公務員の労働事件
1.懲戒免職処分と退職手当との関係 国家公務員退職手当法は、懲戒免職処分等を受けて退職をした公務員に対しては、退職金の全部又は一部を支給しない処分を行うことができると定めています(国家公務員退職手当法12条参照)。 条文の文言上は「全部又は…
1.飲酒運転と懲戒処分 飲酒運転をした公務員は、かなり厳しい懲戒処分を受けることが珍しくありません。 例えば、平成12年3月31日職職-68「懲戒処分の指針について」は、国家公務員の飲酒運転について、 「酒酔い運転をした職員は、免職又は停職と…
1.整理解雇の制限と広範な配転命令権 本邦の法律上、労働者の責めによらない、いわゆる整理解雇を行うことは、厳格な制限が課せられています。その代わり、使用者には、滅多なことでは無効にならない、広範な配転命令権が付与されています。そして、整理過…
1.権限不行使の問題 国家賠償請求の局面においては、しばしば権限の不行使が問題になります。公権力が適切に権限を行使していれば防げたはずなのに、それをしなかったのは問題だという主張のされ方をします。事件類型としては、安全措置の懈怠、規制処分権…
1.教育職員の長時間労働の問題 公立学校教師の長時間労働を問題視する声の高まりを受け、令和2年1月17日、文部科学省から、 「『公立学校の教育職員の業務量の適切な管理その他教育職員の服務を監督する教育委員会が教育職員の健康及び福祉の確保を図…
1.条件付採用 公務員の採用は、最初は条件付のものになります。例えば、国家公務員法59条1項は、 「一般職に属するすべての官職に対する職員の採用又は昇任は、すべて条件附のものとし、その職員が、その官職において六月を下らない期間を勤務し、その…
1.条件付採用 公務員の採用は、最初は条件付のものになります。例えば、地方公務員法22条1項第1文は、 「職員の採用は、全て条件付のものとし、当該職員がその職において六月を勤務し、その間その職務を良好な成績で遂行したときに正式採用になるもの…
1.懲戒処分の考慮要素としての勤務成績 公務員の場合、懲戒処分の処分量定を決定するにあたっては、日頃の勤務態度も考慮要素になります。例えば、国家公務員への懲戒処分の指針が記載された平成12年3月31日職職-68「懲戒処分の指針について」には…
1.公務員の個人責任 公務員の場合、職務執行に関連して不法行為を犯しても、被害者から個人責任を追及されることはありません。このことは、過去、本ブログでも何度か説明させて頂いています。 パワハラ上司個人を訴えられるか?(公務員の場合) - 弁護士…
1.専門家であることの意味 専門家には、一般人よりも高度の注意義務が課せられることがあります。同じことをしても、素人であれば許されるのに、専門家であれば許されないという局面は、決して少なくありません。このことは、一定の場面において、専門家が…
1.提訴記者会見に対して消極的な裁判所 ジャパンビジネスラボ事件控訴審判決(東京高判令元.11.28労働判例1215-5)、三菱UFJモルガン・スタンレー事件(東京地判令2.4.3労働判例ジャーナル103-84)と、近時、提訴記者会見に対し…
1.抗議や抵抗がなくてもセクハラは懲戒処分の対象になる セクハラを理由とする出勤停止処分・降格の効力が問題となった事案で、最高裁が、 「職場におけるセクハラ行為については、被害者が内心でこれに著しい不快感や嫌悪感等を抱きながらも、職場の人間…
1.法令用語には厳密な定義がある 一般の方が法律や裁判例を読みこむことが難しい理由の一つに、法令用語の難解さがあります。 法律や裁判例は日本語で書かれているため、一見すると誰でも読めそうに見えます。 しかし、各々の法令用語には、厳密な定義があ…
1.不正調査のための自宅待機期間中の賞与(勤勉手当) 昨日、不正調査のため自宅待機を言い渡した公務員に対し、賃金を支給しないことが許されるかどうかについてのお話をさせて頂きました。 この論点について、裁判所は、いかに不正行為をめぐる社会的影…
1.自宅待機命令 非違行為を犯した労働者に対し、使用者から、不正の全体像を調査し、適正な懲戒処分を科するまでの間、自宅での待機が命じられることがあります。 これは職務として自宅待機を命じられるものであることから、民間の場合、使用者は待機中の…
