弁護士 師子角允彬のブログ

師子角総合法律事務所(東京:水道橋駅徒歩5分・御茶ノ水駅徒歩7分)の所長弁護士のブログです

公務員の労働事件

同一の上司に対する日時を異にする暴言は、複数の「異なる」非違行為か?

1.上司への暴言を理由とする懲戒処分 職場で特定の上司との折り合いが悪く、暴言を吐いたとして懲戒処分を受ける方がいます。こうしたケースの多くでは、異なる日時の複数回の暴言が問題にされ、頻回の暴言に及んだことが処分の加重事由として考慮されてい…

抽象的な懲戒事由に反論は必要か?

1.使用者側の抽象的な主張 懲戒処分や解雇の効力を争う時、使用者側から抽象的な懲戒事由・解雇事由を主張されることがあります。例えば、 暴言を繰り返した、 勤務態度が悪い、 コミュニケーション能力が不足している、 といったようにです。 労働者の方…

公務員の懲戒処分-弁明の機会の日の通知から弁明手続の開催までには、どれくらいの日数が必要か?

1.防御活動に必要な期間 行政手続法15条1項は、次のとおり規定しています。 第十五条 行政庁は、聴聞を行うに当たっては、聴聞を行うべき期日までに相当な期間をおいて、不利益処分の名あて人となるべき者に対し、次に掲げる事項を書面により通知しなけ…

「国家公務員退職手当法の運用方針」に盲従することが否定された例

1.国家公務員退職手当法の運用方針 国家公務員の退職手当は、「国家公務員退職手当法」という法律に基づいて支給されます。 懲戒免職処分を受けた国家公務員に退職手当が支給されないというのも、この法律に基づく取扱いです。具体的に言うと、国家公務員…

公務員-懲戒免職処分を受けながら退職手当の全部不支給処分が取り消された例

1.懲戒免職処分と退職手当の全部不支給処分との関係 国家公務員の退職手当は、「国家公務員退職手当法」という法律に基づいて支給されます。 懲戒免職処分を受けた国家公務員に退職手当が支給されないというのも、この法律に基づく取扱いです。具体的に言…

公務員-残業の付替処理で懲戒免職された例

1.諸給与の違法支払・不適正受給 国家公務員には、非違行為の類型に応じた懲戒処分の標準例が定められています(懲戒処分の指針について(平成12年3月31日職職―68)参照)。 懲戒処分の指針について 標準例は「諸給与の違法支払・不適正受給」とい…

一部免職の不利益処分への該当性

1.水平異動 公務員の法律問題を扱っていると、水平異動という言葉を目にすることがあります。 この言葉は、異動や配転の不服申立の利益を否定する脈絡で使われます。 公務員の人事上の措置は、不服申立の対象が限定されています。 例えば、地方公務員法は…

2名以上の医師の診断に基づかない分限休職処分

1.分限休職と複数名の医師による診断 地方公務員法28条3項は、 「職員の意に反する降任、免職、休職及び降給の手続及び効果は、法律に特別の定めがある場合を除くほか、条例で定めなければならない。」 と規定しています。 この規定を受け、各地方公共…

職場復帰訓練を実施するための安易な休職期間の延長が重大明白な違法性を有するとされた例

1.無効確認の訴え 公務員に対する懲戒処分や分限処分などを司法的に争う場合、処分の取消の訴え(行政事件訴訟法8条)という手続をとるのが普通です。 しかし、例外的な場面では、無効確認の訴え(行政事件訴訟法36条参照)という手続をとることもあり…

国立大学の大学病院職員個人をハラスメントを理由とする損害賠償請求の被告にできるか?

1.公務員の個人責任 国家賠償法1条1項は、 「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」 と規定しています。 公務員…

公務員の配転-子どもの世話ができないなら配偶者を連れて引っ越せばいい?

1.公務員の配転を争う二つのハードル 訴訟で公務員の配転(配置換え)の効力を否定するためには、二つのハードルを乗り越える必要があります。 一つは審査請求前置との関係で要求される要件です。 一昨日紹介した判決文でも触れられているとおり、国家公務…

公務員の配転-審査請求をし忘れて訴訟提起してしまったら・・・

1.公務員の配転で審査請求に関する教示がされない問題 国家公務員法89条1項は、 「職員に対し、その意に反して、降給し、降任し、休職し、免職し、その他これに対しいちじるしく不利益な処分を行い、又は懲戒処分を行わうとするときは、その処分を行う…

公務員の配置換えにおいて、訴えの利益(いちじるしく不利益であること)が認められた例

1.公務員の配置換え 民間の場合、配転の効力を争って訴訟提起すれば、裁判所から、転属先で勤務する労働契約上の義務の存否を判断してもらうことができます。 しかし、公務員の場合、必ずしもそうは理解されていません。 公務員の場合、配転は、行政処分(…

標準例に掲げられていない非違行為(ハラスメント加害者による関係者に対する圧力)の処分量定Ⅱ

1.懲戒処分の標準例 公務員の懲戒処分に関しては、どのような行為をすれば、どのような処分量定になるのかについての標準例が定められているのが一般です。 例えば、国家公務員について言うと、「懲戒処分の指針について(平成12年3月31日職職-68…

退職の意思表示に必要な判断能力の程度

1.意思能力 民法3条の2は、 「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。」 と規定しています。 つまり、有効な意思表示をするためには、「意思能力」が具備されている必要があります。 この「意…

