弁護士 師子角允彬のブログ

師子角総合法律事務所(東京:水道橋駅徒歩5分・御茶ノ水駅徒歩7分)の所長弁護士のブログです

公務員の労働事件

安全配慮義務違反を問題にするうえでの労働時間性-在校時間を要素として労働時間をカウントした例

1.労働時間概念の相対性 行政解釈上、労災認定の可否を判断するうえでの労働時間は、労働基準法上の労働時間と同義であるとされています(令和3年3月30日 基補発 0330 第1号 労働時間の認定に係る質疑応答・参考事例集の活用について参照)。 し…

管理職が声掛けなどをするのみで抜本的な業務負担軽減策を講じなかったとして安全配慮義務違反が認められた例

1.部下の長時間労働とSOSのサイン 労働者が長時間労働で精神障害を発症するに至るまでの間には、SOSのサインが出されていることが少なくありません。深刻な労働災害は、こうしたSOSのサインに対し、管理職が真摯に向き合わないことから発生します…

公表事案では慰謝料請求が狙える?-懲戒免職処分の取消のほか、高額(100万円)の慰謝料請求が認められた例

1.解雇・懲戒免職処分の無効と慰謝料 解雇や懲戒免職処分(懲戒解雇の公務員版)が違法無効であったとしても、必ずしも慰謝料請求が認められるわけではありません。 その理由は、大きく二点あります。 一つ目は「故意・過失」という主観的要件の問題です。…

長期間かつ多数に及ぶパワーハラスメントを理由とする懲戒免職処分が取り消された例

1.パワーハラスメントによる懲戒処分 人事院総長発 平成12年3月31日職職-68「懲戒処分の指針について」(最終改正:令和2年4月1日職審-131)は、パワーハラスメントに関する懲戒処分の標準例を、次のとおり定めています。 「パワー・ハラス…

公務起因認定を受けた日、自殺未遂をした日がパワハラ・セクハラ慰謝料請求権の消滅時効起算点とされた例

1.不法行為による損害賠償請求権の起算点 不法行為による損害賠償の請求権は、 「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき」 は時効によって消滅するとされています(民法724条1項)。 「損害・・・を知った時」…

ハラスメント被害者に対する配転・配置換えが安全配慮義務(職場環境整備義務)違反とされた例

1.ハラスメント被害者は踏んだり蹴ったり(被害者側の配転) ハラスメント被害を申告すると、しばしば被害者と行為者とを引き離すための配転が行われます。この引き離しのための配転自体は違法・不当なものではありません。 令和2年厚生労働省告示第5号…

交際していたわけでもない上司から誘われて行った忘年会二次会は職務関連性あり

1.忘年会とセクシュアルハラスメント セクシュアルハラスメント(セクハラ)は忘年会の場など、社屋の外で行われることも珍しくありません。 そのため、平成18年厚生労働省告示第615号「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管…

新人指導とパワハラ

1.新人に対して行われるパワーハラスメント 職場のパワーハラスメントに関して相談を寄せられる方は、一定の社会人経験、業界経験を積んだ方が多いように思います。個人的経験の範疇で言うと、新人の方からパワーハラスメントの相談を受けることも、なくは…

行政措置要求申立書を起案する上での留意点-断定調で書くこと

1.行政措置要求 公務員特有の制度として「行政措置要求」という仕組みがあります。 これは、 「職員は、俸給、給料その他あらゆる勤務条件に関し、人事院に対して、人事院若しくは内閣総理大臣又はその職員の所轄庁の長により、適当な行政上の措置が行われ…

違法派遣を受けた国や地方公共団体に対する採用不作為の違法確認訴訟・採用義務付け訴訟の可否(消極例)

1.違法派遣を受けた国や地方公共団体の義務 労働者派遣法40条の7第1項は、 「労働者派遣の役務の提供を受ける者が国又は地方公共団体の機関である場合であつて、前条第一項各号のいずれかに該当する行為を行つた場合・・・においては、当該行為が終了…

違法派遣を受けた国や地方公共団体に派遣労働者を採用する義務はあるか?

1.労働契約申込みみなし制度 労働契約申込みみなし制度とは、派遣先等が違法派遣を受けた時点で、派遣先等が派遣労働者に対して、その派遣労働者の雇用主(派遣元事業主)との労働条件と同じ内容の労働契約を申し込んだとみなす制度をいいます(労働者派遣…

退職手当支給制限処分(全部不支給)の一部取消が認められる場合

1.退職手当支給制限処分の取消 懲戒免職処分を受けた公務員に対しては、原則として退職手当の支給がありません(国家公務員退職手当法12条1項1号、昭和60年4月30日 総人第 261号 国家公務員退職手当法の運用方針 最終改正 令和4年8月3日閣…

公務員の飲酒運転-懲戒免職処分は有効とされながらも、退職手当支給制限処分(全部不支給)が違法とされた例

1.懲戒免職処分と退職手当支給制限処分 国家公務員退職手当法12条1項は、 「退職をした者が次の各号のいずれかに該当するときは、当該退職に係る退職手当管理機関は、当該退職をした者(当該退職をした者が死亡したときは、当該退職に係る一般の退職手…

非違行為の直後に行われた嘘の言い訳はどのように評価されるのか

1.咄嗟の嘘 非違行為を犯した時、それを糊塗するため、咄嗟に嘘をついてしまう労働者は少なくありません。こうした苦し紛れの言い訳は稚拙なものが多く、大抵の場合、すぐに嘘であることが露見します。 嘘は倫理的に不適切とされていることもあり、人の目…

