弁護士 師子角允彬のブログ

師子角総合法律事務所(東京:水道橋駅徒歩5分・御茶ノ水駅徒歩7分)の所長弁護士のブログです

公務員の労働事件

労働時間概念の相対性-労災認定の場面では厳密な労働時間「数」の立証がいらないこともある

1.労災認定の場面における「労働時間」の重要性 精神障害の発症が労災と認定されるためには、時間外労働の時間数が重要な意味を持ちます。 具体的に言うと、 「心理的負荷による精神障害の認定基準について(平成23年12月26日付け 基発1226第1号)(令和2…

自宅作業時間の労働時間性の立証

1.持ち帰り残業 業務量は多いのに勤務先からは早く帰れと言われる、そうした時に自宅に仕事を持ち帰って働いている人がいます。 こうした自宅での作業時間も、使用者の指揮命令下で労務を提供していると認められる限り、労働時間になります。 ただ、自宅で…

職場でのハラスメント、加害者への処分を求めることの権利性Ⅱ(今一歩踏み込んだ例)

1.パワハラ・セクハラ被害者は加害者への指導・処分を求めることが可能か? 以前、 「職場でのハラスメント、加害者への懲戒処分を求めることへの権利性」 という記事を書きました。 https://sskdlawyer.hatenablog.com/entry/2019/11/29/001414 記事の中…

公務員の時間外勤務手当の詐取-懲戒免職処分は適法でも退職手当の全部不支給処分は違法とされた例

1.懲戒免職処分と退職金不支給処分との連動性 公務員の場合、懲戒免職処分と退職金不支給処分とが連動する仕組みがとられています。 国家公務員の場合、退職金の支給/不支給の判断は、国家公務員退職手当法という法律に基づいて行われます。 国家公務員が…

無期転換逃れを指導する行政(地方公共団体)、それに唯々諾々と従う公益法人

1.無期転換逃れ 労働契約法18条1項本文は、 「同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約・・・の契約期間を通算した期間・・・が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、…

町職員同士が結婚した場合、夫婦どちらかに退職を促す慣習の適法性

1.前時代的なルール ネット上に、 「役場内で職員同士結婚、どちらかに退職促す 福井県池田町に慣習残る」 という記事が掲載されていました。 https://news.yahoo.co.jp/articles/f46d747ee4ccd1800acf286d41d9e8a1f5ae1a0e 記事には、 「役場内で結婚した…

マイナス10度下でのスキー機動訓練は危険性のない日常業務?

1.公務災害の認定基準 人事院事務総局勤務条件局長 平成13年12月12日勤補-323「心・血管疾患及び脳血管疾患の公務災害の認定について」という行政通達があります。 これは、心・血管疾患等が公務上災害といえるかどうかを判断するにあたっての認…

公務員の懲戒と弁明・弁解の機会付与

1.公務員の懲戒と弁明の機会付与 事前の弁明の機会付与が不十分なまま、公務員に対する懲戒処分が行われた場合、その効力はどうなるのでしょうか? 以前にもブログで言及したとおり、この問題には二通りの考え方があります。 一つ目は、処分の基礎となる事…

職場での録音に消極的な裁判例の流れ-自己主張を通すための手段としての秘密録音はダメ

1.録音の重要性 労働事件に限ったことではありませんが、訴訟において録音が重要な証拠として機能することは少なくありません。 しかし、近時、職場における録音に、消極的な評価を下す裁判例が続いているように思います。最近の例で言うと、執務室内での…

条例で給与が遡及して増額された場合、残業代の精算が必要にならないのか?

1.人事院の給与勧告 人事院は、労働基本権制約の代償措置として、職員に対し、社会一般の情勢に適応した適正な給与を確保する機能を有するものであり、国家公務員の給与水準を民間企業従業員の給与水準と均衡させること(民間準拠)を基本に勧告を行ってい…

「訓戒」の効力を争うために公法上の確認訴訟は使えるか?

1.懲戒と「訓戒」 公務員の懲戒の種類は法定されています。 例えば、国家公務員法は、免職、停職、減給、戒告の四種類の懲戒処分を規定しています(国家公務員法82条1項)。 しかし、こうした法定の処分以外にも、「訓戒」「訓告」といった名称の独自の…

懲戒免職を依願退職にしてもらえた行政実例

1.懲戒免職が一転して依願退職となったとの報道 ネット上に、 「懲戒免職が一転、『スピーディーに辞めてもらうため』依願退職に」 という記事が掲載されていました。 記事には、 「徳島県三好市が懲戒免職処分とする予定だった職員から、退職届が提出され…

分限免職処分の適法性のチェックポイント

1.分限処分 公務の能率の維持や適性な運営の確保という目的から、職員の意に反する不利益な身分上の変動をもたらす処分を、分限処分といいます。分限処分には、降任、免職、休職、降級の4種類があります(国家公務員法78条、79条、人事院規則11-1…

過労死の労災認定基準の時間外労働時間のカウント

1.過労死の労災認定基準 厚生労働省のパンフレットでは、「過労死」は次のとおり説明されています。 「心筋梗塞などの『心疾患』、脳梗塞などの『脳血管疾患』については、その発症の基礎となる血管病変等が、主に加齢、食生活、生活環境などの日常生活に…

退職金不支給処分・返納命令の処分事由説明書の記載を軽信するのは危険

1.処分事由の追加主張 職員に対して不利益処分が行われる場合、処分権者には「処分の事由」を記載した「説明書」を交付する義務があります(国家公務員法89条1項、地方公務員法49条1項)。 懲戒・分限などの不利益処分を受けた公務員が、不服申立を…

退職金返納命令処分を争うにあたり、懲戒免職処分の処分事由を争えるのか?

