弁護士 師子角允彬のブログ

師子角総合法律事務所(東京:水道橋駅徒歩5分・御茶ノ水駅徒歩7分)の所長弁護士のブログです

公務員の労働事件

公務員の飲酒運転-懲戒免職処分も退職手当全部不支給処分も適法とされた例

1.公務員の飲酒運転 公務員の飲酒運転に対し、行政はかなり厳しい姿勢をとっています。例えば、国家公務員の場合、酒酔い運転をしたら、人を死傷させなくても免職か停職になるのが通例です。 懲戒処分の指針について 懲戒免職処分を受けた場合、基本的に退…

セクハラの立証-一部でも決定的な録音があれば、録音のない部分も立証できる可能性がある

1.セクシュアルハラスメントを立証するための録音の重要性 業務上の指導との境界線が曖昧なパワーハラスメント(パワハラ)とは異なり、セクシュアルハラスメント(セクハラ)が業務上必要であることは殆ど考えられません。セクハラをする側も、悪いことを…

ハラスメント(セクハラ)に関する第三者委員会の調査報告書の信用性が否定された例

1.使用者側が委託した「第三者」による調査報告書 ハラスメントを受けた労働者が被害を申告した場合、使用者は事実関係を迅速かつ正確に確認し、適正な対処を行う必要があります(令和2年厚生労働省告示第5号「事業主が職場における優越的な関係を背景と…

公務員-手続上の違法(理由付記の不備等)だけで懲戒処分の取消請求が認められた例

1.手続上の違法の位置づけ 公務員の懲戒処分の効力を争う場合、手続違反を主張するだけで勝訴することは容易ではありません。敗訴判決を受けても、行政側としては正当な手続をやり直して同じ処分を行えば良いだけであるため、懲戒処分の瑕疵が手続違背に留…

直接の行為者ではない複数の者の懲戒-総合調整事務に基づく責任と監督責任

1.巻き添え型の懲戒処分 官公庁や役所で不祥事が発生した場合、監督責任等の名目で、直接の行為者ではない方まで懲戒処分を受けることがあります。 上長や同僚として気を配っていれば不祥事を回避できたのではないかと言われると、概念的には理解できるの…

非公務⇒公務型の継続的不法行為における公務員の個人責任追及の可否

1.公務員の個人責任 民間の場合、従業員が事業に関連して不法行為をした場合、不法行為をした従業員個人とその使用者とが連帯して損害賠償責任を負います。この場合、被害者は、従業員個人だけを訴えることもできれば、会社だけを訴えることもできますし、…

部活動の外部指導者による暴行、「サル」呼ばわりするイジリの違法性

1.外部指導者・部活動指導員の問題 学校教育法施行規則に基づいて、 「スポーツ、文化、科学等に関する教育活動(・・・教育課程として行われるものを除く)に係る技術的な指導に従事する」 方を部活動指導員といいます(学校教育法施行規則78条の2、1…

違法に支払われた退職手当の返還を求める自治体の権利の消滅時効の起算点

1.代表者等が不法行為に加担している場合 民法724条は、 「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。」 不法行為による損害賠償の請求権が、時効によって消滅すると規定しています。 法人を被害者とする不法行為…

行政措置要求の却下判定に対する取消訴訟の勝訴要件

1.行政措置要求 公務員特有の制度として「行政措置要求」という仕組みがあります。 これは、 「職員は、俸給、給料その他あらゆる勤務条件に関し、人事院に対して、人事院若しくは内閣総理大臣又はその職員の所轄庁の長により、適当な行政上の措置が行われ…

管理運営事項と行政措置要求の対象としての適格性

1.行政措置要求 公務員特有の制度として「行政措置要求」という仕組みがあります。 これは、 「職員は、俸給、給料その他あらゆる勤務条件に関し、人事院に対して、人事院若しくは内閣総理大臣又はその職員の所轄庁の長により、適当な行政上の措置が行われ…

敬語のパワハラ「ここは学校じゃないので、同じことを言わせないでください」「本俸が高いのだから、本俸に見合う仕事をしなさい」

1.パワーハラスメント 事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)は、 「事業主が職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業…

精神障害(適応障害)の発症と因果関係が認められるレベルの暴行の参考例

1.精神障害を発症させられたことを理由とする損害賠償請求 使用者側の不適切な行為により精神障害を発症した労働者が、被った損害の賠償を請求しようとする時、しばしば不適切な行為と精神障害の発症との間に相当因果関係が認められるのかどうかが問題にな…

小学校内で教諭から生徒に行われるセクハラの例

1.小学校教諭によるセクハラ セクシュアルハラスメント(セクハラ)に関連する事案は、実数と比べて訴訟事件化しにくい傾向にあります。よく言われている理由としては、 羞恥心から事件を公にしたがらない被害者が少なくないこと、 人目につきにくい場所で…

対応頻度が低くても精神的負荷が軽減されない業務

1.地方公務員災害補償法 私企業の労働者が業務災害に被災した場合、労働者災害補償保険法に基づいて各種補償がなされます。これに対し、地方公務員の方が公務災害に被災した場合、地方公務員災害補償法という法律に基づいて各種補償が行われます。 地方公…

パワハラ行為の防止のための教育指導や研修等が行われなかったことは処分の軽減理由になるのか?