指導・処分歴のない公務員に対しパワハラを理由として行われた分限免職処分が有効とされた例

1.分限制度 公務の能率の維持や適正な運営の確保という目的から、職員の意に反する不利益な身分上の変動をもたらす処分を、分限処分といいます。分限処分には、降任、免職、休職、降級の4種類があります(国家公務員法78条、79条、人事院規則11-1…

ターゲットを選んでいたことがパワハラ成立の根拠とされた例

1.相手を選ぶパワハラ パワーハラスメント(パワハラ)の加害者の中には、誰に対しても一様に加害的である方もいます。 しかし、個人的な経験の範疇でいうと、そのような方は多数派ではありません。多くの加害者は、反抗してきそうにない相手・反抗できな…

一覧表形式でミスを思いつく数だけ記載させることの適法性

1.具体的な指示の伴わないミスの申告を求める行為 使用者側から、何を意図しているのかが明確にされないまま、ミスを自主的に申告するように求められることがあります。 このような命令を受けた労働者は、難しい判断を迫られます。 ミスがないと申告すれば…

研究活動に係る不正行為の公表が許される場合

1.研究不正ガイドライン 研究活動の不正行為に対応するため、平成26年8月26日、文部科学省は「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(研究不正ガイドライン)という文書を作成しました。 https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/…

自分も参加した共同研究の成果を適切な引用表示をせずに使用することは「盗用」なのか?

1.研究不正ガイドライン 研究活動の不正行為に対応するため、平成26年8月26日、文部科学省は「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(研究不正ガイドライン)という文書を作成しました。 https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/…

内部部局に提出される調査研究報告書は「発表された研究成果」か?

1.研究不正ガイドライン 研究活動の不正行為に対応するため、平成26年8月26日、文部科学省は「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(研究不正ガイドライン)という文書を作成しました。 https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/…

休職者給付は給与なのか?

1.公務員に支給される求職者給付 国家公務員が公務上の負傷・疾病で休職を命じられた場合、休職期間中の給与は全額が支給されます(一般職の職員の給与に関する法律23条1項)。 他方、公務外の負傷・疾病により休職命令を受けたときは、1年を限度とし…

公務員-義務違反(懲戒事由)の認定について懲戒権者に裁量権は認められるのか?

1.懲戒処分の判断枠組 公務員に対する懲戒処分の有効・無効の判断枠組についてのリーディングケースである最三小判昭52.12.20労働判例288-22 神戸税関事件は、 「公務員につき、国公法に定められた懲戒事由がある場合に、懲戒処分を行うかど…

性被害と過失相殺-被害回避の余地があったことは拒否し難い立場にあった方の過失とはいえない

1.過失相殺 民法723条2項は、 「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。」 と規定しています。 被害者の過失を考慮して損害賠償の額を定めることを、講学上、「過失相殺」といいます。判決の中で…

性被害者に対する二次被害防止義務

1.ハラスメントと二次被害 犯罪被害に遭うと、身体を傷つけられ、生命を奪われるなどの身体的被害のほかに、稼ぎ手が失われることにより収入が途絶え、生活ができないといった財産的被害、さらには、メディアの過剰取材や周囲の人々の心無いうわさや中傷、…

地方自治体は職員が記者など一般市民に対してセクシュアルハラスメントに及ぶことを防止すべき注意義務を負うのか?

1.一般市民に対するセクシュアルハラスメントの防止義務 平成18年厚生労働省告示第615号「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針【令和2年6月1日適用】は、 「事業主は、職場におけるセク…

公務員-転任と同じ内容の職務命令の発令は許されるのか?

1.職務命令と転任 地方公務員法32条は、職務命令について、 「職員は、その職務を遂行するに当つて、法令、条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない」 と規定していま…

精神疾患で休職していた労働者に対し、復職後に何の配慮もしないことは許されるのか?

1.復職要件 休職している方が復職するためには、傷病が「治癒」したといえる必要がありま。 ここでいう「治癒」とは「従前の職務を通常の程度に行える健康状態に回復したこと」をいいます(佐々木宗啓ほか編著『類型別 労働関係訴訟の実務Ⅱ』〔青林書院、…

公務員の飲酒運転-一審で違法とされた退職手当全部不支給処分が二審で適法とされた例

1.公務員の飲酒運転 公務員の飲酒運転に対し、行政はかなり厳しい姿勢をとっています。例えば、国家公務員の場合、酒酔い運転をしたら、人を死傷させなくても免職か停職になるのが通例です。 https://www.jinji.go.jp/kisoku/tsuuchi/12_choukai/1202000_H…

標準例に掲げられていない非違行為(ハラスメント加害者による関係者に対する圧力)の処分量定Ⅲ

1.一審・二審で判断が分かれた氷見市・氷見市消防長事件 以前、「標準例に掲げられていない非違行為(ハラスメント加害者による関係者に対する圧力)の処分量定」という記事を書きました。 標準例に掲げられていない非違行為(ハラスメント加害者による関…

懲戒免職処分を受けた公務員の退職手当-一般労働者との均衡を考慮すべきとされた例

1.懲戒免職処分を受けた公務員の退職手当-民間との違い 民間の一般労働者の場合、懲戒解雇された労働者であっても、退職金が全額不支給となる場面は限定されています。退職金の全額不支給が適法と認められるのは「当該非違行為がその労働者の過去の功労を…