弁護士 師子角允彬のブログ

一般の方に向けて、法律や判例に関する情報を提供して行きます。

公務員の労働事件

神戸市教員間暴行・暴言問題-給与差止条例の合法性

1.給与差止条例 ネット上に、 「加害教員が給与差し止め不服で審査請求 教員間暴行」 という記事が掲載されていました。 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191108-00000013-kobenext-soci 記事には、 「神戸市立東須磨小学校(同市須磨区)の教員間暴…

公務員の飲酒運転-懲戒免職処分は適法でも退職手当の全部不支給処分は違法とされた例

1.飲酒運転に対する処分の厳格化とその反動 飲酒運転による凄惨な事故が相次いだ影響で、国も自治体も、公務員による飲酒運転に対しては、かなり厳しい姿勢をとっています。 自治体によっては、人身事故などの具体的被害が生じていなくても、酒気を帯びて…

パワハラ上司個人を訴えられるか?(公務員の場合)Ⅱ-私的制裁に対しては責任追及の余地はあるかもしれない

1.公務員の個人責任の追及は極めて難しい 以前、パワハラを受けた公務員の方が、上司個人を訴えることができるかに関する記事を書きました。 https://sskdlawyer.hatenablog.com/entry/2019/04/15/161700 結論から申し上げると、上司である公務員個人を訴…

ただ「辞めろ」と罵倒するのは、指導でも叱責でもない。単なるパワハラである。

1.「先はない。」「辞めろ。」「身の振り方を考えろ。」 上司・先輩から部下・後輩に対し、「先はない。」「辞めろ。」「身の振り方を考えろ。」といった罵倒が浴びせられる例があります。 部下・後輩が病んで問題になった時、罵倒した側からは、奮起や発…

働き方改革(残業規制)への批判-矛先を間違えていないだろうか

1.残業規制への批判 ネット上に、 「市民も大迷惑…『働き方改革』で警察大パニックのヤバすぎる事態」 という記事が掲載されていました。 https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191007-00067615-gendaibiz-soci&p=1 記事では、 「2019年4月から順次…

公金取扱い関係に該当する非違行為を一般服務関係に該当する非違行為として捕捉できるか?

1.懲戒処分の指針 「職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合」や「全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合」、地方公共団体は、職員を懲戒処分にすることができます(地方公務員法29条1項参照)。 しかし、これだけでは、どのような行…

未成年者との交際が、将来を見据えた真剣交際といえるための条件

1.教育公務員と未成年者との交際 教育公務員が未成年者と交際し、それがもとで懲戒処分を受ける例は、比較的多くみられます。 文部科学省の 「平成29年度公立学校教職員の人事行政状況調査について」 によると、 年間210名の教員が、わいせつ行為を理…

若手を潰さないために-残業を命令していなくても若手が夜遅くまで残っていたら要注意

1.自主的・自発的に働いている? 過労死が問題になる事案では、使用者側から、 「彼は自主的、自発的に残って働いていた(勉強していた)だけだ。」 という主張がなされることがあります。 これは、法律的に表現すると、 長時間の時間外勤務を命令したわけ…

自治体や国がなすべき人事上の措置をしてくれない場合の対抗手段

1.審査請求の放置 懲戒その他不利益な処分を受けた公務員には、審査請求を行うことが認められています(地方公務員法49条の2、国家公務員法90条)。 裁判所で処分の効力を争うためには、審査請求した後でなければならないとされているため(地方公務…

非正規公務員が雇止め(再任用拒否)された理由を知る方法としての裁判

1.非正規公務員の雇止め(再任用拒否) (1)民間の雇止め法理 雇止めという言葉があります。 これは 「期間の定めのある雇用契約により雇用される者について、当該期間の満了の際に、使用者が契約の更新を拒否すること」 をいいます(法令用語研究会編『…

「違法行為は黙認されていた」との弁解は通りにくい(通勤手当の不正受給)

1.「違法行為に及んだのは、◯◯の指示・黙認のもとでのことである」という弁解 違法行為によって懲戒処分を受けた労働者から、処分の効力を争う訴訟の中で、 「(処分を受ける理由となった)違法行為は黙認されていた。」 「違法行為に及んだのは、◯◯(上司…

病気休暇の取得を公表することの是非

1.病気休暇の取得と公表 一昔前に比べて偏見は減ってきたとはいえ、精神疾患にはネガティブなイメージがあります。告知義務があるかは措くとして、再就職にあたっても、メンタルの不調で休職した事実があることが分かってしまった場合、そのことが会社から…

クレーム対応にあたり、非のない部下を謝らせて丸く収める手法の終焉

1.クレームへの対応方法 顧客からのクレームに対し、顧客と従業員のどちらに非があるのかを見極めることなく、取り敢えず自社の従業員に謝らせるという方法があります。 それが揉め事を丸く収めていた時代もあったのだと思います。 しかし、こうした手法は…

職場での録音が非違行為に該当しない場面/公務員の懲戒処分の取消訴訟が認容されやすい場面

1.消防職員に対する懲戒処分(停職6か月)の有効性が争われた事件 消防職員に対する懲戒処分(停職6か月)の有効性が争われた事件が判例集に掲載されていました(岡山地判平31.3.27労働判例ジャーナル88-22)。 一般論として、懲戒処分に対…

不適切な言動と違法な言動の境界、セクハラほかハラスメントの慰謝料

1.不適切な言動と違法な言動 ハラスメントに関する事件を取り扱っていると、不適切ではあるけれども違法とまではいえないという論法で、損害賠償請求を棄却されることがあります。 裁判所は、不適切な言動のうち、悪性が強いものを違法な言動として理解し…

勤務時間中の送別会呼びかけと公務員の職務専念義務

1.勤務時間中の送別会呼びかけで処分を検討 ネット上に、 「“公用メールで送別会呼びかけ”はNG?! 大阪府が処分検討に街の声は・・・」 という記事が掲載されていました。 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190730-00010013-fnnprimev-life 記事には…

過去の懲戒処分歴を理由に懲戒処分の量定を加重することはどこまで許されるのか?

