮要素にならないのか?

1.給与減を伴う職務命令 減給の懲戒処分をするにあたっては、事前に弁明の機会を与えたうえ(福岡高判平18.11.9労働判例956-69 熊本県教委(教員・懲戒免職処分)事件等参照)、処分説明書の交付を要するなど(国家公務員法89条)、かなり…

公務員の飲酒運転-懲戒免職処分も退職手当全部不支給処分も適法とされた例

1.公務員の飲酒運転 公務員の飲酒運転に対し、行政はかなり厳しい姿勢をとっています。例えば、国家公務員の場合、酒酔い運転をしたら、人を死傷させなくても免職か停職になるのが通例です。 懲戒処分の指針について 懲戒免職処分を受けた場合、基本的に退…

セクハラの立証-一部でも決定的な録音があれば、録音のない部分も立証できる可能性がある

1.セクシュアルハラスメントを立証するための録音の重要性 業務上の指導との境界線が曖昧なパワーハラスメント(パワハラ)とは異なり、セクシュアルハラスメント(セクハラ)が業務上必要であることは殆ど考えられません。セクハラをする側も、悪いことを…

ハラスメント(セクハラ)に関する第三者委員会の調査報告書の信用性が否定された例

1.使用者側が委託した「第三者」による調査報告書 ハラスメントを受けた労働者が被害を申告した場合、使用者は事実関係を迅速かつ正確に確認し、適正な対処を行う必要があります(令和2年厚生労働省告示第5号「事業主が職場における優越的な関係を背景と…

公務員-手続上の違法(理由付記の不備等)だけで懲戒処分の取消請求が認められた例

1.手続上の違法の位置づけ 公務員の懲戒処分の効力を争う場合、手続違反を主張するだけで勝訴することは容易ではありません。敗訴判決を受けても、行政側としては正当な手続をやり直して同じ処分を行えば良いだけであるため、懲戒処分の瑕疵が手続違背に留…

直接の行為者ではない複数の者の懲戒-総合調整事務に基づく責任と監督責任

1.巻き添え型の懲戒処分 官公庁や役所で不祥事が発生した場合、監督責任等の名目で、直接の行為者ではない方まで懲戒処分を受けることがあります。 上長や同僚として気を配っていれば不祥事を回避できたのではないかと言われると、概念的には理解できるの…

非公務⇒公務型の継続的不法行為における公務員の個人責任追及の可否

1.公務員の個人責任 民間の場合、従業員が事業に関連して不法行為をした場合、不法行為をした従業員個人とその使用者とが連帯して損害賠償責任を負います。この場合、被害者は、従業員個人だけを訴えることもできれば、会社だけを訴えることもできますし、…

部活動の外部指導者による暴行、「サル」呼ばわりするイジリの違法性

1.外部指導者・部活動指導員の問題 学校教育法施行規則に基づいて、 「スポーツ、文化、科学等に関する教育活動(・・・教育課程として行われるものを除く)に係る技術的な指導に従事する」 方を部活動指導員といいます(学校教育法施行規則78条の2、1…

違法に支払われた退職手当の返還を求める自治体の権利の消滅時効の起算点

1.代表者等が不法行為に加担している場合 民法724条は、 「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。」 不法行為による損害賠償の請求権が、時効によって消滅すると規定しています。 法人を被害者とする不法行為…

行政措置要求の却下判定に対する取消訴訟の勝訴要件

1.行政措置要求 公務員特有の制度として「行政措置要求」という仕組みがあります。 これは、 「職員は、俸給、給料その他あらゆる勤務条件に関し、人事院に対して、人事院若しくは内閣総理大臣又はその職員の所轄庁の長により、適当な行政上の措置が行われ…

管理運営事項と行政措置要求の対象としての適格性

1.行政措置要求 公務員特有の制度として「行政措置要求」という仕組みがあります。 これは、 「職員は、俸給、給料その他あらゆる勤務条件に関し、人事院に対して、人事院若しくは内閣総理大臣又はその職員の所轄庁の長により、適当な行政上の措置が行われ…

敬語のパワハラ「ここは学校じゃないので、同じことを言わせないでください」「本俸が高いのだから、本俸に見合う仕事をしなさい」

1.パワーハラスメント 事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)は、 「事業主が職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業…

精神障害(適応障害)の発症と因果関係が認められるレベルの暴行の参考例

1.精神障害を発症させられたことを理由とする損害賠償請求 使用者側の不適切な行為により精神障害を発症した労働者が、被った損害の賠償を請求しようとする時、しばしば不適切な行為と精神障害の発症との間に相当因果関係が認められるのかどうかが問題にな…

小学校内で教諭から生徒に行われるセクハラの例

1.小学校教諭によるセクハラ セクシュアルハラスメント(セクハラ)に関連する事案は、実数と比べて訴訟事件化しにくい傾向にあります。よく言われている理由としては、 羞恥心から事件を公にしたがらない被害者が少なくないこと、 人目につきにくい場所で…

対応頻度が低くても精神的負荷が軽減されない業務

1.地方公務員災害補償法 私企業の労働者が業務災害に被災した場合、労働者災害補償保険法に基づいて各種補償がなされます。これに対し、地方公務員の方が公務災害に被災した場合、地方公務員災害補償法という法律に基づいて各種補償が行われます。 地方公…

パワハラ行為の防止のための教育指導や研修等が行われなかったことは処分の軽減理由になるのか?

1.公務員の分限処分 公務の能率の維持や適正な運営の確保という目的から、職員の意に反する不利益な身分上の変動をもたらす処分を、分限処分といいます。分限処分には、降任、免職、休職、降級の4種類があります(国家公務員法78条、79条、人事院規則…