弁護士 師子角允彬のブログ

師子角総合法律事務所(東京:水道橋駅徒歩5分・御茶ノ水駅徒歩7分)の所長弁護士のブログです

公務員の労働事件

国家公務員に対する研究休職処分の適法性が問題となった事例

1.研究休職処分 休職というと、私傷病休職を連想される方が殆どではないかと思います。 しかし、休職処分が発令される場合は、私傷病で働けなくなった場合に限られるわけではありません。公務員の場合、休職処分には「心身の故障のため、長期の休養を要す…

公務員の転任処分(水平異動)を争うにあたっての留意点

1.水平異動 後任するわけでも昇任するわけでもなく、同格の役職で異動することを「水平異動」といいます。 水平異動の効力を争うにあたっては、民間とは異なる注意が認められます。 代表的な注意点は二つです。 一つは、不利益性の問題です。 民間の場合、…

公務起因性なしとする医師意見書によっても公務起因性が否定されなかった例

1.労働災害/公務災害 「労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡」は労働者災害補償保険法に基づく保険給付の対象になります(労働者災害補償保険法7条1項1号参照)。 公務員の場合、「公務上の災害(負傷、疾病、障害又は死亡・・・)」に対して補…

日常業務がアスリート並の負荷を伴う場合、日常業務であることは労災認定の妨げになるか?

1.脳・心臓疾患の労災補償 令和3年9月14日基発0914第1号「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について」(令和5年10月18日 改正基発1018第1号)は、脳梗塞や心停止などの脳・心臓疾患が労…

公務員への降任勧奨-欠勤が続いた場合には分限免職になってもかまわない旨の表明をさせる職務命令の適法性

1.退職勧奨/自主降任勧奨 退職勧奨の許容性については、一般に次のように理解されています。 「退職勧奨は,基本的に労働者の自由な意思を尊重する態様で行われる必要があり,この点が守られている限り,使用者はこれを自由に行うことができる。」 (中略…

公務員への降任勧奨-自主降任はしたくないという明示の意向に合致していないにもかかわらず、自主降任の勧奨が適法とされた例

1.退職勧奨/自主降任勧奨 退職勧奨の許容性については、一般に次のように理解されています。 「退職勧奨は,基本的に労働者の自由な意思を尊重する態様で行われる必要があり,この点が守られている限り,使用者はこれを自由に行うことができる。」 (中略…

過去の処分歴に基づく処分の過重に限界があるとされた例

1.過去の処分歴/非違行為 人事院事務総長発 平成12年3月31日職職-68『懲戒処分の指針』は、国家公務員に対する懲戒処分の量定を考えるにあたっての基本事項として、次のとおり規定しています。 「個別の事案の内容によっては、標準例に掲げる処分…

業務起因性の前提となる労働時間とは、労働基準法上の労働時間に限られるものではないとされた例

1.労働者災害補償保険法上の労働時間 労働時間の数は、労災認定が認められるのか否かと密接に関係しています。 例えば、 令和5年9月1日 基発0901第2号「心理的負荷による精神障害の認定基準について」は、 「極度の長時間労働、例えば数週間にわた…

精神疾患の公務起因性の判断にあたり、労災認定基準に示された知見をも斟酌し得るとした最高裁裁判官補足意見

1.公務災害 労働者災害補償保険制度の公務員版に、国家公務員災害補償制度、地方公務員災害補償制度があります。国家公務員災害補償制度は国家公務員災害補償法に、地方公務員災害補償制度は地方公務員災害補償法に根拠があります。 労働者災害補償保険法…

条件付採用の期間延長が分限処分に準ずるものであるとの判示が取り消された事例

1.条件付採用 地方公務員法22条1文は、 「職員の採用は、全て条件付のものとし、当該職員がその職において六月を勤務し、その間その職務を良好な成績で遂行したときに正式採用になるものとする。」 と規定しています。 国家公務員法にも 「職員の採用及…

合理的配慮の提供義務が、分限免職処分の可否の判断基準に取り入れられた例

1.合理的配慮の提供義務 障害者雇用促進法36条の3は、 「事業主は、障害者である労働者について、障害者でない労働者との均等な待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となつている事情を改善するため、その雇用する障害者で…

分限免職処分にあたり「下位の職制上の段階に属する官職の職務を遂行することができるか否かも考慮すべき」とされた例

1.分限免職処分の特殊性 公務の能率性という観点から公務員に対して行われる不利益処分を「分限処分」といいます。分限処分は公務の能率という観点から行われるもので、非違行為の存在や本人の有責性を前提にしないという点で懲戒処分とは異なっています。…

自治体職員が職務命令で部下に偽装請負の実行を指示したことがハラスメントに該当するとされた例

1.国や地方公共団体に蔓延する偽装請負 偽装請負とは、 「書類上、形式的には請負(委任(準委任)、委託等を含む)契約ですが、実態としては労働者派遣であるもの」 を言います。 偽装請負について|東京労働局 かみ砕いて言うと、注文者が、請負人(業務…

懲戒免職処分を受けた公務員の退職手当-1000円の着服行為でも1211万円の退職手当を不支給にすることを是認した最高裁判例

1.公務員の懲戒免職処分と退職手当支給制限処分 国家公務員退職手当法12条1項は、 「退職をした者が次の各号のいずれかに該当するときは、当該退職に係る退職手当管理機関は、当該退職をした者(当該退職をした者が死亡したときは、当該退職に係る一般…