1.懲戒処分の指針 国家公務員は「職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合」や「国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合」、免職、停職、減給、戒告といった懲戒処分の対象になります(国家公務員法82条2号3号)。 しかし、「職務…
1.労災認定の標準処理期間 労災の請求を行うと、労基署が調査を行い、労基署長が支給・不支給の決定を行います。請求を行ってから支給・不支給が判断されるまでの標準処理期間は、災害や給付の種類によって1か月から8か月の範囲で定められています(平成…
1.公務員の懲戒処分の事前手続 以前、公務員の懲戒処分は、行政手続法の適用除外となっているため、どのような事前手続が踏まれれば、手続的な適正さが担保されたことになるのかが明確でないというお話をしました。 公務員の懲戒処分-事情聴取と弁明の機…
1.公務員の懲戒処分 公金に関する公務員の不正行為に対して、法は極めて厳格な立場をとっています。 国家公務員の場合、公金を横領、窃取、詐取した職員は、基本的に免職になります(「懲戒処分の指針について」(平成12年3月31日職職―68)(人事院…
1.相当因果関係概念の相対性 民法709条は、 「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」 と規定しています。 ここでいう「よって」とは、加害行為と権利利益の侵害(損…
1.新人指導に向かない先輩「〇〇に向いていない」 新人時代、上司や先輩から「お前は、〇〇(教師・弁護士・営業等)に向いていない。」という叱責を受けた人は少なくないと思います。 何一つ具体的な課題の解決に結びつかないうえ、経験不足から先輩の言…
1.処分理由書 懲戒処分を受けた公務員は、処分理由の書かれた説明書の交付を求めることができます。 その法的な根拠を挙げると、国家公務員法89条は、 「職員に対し、その意に反して、降給し、降任し、休職し、免職し、その他これに対しいちじるしく不利…
1.公金の横領、窃取、詐取 公金の横領、窃取、詐取は重大な非違行為とされています。 国家公務員の場合、 平成12年3月31日職職-68「懲戒処分の指針について」 により、 「公金又は官物を横領した職員は、免職とする。」 「公金又は官物を窃取した…
1.公務員の懲戒処分と弁明の機会 行政手続法上、不利益処分をしようとする場合には、聴聞や弁明の機会の付与など、名宛人が意見陳述するための手続を執らなければならないとされています(行政手続法14条1項)。 しかし、公務員の職務又は身分に関して…
1.審査請求前置 国家公務員法92条の2は、 「第八十九条第一項に規定する処分(懲戒処分など 括弧内筆者)であつて人事院に対して審査請求をすることができるものの取消しの訴えは、審査請求に対する人事院の裁決を経た後でなければ、提起することができ…
1.懲戒処分の標準例 公務員の懲戒処分に関しては、どのような行為をすれば、どのような処分量定になるのかについての標準例が定められているのが一般です。 例えば、国家公務員について言うと、「懲戒処分の指針について(平成12年3月31日職職-68…
1.処分事由説明書 地方公務員法49条1項は、 「任命権者は、職員に対し、懲戒その他その意に反すると認める不利益な処分を行う場合においては、その際、その職員に対し処分の事由を記載した説明書を交付しなければならない。」 と規定しています。 国家…
1.始業時刻の認定 始業時刻前に出勤して稼働していたとしても、それを労働時間として認定してもらうことは決して容易ではありません。そのことは、以前、 業務開始時刻(早出残業)の認定は厳しい - 弁護士 師子角允彬のブログ という記事で述べたとおりで…
1.処分事由説明書 以前、 「地方公務員である自動車運転士のコンビニ店員へのセクハラ(フリーランスへのセクハラ問題とも関連)」 という記事を掲載しました。 https://sskdlawyer.hatenablog.com/entry/2019/04/25/130802 この記事の中で、コンビニ店員…
1.条件付採用 公務員には「条件付採用」という仕組みがとられています。これは、一定期間、職務を良好な成績で遂行できたことを正式採用の条件とする仕組みであり、民間でいうところの試用期間に相当します。 条件付採用は、国家公務員の場合、国家公務員…