自分で法的措置をとるリスク-再審査請求先の間違い

1.地方公務員の公務災害の不服申立手続 民間の労働者災害補償保険(労災)に対応する仕組みとして、地方公務員には地方公務員災害補償という仕組みがあります。 補償に関する決定に不服がある場合、行政不服審査法に基づいて地方公務員災害補償基金支部審…

教師の生徒に対するわいせつ行為に対する処分量定-退職手当全部不支給処分が適法とされた例

1.教師のわいせつ行為に対する処分量定 教師のわいせつ行為に対する処分量定は、かなり厳しいものになっています。 例えば、東京都教育委員会の 「教職員の主な非行に対する標準的な処分量定」 では、 「同意の有無を問わず、直接陰部、乳房、でん部等を触…

公務員の懲戒処分は審査請求期間に注意-病気でも救済はない

1.審査請求前置 公務員が懲戒処分の効力を争う場合、裁判所に訴訟を提起するに先立って、審査請求という行政不服申立をしておく必要があります。 これについては、国家公務員に関しては、国家公務員法92条の2が、 「第八十九条第一項に規定する処分であ…

身に覚えのない非違行為で責められることは大きな心理的負荷を生じさせる

1.心理的負荷による精神障害の認定基準 精神障害の発症が労働災害(労災)に該当するのかを判断する基準として、平成23年12月26日 基発1226第1号「心理的負荷による精神障害の認定基準について(最終改正:令和2年8月21日 基発0821第4…

60時間以上の残業に留まっていても時間外労働が有意な心理的負荷として認定された例

1.心理的負荷による精神障害の認定基準 精神障害の発症が労働災害に該当するのか(業務に起因するのか)を判断する基準として、平成23年12月26日 基発1226第1号「心理的負荷による精神障害の認定基準について(最終改正:令和2年8月21日 基…

市民感覚を理由に、特定の属性を有する職員を、市民との接触の少ない職場に配置することは許されるか?

1.差別と区別 憲法14条1項は、 「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」 と規定しています。 この条文に基づいて、人は国から差別されないことを…

いじめを隠蔽し、校長の命令に反して柔道部加害生徒を近畿大会に出場させた教師に対する懲戒処分の量定

1.最高裁と高裁で判断が分かれた事案 実務上、最高裁と高裁で判断が分かれることは、殆どありません。 司法統計の一部である「民事・行政編 令和元年度 55 上告審訴訟既済事件数 事件の種類及び終局区分別 最高裁判所」という資料によると、令和元年度に…

余計な気は利かせない方がいい-猪の死骸を撤去しようとして飲酒運転をした公務員が退職金の97%を喪失した例

1.懲戒免職処分と退職手当との関係 国家公務員退職手当法は、懲戒免職処分等を受けて退職をした公務員に対しては、退職金の全部又は一部を支給しない処分を行うことができると定めています(国家公務員退職手当法12条参照)。 条文の文言上は「全部又は…

余計な気は利かせない方がいい-猪の死骸を撤去しようとして飲酒運転をした公務員が懲戒免職になった例

1.飲酒運転と懲戒処分 飲酒運転をした公務員は、かなり厳しい懲戒処分を受けることが珍しくありません。 例えば、平成12年3月31日職職-68「懲戒処分の指針について」は、国家公務員の飲酒運転について、 「酒酔い運転をした職員は、免職又は停職と…

公務員も異動には逆らいにくい

1.整理解雇の制限と広範な配転命令権 本邦の法律上、労働者の責めによらない、いわゆる整理解雇を行うことは、厳格な制限が課せられています。その代わり、使用者には、滅多なことでは無効にならない、広範な配転命令権が付与されています。そして、整理過…

病気休職中に産業医面談を実施してくれなかったことを安全配慮義務違反に問えるか?

1.権限不行使の問題 国家賠償請求の局面においては、しばしば権限の不行使が問題になります。公権力が適切に権限を行使していれば防げたはずなのに、それをしなかったのは問題だという主張のされ方をします。事件類型としては、安全措置の懈怠、規制処分権…

公立学校教師(教育職員)の持ち帰り残業と公務災害

1.教育職員の長時間労働の問題 公立学校教師の長時間労働を問題視する声の高まりを受け、令和2年1月17日、文部科学省から、 「『公立学校の教育職員の業務量の適切な管理その他教育職員の服務を監督する教育委員会が教育職員の健康及び福祉の確保を図…

条件付採用期間中に訓告・懲戒処分を受けた公務員の採否

1.条件付採用 公務員の採用は、最初は条件付のものになります。例えば、国家公務員法59条1項は、 「一般職に属するすべての官職に対する職員の採用又は昇任は、すべて条件附のものとし、その職員が、その官職において六月を下らない期間を勤務し、その…

大学から懲戒処分を受けたこと、学生運動歴は、公務員の正式採用の拒否事由になるか?

1.条件付採用 公務員の採用は、最初は条件付のものになります。例えば、地方公務員法22条1項第1文は、 「職員の採用は、全て条件付のものとし、当該職員がその職において六月を勤務し、その間その職務を良好な成績で遂行したときに正式採用になるもの…

勤務成績欄の開示が認められた例

1.懲戒処分の考慮要素としての勤務成績 公務員の場合、懲戒処分の処分量定を決定するにあたっては、日頃の勤務態度も考慮要素になります。例えば、国家公務員への懲戒処分の指針が記載された平成12年3月31日職職-68「懲戒処分の指針について」には…