弁護士 師子角允彬のブログ

師子角総合法律事務所(東京:水道橋駅徒歩5分・御茶ノ水駅徒歩7分)の所長弁護士のブログです

労働事件

パワーハラスメントに係る事実確認のために提供した資料に対するコントロール

1.パワーハラスメントを防止するための雇用管理上講ずべき措置 労働施策総合推進法30条の2第1項は、 「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環…

負傷から2年以上経過して発症した精神障害に業務起因性が認められた例

1.精神障害の労災認定 精神障害の労災認定について、厚生労働省は、 平成23年12月26日 基発1226第1号「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(最終改正:令和2年8月21日 基発0821第4号) という基準を設けています。 精神障…

未払賃金請求か損害賠償請求か

1.二つの法律構成 解雇の効力を争って金銭的な請求を行うにあたっては、二通りの法律構成が考えられます。 一つは、未払賃金としての構成です。解雇が無効である場合、労働契約は存続していることになります。契約が存続しているのに働けなかったのは労務…

名目だけの代表取締役になるリスク-合計5000万円以上の損害賠償責任を負った例

1.名義貸しに伴うリスク この仕事をしていると、安易に他人に名義を貸して、過大な責任を負う方を目にすることが少なくありません。 過大な責任に繋がる名義貸しには、大きく言って二つの類型があります。 一つ目は、借金の名義貸しです。他人に頼まれて消…

退職者を引きとどめる言動「逃げるのか」に違法性が認められた例

1.退職妨害 労働者の退職を妨げようとする時の使用者の言動は、大体において似通っています。その中の一つに、「逃げるのか。」というものがあります。 この「逃げるのか。」という言葉は、労働環境・勤務条件の過酷さから目を逸らし、退職の理由を個人の…

合理的理由なく業務習熟を妨げない義務-メモの禁止に違法性が認められた例

1.メモの禁止 近時、報道等で「メモをとらない新人」についての悩みが取り上げられるようになっています。メモは仕事を覚え、ミスを防ぐうえで役に立ちます。それなのに新人がメモを取ろうとしないというのが、大体のパターンです。 それでは、逆に、新人…

文言自体は侮辱的ではなくても、嫌がっていることを言い続ければハラスメント・不法行為になるとされた例

1.パワーハラスメント パワーハラスメントの類型の一つに、 「精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言) 」 があります。 令和2年1月15日 厚生労働省告示第5号「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇…

即戦力中途採用の場合でも、能力不足解雇にあたり指導改善の機会付与を要するとされた例

1.能力不足を理由とする解雇 労働契約法16条は、 「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」 と規定しています。 能力不足(勤務成績不良)を理由とする解雇につ…

業務委託契約で働いているエステシャン等の労働者性

1.エステシャン等の労働者性 このブログでも何度か言及したことがありますが、私の所属している第二東京弁護士会では、厚生労働省からの委託を受けて、フリーランス・トラブル110番という相談事業を実施しています。 フリーランス・トラブル110番【厚生…

就活セクハラ・入学セクハラへの対抗手段-同意していたという加害者の弁解を排斥するためには

1.就活セクハラ・入学セクハラ 厚生労働省告示第615号 平成18年10月11日 事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(最終改正:令和2年1月15日 厚生労働省告示第6号)は、 「職場におけ…

期間途中で業務委託契約を解除された業務受託者は、残期間に得られたはずの報酬を請求できるのか?

1.期間途中での業務委託契約の解除 業務委託契約に基づいて働いているフリーランスの方からよく寄せられる相談類型の一つに、取引先から契約を切られたというものがあります。 業務委託契約の多くは、準委任契約という契約類型に該当します(民法656条…

労働契約上の権利を有する地位にあることを主張するにあたり、雇用契約か委任契約かという争点設定はとらないこと

1.雇用契約と委任契約 雇用契約は、 「当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる」 契約です(民法623条)。 他方、委任契約は、 「当事者の一方が法律…

雇止め-合理的期待は雇い主の変更と共に引き継がれるか?

1.雇止め法理(合理的期待) 労働契約法上、 「当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められる」(契約更新に向けた合理的期待が認められる) …

代表取締役に労働者性が認められた例

1.労働者と代表取締役 労働基準法上、「労働者」とは「職業の種類を問わず、事業又は事務所・・・に使用される者で、賃金を支払われる者をいう」と定義されています(労働基準法9条)。 これに対し、株式会社の「代表取締役」とは「株式会社の業務に関す…

アサイン制の労働者-仕事がないのは誰のせい?

