弁護士 師子角允彬のブログ

師子角総合法律事務所(東京:水道橋駅徒歩5分・御茶ノ水駅徒歩7分)の所長弁護士のブログです

2024-10-01から1ヶ月間の記事一覧

合意退職の争い方-「もういいです」の発言単体では退職の合意があったとは認められないとされた例

1.退職勧奨で強引に合意が取得される問題 退職勧奨については、次のように理解されています。 「勧奨行為を行うことは基本的に自由である」 「しかしながら、社会的相当性を逸脱した態様での半強制的ないし執拗な退職勧奨行為が行われた場合には、労働者は…

合意退職の争い方-自ら退職を申し出た者が送るには不自然な内容のメッセージを同僚に送っていたことが効いた例

1.退職勧奨で流されないためには・・・ 退職勧奨が行われる時など、労働者の心情が、 雇用の継続を希望するのか、 退職をするのか、 で揺れ動いていることがあります。 こうした場面では、しばしば使用者側から強い説得が行われがちです。そして、強い説得…

合意退職の争い方-会社が敢えて所定の退職手続とは異なる方法を採るのであれば、それについての十分な説明と労働者の了承を得ることが求められるとされた例

1.急ぎで書面が作成されることへの対応 退職勧奨が行われる時など、労働者の心情が、 雇用の継続を希望するのか、 退職をするのか、 で揺れ動いていることがあります。 こうした場面では、しばしば使用者側から強い説得が行われがちです。そして、強い説得…

残業代請求-何時顧客が来店するか分からない美容室・理容室において、休憩時間が1時間ではなく30分とされた例

1.休憩時間とされている時間の労働時間性の立証 1日の労働時間が8時間を超える場合、使用者には少なくとも1時間の休憩時間を付与する義務があります(労働基準法34条1項)。そのため、多くの企業では1日8時間労働の労働者に対し、1時間の休憩時間…

交通費手当が割増賃金(残業代)の基礎賃金に含まれるとされた例

1.割増賃金(残業代)の計算方法 割増賃金(残業代)は、 通常の労働時間の賃金の計算額×割増率 によって計算されます。 通常の労働時間の賃金は、 時間単価×時間外労働等の時間数 によって表されます。 時間単価は、月給制の場合、 月によって定められた…

更衣時間の労働時間性の立証のポイント-着替えが義務付けられていたか?

1.更衣時間の労働時間性 制服や作業服への更衣時間の労働時間該当性については、一般に、次のとおり理解されています。 「労働者が就業を命じられた業務を行う前段階の・・・作業服・作業靴への着替え・履替えなどの業務の準備行為は、労務提供そのもので…

第二東京弁護士会労働問題検討委員会「Q&A 実務家のためのフリーランス法のポイントと実務対応」(新日本法規)が発刊されました

新日本法規出版から、 第二東京弁護士会労働問題検討委員会「Q&A 実務家のためのフリーランス法のポイントと実務対応」 という書籍が発刊されました。 Q&A 実務家のためのフリーランス法のポイントと実務対応|商品を探す | 新日本法規WEBサイト これ…

解約留保権の行使期間-試用期間終了後の留保解約権行使は認められないとされた例

1.試用期間の勤務状況を評価したうえでなされる解雇(留保解約権行使) 労働者の採用にあたって、入社後の一定期間を試用期間とし、その間に労働させる中で適性を評価して本採用するかどうかを決定している会社は少なくありません(第二東京弁護士会労働問…

個別労働契約に試用期間延長の定めがない場合に、試用期間を延長することは許されるのか?

1.試用期間延長の二面性 労働者の採用にあたって、入社後の一定期間を試用期間とし、その間に労働させる中で適性を評価して本採用するかどうかを決定している会社は少なくありません(第二東京弁護士会労働問題検討委員会『労働事件ハンドブック』〔労働開…

業務量の調整を労働者自身で行うことができたなどの事情があったとしても、使用者は長時間労働で体調を崩すことがないように配慮する義務を負うとされた例

1.安全配慮義務と長時間労働 労働契約法5条は、 「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」 と規定しています。 この条文との関係で、実務上、しばしば長時間労…

早出残業に労働時間性が認められた例

1.早出残業の認定は厳しい タイムカードで労働時間が記録されている場合、終業時刻は基本的にはタイムカードの打刻時間によって認定されます。しかし、始業時刻の場合、所定の始業時刻前にタイムカードが打刻されていた場合であっても、打刻時刻から労働時…

宛先の会社名の誤記と退職届等の効力

1.退職をめぐるトラブル 退職時に労働者が不安に思うポイントには、大雑把に言って、 ① 辞めさせてくれない(退職妨害)、 ② 辞めさせてはくれるけれども、辛く当たられる(ハラスメント)、 の二つがあります。 いずれの不安を解消するうえでも、 退職の…

残業代を請求すると唐突に行われる「勤務時間中にサボっていた」という趣旨の主張が一蹴された例

1.残業代請求と「勤務時間中にサボっていた」という反論 賃金台帳やタイムカードなど、使用者側の資料に基づいて始業時刻や終業時刻を特定したうえで金額計算をしているのに、未払残業代を請求すると「勤務時間中にサボっていたから残業代は払わない」とい…

退職する労働者に対し、取締役が「自閉症や対人恐怖症ではないかと言う人もいたが・・・」などと揶揄したことが違法とされた例

1.精神疾患、精神障害の名称が素人によって安易に使われる問題 精神疾患、精神障害に対する社会的な理解が進むにつれ、精神疾患、精神障害の名称は、一昔前に比べれば、随分と抵抗感なく使われるようになったように思います。 偏見が少なくなっているのは…

