弁護士 師子角允彬のブログ

師子角総合法律事務所(東京:水道橋駅徒歩5分・御茶ノ水駅徒歩7分)の所長弁護士のブログです

公務員の労働事件

労災(公務災害)の認定申請の放置への対応(国家賠償よりも行政訴訟)

1.労災認定の標準処理期間 労災の請求を行うと、労基署が調査を行い、労基署長が支給・不支給の決定を行います。請求を行ってから支給・不支給が判断されるまでの標準処理期間は、災害や給付の種類によって1か月から8か月の範囲で定められています(平成…

公務員-懲戒処分を受ける以前の事情聴取段階から弁護士の関与を

1.公務員の懲戒処分の事前手続 以前、公務員の懲戒処分は、行政手続法の適用除外となっているため、どのような事前手続が踏まれれば、手続的な適正さが担保されたことになるのかが明確でないというお話をしました。 公務員の懲戒処分-事情聴取と弁明の機…

公務員は公務外非行の詐欺でも退職金(退職手当)まで吹き飛ぶ

1.公務員の懲戒処分 公金に関する公務員の不正行為に対して、法は極めて厳格な立場をとっています。 国家公務員の場合、公金を横領、窃取、詐取した職員は、基本的に免職になります(「懲戒処分の指針について」(平成12年3月31日職職―68)(人事院…

労災が否定されても民事訴訟での損害賠償請求は可能?-業務起因性がないことは不法行為法上の相当因果関係がないことを意味しないとされた例

1.相当因果関係概念の相対性 民法709条は、 「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」 と規定しています。 ここでいう「よって」とは、加害行為と権利利益の侵害(損…

職業人として生きて行く自信を喪失させるような注意をする先輩を新人から引き離すべき注意義務

1.新人指導に向かない先輩「〇〇に向いていない」 新人時代、上司や先輩から「お前は、〇〇(教師・弁護士・営業等)に向いていない。」という叱責を受けた人は少なくないと思います。 何一つ具体的な課題の解決に結びつかないうえ、経験不足から先輩の言…

公務員の懲戒処分-処分説明書の拘束力

1.処分理由書 懲戒処分を受けた公務員は、処分理由の書かれた説明書の交付を求めることができます。 その法的な根拠を挙げると、国家公務員法89条は、 「職員に対し、その意に反して、降給し、降任し、休職し、免職し、その他これに対しいちじるしく不利…

公務員の懲戒処分-公金の詐取の代償は大きい:27万0831円の給油代を渋って1811万0396円の退職手当を不意にした件

1.公金の横領、窃取、詐取 公金の横領、窃取、詐取は重大な非違行為とされています。 国家公務員の場合、 平成12年3月31日職職-68「懲戒処分の指針について」 により、 「公金又は官物を横領した職員は、免職とする。」 「公金又は官物を窃取した…

公務員の懲戒処分-事情聴取と弁明の機会付与が渾然一体となっている問題

1.公務員の懲戒処分と弁明の機会 行政手続法上、不利益処分をしようとする場合には、聴聞や弁明の機会の付与など、名宛人が意見陳述するための手続を執らなければならないとされています(行政手続法14条1項)。 しかし、公務員の職務又は身分に関して…

公務員の懲戒処分-審査請求と同時に取消訴訟を提起する手法の適否

1.審査請求前置 国家公務員法92条の2は、 「第八十九条第一項に規定する処分(懲戒処分など 括弧内筆者)であつて人事院に対して審査請求をすることができるものの取消しの訴えは、審査請求に対する人事院の裁決を経た後でなければ、提起することができ…

標準例に掲げられていない非違行為(ハラスメント加害者による関係者に対する圧力)の処分量定

1.懲戒処分の標準例 公務員の懲戒処分に関しては、どのような行為をすれば、どのような処分量定になるのかについての標準例が定められているのが一般です。 例えば、国家公務員について言うと、「懲戒処分の指針について(平成12年3月31日職職-68…

処分事由説明書に記載する事実に求められる具体性-被害者の氏名等の記載は必要的か

1.処分事由説明書 地方公務員法49条1項は、 「任命権者は、職員に対し、懲戒その他その意に反すると認める不利益な処分を行う場合においては、その際、その職員に対し処分の事由を記載した説明書を交付しなければならない。」 と規定しています。 国家…

早出残業が労働時間としてカウントされにくいのは労災も同じか?

1.始業時刻の認定 始業時刻前に出勤して稼働していたとしても、それを労働時間として認定してもらうことは決して容易ではありません。そのことは、以前、 業務開始時刻(早出残業)の認定は厳しい - 弁護士 師子角允彬のブログ という記事で述べたとおりで…

懲戒処分の処分事由説明書に求められる理由提示の方法

1.処分事由説明書 以前、 「地方公務員である自動車運転士のコンビニ店員へのセクハラ(フリーランスへのセクハラ問題とも関連)」 という記事を掲載しました。 https://sskdlawyer.hatenablog.com/entry/2019/04/25/130802 この記事の中で、コンビニ店員…

条例が存在しない場合、条件付採用期間中の職員に対する分限事由はどのように理解されるべきか?

1.条件付採用 公務員には「条件付採用」という仕組みがとられています。これは、一定期間、職務を良好な成績で遂行できたことを正式採用の条件とする仕組みであり、民間でいうところの試用期間に相当します。 条件付採用は、国家公務員の場合、国家公務員…

停職処分の枠内において処分に質的な相違は存在するか?

