弁護士 師子角允彬のブログ

師子角総合法律事務所(東京:水道橋駅徒歩5分・御茶ノ水駅徒歩7分)の所長弁護士のブログです

労働事件

業務委託契約の形がとられている英会話講師の労働者性

1.業務委託契約か労働契約か? 厚生労働省から委託を受けて、第二東京弁護士会では、フリーランス・トラブル110番という相談・紛争解決事業を実施しています。 『フリーランス・トラブル110番』の開始について|第二東京弁護士会 フリーランス・トラ…

無期・フルタイムの労働者間での労働条件格差の問題にどう取り組むか

1.労働条件格差に対する法規制 短時間労働者と無期正社員との間での労働条件格差、有期契約労働者と無期正社員との間での労働条件格差に関しては、 「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」 という名前の法律で是正が図られています。 具体的に言…

障害者虐待防止法上の通報を理由とする不利益取扱いの禁止の射程

1.通報を理由とする不利益取扱いの禁止 障害者虐待防止法16条4項は、 「障害者福祉施設従事者等は、第一項の規定による通報をしたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いを受けない。」 と規定しています。 ここでいう第一項の規定による通報とは …

「農家の嫁にはなれん」との言動の適法性

1.問題ではあっても違法とまでは認められない言動 職場で上司や同僚から不適切な言動を受け、損害賠償を請求することができないかと相談を受けることがあります。 しかし、事実として不適切な言動が認められる場合でも、必ずしも損害賠償まで請求できるわ…

相殺合意が許容される場合

1.賃金全額払いの原則 労働基準法24条1項本文は、 「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」 と規定しています。 この規定があるため、使用者は、労働者に対して債権を持っていたとしても、これを賃金支払債務と相殺する…

火のないところに煙は立たない-苦情は来ること自体が問題なのか?

1.苦情は来たこと自体を非違行為にすることはできるのか? クレームが来ること自体が問題だ-上司からこうした叱責を受けた人は、少なくないと思います。 しかし、顧客の言うことだけを一方的に信じ、クレームに発展した経緯や、問題視されている事実の存…

病気休職中に産業医面談を実施してくれなかったことを安全配慮義務違反に問えるか?

1.権限不行使の問題 国家賠償請求の局面においては、しばしば権限の不行使が問題になります。公権力が適切に権限を行使していれば防げたはずなのに、それをしなかったのは問題だという主張のされ方をします。事件類型としては、安全措置の懈怠、規制処分権…

シフトに入れないことは債権者(使用者)の責めに帰すべき事由になるか?

1.シフトに入れてもらえなかったシフト制労働者の賃金請求 一般論として、違法無効な解雇をされた労働者は、判決が確定した時から解雇された時点まで遡って賃金を請求することができます。 その根拠として理解されているのが、民法536条2項本文です。 …

シフトに入れてもらえないという問題への解決策

1.シフトに入れてもらえない問題 新型コロナウイルスの流行により、生活に困窮するシフト制の労働者が増加しています。なぜ、生活に困窮するのかというと、シフトに入れてもらえなくなっているからです。 シフト制の労働者は、シフトに入って働くことで賃…

給与ファクタリング業者に金銭を返す必要がないとされた例

1.給与ファクタリングとは 給与ファクタリングとは、 「個人が勤務先に対して有する給与(賃金債権)を、給与の支払日前に一定の手数料を徴収して買い取り、給与が支払われた後に、個人を通じて資金の回収を行う」 ことをいいます。 ファクタリングに関す…

雇用調整助成金を利用せず有期労働者を整理解雇することは非常に難しい

1.有期労働者への整理解雇の四要素の適用 整理解雇=経営上の理由による人員削減のための解雇の効力は、①人員削減を行う経営上の必要性、②使用者による十分な解雇回避努力、③被解雇者の選定基準およびその適用の合理性、④被解雇者や労働組合との間の十分な…

雇用調整助成金を利用せずに行われた整理解雇の効力(解雇回避努力との関係)

1.解雇回避努力 整理解雇=経営上の理由による人員削減のための解雇の効力は、①人員削減を行う経営上の必要性、②使用者による十分な解雇回避努力、③被解雇者の選定基準およびその適用の合理性、④被解雇者や労働組合との間の十分な協議等の適正な手続、とい…

軽微な非違行為を理由に定年後再雇用拒否することは許されるか?

1.軽微な非違行為と定年後再雇用の問題 軽微な非違行為を理由に、定年後再雇用を拒否することは許されるのでしょうか? 過去、名古屋高判令2.1.23労働判例1224-98学校法人南山学園(南山大学)事件という裁判例がありました。 これは譴責処分…

公立学校教師(教育職員)の持ち帰り残業と公務災害

1.教育職員の長時間労働の問題 公立学校教師の長時間労働を問題視する声の高まりを受け、令和2年1月17日、文部科学省から、 「『公立学校の教育職員の業務量の適切な管理その他教育職員の服務を監督する教育委員会が教育職員の健康及び福祉の確保を図…

放漫経営のツケを埋め合わせるための退職金制度の廃止合意の有効性

1.退職金減額合意の効力を論じた裁判例 退職金減額の合意の効力を論じた最高裁判例に、最二小判平28.2.19労働判例1136-6山梨県民信用組合事件があります。 この事件で、最高裁は、 「労働契約の内容である労働条件は、労働者と使用者との個別…

違法行為を理由とする解雇-勤務先から命令されたことは抗弁になるか?