1.公務員の分限処分 公務の能率の維持や適正な運営の確保という目的から、職員の意に反する不利益な身分上の変動をもたらす処分を、分限処分といいます。分限処分には、降任、免職、休職、降級の4種類があります(国家公務員法78条、79条、人事院規則…

公務員の分限処分-勤務実績不良の基準となる勤務実績はどのように評価されるのか?

1.公務員の分限処分-勤務実績不良 公務の能率の維持や適正な運営の確保という目的から、職員の意に反する不利益な身分上の変動をもたらす処分を、分限処分といいます。分限処分には、降任、免職、休職、降級の4種類があります(国家公務員法78条、79…

公務員の飲酒運転-懲戒免職処分は適法でも退職手当の全部不支給処分は違法とされた例(物損事故のケース)

1.飲酒運転に対する処分の厳格化とその反動 飲酒運転による凄惨な事故が相次いだ影響で、国も自治体も、公務員による飲酒運転に対しては、かなり厳しい姿勢をとっています。 自治体によっては、人身事故などの具体的被害が生じていなくても、酒気を帯びて…

長時間の残業を強いられている公立学校の教育職員(教員)は国家賠償請求ができないか?

1.公立学校の教師・教諭に残業代が支給されない問題 メディアで採り上げられるようになり、既に多くの人に知られるようになっていますが、公立学校の教師・教諭には残業代が支給されません。 給与月額の4%を基準とする教職調整額を支給される代わりに、…

公立学校の教育職員(教員)は、どのような業務で残業をしても時間外勤務手当の支給を受けられないのか?

1.公立学校の教師・教諭に残業代が支給されない問題 メディアで採り上げられるようになり、既に多くの人に知られるようになっていますが、公立学校の教師・教諭には残業代が支給されません。 給与月額の4%を基準とする教職調整額を支給される代わりに、…

降格勧奨などの労働条件の不利益変更の慫慂は不法行為になり得るか?

1.退職勧奨の不法行為該当性 社会的相当性を逸脱した態様での半強制的ないし執拗な退職勧奨が行われた場合には、労働者は使用者に対し不法行為として損害賠償を請求することができます(佐々木宗啓ほか編著『類型別 労働関係訴訟の実務Ⅱ』〔青林書院、改訂…

部下の私生活上の不祥事(飲酒運転の車に同乗)について、上司の監督責任を問うことはできるのか?

1.部下に連座する上司 従業員が社会的に非難を浴びるような行為をした時、批判の矛先が伸びて、勤務先が謝罪に追い込まれることがあります。仕事に関連した犯罪等であれば分からなくもありませんが、こうした現象は従業員が私生活上で非違行為に及んだ場合…

パワーハラスメントに係る事実確認のために提供した資料に対するコントロール

1.パワーハラスメントを防止するための雇用管理上講ずべき措置 労働施策総合推進法30条の2第1項は、 「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環…

任期付き公務員の再任用拒否に期待権侵害が認められた例

1.公務員と雇止め 労働契約法19条は、 「当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結して…

就活セクハラ・入学セクハラへの対抗手段-同意していたという加害者の弁解を排斥するためには

1.就活セクハラ・入学セクハラ 厚生労働省告示第615号 平成18年10月11日 事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(最終改正:令和2年1月15日 厚生労働省告示第6号)は、 「職場におけ…

公務員の懲戒処分-2万円に満たない公務外窃盗で880万円以上の退職手当が全部不支給とされた例

1.退職手当の支給制限処分 国家公務員退職手当法12条1項は、 「退職をした者が次の各号のいずれかに該当するときは、当該退職に係る退職手当管理機関は、当該退職をした者(当該退職をした者が死亡したときは、当該退職に係る一般の退職手当等の額の支…

公務員の懲戒処分-窃盗:被害額が少なくても免職になりえる

1.懲戒処分の量定基準 平成12年3月31日職職-68(懲戒処分の指針について)は、公務外での窃盗について、 「他人の財物を窃取した職員は、免職又は停職とする。」 と規定されています。 こうした規定ぶりをみると、比較的被害額の少ない軽微な窃盗…

公務員の飲酒運転-懲戒免職処分を争うことの難しさが分かる例

1.公務員の懲戒処分 国家公務員の懲戒処分について、人事院は、 平成12年3月31日職職-68「懲戒処分の指針について」 という文書を発出しています。 懲戒処分の指針について これは、非違行為の類型毎に、目安となる懲戒処分を示したものです。 「…

公務員の飲酒運転-懲戒免職処分は適法とされたものの、退職手当全部不支給処分は違法とされた例

1.懲戒免職処分と退職手当全部不支給処分との関連性 公務員の場合、懲戒免職処分と退職金不支給処分とが連動する仕組みがとられています。 国家公務員の場合、退職金の支給/不支給の判断は、国家公務員退職手当法という法律に基づいて行われます。 国家公…

公務員の懲戒処分-情報漏洩で懲戒免職された公務員について、退職手当も全額不支給とされた例

1.退職手当支給制限処分 懲戒免職を受けて退職した国家公務員に対しては、退職手当の全部又は一部を支給しない処分をするこことが認められています(国家公務員退職手当法12条1項) この条文の運用は、非違の発生を抑止するという制度目的に留意し、全…

公務員の懲戒処分-弁明手続は重要な情状事実の発覚以前のもので足りるか?

1.公務員の懲戒処分 国家公務員法にしても、地方公務員法にしても、懲戒処分を行うにあたっての手続を法定しているわけではありません。処分に際して処分事由を記載した説明書の交付が必要とされているだけです(国家公務員法89条1項、49条1項参照)…