基本給減、総支給額増の賃金変更と自由な意思の法理-「説明を受けて理解しました」という同意書があっても争える

1.自由な意思の法理 最二小判平28.2.19労働判例1136-6山梨県民信用組合事件は、 「使用者が提示した労働条件の変更が賃金や退職金に関するものである場合には、当該変更を受け入れる旨の労働者の行為があるとしても、労働者が使用者に使用さ…

賃料等の資料が確認されないまま支給されていた「住宅手当」が残業代の基礎賃金に組み入れられた例

1.割増賃金(残業代)の計算方法 割増賃金(残業代)は、 通常の労働時間の賃金の計算額×割増率 によって計算されます。 通常の労働時間の賃金は、 時間単価×時間外労働等の時間数 によって表されます。 時間単価は、月給制の場合、 月によって定められた…

労働時間の立証方法-労働基準監督官から聞き取った時間を記載した書面

1.実労働時間の主張立証責任 割増賃金(残業代)を請求するにあたっての実労働時間の主張立証責任は、原告である労働者の側にあります。したがって、割増賃金を請求するにあたっては、労働者の側で始業時刻・終業時刻を特定し、その間、労務を提供していた…

1か月単位の変形労働時間制の攻め方-月に177時間以上働いていないか?

1.1か月単位の変形労働時間制 労働基準法32条の2第1項は、 「使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書…

施行日が空欄になっていることが就業規則の周知性を否定するための根拠となった事案

1.就業規則の周知性 労働契約法7条本文は、 「労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとす…

タイムカードや勤務実績報告書に記載されている「休憩時間」について、労働時間であるとされた例

1.タイムカードの威力 残業代請求にあたり、タイムカードは「機械的正確性があり、成立に使用者が関与していて業務関連性も明白な証拠」として位置付けられています。 そして「タイムカード・・・等による客観的記録を利用した時間管理がされている場合に…

役職の退任に伴う職能資格の引下げに必要な就業規則上の根拠は「正当な理由」では足りないと示唆された例

1.職能資格制度 職能資格制度とは、従業員の能力の程度に応じて役職とは異なる「資格」を付与する制度をいいます。 https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000681930.pdf ここでいう「職能」とは、技能経験の蓄積の結果としての職務遂行能力を意味し、…

パワーハラスメント等を理由とする懲戒解雇の否定例

1.ハラスメントを理由とする解雇 セクシュアルハラスメントやパワーハラスメントなどのハラスメントに対する意識は、一昔前よりも随分と高まっています。慰謝料額は措くとして、ハラスメントの成否という意味では、裁判所の姿勢も、傾向的には厳しくなって…

「基本給は、職員の職務内容、技能、勤務成績、年齢等を考慮して各人別に決定する」との定めを根拠として配転に伴う賃金減額ができるのか?

1.配転に伴う賃金減額 降職に伴う賃金減額は、 「就業規則において降職と賃金減額が連動することが明らかとされているのであれば、賃金減額それ自体の有効性ではなく、賃金減額をもたらす降職の有効性」 という形で問題となり、職能資格や資格等級等の低下…

その退職金の不支給事由、役員としてのものか? 職員(従業員・労働者)としてのものか?

1.退職金不支給・減額条項の限定解釈 懲戒解雇など一定の事由がある場合に、就業規則等で退職金を不支給・減額支給とする条項が置かれることがあります。これを退職金不支給・減額条項といいます。 この退職金不支給・減額条項に基づいて、退職金を不支給…

家賃手当が割増賃金(残業代)の基礎賃金に含まれるとされた例

1.割増賃金(残業代)の計算方法 割増賃金(残業代)は、 通常の労働時間の賃金の計算額×割増率 によって計算されます。 通常の労働時間の賃金は、 時間単価×時間外労働等の時間数 によって表されます。 時間単価は、月給制の場合、 月によって定められた…

タイムカードのない日の労働時間・休憩時間を、同月のタイムカードのある日の平均値から推計することが認められた例

1.実労働時間の主張立証責任 割増賃金(残業代)を請求するにあたっての実労働時間の主張立証責任は、原告である労働者の側にあります。したがって、割増賃金を請求するにあたっては、労働者の側で始業時刻・終業時刻を特定し、その間、労務を提供していた…

労災の保険給付の支給決定を事業主(使用者)が争うことは許されるのか?(決着)

1.労災保険制度とメリット制 労働者災害補償保険法は、業務災害や通勤災害により被災した労働者に対し、手厚い保険給付を行うことを規定しています。 この保険給付を行うための費用は、原則として事業主が負担する保険料によって賄われています。事業主が…

懲戒権行使としての降格を、人事権行使としての降格に転換できるか?

1.懲戒権行使としての降格/人事権行使としての降格 古くからある問題の一つに、懲戒解雇を普通解雇に転換できるか? という論点があります。 この論点に関しては、一般に、次のように理解されています。 「使用者が普通解雇の予備的な意思表示をしていな…

会話を避ける態度・採用業務からの除外・業務用機器の返却請求・他と異なる名刺デザイン・1人だけ在宅勤務に不法行為該当性が認められた例

1.人間関係からの切り離し 職場におけるパワーハラスメントとは、 職場において行われる ① 優越的な関係を背景とした言動であって、 ② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、 ③ 労働者の就業環境が害されるものであり、 ①から③までの要素を全て満…

セクハラを理由とする休業命令、接触禁止命令が違法とされた例

1.セクシュアルハラスメントに対する過剰反応や冤罪 最一小判平27.2.26労働判例1109-5L館事件が、 「職場におけるセクハラ行為については、被害者が内心でこれに著しい不快感や嫌悪感等を抱きながらも、職場の人間関係の悪化等を懸念して、…