弁護士 師子角允彬のブログ

師子角総合法律事務所(東京:水道橋駅徒歩5分・御茶ノ水駅徒歩7分)の所長弁護士のブログです

年収が高くても(1600万円超)管理監督者性が否定され、残業代を請求できるとされた例

1.管理監督者性 管理監督者には、時間外勤務手当(残業代)を支払う義務がありません(労働基準法41条2号)。俗に、管理職には残業代を支払う必要がないと言われているルールです。 この管理監督者への該当性は、 ① 職務内容、権限および責任の程度、 ②…

第二東京弁護士会 労働問題検討委員会 副委員長に選任されました

本日、第二東京弁護士会 労働問題検討委員会が開催され、副委員長への選任を受けました。 第二東京弁護士会は、6000名以上の弁護士が所属する大規模な単位会で、45の委員会を擁しています。 第二東京弁護士会とは|第二東京弁護士会 委員会|第二東京…

余計な気は利かせない方がいい-猪の死骸を撤去しようとして飲酒運転をした公務員が退職金の97%を喪失した例

1.懲戒免職処分と退職手当との関係 国家公務員退職手当法は、懲戒免職処分等を受けて退職をした公務員に対しては、退職金の全部又は一部を支給しない処分を行うことができると定めています(国家公務員退職手当法12条参照)。 条文の文言上は「全部又は…

余計な気は利かせない方がいい-猪の死骸を撤去しようとして飲酒運転をした公務員が懲戒免職になった例

1.飲酒運転と懲戒処分 飲酒運転をした公務員は、かなり厳しい懲戒処分を受けることが珍しくありません。 例えば、平成12年3月31日職職-68「懲戒処分の指針について」は、国家公務員の飲酒運転について、 「酒酔い運転をした職員は、免職又は停職と…

介護処遇加算手当(介護職員処遇改善加算金)を残業代の原資に充てることは許されるか?

1.介護職員処遇改善加算 介護職の方の賃金については、以前から低く抑えられすぎているのではないかという問題が指摘されてきました。こうした指摘に応えるため、国は、 介護職員処遇改善加算 という仕組みを設けています(老発0316号 令和3年3月1…

代表取締役が同業他社の業務に従事することを知っていても副業が許可されたことにはならないとされた例

1.副業の推進 平成29年3月28日、内閣官房の「働き方改革実現会議」が「働き方改革実行計画」という文書を発表しました。 働き方改革の実現 | 首相官邸ホームページ http://www.kantei.go.jp/jp/headline/pdf/20170328/01.pdf この文書は、副業・兼業…

年収2500万円を提示されたのに、年収2000万円の契約書を作ってしまっても・・・

1.別法人から残額が支払われると思っていたという主張 昨日、自己調達した防塵マスクを着用して診療にあたったことを理由に、医師が勤務開始初日に即日解雇された裁判例を紹介しました(さいたま地判令3.1.28労働判例ジャーナル109-2 医療法人…

防塵マスクを着用して就労した医師を解雇することは許されるか?

1.新型コロナウイルス感染に対する不安 新型コロナウイルスに感染する不安を感じながら働いている医療従事者の方は、少なくないのではないかと思います。特に、勤務先である病院から感染防止に十分な装備を支給してもらえない場合、その不安は、察するに余…

身体障害を有する年少者も健常者と同様の賃金条件で就労する可能性があるとされた例

1.障害者の逸失利益 事件や事故で被害を受けた方は、加害者に対して損害賠償を請求することができます。賠償を求めることができる損害の一つに「逸失利益」という項目があります。これは、事件や事故がなければ、得られていたはずの利益をいいます。例えば…

健康保険に加入させなかったことを理由とする疑似労働者の慰謝料請求

1.健康保険に加入させてもらえないという問題 健康保険法上の「被保険者」は「適用事業所に使用される者及び任意継続被保険者をいう」と定義されています(健康保険法3条1項参照)。 事業所との間で業務委託契約を締結し、個人事業主として働いている人…

疑似労働者に対する有給休暇の取得妨害の認定

1.擬似労働者への年次有給休暇の取得妨害 労働者の年次有給休暇の取得を妨害することは、不法行為を構成することがあります。ここでいう取得妨害とは、典型的には、労働者の年次有給休暇を取得する意思表示に対し、「事業の正常な運営を妨げる場合」(労働…

業務委託契約の形がとられている英会話講師の労働者性

1.業務委託契約か労働契約か? 厚生労働省から委託を受けて、第二東京弁護士会では、フリーランス・トラブル110番という相談・紛争解決事業を実施しています。 『フリーランス・トラブル110番』の開始について|第二東京弁護士会 フリーランス・トラ…

無期・フルタイムの労働者間での労働条件格差の問題にどう取り組むか

1.労働条件格差に対する法規制 短時間労働者と無期正社員との間での労働条件格差、有期契約労働者と無期正社員との間での労働条件格差に関しては、 「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」 という名前の法律で是正が図られています。 具体的に言…

障害者虐待防止法上の通報を理由とする不利益取扱いの禁止の射程

1.通報を理由とする不利益取扱いの禁止 障害者虐待防止法16条4項は、 「障害者福祉施設従事者等は、第一項の規定による通報をしたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いを受けない。」 と規定しています。 ここでいう第一項の規定による通報とは …

「農家の嫁にはなれん」との言動の適法性

1.問題ではあっても違法とまでは認められない言動 職場で上司や同僚から不適切な言動を受け、損害賠償を請求することができないかと相談を受けることがあります。 しかし、事実として不適切な言動が認められる場合でも、必ずしも損害賠償まで請求できるわ…

相殺合意が許容される場合

1.賃金全額払いの原則 労働基準法24条1項本文は、 「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」 と規定しています。 この規定があるため、使用者は、労働者に対して債権を持っていたとしても、これを賃金支払債務と相殺する…

火のないところに煙は立たない-苦情は来ること自体が問題なのか?

