弁護士 師子角允彬のブログ

師子角総合法律事務所(東京:水道橋駅徒歩5分・御茶ノ水駅徒歩7分)の所長弁護士のブログです

2025-04-01から1ヶ月間の記事一覧

労働契約の不更新や労働条件の不利益変更の趣旨の後付けへの対応-人事担当者から会社の意思として伝えられているか?

1.説明がされない問題 雇止めでも労働条件の不利益変更でも人事異動でも、使用者側からその趣旨が明確に説明されないという問題があります。 議論になること自体を防ぎたいのか、明示的に理由を尋ねても、教えてもらえないことが少なくありません。 しかし…

契約不更新の相当性を基礎付けるほどの重大な問題であったとはいえない場合、合理的期待を減殺する事情としての意味は限定的だとされた事例

1.雇止めの二段階審査 労働契約法上、 「当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められる」(契約更新に向けた合理的期待が認められる)場合、 …

有期労働契約期間中の勤務態度不良・職務適格性欠如は、合理的期待の喪失事由なのか? 雇止め事由なのか?

1.勤務態度不良や職務適格性の欠如を伺わせる事実の位置付け 労働契約法上、 「当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められる」(契約更新に…

労働条件の変更提示を伴う雇止め-「同一条件での更新を拒絶することを正当化するような合理的な理由」が必要であるとされた例

1.労働条件の不利益変更を伴う雇止め 変更解約告知という概念があります。 これは「労働条件の変更を申入れ、これに応じない場合には労働契約を解約する旨の意思表示」をいいます(水町勇一郎『詳解 労働法』〔東京大学出版会、第3版、令5〕1024-1…

自衛隊の懲戒処分-「改しゅんの情」はどのように計測されるのか?

1.よく分からない「反省」「改悛」 公務員に限ったことではありませんが、懲戒処分の効力を争うと、処分行政庁や使用者から、 「反省していない」 という主張を出されます。これは、 反省していないのだから、重く処分されるのは当然だ(軽い処分をしなか…

自衛隊の懲戒処分-処分の軽減事由としての「平素の勤務態度が優良な場合」の意味

1.自衛隊の懲戒処分 国家公務員に対する懲戒処分の標準的な処分量定を定めた文書に、 人事院総長発平成12年3月31日職職-68「懲戒処分の指針について」 があります。 懲戒処分の指針について 個別に懲戒処分の指針を定めている代表的な組織が自衛隊…

自衛隊の懲戒処分-財産的損害がない詐欺でも「重大な場合」とされた例

1.自衛隊の懲戒処分 国家公務員に対する懲戒処分の標準的な処分量定を定めた文書に、 人事院総長発平成12年3月31日職職-68「懲戒処分の指針について」 があります。 懲戒処分の指針について ただ、国家公務員であれば、全てこれが適用されるのかと…

解雇されてから労務提供の意思を通知するまでの間のタイムラグ-この期間もバックペイの対象になるのか?

1.労務提供の意思が伝わるタイミング 解雇されても、それが裁判所で違法無効であると判断された場合、労働者は解雇時に遡って賃金の請求をすることができます。いわゆるバックペイの請求です。 バックペイの請求ができるのは、民法536条2項本文が、 「…

法定労働時間を超える所定労働時間の定めをどのように理解するか?

1.現行法上の労働時間規制 現行法上、1日の労働時間は8時間まで、1週間の労働時間は40時間までに制限されています(労働基準法32条)。これを超える所定労働時間を定めることは基本的に許容されていません。 しかし、稀に所定労働時間を超える労働…

新型コロナウイルス感染症拡大の影響による受注量減少で労働者の就労拒否を行ったとの主張が排斥された例

1.ノーワーク・ノーペイの原則と「債権者(使用者)の責めに帰すべき事由」 「ノーワーク・ノーペイの原則」というルールがあります。これは「労働者が就労していない場合には、賃金請求権は発生しない」という原則をいいます(佐々木宗啓ほか編著『類型別…

貴金属加工職人の労働者性-求められた作業を断ることなく行っていたことから諾否の自由が否定された例

1.労働者性の判断基準 労働基準法を始めとする労働関係法令の適用の可否は、ある働き方をしている人が「労働者」に該当するのか否かによって判断されます。そのため、ある人が「労働者」か否かという問題は、実務上、極めて重要なテーマとなています。 あ…

貴金属加工職人の労働者性-具体的な作業方法の指示がなくても使用者が一定の指揮監督を及ぼしていたと認定された例

1.労働者性の判断基準 労働基準法を始めとする労働関係法令の適用の可否は、ある働き方をしている人が「労働者」に該当するのか否かによって判断されます。そのため、ある人が「労働者」か否かという問題は、実務上、極めて重要なテーマとなています。 あ…

トレーニング指導の予約表により早出残業の労働時間性が認められた例

1.早出残業の認定は厳しい タイムカードで労働時間が記録されている場合、終業時刻は基本的にはタイムカードの打刻時間によって認定されます。しかし、始業時刻の場合、所定の始業時刻前にタイムカードが打刻されていた場合であっても、打刻時刻から労働時…

「公休」との記載のあるシフト表を交付したことで休日の振替をしたことになるか?