1.アサイン制 特定の上司が特定の部下に対して一方的に業務を付与するという形をとらず、個別のプロジェクトや業務毎に上級職員が部下を選んで業務を依頼するという仕組みをアサイン制といいます。 アサイン制のもとで働いている労働者は、上級職員から業…

ストーカー行為を理由とする諭旨免職処分の有効性-二次被害を与えるような態度は悪手

1.諭旨免職処分の有効性 労働契約法15条は、 「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場…

子どもが小さく夜勤の難しい労働者に対する配転に「不当な動機・目的」が認められた例

1.配転命令の濫用 配転命令権が権利濫用となる要件について、最高裁判例(最二小判昭61.7.14労働判例477-6 東亜ペイント事件)は、 「使用者は業務上の必要に応じ、その裁量により労働者の勤務場所を決定することができるものというべきである…

追い出し部屋への配転の慰謝料

1.追い出し部屋への配転 従業員に退職を促すことを目的として設けられたとみられる部署を称して「追い出し部屋」と言われることがあります。社会問題化すると共に、従業員を一人別室に離隔するといった極端なケースは、あまり見られなくなってきたように思…

同一の労働条件による契約更新を期待できない場合の更新拒絶事由の判断方法

1.雇止め法理 労働契約法上、 「当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められる」(契約更新に向けた合理的期待が認められる) 場合、有期労働…

合理的期待の内容-同一の労働条件で更新されることへの期待でなければならないのか?

1.雇止め法理-合理的期待 労働契約法上、 「当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められる」(契約更新に向けた合理的期待が認められる) 場…

ハラスメント防止委員会の決定に対する名誉回復措置請求の可否

1.名誉回復措置請求 民法730条は、 「他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。」 と規定しています。 これは名誉毀損に特有の…

アカデミックハラスメント-外国人(帰化人)同僚に対する国籍の揶揄

1.アカデミックハラスメント 大学等の養育・研究の場で生じるハラスメントを、アカデミックハラスメント(アカハラ)といいます。 セクシュアルハラスメント、マタニティハラスメント、パワーハラスメントとは異なり、アカデミックハラスメントは、法令上…

名誉回復措置請求の必要性の認定・掲載文言についての参考例

1.名誉回復措置請求 労働者に懲戒処分を行ったことが、社内で公示されることがあります。こうした場合、懲戒処分の効力を争うにあたり、名誉回復のための措置を講じることまで求めて行きたいという気持ちを持つ方は少なくありません。 こうした必要に応え…

閉じられた組織内における処分の公示・掲示と、名誉毀損における公然性の関係

1.処分の社内公表 労働者に懲戒処分等を行った場合に、使用者がこれを社内公表することがあります。 一般論として、懲戒処分を受けたことやその内容は、社会的評価を下げる事実に該当します。そのため、労働者が処分の効力を争って法的措置をとる場合、し…

転職先の会社であれば従前と同条件で取引への対応が可能である旨の記載の手紙の証拠力が低く評価された例

1.取引先奪取に関係する問題 取引先を奪取したとのことで、旧勤務先と退職した労働者とが紛争状態に陥ることは少なくありません。こうした事案では、取引先が旧勤務先を見限って自発的に他業者と取引するに至ったのか、それとも、労働者の側で何等かの加害…

労災の不支給決定は何度でも争えるのか?

1.再度の労災申請 確定した判決には、「既判力」という効力が発生します(民事訴訟法114条1項)。これは紛争の蒸し返しを防ぐための効力です。当事者は既判力の生じた判断と矛盾する主張をすることができなくなりますし、裁判所は既判力の生じた判断と…

早期に代理人弁護士に依頼するメリット-供述の変遷を指摘されるリスクの低減

1.事実認定における「供述の変遷」 事実を立証する方法は、録音・録画といった客観的な証拠に限られるわけではありません。人の供述も証拠の一つです。話していることが信用できると判断される場合、その人の供述が根拠となって事実が認定されます。 客観…

診断書や主治医意見書があっても「会社のせいで(精神的な)病気になった」という主張が通りにくい理由

1.診断書や主治医意見があれば「会社のせい」といえるか? 労働問題に関連して「会社のせいで(精神的な)病気になった。」という相談を寄せられることは、少なくありません。相談者は、往々にして「診断書がある。」「主治医が意見書を作ってくれると言っ…

承認のない残業も黙認・放任されていれば労働時間にカウントされる

1.承認制のもとで黙認・放任されていた残業 時間外労働に従事するにあたり、所属長の承認を要件としている会社は、少なくありません。こうした会社において、業務量が多いにも関わらず、承認が得られない・承認を申請すると渋い顔をされるといった理由から…

不正行為に係る事実調査のための自宅待機命令と休業手当

1.不正行為に係る事実調査のための自宅待機命令 実務上、懲戒処分の前段階として、事実調査等を行う際に、処分予定者が職場内に存在することにより調査に支障が生じること等を回避するため、処分確定までの一定期間、自宅待機を命じることがあります(自宅…