1.苦情は来たこと自体を非違行為にすることはできるのか? クレームが来ること自体が問題だ-上司からこうした叱責を受けた人は、少なくないと思います。 しかし、顧客の言うことだけを一方的に信じ、クレームに発展した経緯や、問題視されている事実の存…

公務員も異動には逆らいにくい

1.整理解雇の制限と広範な配転命令権 本邦の法律上、労働者の責めによらない、いわゆる整理解雇を行うことは、厳格な制限が課せられています。その代わり、使用者には、滅多なことでは無効にならない、広範な配転命令権が付与されています。そして、整理過…

病気休職中に産業医面談を実施してくれなかったことを安全配慮義務違反に問えるか?

1.権限不行使の問題 国家賠償請求の局面においては、しばしば権限の不行使が問題になります。公権力が適切に権限を行使していれば防げたはずなのに、それをしなかったのは問題だという主張のされ方をします。事件類型としては、安全措置の懈怠、規制処分権…

シフトに入れないことは債権者(使用者)の責めに帰すべき事由になるか?

1.シフトに入れてもらえなかったシフト制労働者の賃金請求 一般論として、違法無効な解雇をされた労働者は、判決が確定した時から解雇された時点まで遡って賃金を請求することができます。 その根拠として理解されているのが、民法536条2項本文です。 …

シフトに入れてもらえないという問題への解決策

1.シフトに入れてもらえない問題 新型コロナウイルスの流行により、生活に困窮するシフト制の労働者が増加しています。なぜ、生活に困窮するのかというと、シフトに入れてもらえなくなっているからです。 シフト制の労働者は、シフトに入って働くことで賃…

給与ファクタリング業者に金銭を返す必要がないとされた例

1.給与ファクタリングとは 給与ファクタリングとは、 「個人が勤務先に対して有する給与(賃金債権)を、給与の支払日前に一定の手数料を徴収して買い取り、給与が支払われた後に、個人を通じて資金の回収を行う」 ことをいいます。 ファクタリングに関す…

雇用調整助成金を利用せず有期労働者を整理解雇することは非常に難しい

1.有期労働者への整理解雇の四要素の適用 整理解雇=経営上の理由による人員削減のための解雇の効力は、①人員削減を行う経営上の必要性、②使用者による十分な解雇回避努力、③被解雇者の選定基準およびその適用の合理性、④被解雇者や労働組合との間の十分な…

雇用調整助成金を利用せずに行われた整理解雇の効力(解雇回避努力との関係)

1.解雇回避努力 整理解雇=経営上の理由による人員削減のための解雇の効力は、①人員削減を行う経営上の必要性、②使用者による十分な解雇回避努力、③被解雇者の選定基準およびその適用の合理性、④被解雇者や労働組合との間の十分な協議等の適正な手続、とい…

軽微な非違行為を理由に定年後再雇用拒否することは許されるか?

1.軽微な非違行為と定年後再雇用の問題 軽微な非違行為を理由に、定年後再雇用を拒否することは許されるのでしょうか? 過去、名古屋高判令2.1.23労働判例1224-98学校法人南山学園(南山大学)事件という裁判例がありました。 これは譴責処分…

公立学校教師(教育職員)の持ち帰り残業と公務災害

1.教育職員の長時間労働の問題 公立学校教師の長時間労働を問題視する声の高まりを受け、令和2年1月17日、文部科学省から、 「『公立学校の教育職員の業務量の適切な管理その他教育職員の服務を監督する教育委員会が教育職員の健康及び福祉の確保を図…

放漫経営のツケを埋め合わせるための退職金制度の廃止合意の有効性

1.退職金減額合意の効力を論じた裁判例 退職金減額の合意の効力を論じた最高裁判例に、最二小判平28.2.19労働判例1136-6山梨県民信用組合事件があります。 この事件で、最高裁は、 「労働契約の内容である労働条件は、労働者と使用者との個別…

違法行為を理由とする解雇-勤務先から命令されたことは抗弁になるか?

1.違法行為を理由とする不利益取扱い 違法行為をしたことは、多くの場合、懲戒処分などの不利益取扱いの理由になります。この違法行為が、自発的に行われたことであれば、責任をとらされるのも、ある程度は仕方ありません。しかし、違法行為が、勤務先や上…

勤務先の不祥事をマスコミに情報提供することによる報復の危険

1.勤務先の不祥事のマスコミへの情報提供 勤務先の不祥事をマスコミに提供したいという相談を受けることがあります。そのようなことをして何の得があるのかという感覚を持つ方もいると思いますが、こうした相談は意外と多くあります。 マスコミへの情報提…

テレビ番組へのインタビューを理由とする解雇の効力が否定された例

1.記者会見に厳しい裁判所 ジャパンビジネスラボ事件控訴審判決(東京高判令元.11.28労働判例1215-5)、三菱UFJモルガン・スタンレー事件(東京地判令2.4.3労働判例ジャーナル103-84)などの裁判例から分かるとおり、近時の裁判…