1.懲戒免職処分と退職金返納命令処分 国家公務員退職手当法12条1項1号は、 「懲戒免職等処分を受けて退職した者」 に退職金の全部又は一部を支給しない処分を行うことができるとしています。 ただ、「できる」とはいうものの、昭和60年4月30日 総…

性的指向、性自認に対する侮辱的な言動の実例

1.パワハラ防止指針 令和2年6月1日から、事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(パワハラ防止指針)が適用されます。 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/ko…

公益通報(内部通報)のポイント-余計な資料は手元に置かない

1.公益通報(内部通報)と懲戒処分 公益通報(内部通報)と懲戒処分との関係は、実務上、しばしば問題になります。 公益通報者保護法で定義されている「公益通報」が行われたことを理由として、事業者が労働者を解雇することは禁止されています(公益通報…

懲戒処分の標準例で用いられている用語の厳格解釈-窃盗に「準じる」はダメ

1.懲戒処分の標準例 公務員には、どのような非違行為が、どのような懲戒処分に対応するのかに関する標準例が定められています。 例えば、国家公務員に関しては、人事院は、 「懲戒処分の指針について 平成12年3月31日職職-68」 という指針を作成し…

部活動中の事故-公立学校の顧問教諭に個人責任は発生するか?

1.部活動は職務か? 学校教諭の部活動顧問としての活動が職務なのかどうかは、現行法上あまり明確にはなっていません。 しかし、これは公立学校の教諭にとっては非常に切実な問題です。部活動中の事故で生徒に損害が発生した場合に、個人として責任を問わ…

あまりに過酷な長時間労働のもとでは、メンタルヘルス対策制度を利用できないことは過失ではない

1.メンタルヘルス対策制度を利用しなかったことと過失相殺 以前、 「若手を潰さないために-残業を命令していなくても若手が夜遅くまで残っていたら要注意」 という記事を書きました。 https://sskdlawyer.hatenablog.com/entry/2019/09/15/003043 この記…

規則違反の常態化が懲戒処分の処分量定に与える影響

1.規則違反が常態化している中で下された懲戒処分 少し前に、 「違法行為を理由に懲戒された場合、『みんなやっている。』『ここでは常態化している。』は抗弁になるか?」 という記事を書きました。 https://sskdlawyer.hatenablog.com/entry/2020/03/19/…

私傷病休職からの復職にあたり配置転換を求めることはできるのか?

1.私傷病休職からの復職の可否 私傷病で一定期間就労できないことは、本来は労働契約における債務不履行であり、解雇理由になります。しかし、直ちに解雇するのは酷であることから、多くの企業では、解雇猶予の目的で私傷病休職制度が設けられています(佐…

性同一性障害者が自認する性別に対応するトイレを使用する利益と行政措置要求の可能性

1.自認する性別に対応するトイレを使用する利益 昨年12月、身体的性別は男性であるものの、自認している性が女性である方に対し、女性用トイレの自由な使用を認めなかったことを違法だと判示した判決が言い渡され、マスコミで話題になりました(※ 表現に…

告知・聴聞の機会を欠く公務員の懲戒処分の効力

1.公務員の懲戒と告知・聴聞 公務員に懲戒処分を科するにあたり、事前に告知・聴聞の機会を付与することが必要かどうかという論点があります。 最大判平4.7.1最高裁判所民事判例集46-5-437は、憲法31条の理解に関し、 「行政処分の相手方に…

オオカミではなくヒツジをとれ-ヤンチャで素行の悪い生徒を入学させたらエンカレッジスクールは成り立たない?

1.エンカレッジスクール 「エンカレッジスクール」と呼ばれる都立高校があります。 これは、 「小・中学校で十分能力を発揮できなかった生徒のやる気を育て、頑張りを励まし、応援する学校として、社会生活を送る上で必要な基礎的・基本的学力を身に付ける…

国立大学の教員個人をハラスメントを理由とする損害賠償請求の被告にできるか?

1.国立大学の教員 以前、公務員個人をパワハラで訴えることができるかという記事を書きました。 https://sskdlawyer.hatenablog.com/entry/2019/04/15/161700 https://sskdlawyer.hatenablog.com/entry/2019/10/20/223743 根拠はリンク先で示しているとお…

行政措置要求の対象行為

1.行政措置要求 行政措置要求という仕組みがあります。 これは国家公務員法86条の、 「職員は、俸給、給料その他あらゆる勤務条件に関し、人事院に対して、人事院若しくは内閣総理大臣又はその職員の所轄庁の長により、適当な行政上の措置が行われること…

防衛大学校の学生は安全配慮義務の履行補助者か?

1.防衛大学校の学生 私立大学の学生が大学の学生に対する安全配慮義務の履行補助者だと聞くと、違和感を覚える人は少なくないと思います。法的にも、そのような理解は、一般的ではないと思います。 それでは、私立大学ではなく、防衛大学校の学生はどうで…

軽微なハラスメント事案における謝罪の重要性-違法性の認定を妨げる事由としての謝罪

1.行為の違法性判断における事後的な謝罪の持つ意味合い 行為後の事情が、ある行為の適法・違法の判断に影響を与えるというのは、理論的に考えると違和感があります。それは、罪を犯した時に、事後的に謝罪したからといって、処罰を免れられないことを想像…