弁護士 師子角允彬のブログ

師子角総合法律事務所(東京:水道橋駅徒歩5分・御茶ノ水駅徒歩7分)の所長弁護士のブログです

公務員の労働事件

パワーハラスメントに係る事実確認のために提供した資料に対するコントロール

1.パワーハラスメントを防止するための雇用管理上講ずべき措置 労働施策総合推進法30条の2第1項は、 「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環…

任期付き公務員の再任用拒否に期待権侵害が認められた例

1.公務員と雇止め 労働契約法19条は、 「当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結して…

就活セクハラ・入学セクハラへの対抗手段-同意していたという加害者の弁解を排斥するためには

1.就活セクハラ・入学セクハラ 厚生労働省告示第615号 平成18年10月11日 事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(最終改正:令和2年1月15日 厚生労働省告示第6号)は、 「職場におけ…

公務員の懲戒処分-2万円に満たない公務外窃盗で880万円以上の退職手当が全部不支給とされた例

1.退職手当の支給制限処分 国家公務員退職手当法12条1項は、 「退職をした者が次の各号のいずれかに該当するときは、当該退職に係る退職手当管理機関は、当該退職をした者(当該退職をした者が死亡したときは、当該退職に係る一般の退職手当等の額の支…

公務員の懲戒処分-窃盗:被害額が少なくても免職になりえる

1.懲戒処分の量定基準 平成12年3月31日職職-68(懲戒処分の指針について)は、公務外での窃盗について、 「他人の財物を窃取した職員は、免職又は停職とする。」 と規定されています。 こうした規定ぶりをみると、比較的被害額の少ない軽微な窃盗…

公務員の飲酒運転-懲戒免職処分を争うことの難しさが分かる例

1.公務員の懲戒処分 国家公務員の懲戒処分について、人事院は、 平成12年3月31日職職-68「懲戒処分の指針について」 という文書を発出しています。 懲戒処分の指針について これは、非違行為の類型毎に、目安となる懲戒処分を示したものです。 「…

公務員の飲酒運転-懲戒免職処分は適法とされたものの、退職手当全部不支給処分は違法とされた例

1.懲戒免職処分と退職手当全部不支給処分との関連性 公務員の場合、懲戒免職処分と退職金不支給処分とが連動する仕組みがとられています。 国家公務員の場合、退職金の支給/不支給の判断は、国家公務員退職手当法という法律に基づいて行われます。 国家公…

公務員の懲戒処分-情報漏洩で懲戒免職された公務員について、退職手当も全額不支給とされた例

1.退職手当支給制限処分 懲戒免職を受けて退職した国家公務員に対しては、退職手当の全部又は一部を支給しない処分をするこことが認められています(国家公務員退職手当法12条1項) この条文の運用は、非違の発生を抑止するという制度目的に留意し、全…

公務員の懲戒処分-弁明手続は重要な情状事実の発覚以前のもので足りるか?

1.公務員の懲戒処分 国家公務員法にしても、地方公務員法にしても、懲戒処分を行うにあたっての手続を法定しているわけではありません。処分に際して処分事由を記載した説明書の交付が必要とされているだけです(国家公務員法89条1項、49条1項参照)…

情報漏洩で懲戒免職になった例

1.情報漏洩の処分量定 公務員の懲戒処分の効力を争う事件で、情報漏洩についての処分量定が問題になることは少なくありません。しかし、対象となる情報の性質や量、実際に外部への漏洩が生じたのかなどの事実関係が多岐に渡っているため、何を・どこまでや…

指導改善研修期間の約半分を残して改善の見込みがないと意見を述べることが許されるのか?

1.期間途中での見切り 公立学校の教員は、地方公務員ではあるものの、「教育公務員特例法」という特殊なルールが適用されます。 その中の一つに、「指導改善研修」という仕組みがあります。 これは、児童等に対する指導が不適切であると認定された教諭等に…

時間外勤務時間(残業時間)を目標時間内に修正する業務で生じる心理的負荷

1.公務員のサービス残業問題 所属部署に割り振られる予算上の制約などの理由により、公務員にはサービス残業が横行しています。これは古くから指摘されている問題ですが、残念ながら改善には至っていません。 部署単位で残業代を調整するとなると、ある程…

性同一性障害者が自認する性別に対応するトイレを使用する利益(続報)

1.性自認に基づいた性別で社会生活を送る権利が問題となった裁判例 以前、 性同一性障害者が自認する性別に対応するトイレを使用する利益と行政措置要求の可能性 - 弁護士 師子角允彬のブログ という記事の中で、東京地判令元.12.12労働判例ジャーナ…

特別職の地方公務員への雇止め法理の類推適用の可否(否定例)

1.非正規公務員の雇止め 有期労働契約が反復更新されて期間の定めのない労働契約と同視できるようになっていたり、契約が更新されることについて合理的な期待が認められたりする場合、使用者が労働者からの契約更新の申込みを拒絶するには、客観的合理的理…

高体連(高等学校体育連盟)主催の安全講習会への引率・参加・他校生への訓練が「公務」とされた例

1.部活動の位置づけ 現行法上、公立学校教員の部活動顧問に関連する業務が「公務」といえるのかは、あまり明確ではありません。このことは、 労働時間をどのようにカウントするのか(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法3条2項…

懲戒にあたり、弁明の機会・手続保障の利益を放棄させることはできるのか?