1.シフト表の交付による休日の振替? 多くの会社では、法定休日を日曜日としています。 しかし、シフト制や変形労働時間制のもとで働いている方は、日曜日も普通に勤務シフトに入れられていることが少なくありません。この場合、シフト表べ別の日が公休日…

不正行為を行った労働者の責任-損害額を盛った弁済同意書の効力に異を唱えたこと等を理由とする懲戒解雇が違法とされた例

1.損害額を盛った弁済同意書に異議を唱えると・・・ 昨日、従業員が不正行為をして会社に損害を与えた場合、会社と従業員との間では損害額の盛られた弁済同意書(債務弁済契約書)が取り交わされやすいという話をしました。 不正行為を行った労働者の責任…

不正行為を行った労働者の責任-損害額を盛った弁済同意書の効力が否定された例

1.会社に財産的な損害を与える不正行為 当たり前のことですが、会社のカードを利用して私物を購入するなどの不正行為に及んでいた場合、それが発覚すると、会社から調査を受けることになります。 そのうえで、(大抵の場合)懲戒処分が行われ、被害弁償を…

講師に博士課程の学生(満期退学)の博士論文の下書きをするよう依頼した大学教授が諭旨解雇された例

1.諭旨解雇に応じるのか? 「使用者が労働者に退職を勧告し、労働者に退職願を提出させたうえで解雇する」ことを「諭旨解雇」といいます。解雇せず、退職扱いにすることを「諭旨退職」といいます(水町勇一郎『詳解 労働法』〔東京大学出版会、第3版、令…

雇止めを阻止するための「更新の申込み」「有期労働契約の締結の申込み」の意義

1.雇止めの効力を争う事件 労働契約法19条柱書は、 「有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の…

個別学生の退学理由に踏み込むことなく、退学率から教員の能力不足・成績不良を判断することが否定された例

1.退学率や離職率による立証 教員の方や、企業で管理職として働いている方から、解雇等に関する相談を受けていると、退学率や離職率を問題視されている例が散見されます。学生が多く退学しているのは当該教員のせいだ、新人が定着しないのは当該管理職のせ…

業務との関連性が薄く、機密性が高い情報にアクセスしたとの会社側の主張が排斥された例

1.会社の情報の不正取得・不正利用 会社の情報の不正取得や不正利用を理由として懲戒処分を受けることがあります。 これが不正競争防止法上の営業秘密不正取得行為のようなものであれば比較的話は単純です。 しかし、不正競争防止法上の「営業秘密」の範囲…

セクハラ被害を訴える時、どこまで強い言葉を使えるのか?

1.セクシュアルハラスメントの被害申告 セクシュアルハラスメント(セクハラ)被害に限ったことではありませんが、ハラスメント被害者が被害申告をする時には、しばしば強い言葉が伴われます。 しかし、こうした強い言葉は、好ましい結果には結び付きにく…

約18年前の賃金の不利益変更の効力を争うことができた例

1.古い事件は争いにくいのが原則だが・・・ 過去にも言及したことがありますが、古い事件を掘り起こすのは基本的には困難です。かなり問題のある解雇であったとしても、何年も前の解雇の効力を問題にできるかといえば、問題にできないことの方が圧倒的に多…

基本給を引き下げて出来高払制を導入するなどの減給措置が不法行為を構成するとされた例

1.賃金減額と不法行為 労働契約法3条1項は、 「労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。」 と規定しています。 労働契約に限った話ではありませんが、契約した内容を、一方当事者が勝手に変…

パワハラが行われている場面に同席していたにもかかわらず、制止することもなく同調した者の責任

1.パワーハラスメントが行われている場面に同席したら・・・ セクシュアルハラスメントが密室で行われやすいのに対し、パワーハラスメントはオープンスペースでも行われることに特徴があります。他の人が見ている前で侮蔑的な言葉を浴びせたり、長時間に渡…

退職の申出と有給休暇の申請に対し、1日でも早く辞めて欲しいと迫ったり、有給休暇の取得を否定する発言を迫ったりすることがパワハラになるとされた例

1.退職する意思を示した労働者への嫌がらせ 職場に対して退職(辞職)の意思を伝えると、会社側から嫌がらせを受けることがあります。この場合に行われる嫌がらせには、 早く辞めろと罵るなど、辞めることを前提としたパターン、 退職妨害など辞めさせない…

労務事情2025年4月1日号の「労働審判だより」に記事が掲載されました

「労働判例」等の判例集を発行している産労総合研究所は、「労務事情」という人事労務の専門誌も発行しています。 今年度から労務事情では「労働審判だより」という新連載が開始されましたが、その第1回目に私が執筆した記事が掲載されました(2025年4…

復職を目指す労働者は産業医に対してどのような姿勢をとるべきか

1.産業医に対する姿勢 休職している方が復職するためには、傷病が「治癒」したといえる必要があります。 ここでいう「治癒」とは「従前の職務を通常の程度に行える健康状態に回復したこと」をいいます(佐々木宗啓ほか編著『類型別 労働関係訴訟の実務Ⅱ』…

休職からの復職-配置される可能性がある他の業務についての労務提供の申し出の方法

1.復職の可否の判断 休職している方が復職するためには、傷病が「治癒」したといえる必要がありま。 ここでいう「治癒」とは「従前の職務を通常の程度に行える健康状態に回復したこと」をいいます(佐々木宗啓ほか編著『類型別 労働関係訴訟の実務Ⅱ』〔青…

職務適格性の欠如を理由とする解雇-職種変更の提案をする以外に、元々の職種との関係で業務改善について書面等で明確に具体的な指示を行うべきとされた例

1.職務適格性の欠如を理由とする解雇 職務適格性の欠如を理由とする解雇の可否が問題になる時、しばしば、配転や職種変更の提案がされたのかどうかが問題になります。 しかし、仕事に対しては労働者の側もそれなりに思い入れを持っているのが普通です。配…

一部門のマネージャーでは管理監督者としての権限を有していたとは認められないとされた例

1.管理監督者性 管理監督者には、労働基準法上の労働時間規制が適用されません(労働基準法41条2号)。俗に、管理職に残業代が支払われないいといわれるのは、このためです。 残業代が支払われるのか/支払われないのかの分水嶺になることから、管理監…