1.地方公務員の懲戒の種類と質的な違い 地方公務員法は、戒告、減給、停職、免職の四つの懲戒処分を規定しています(地方公務員法29条1項)。 それぞれの懲戒処分には、質的な違いがあります。この質的な違いは、懲戒処分が過度に重いものになっていな…

ハラスメントの被害者に配置転換を求める権利性を認めることができるか?

1.労働者は職場に配置転換を求めることができるのか? ハラスメントに関する相談を受けていると、勤務地や部署の変更を請求することができないかと尋ねられることがあります。 しかし、配置転換を使用者に対して権利として請求することができるかというと…

労働時間概念の相対性-労災認定の場面では厳密な労働時間「数」の立証がいらないこともある

1.労災認定の場面における「労働時間」の重要性 精神障害の発症が労災と認定されるためには、時間外労働の時間数が重要な意味を持ちます。 具体的に言うと、 「心理的負荷による精神障害の認定基準について(平成23年12月26日付け 基発1226第1号)(令和2…

自宅作業時間の労働時間性の立証

1.持ち帰り残業 業務量は多いのに勤務先からは早く帰れと言われる、そうした時に自宅に仕事を持ち帰って働いている人がいます。 こうした自宅での作業時間も、使用者の指揮命令下で労務を提供していると認められる限り、労働時間になります。 ただ、自宅で…

職場でのハラスメント、加害者への処分を求めることの権利性Ⅱ(今一歩踏み込んだ例)

1.パワハラ・セクハラ被害者は加害者への指導・処分を求めることが可能か? 以前、 「職場でのハラスメント、加害者への懲戒処分を求めることへの権利性」 という記事を書きました。 https://sskdlawyer.hatenablog.com/entry/2019/11/29/001414 記事の中…

公務員の時間外勤務手当の詐取-懲戒免職処分は適法でも退職手当の全部不支給処分は違法とされた例

1.懲戒免職処分と退職金不支給処分との連動性 公務員の場合、懲戒免職処分と退職金不支給処分とが連動する仕組みがとられています。 国家公務員の場合、退職金の支給/不支給の判断は、国家公務員退職手当法という法律に基づいて行われます。 国家公務員が…

無期転換逃れを指導する行政(地方公共団体)、それに唯々諾々と従う公益法人

1.無期転換逃れ 労働契約法18条1項本文は、 「同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約・・・の契約期間を通算した期間・・・が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、…

町職員同士が結婚した場合、夫婦どちらかに退職を促す慣習の適法性

1.前時代的なルール ネット上に、 「役場内で職員同士結婚、どちらかに退職促す 福井県池田町に慣習残る」 という記事が掲載されていました。 https://news.yahoo.co.jp/articles/f46d747ee4ccd1800acf286d41d9e8a1f5ae1a0e 記事には、 「役場内で結婚した…

マイナス10度下でのスキー機動訓練は危険性のない日常業務?

1.公務災害の認定基準 人事院事務総局勤務条件局長 平成13年12月12日勤補-323「心・血管疾患及び脳血管疾患の公務災害の認定について」という行政通達があります。 これは、心・血管疾患等が公務上災害といえるかどうかを判断するにあたっての認…

公務員の懲戒と弁明・弁解の機会付与

1.公務員の懲戒と弁明の機会付与 事前の弁明の機会付与が不十分なまま、公務員に対する懲戒処分が行われた場合、その効力はどうなるのでしょうか? 以前にもブログで言及したとおり、この問題には二通りの考え方があります。 一つ目は、処分の基礎となる事…

職場での録音に消極的な裁判例の流れ-自己主張を通すための手段としての秘密録音はダメ

1.録音の重要性 労働事件に限ったことではありませんが、訴訟において録音が重要な証拠として機能することは少なくありません。 しかし、近時、職場における録音に、消極的な評価を下す裁判例が続いているように思います。最近の例で言うと、執務室内での…

条例で給与が遡及して増額された場合、残業代の精算が必要にならないのか?

1.人事院の給与勧告 人事院は、労働基本権制約の代償措置として、職員に対し、社会一般の情勢に適応した適正な給与を確保する機能を有するものであり、国家公務員の給与水準を民間企業従業員の給与水準と均衡させること(民間準拠)を基本に勧告を行ってい…

「訓戒」の効力を争うために公法上の確認訴訟は使えるか?

1.懲戒と「訓戒」 公務員の懲戒の種類は法定されています。 例えば、国家公務員法は、免職、停職、減給、戒告の四種類の懲戒処分を規定しています(国家公務員法82条1項)。 しかし、こうした法定の処分以外にも、「訓戒」「訓告」といった名称の独自の…

懲戒免職を依願退職にしてもらえた行政実例

1.懲戒免職が一転して依願退職となったとの報道 ネット上に、 「懲戒免職が一転、『スピーディーに辞めてもらうため』依願退職に」 という記事が掲載されていました。 記事には、 「徳島県三好市が懲戒免職処分とする予定だった職員から、退職届が提出され…

分限免職処分の適法性のチェックポイント

1.分限処分 公務の能率の維持や適性な運営の確保という目的から、職員の意に反する不利益な身分上の変動をもたらす処分を、分限処分といいます。分限処分には、降任、免職、休職、降級の4種類があります(国家公務員法78条、79条、人事院規則11-1…

過労死の労災認定基準の時間外労働時間のカウント

1.過労死の労災認定基準 厚生労働省のパンフレットでは、「過労死」は次のとおり説明されています。 「心筋梗塞などの『心疾患』、脳梗塞などの『脳血管疾患』については、その発症の基礎となる血管病変等が、主に加齢、食生活、生活環境などの日常生活に…