1.過去の処分歴と懲戒処分との関係性 一般論として言うと、過去に懲戒処分を受けたことは、次に似たような非違行為を犯したときに、懲戒処分を重くする事情として考慮されます。 荒木尚志ほか『詳説 労働契約法』〔弘文堂、第2版、平26〕159頁は、懲…

若年性認知症に罹患している人の労働問題(懲戒処分)

1.若年性認知症に罹患していた公務員の窃盗行為と懲戒処分 窃盗行為を理由とする懲戒免職処分の有効性が争われた事件が公刊物に掲載されていました(東京地判平30.10.25労働判例1201-85国・防衛大臣(海上自衛隊厚木航空基地隊自衛官)事件…

体罰(傷害罪)で有罪になった教員の定年後再任用

1.体罰で有罪になった教員の定年後再任用 ネット上に、 「体罰で傷害罪→定年→再任用→また体罰 そんな先生を教壇に立たせる、県教委の言い分は?」 という記事が掲載されていました。 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190711-00000012-jct-soci 記事…

公務員欠格条項が社会福祉法人の支援者に看過された疑いのある事件(専門職間での連携の重要性)

1.障害のある職員に対する再任用拒否の可否が問題となった事件 障害(先天性のある知的障害及び自閉症)のある自治体職員に対する再任用拒否の可否が問題となった事例が、公刊物に掲載されていました(大阪地判平31.2.13労働判例ジャーナル87-7…

分限免職と病気(睡眠時無呼吸症候群、高次脳機能障害)、病気・障害はオープンにすべきか?

1.分限免職 国や自治体には、公務能率を維持するため、適格性が欠如していたり、勤務成績が悪かったりする職員を免職することが認められています。これを分限免職といいます。 地方公務員の場合、地方公務員法28条1項が、 「人事評価又は勤務の状況を示…

分限回避義務

1.分限回避義務 「分限」とは「公務能率を維持するための官職との関係において生ずる公務員の身分上の変動で職員に不利益を及ぼすもの」を言います(森園幸男ほか編『逐条 国家公務員法』〔学陽書房、全訂版、平27〕635頁参照)。 国家公務員法上、 …

パワハラ冤罪

1.パワハラを理由とする懲戒免職処分が取り消された事案 パワハラを理由とする懲戒免職処分が取り消された事案が、公刊物に掲載されていました(甲府地判平31.1.22労働判例ジャーナル87-81頁 富士吉田市事件)。 富士吉田市の市立病院に勤務す…

一度生徒に手を出した教諭は、また手を出す?(性的な不祥事を起こした被用者の労務管理)

1.一度生徒に手を出した教諭は、また手を出す? 小学校の担任教諭が児童に対して行った強制わいせつ行為について、教育長の過失と市の責任を認めた判決が公刊物に掲載されていました(名古屋地裁岡崎支判平30.6.29判例時報2399-56)。 過失…

個人情報の持ち出しと、それに相応しい懲戒処分

1.個人情報の持ち出しと懲戒処分 個人情報の持ち出したことを理由に停職4か月の懲戒処分を受けた鳴門市の職員が、処分が不当・過大であるとして争った事件が公刊物に掲載されていました。 徳島地判平31.1.30労働判例ジャーナル86-30 鳴門市・…

市立病院の院長の職を解かれたこと(配置換処分)は裁判所で争えるのか?

1.公務員の配置転換の特殊性(裁判所で審理してもらうためには不利益性が必要) 民間の労働者の場合、使用者からの配置転換命令の適否を裁判で争うことに特段の問題はありません。 もちろん、配転命令権の濫用がなければ、配転命令の無効を前提とする請求…

勤務成績の不良を理由とする医師への免職処分(公務員にも身分の安定していない職種はある)

1.条件付採用期間中の医師が勤務成績不良を理由に分限免職処分を受けた事案 条件付採用期間中の医師に対し、勤務成績不良等を理由として行った分限免職処分の適法性が争われた事件が判例集に掲載されていました(札幌高判平30.8.9労働判例1197-…

裁判官の懲戒と国家公務員一般職の懲戒

1.ツイッターでのツイートを理由とする裁判官への懲戒処分 報道等で既に有名になっている事件ではありますが、裁判官がツイッターでのツイートを理由に懲戒処分を受けた事案があります。 https://www.asahi.com/articles/ASLBK5WTVLBKUTIL04W.html 当該裁…

公立学校教師の残業代・部活動顧問問題と措置要求制度の持つ可能性

1.公立学校の教師には残業代が出ない 既に各種メディアに取り上げられている問題ではありますが、公立学校の教育職員には残業代が支給されません。 これは、公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法という法律で、 「時間外勤務手当及…

地方公務員である自動車運転士のコンビニ店員へのセクハラ(フリーランスへのセクハラ問題とも関連)

1.自動車運転士(地方公務員)のコンビニ店員へのセクハラ 労働経済判例速報という雑誌の2019年4月20号に、コンビニエンスストア店員へのセクハラ行為を理由とする停職処分が適法とされた最高裁判例が掲載されていました(最三小判平30.11.6…