弁護士 師子角允彬のブログ

師子角総合法律事務所(東京:水道橋駅徒歩5分・御茶ノ水駅徒歩7分)の所長弁護士のブログです

公務員の労働事件

地方自治体は指定管理者に労働法令を遵守させる義務を負うか?

1.指定管理者制度 地方自治法244条の2第3項は、 「普通地方公共団体は、公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるときは、条例の定めるところにより、法人その他の団体であつて当該普通地方公共団体が指定するもの(以下・・・…

生徒のいじめ自殺に関連し、適切な対応を怠ったこと等を理由とする教師への懲戒処分(停職1か月)が取り消された例

1.学校教師の労働問題 いじめにより児童生徒が自殺する事件は、マスコミによって大々的に報道されます。この報道は世論の怒りを喚起し、しばしば苛烈な犯人捜しが行われます。 ここで行われる犯人捜しには、いじめの加害者の特定だけではなく、いじめを認…

公務員の死亡逸失利益-67歳まで同一の基礎収入(同等・上位にあった行政職員の給与平均額)が用いられた例

1.逸失利益を計算するうえでの労働能力喪失期間の終期 事故や事件で死亡したり、後遺障害が残ったりした場合、被害者は、加害者に対し、減収分に対応する逸失利益の賠償を請求することができます。 この場合、就労による逸失利益の終期をどこで画するのか…

労災民訴(公務災害民訴)で死亡逸失利益の基礎収入が死亡者と同等又は上位にあった行政職員の給与平均額とされた例

1.労災民訴 労働災害(労災)や公務災害の被災者が、労働者災害補償保険法や国家公務員災害補償法、地方公務員災害補償法等で補償されなかった損害について、使用者に損害賠償を請求することを、一般に「労災民訴」といいます。 労働者災害補償保険法等に…

教師の過労自殺事案において、部活動顧問は亡教師の生きがいであったとの過失相殺の主張が否定された例

1.過失相殺 民法418条は 「債務の不履行又はこれによる損害の発生若しくは拡大に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。」 と規定しています。 民法722条2項は、 「被害者に過失があった…

仕事(部活動指導)は自殺した教師の生きがいだったとの主張が排斥された例

1.部活動指導・部活動顧問業務 昨日お話させて頂いたとおり、公立学校教師の部活動指導・部活動顧問業務については、 法律上は業務(残業)として位置付けられていないにもかかわらず、 実体としては個々の教師に業務として重くのしかかっている、 という…

部活動時間の業務性-部活動の目標は教師が生徒と話し合って決めていたものであり、学校側が強いたわけではないとの主張が排斥された例

1.部活動顧問業務の位置付け 公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法6条1項は、 「教育職員・・・を正規の勤務時間・・・を超えて勤務させる場合は、政令で定める基準に従い条例で定める場合に限るものとする。」 と規定しています…

不正行為の調査を受ける時、どのように対応すべきか(公務員の場合を題材に)

1.不正行為の調査への対応 以前、 会社から不正行為の調査を受ける時、どのように対応すべきか - 弁護士 師子角允彬のブログ という記事を書きました。 この記事は、実際に不正行為をしている場合に、事実関係を調査、解明しようとする会社に対し、どのよ…

生徒に対するわいせつ行為を理由とする退職手当支給制限処分(全額不支給)-報道されななったこと、被害届の不提出は有利な事情にならない

1.公務員の懲戒免職処分と退職手当支給制限処分 国家公務員退職手当法12条1項は、 「退職をした者が次の各号のいずれかに該当するときは、当該退職に係る退職手当管理機関は、当該退職をした者(当該退職をした者が死亡したときは、当該退職に係る一般…

審査委員会の答申に基づく違法な懲戒処分-誰のどのような行為が「過失」になるのか?

1.違法な懲戒処分に対する救済 違法な懲戒処分への対抗手段としては、 懲戒処分の効力を争うことのほか、 慰謝料などの損害の賠償を請求すること、 が考えられます。 このうち慰謝料などの損害賠償請求は、懲戒処分の効力だけを争う場合よりも、ハードルが…

医師の資格・キャリアアップへの期待権-違法な配転によりキャリア形成が妨げられたとして400万円の慰謝料が認められた例

1.違法な配転命令への対抗手段 違法な配転命令への対抗手段としては、 配転先で勤務する労働契約上の義務を負わないことの確認請求、 損害賠償請求、 の二つがあります。 このうち損害賠償請求について、近時公刊された判例集に注目すべき裁判例が掲載され…

同性パートナーは「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」とはいえないとされた例

1.同性パートナーシップ制度 現在、法律婚は異性婚のみとされていますが、地方自治体レベルでは「同性パートナーシップ制度」の普及がみられます。 「同性パートナーシップ制度」とは「各自治体が同性同士のカップルを婚姻に相当する関係と認め証明書を発…

専修学校卒業者を高卒として取り扱って初任給を決定することの適法性

1.公務員の初任給 国家公務員の初任給は、 「人事院規則九―八(初任給、昇格、昇給等の基準)」 というルールに基づいて決められます。 ここでは「初任給基準表」が定められ、13条1項は、 「初任給基準表は、その者に適用される俸給表の別に応じ、かつ…

反省は付随的なものであるとして、過度に重視することが戒められた例

1.反省はどこまで重視されることが許されるのか? 懲戒処分の効力を争う時、使用者側から重い処分量定を科した理由として「反省していないからである」と主張されることがあります。 反省していないから、またやるかも知れない、 またやるかも知れない以上…

公務員の定年後再任用-減給になった方でも「合格」なのに戒告を受けた方が「否」とされるのは不合理とされた例

1.公務員の定年後再任用 民間企業は、高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、 ① 65歳までの定年の引き上げ、 ② 継続雇用制度の導入、 ③ 定年制の廃止、 のいずれかの措置を講じることになっています(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律…

生理休暇中に墓参りに行ったり商業施設に行ったりしたら、生理休暇を不正取得したことになるのか?

