弁護士 師子角允彬のブログ

師子角総合法律事務所(東京:水道橋駅徒歩5分・御茶ノ水駅徒歩7分)の所長弁護士のブログです

損害賠償請求事件

加害者の過失の重大性が根拠となって過失相殺が否定された例

1.広範すぎる過失相殺 民法722条2項は、 「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。」 と規定しています。 被害者に過失がある場合、この規定を根拠に賠償額の一部がカットされます。これを「過失…

部活動の外部指導者による暴行、「サル」呼ばわりするイジリの違法性

1.外部指導者・部活動指導員の問題 学校教育法施行規則に基づいて、 「スポーツ、文化、科学等に関する教育活動(・・・教育課程として行われるものを除く)に係る技術的な指導に従事する」 方を部活動指導員といいます(学校教育法施行規則78条の2、1…

変な髪型にされない権利-中学校教諭が生徒の髪を切ったことに違法性が認められた例

1.素人によるヘアカット 子どもの頃、親や学校の教師から髪を切られて不本意な思いをした方は、少なくないのではないかと思います。 素人が切るのであるから、当たり前のことです。理容師は理容師法で、美容師は美容師法で、それぞれ国家資格として位置付…

単独では不法行為に該当しなくても、継続すれば不法行為になるという理屈

1.ハラスメントを理由とする損害賠償請求 ハラスメントが問題となる事案では、一つ一つのエピソードとしては大したインパクトを持たないものの、全体としてみると被害者に強い精神的苦痛を生じさせているといったことが少なくありません。こうした事案では…

アカデミックハラスメント-論文の共著者からの除外

1.アカデミックハラスメント(アカハラ) 大学等の養育・研究の場で生じるハラスメントを、アカデミックハラスメント(アカハラ)といいます。 セクシュアルハラスメントに関しては、平成18年10月11日 厚生労働省告示第615号「事業主が職場におけ…

不妊治療を契機に関係が悪化する夫婦が少なくない中、医療機関は男性側同意をどのように確認すべきか?

1.医療機関の責任 昨日、夫氏名欄の署名を偽造した同意書を不妊治療を行う医療機関に提出し、融解胚移植を受けて妊娠、出産した女性に対し、男性側への損害賠償金の支払いが命じられた裁判例を紹介しました。 望まない子をもうけさせられた男性の慰謝料 - …

望まない子をもうけさせられた男性の慰謝料

1.不妊治療中の夫婦の破局 不妊治療には強い負荷がかかります。 精神的な負荷について言うと、平成 30 年 1 月 厚生労働省 政策統括官付政策評価官室 アフターサービス推進室「不妊のこと、1 人で悩まないで『不妊専門相談センター』の相談対応を中心とし…

アカデミック・ハラスメント-研究指導・博士論文の評価の問題

1.学生が怖い? アカデミック・ハラスメントに関しては、学生側だけではなく、大学教員の方から相談を受けることもあります。 個人的な経験の範囲では、普通に指導して成果物が合格水準に達していなかったから、そのような評価をしただけなのに、学生から…

アカデミック・ハラスメント-指導担当教員の変更、学位論文審査委員からの除斥の権利性

1.大学院生はどこまで何を要求できるのか? アカデミック・ハラスメントの被害を受けたとき、学生は何をどこまで要求することができるのでしょうか? 昨日述べたとおり、アカデミック・ハラスメントを直接規制する法規範はありません。アカデミック・ハラ…

アカデミック・ハラスメント-調査要請の放置はどの程度で違法になるのか?

1.アカデミック・ハラスメント 大学等の養育・研究の場で生じるハラスメントを、アカデミック・ハラスメントといいます。 アカデミック・ハラスメントには、労働問題以外の要素も多分に含まれています。しかし、労働関係ハラスメントの考え方が類推・応用…

死者が当事者である事件、周辺から事情聴取する時の注意点

1.農業アイドル自殺訴訟の経過に関する記事 ネット上に、 「『農業アイドル自殺訴訟』で場外乱闘 タレント弁護士がちらつかせた“月9出演”話」 という記事が掲載されています。 https://news.yahoo.co.jp/articles/4e7aa69c8949152bfffdad8696c36c79384d357…

弁護士が弁護士を訴える時、注意義務のレベルは加重されるか?

1.弁護士を訴えて欲しいという依頼に慎重なのは慣れ合いか? 弁護士を訴えたいという相談があった場合、多くの弁護士は慎重な態度をとるのではないかと思います。 これに対し、時折、外野から仲間同士の慣れ合いだという批判が飛んでくることがあります。…

自殺の選択、両親の別居・離婚、発達障害-これらは被害者側の「過失」なのか?

1.過失相殺 民法722条2項は、 「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。」 と規定してます。 過失相殺における「過失」には、被害者自身の落ち度だけではなく、被害者側にいる人の落ち度、更には…

司法試験:新型コロナウイルス感染症等の罹患が疑われる場合に受験を認めない措置は適法だろうか

1.新型コロナウイルス感染症当の感染防止対策 7月15日に司法試験委員会から、 「令和2年司法試験及び司法試験予備試験に係る新型コロナウイルス感染症等の感染防止対策について」 という文書が出されました。 http://www.moj.go.jp/content/001324266.…

成人した精神障害者に対し、老親は監督義務を負うのか?

1.家族による監督義務 認知症に罹患した夫Aが鉄道線路内に立ち入り列車と衝突して死亡した事故に関し、鉄道会社がAの妻や長男に対して監督義務の懈怠を主張して損害賠償を請求した事件があります。 この事件で、最高裁は、 「民法752条は、夫婦の同居…

弁護権の濫用?

1.弁護権の濫用? ネット上に、 「弁護士の弁護権の濫用による一層の混迷 ― 千葉ゴルフ場鉄塔崩壊事件 ―」 なる記事が掲載されていました。 https://www.data-max.co.jp/article/31690 記事が指摘する「千葉ゴルフ場鉄塔崩壊事件」とは、おそらく、 「関東…