1.違法行為を理由とする不利益取扱い 違法行為をしたことは、多くの場合、懲戒処分などの不利益取扱いの理由になります。この違法行為が、自発的に行われたことであれば、責任をとらされるのも、ある程度は仕方ありません。しかし、違法行為が、勤務先や上…

勤務先の不祥事をマスコミに情報提供することによる報復の危険

1.勤務先の不祥事のマスコミへの情報提供 勤務先の不祥事をマスコミに提供したいという相談を受けることがあります。そのようなことをして何の得があるのかという感覚を持つ方もいると思いますが、こうした相談は意外と多くあります。 マスコミへの情報提…

テレビ番組へのインタビューを理由とする解雇の効力が否定された例

1.記者会見に厳しい裁判所 ジャパンビジネスラボ事件控訴審判決(東京高判令元.11.28労働判例1215-5)、三菱UFJモルガン・スタンレー事件(東京地判令2.4.3労働判例ジャーナル103-84)などの裁判例から分かるとおり、近時の裁判…

裸体写真の送付強要、奴隷契約書の送りつけの慰謝料

1.非典型的なハラスメント事案 暴行や暴言といった典型的なハラスメント事案に関しては、裁判例の集積により、ある程度の相場観が形成されています。 しかし、ハラスメント行為は多岐に渡っており、その全てが典型的であるわけではありません。時には予想…

大学でのハラスメント「こんなことだから他大学に転出できない」「早くどこかの職を探して、ここから出ていけ」

1.大学でのハラスメント 前にも言及したことがありますが、このブログを目にしたという大学職員の方から相談を受けることは少なくありません。 相談を受けていて意外だったのは、封建的な体質の大学が結構多いという事実です。 このことには、おそらく二つ…

事前承認制度のもとでの残業代請求-使用者側の意味のない反論

1.勝手に残業をしていた 残業代を請求したとき、使用者側から、命じていないのに勝手に残業をしていただけだと反論されることがあります。 しかし、このような反論は殆ど意味がありません。明確に残業を禁止していたのであればともかく、単に残業を命じな…

事後的に給与明細に想定残業時間数を付記したところで固定残業代は有効にならない

1.固定残業代の不備の糊塗 固定残業代が有効といえるためには、通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外の割増賃金に当たる部分とが判別できる必要があります(最一小判平24.3.8労働判例1060-5テックジャパン事件、最二小判平29.7.7労…

会社は健康状態を省みずに職責を果たそうとする職務熱心な労働者の存在を考慮した職場環境を構築しなければならない

1.過労で心身を壊した方の損害賠償請求と過失相殺 過労で心身を壊した方(ないしその遺族)が損害賠償を請求すると、使用者側から決まって過失相殺の主張がなされます。 過失相殺というのは、損害の発生や拡大に関して債務者・被害者に過失があったときに…

従業員の過労死に取締役が責任を負うとされた事例

1.取締役への責任追及 過労死した従業員の遺族が民事訴訟で損害賠償を請求する場合、普通は会社を被告として訴えを提起します。経営者(取締役)個人を相手に訴訟提起することは、あまりありません。 主な理由は、 安全配慮義務違反を理由に会社に責任を問…

大学教員の雇止め-教員公募・テニュアポジションへの応募で合理的期待を失わせていいのか?

1.雇止め法理 有期労働契約は、期間の満了により終了するのが原則です。 しかし、労働契約の期間満了時に契約が更新されるものと期待することについて合理的な期待がある場合、使用者が契約を終了させるには、客観的に合理的な理由・社会通念上の相当性が…

戒告・譴責の無効を理由とする損害賠償請求の特殊性-実損ゼロでも弁護士費用を請求できる可能性がある

1.戒告・譴責の特殊性 戒告・譴責といった軽微な懲戒処分の効力を争うことは、経済的な利益の割に難易度の高い事件類型の一つです。 主な理由は、紛争形態の特殊性にあります。 解雇・出勤停止・減給の効力を争う場合、賃金支払請求訴訟の形態をとるため、…

「1コマ1万円」では労働契約の成立は認められない?

1.契約の文言をめぐる同床異夢 契約上の文言をめぐって、各当事者が異なる認識を有することがあります。 例えば、「100円」という文言も、税抜か税込かが表示されていなければ、二通りの理解が有り得ます。売る方は税抜100円・税込110円だと認識…

本人訴訟のリスク-裁判所による強引な結審

1.本人訴訟に対する裁判所の姿勢 代理人弁護士を選任しないで、当事者が自ら訴訟追行することを本人訴訟といいます。 職業柄、原告、被告の双方が本人訴訟である場合の裁判所の訴訟指揮の実情に関しては、あまり良く知りません。しかし、訴訟代理業務をし…

懲戒処分-2年前の非違行為を蒸し返せるか?

1.非違行為を繰り返すことの意味 刑法には、再犯加重というルールがあります。大雑把に言うと、懲役に処せられた方が、刑の執行の終わった日から5年以内に更に罪を犯した場合、刑の上限が2倍に跳ね上がるというルールです(刑法56条、57条参照)。 …

個人情報の入ったパソコンを過失で紛失したことが懲戒事由に該当しないとされた例

1.情報漏洩に対する過剰反応 個人情報保護の意識が高まっているためか、近時、情報漏洩に対し、アンバランスなほど過酷な懲戒処分が行われる例が増えているように思われます。こうした傾向に対する違和感から、何か活用できる裁判例がないかと探していたと…