1.生理休暇 労働基準法68条は、 「使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない」 と規定しています。これを生理休暇といいます。 「生理日の就業が著しく困難」とは、「生理日において下腹…

水平異動か降任か-園長代理を歴任していた人を子育て支援センター主幹を噛ませて幼稚園主幹に補する処分は争えるか?

1.水平異動と「不利益な処分」 民間の労働者は、使用者から配転命令を受けた場合、その効力を争って裁判所の判断を仰ぐことができます。配転は使用者に広範な裁量が与えられているため、職種限定合意が認められるようなケースを除けば、そう簡単に無効には…

自治会費等の預り金を横領した公務員に対する退職手当支給制限処分(全部不支給)が取消された例

1.公務員の懲戒免職処分と退職手当支給制限処分 昨日、公務員は懲戒免職処分を受けると、基本的に退職手当の全額の支給を受けられなくなるという話をしました。国家公務員について、 昭和60年4月30日 総人第 261号 国家公務員退職手当法の運用方針…

精神疾患の影響とそれまでの公務への貢献が評価されて退職手当支給制限処分(全部不支給)が取り消された例

1.公務員の懲戒免職処分と退職手当支給制限処分 国家公務員退職手当法12条1項は、 「退職をした者が次の各号のいずれかに該当するときは、当該退職に係る退職手当管理機関は、当該退職をした者(当該退職をした者が死亡したときは、当該退職に係る一般…

セクハラ発言は公務ではない-セクハラをした公務員個人の責任を追及することが認められた例

1.ハラスメントを行った公務員個人の責任 民間の場合、従業員が事業に関連して不法行為をした場合、不法行為をした従業員個人とその使用者とが連帯して損害賠償責任を負います。したがって、職場でハラスメントを受けた被害者は、加害者となった上司・同僚…

歓迎会二次会のカラオケで行われた男性の脱ぎ芸が、女性参加者に対するセクハラ(不法行為)を構成するとされた例

1.セクシュアルハラスメント 「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること」を「職場におけるセクシュアルハラスメ…

公務員-違法な懲戒処分に引き続いて行われた配転命令の国家賠償法上の違法性

1.懲戒処分に引き続いて行われる配転命令 公務員に限ったことではありませんが、懲戒処分に引き続いて配転を命じられることがあります。国側・地方公共団体側・使用者側からすれば引き続き同じ業務を担当することが好ましくないということなのだと思われま…

公務員の懲戒処分-違法な懲戒処分の取消訴訟に要した弁護士費用実額の損害賠償請求が認められた例

1.弁護士費用を相手方に請求できるか? 弁護士費用は自弁するのが原則です。裁判に勝っても、相手方に弁護士費用を転嫁することはできません。その代わり、裁判に負けても、相手方から弁護士費用を転嫁される心配はありません。 しかし、一定の類型の損害…

公立大学の理事はどのような場合に解任されるのか?

1.公立大学法人 公立大学法人という仕組みがあります。 地方独立行政法人法に基づいて設立されている一般地方独立行政法人の一種で、 「一般地方独立行政法人で第二十一条第二号に掲げる業務を行うもの」 と定義されています(地方独立行政法人法68条1…

産後休業明けに復職するにあたり、出勤日数減を提案された場合の対処法

1.求めていない業務負荷の軽減を押し付けられるマタニティハラスメント 男女雇用機会均等法9条3項は、 「事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第六十五条第一項の規定による休業を…

直ちに医療機関を受診せず、業務を優先したことが過失相殺事由にならないとされた例

1.過失相殺 民法418条は、 「債務の不履行又はこれによる損害の発生若しくは拡大に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。」 と規定しています。 また、民法722条2項は、 「被害者に過失…

安全配慮義務と公立学校の部活動顧問

1.安全配慮義務 労働契約法5条は、 「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」 と規定しています。これを安全配慮義務といいます。 労働契約法は公務員には適用…

部活動顧問に従事していた時間について業務の質的過重性が認められた例

1.脳・心臓疾患の業務起因性・公務起因性と公立学校教員の部活動顧問 脳血管疾患や心疾患等が労災として認められるのか否かは、令和3年9月14日 基発0914第1号「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準に…

部活動顧問に従事していた時間を含め、業務の量的過重性を評価するのが相当とされた例

1.脳・心臓疾患の業務起因性・公務起因性と公立学校教員の部活動顧問 脳血管疾患や心疾患等が労災として認められるのか否かは、令和3年9月14日 基発0914第1号「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準に…

会計年度任用職員の雇止めに対する法律構成-義務的経費の支出のための手続を行わなかったことを理由とする国家賠償請求

1.有期任用公務員の雇止め 有期任用公務員に対する雇止め(再任用拒否)が問題になった事案で、地位確認請求が認められることは普通ありません。公務員は労働契約法の適用除外となっており(労働契約法22条1項)、同法が規定する雇止め法理は適用も類推…