パワハラで部下を自殺させた公務員に求償義務の要件である重大な過失が認められた例

1.パワハラをした公務員の個人責任 民間の場合、ハラスメントの被害者(被害者が自殺してしまった場合は遺族)は、会社を訴えるとともに、加害者個人を訴えることもできます。 これに対し、公務員の場合、ハラスメントの被害者が加害者個人を訴えることは…

パワハラで部下を自殺させた公務員に対し、5000万円以上の求償義務が課された例

1.パワハラをした公務員の個人責任 民間の場合、ハラスメントの被害者(被害者が自殺してしまった場合は遺族)は、会社を訴えるとともに、加害者個人を訴えることもできます。 これに対し、公務員の場合、ハラスメントの被害者が加害者個人を訴えることは…

トランスジェンダー当事者(男性から女性に性別変更)を「おっさん」と揶揄することが不法行為に該当するとされた例

1.相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動 令和2年厚生労働省告示第5号『事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針』は、パワーハラスメントの典型例を示しています。 その…

当直時間・仮眠時間の労働時間性は頻度だけではなく業務内容も問われるのではないか?-警察官の当直業務に労働時間性が認められた例

1.当直業務、宿直業務の労働時間性 当直や宿直を担当するにあたり、実際に業務に従事している時間が労働時間としてカウントされることに疑義を容れる余地はありません。 しかし、業務が発生している時間帯以外の時間帯にどのように過ごすのかは、宿直や当…

合コンに参加したことは、鬱病エピソードを発病していたことと矛盾しないと判示された例

1.内心と外形が異なっている問題 職場で内心を思うままに吐露できる人は、少ないのではないかと思います。大体の人は、怒りを覚えたり、傷ついたりしながらも、それを外面に出すことなく、上手くその場をやり過ごしています。 しかし、外形的に上手くやり…

勤務時間の割振り、時間外勤務、命令、休憩時間の明示的な付与、労働時間の把握との関係で職務行為基準説の拡大が抑止されたと思われる例

1.国家賠償法上の違法性 国家賠償法1条1項は、 「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」 と規定しています。 条…

公立学校の教師に対し休憩時間を付与しないことが慰謝料の発生原因になるとされた例

1.休憩時間の付与 労働基準法34条1項は、 「使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。」 と規定しています。労働基準法施行…

公立学校の教師に対し条例で定められた限度を超過した長時間労働を命じることが国家賠償法上違法だとされた例

1.公立学校の教師に残業代が支給されない問題 公立学校の教師には残業代が支給されません。 これは「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(通称:給特法)と呼ばれる法律に根拠があります。 給特法3条は、1項で、 「教育職員…

公務員を退職したことで行政措置要求の判定を求める利益(棄却判定ないし却下判定の取消の訴えの利益)が失われて良いのか?

1.措置の要求(行政措置要求) 地方公務員法46条は、次のとおり規定しています。 「職員は、給与、勤務時間その他の勤務条件に関し、人事委員会又は公平委員会に対して、地方公共団体の当局により適当な措置が執られるべきことを要求することができる。…

退職金(退職手当)の金額が何となく誤っているかもしれないという可能性を想起した職員に差額返還を申し出るべき義務はあるか?

1.複雑な退職金(退職手当)の計算 大企業や公務員の退職金(退職手当)の計算は、複雑であることが少なくありません。例えば、人事院は、退職手当の計算例として、下記のような例を挙げています。 【定年退職で在職中に休職期間のある例】 生年月日:昭和…

時間外勤務を認識しつつ、業務軽減対策をとるなどの対応をしていないことから地方公務員に対する黙示の時間外勤務命令があったとされた例

1.使用者側の「勝手に働いていただけだ」という反論 残業代を請求するにあたっては、労働者側で実作業時間の立証に成功しても、使用者側から「勝手に働いていただけだ」と反論されることがあります。こうした反論は、しばしば許可残業制を採用している会社…

地方公務員の残業代請求-時間外勤務命令簿ではなくPCの起動/シャットダウン時刻、休日登庁簿に基づいて労働時間が認定された例

1.労働時間の立証 労働時間が管理されていない会社に対して残業代を請求するにあたっては、日々の始業時刻、終業時刻を立証するための工夫が必要になります。例えば、PCの起動/シャットダウン時刻、ビルへの入退館記録、メールの送信記録を利用するとい…

条例に基づく割増賃金の計算方法が、労働基準法に反しているとされた例

1.法律と条令の関係 憲法94条は、 「地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる」 と規定しています。 つまり、法律と条令とでは法律の方が優先する関係にあり、条例は…

公務員の懲戒処分-無免許運転と赤信号看過が競合しても懲戒免職には至らなかった行政実例

1.交通法規違反を理由とする懲戒処分 交通取締法規違反を理由とする懲戒処分の量定は、かなり重くなっています。 例えば、国家公務員の懲戒処分の標準的な処分量定を定めた平成12年3月31日職職-68『懲戒処分の指針について』は、 「酒酔い運転をし…

公務員の懲戒処分-懲戒事由としての「無免許運転」には過失行為まで含まれるとされた例

1.刑法上責任を問われない過失行為 刑法38条1項は、 「罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。」 と規定しています。 この規定から分かる通り、故意ではない行為(罪を犯す意思がない行為)で処…

司法判断を無視した記者会見時の発言で、高額の慰謝料(200万円)が認定された例

1.判決確定後の記者会見 訴訟提起した事実を記者会見をして広く告知することを、一般に提訴記者会見といいます。提訴記者会見は、①認識に相違があった場合に相手方から名誉毀損で訴えられる危険がある、②主張の変遷や矛盾を捕捉される契機となりかねない、…