1.懲戒の手続違反 懲戒解雇の効力を議論するにあたり、手続違反が問題にされることがあります。 この論点に関しては「就業規則や労働協約上、懲戒解雇に先立ち、賞罰委員会への付議、組合との協議ないし労働者の弁明の機会付与が要求されているときは、こ…

重大な詐欺か軽微な詐欺か-懲戒免職処分の効力が否定された例

1.公務員への懲戒処分が違法かどうかはどのように判断されるのか 公務員に対し、懲戒事由がある場合に、 懲戒処分を行うかどうか、 懲戒処分を行うとして、どのような処分を選択するのか、 は懲戒権者の裁量に委ねられていると理解されています(最三小判…

ハラスメントの被害者は、加害者に懲戒処分をすることを使用者に請求する権利を有するか?

1.ハラスメント被害者が求めること ハラスメント被害を受けた方からの相談に応じていると、加害者に対して然るべき懲戒処分を行うように勤務先に請求して行くことができないかと質問を受けることがあります。 確かに、ハラスメントが確認できた場合、事業…

迎合に関する経験則-ハラスメントの被害者は、加害者との接触を容認する発言を取り消せるか?

1.被害者と行為者を引き離すための配置転換 ハラスメント事案が発生した場合に、使用者が検討すべき措置の一つに、被害者と行為者の引き離しがあります。 例えば、 令和2年1月15日 厚生労働省告示第5号「事業主が職場における優越的な関係を背景とし…

ハラスメントの加害者を他部署に配転させる義務

1.加害者を他部署に配転して欲しい ハラスメントの被害者の方から、加害者を他部署に配転するよう勤務先に要求することができないかと相談を受けることがあります。 被害を受けた方にとって、加害者と顔を合わせることが苦痛であるのは、察するに難くあり…

疾患による問題行動と分限事由としての職務適格性

1.分限事由-職務適格性の欠如 公務員法は、公務の能率を維持するという観点から、本人に問題がなかったとしても、公務員としての地位を失わせることを認めています。一般に、分限免職と呼ばれる処分です。 分限免職事由には4つの類型があります。 具体的…

パーソナリティ障害を理由とする分限免職の可否

1.心身の故障を理由とする分限免職処分 「公務能率を維持するための官職との関係において生ずる公務員の身分上の変動で職員に不利益を及ぼすもの」を分限といいます(森園幸男ほか編著『逐条国家公務員法』〔学陽書房、全訂版、平27〕645頁参照)。 …

同一の上司に対する日時を異にする暴言は、複数の「異なる」非違行為か?

1.上司への暴言を理由とする懲戒処分 職場で特定の上司との折り合いが悪く、暴言を吐いたとして懲戒処分を受ける方がいます。こうしたケースの多くでは、異なる日時の複数回の暴言が問題にされ、頻回の暴言に及んだことが処分の加重事由として考慮されてい…

抽象的な懲戒事由に反論は必要か?

1.使用者側の抽象的な主張 懲戒処分や解雇の効力を争う時、使用者側から抽象的な懲戒事由・解雇事由を主張されることがあります。例えば、 暴言を繰り返した、 勤務態度が悪い、 コミュニケーション能力が不足している、 といったようにです。 労働者の方…

公務員の懲戒処分-弁明の機会の日の通知から弁明手続の開催までには、どれくらいの日数が必要か?

1.防御活動に必要な期間 行政手続法15条1項は、次のとおり規定しています。 第十五条 行政庁は、聴聞を行うに当たっては、聴聞を行うべき期日までに相当な期間をおいて、不利益処分の名あて人となるべき者に対し、次に掲げる事項を書面により通知しなけ…

「国家公務員退職手当法の運用方針」に盲従することが否定された例

1.国家公務員退職手当法の運用方針 国家公務員の退職手当は、「国家公務員退職手当法」という法律に基づいて支給されます。 懲戒免職処分を受けた国家公務員に退職手当が支給されないというのも、この法律に基づく取扱いです。具体的に言うと、国家公務員…

公務員-懲戒免職処分を受けながら退職手当の全部不支給処分が取り消された例

1.懲戒免職処分と退職手当の全部不支給処分との関係 国家公務員の退職手当は、「国家公務員退職手当法」という法律に基づいて支給されます。 懲戒免職処分を受けた国家公務員に退職手当が支給されないというのも、この法律に基づく取扱いです。具体的に言…

公務員-残業の付替処理で懲戒免職された例

1.諸給与の違法支払・不適正受給 国家公務員には、非違行為の類型に応じた懲戒処分の標準例が定められています(懲戒処分の指針について(平成12年3月31日職職―68)参照)。 懲戒処分の指針について 標準例は「諸給与の違法支払・不適正受給」とい…

一部免職の不利益処分への該当性

1.水平異動 公務員の法律問題を扱っていると、水平異動という言葉を目にすることがあります。 この言葉は、異動や配転の不服申立の利益を否定する脈絡で使われます。 公務員の人事上の措置は、不服申立の対象が限定されています。 例えば、地方公務員法は…

2名以上の医師の診断に基づかない分限休職処分

1.分限休職と複数名の医師による診断 地方公務員法28条3項は、 「職員の意に反する降任、免職、休職及び降給の手続及び効果は、法律に特別の定めがある場合を除くほか、条例で定めなければならない。」 と規定しています。 この規定を受け、各地方公共…