弁護士 師子角允彬のブログ

師子角総合法律事務所(東京:水道橋駅徒歩5分・御茶ノ水駅徒歩7分)の所長弁護士のブログです

ホテルのフロント係の不活動時間の労働時間性

1.残業代の金額が跳ね上がる類型 昨日、残業代が跳ね上がる類型として、変形労働時間制の有効要件が崩れた場合をご紹介させて頂きました。これと並んで残業代の金額が伸びる類型に、仮眠時間などの不活動時間に労働時間性が認められる類型があります。 不…

残業代が跳ね上がる類型-ルーズな変形労働時間制

1.変形労働時間制 変形労働時間制という仕組みがあります。これは、簡単に言えば、業務の繁閑に応じて労働時間を配分する制度です。 変形労働時間制のもとでは、法定労働時間(1日8時間、1週間40時間 労働基準法32条参照)を超える所定労働時間を定…

社員・従業員の個人事業主化-自発的に同意してしまったら、それまでか?

1.社員・従業員の個人事業主化 近時、一部企業の間で、社員・従業員を個人事業主化する動きがあります。名実ともに働き方を変えるもので、社員・従業員の納得のもとで進められるのであれば問題ありませんが、こうしたスキームは、往々にして労働基準法ほか…

定年後再雇用-定年退職時の60%を下回る基本給を設定することが労契法旧20条違反とされた例

1.定年後再雇用-同じ仕事をさせながら賃金を下げることが許されるか? 定年後再雇用された方の賃金水準は、多くの場合、定年前よりも低くなります。より軽易なものへと業務内容が変わっているのであれば、このような取扱いも、理解できなくはありません。…

劇団員の労働者性が一歩前進した事例-稽古・出演の時も労働者

1.劇団員の労働者性 昨年の2月、入団契約を結んだ劇団員の労働者性について判示した裁判例を紹介しました(東京地判令元.9.4労働判例ジャーナル95-48 エアースタジオ事件)。 https://sskdlawyer.hatenablog.com/entry/2020/02/20/010316 エアー…

業務委託契約を利用した脱法的労働者派遣で被派遣者に労働者性が認められた事例

1.労働者派遣法の脱法スキーム 労働者派遣事業は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(労働者派遣法)によって、業務が適正に行われるように規制されています。 こうした法規制を逃れるための古典的な方法に、業務委…

退職者への行き過ぎた慰留に不法行為該当性が認められた例

1.辞められない会社 一昔前に「辞められない会社」という退職妨害をしてくる使用者の存在が話題になりました。こうした退職妨害行為の横行を受けて、現在では、退職したい労働者向けに、法律事務所が退職代行・退職に向けた交渉代理などのサービスの提供を…

普段あたりさわりのない評価をしていた部下に本音を伝える時の留意点

1.部下や後輩に対する評価 部下や後輩の仕事ぶりを評価することは、難しい業務の一つです。期待した水準に達していなかったとしても、そのことをストレートに伝えることが、必ずしも良い結果に繋がるとは限らないからです。できない点ばかり指摘していては…

妊娠中の解雇を理由とする慰謝料請求

1.違法解雇を理由とする慰謝料請求 違法な解雇により精神的苦痛を受けた労働者は、不法行為に基づいて慰謝料を請求することができます。しかし、実務上は、地位確認・賃金請求が認められれると、それに伴って精神的苦痛も慰謝されるとの理由で、慰謝料請求…

社会保険に加入してもらえなかったことを理由とする慰謝料請求

1.社会保険に加入してもらえない 健康保険法48条は、 「適用事業所の事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、被保険者の資格の取得及び喪失並びに報酬月額及び賞与額に関する事項を保険者等に届け出なければならない。」 と規定し、労働者を使用す…

報酬が勤務時間と関係なく定められ、兼業が認められている取締役でも、労働者性を主張できる可能性はある

1.労働者性の判断基準 取締役、請負人、業務受託者など、雇用以外の法形式のもとで働いている人がいます。こうした方々の働き方に関わる問題を考えるにあたっては、労働者かどうかが重要な意味を持ちます。労働者性が認められれば、労働基準法や労働契約法…

整理解雇場面での職種限定合意と解雇回避措置の一つとしての他職種への配置転換の可能性

1.解雇回避措置の一つとしての他職種への配置転換の可能性 一般論として、解雇の可否を検討するにあたっては、前もって解雇回避のために相当な措置がとられていたのかどうかが、考慮要素の一つになります。そして、解雇回避のために相当な措置がとられたと…

学部廃止に伴う大学教授の整理解雇-他学部への異動の可否を検討する必要はあるか?

1.整理解雇の解雇回避措置 整理解雇については、①人員削減の必要性、②解雇回避措置の相当性、③人選の合理性、④手続の相当性を中心に、その有効性が検討されています(白石哲編著『労働関係訴訟の実務』〔商事法務、第2版、平30〕363頁参照)。 解雇…

新型コロナウイルスの流行が賃金仮払いの仮処分に与える影響

1.賃金仮払いの仮処分 解雇された労働者は、その時から収入の途を絶たれます。生活費に余裕のない労働者が解雇の効力を争う方法としては、 労働審判を申立て、短期間での紛争解決を図る、 雇用保険の仮給付を受給する、 他社就労する、 賃金仮払いの仮処分…

性同一性障害の男性の化粧を禁止することは許されるのか?

1.性同一性障害 性同一性障害(Gender Dysphoria/Gender Identity Disorder; GD/GID)とは、性別の自己認知(Gender Identity;心の性)と身体の性(Sex)が一致せずに悩む状態であるとされています。 性同一性障害 | 泌尿器科の病気について | 名古屋大学…

不正行為の調査をするための自宅待機期間中の賃金の支払義務

1.不正行為の調査をするための自宅待機命令 非違行為を犯したことが疑われる従業員に対し、不正調査に支障が生じることを避けるため、懲戒処分を行うまでの間、自宅待機が命じられることがあります。 自宅待機命令の法的性質に関しては二通りの理解があり…

会社から不正行為の調査を受ける時、どのように対応すべきか

1.不正行為の調査への対応のアドバイス 会社から不正行為の調査を受けている労働者の方から、どのように対応すればよいのかと相談を受けることがあります。 不正行為をしていないというのであれば、やっていないということを説明して行くだけなので、比較…

変形労働時間制が無効になった場合の残業代の計算の仕方-1倍の部分の賃金は支払われているといえるか?

1.変形労働時間制 変形労働時間制という仕組みがあります。これは、簡単に言えば、業務の繁閑に応じて労働時間を配分する制度です。 変形労働時間制のもとでは、法定労働時間(1日8時間、1週間40時間 労働基準法32条参照)を超える所定労働時間を定…

解雇事件にみる組織内弁護士(インハウス)の能力や適格性

1.組織内弁護士 組織内弁護士(インハウス)とは、 「官公署又は公私の団体・・・において職員若しくは使用人となり、又は取締役、理事その他の役員となっている弁護士」 をいいます(日本組織内弁護士協会 定款4条1項)。 定款・会規 | 日本組織内弁護…

労災(公務災害)の認定申請の放置への対応(国家賠償よりも行政訴訟)

1.労災認定の標準処理期間 労災の請求を行うと、労基署が調査を行い、労基署長が支給・不支給の決定を行います。請求を行ってから支給・不支給が判断されるまでの標準処理期間は、災害や給付の種類によって1か月から8か月の範囲で定められています(平成…

適性判断のための有期雇用と試用期間

1.試用期間後の本採用拒否に係る規制の潜脱手段としての有期雇用 試用期間の定めが解約留保権付労働契約であると理解される場合、本採用拒否は解雇として理解されます。この場合、試用期間中であったとしても、客観的合理的理由・社会通念上の相当性が認め…

求人票の記載を鵜呑みにしないこと

1.いわゆる求人詐欺の問題 求人票の記載と採用後の実際の労働条件が、相違しているという問題があります。 なぜ、このような問題が生じるのかというと、募集要項等の内容は、直ちに労働契約の内容になるわけではないからです。 一般論として、労働者の採用…

大学教授会への出席・参加に権利性が認められた事例

1.大学教員の特殊性 労働者の中でも、大学教員は、かなり特殊な地位にあります。それは、大学の自治や、学問の自由といった、通常の労働契約にはない価値観を、労働契約の中に読み込んで行く必要があるからです。 そうした特殊性が発露する一場面が、就労…

公務員-懲戒処分を受ける以前の事情聴取段階から弁護士の関与を

1.公務員の懲戒処分の事前手続 以前、公務員の懲戒処分は、行政手続法の適用除外となっているため、どのような事前手続が踏まれれば、手続的な適正さが担保されたことになるのかが明確でないというお話をしました。 公務員の懲戒処分-事情聴取と弁明の機…

公務員は公務外非行の詐欺でも退職金(退職手当)まで吹き飛ぶ

1.公務員の懲戒処分 公金に関する公務員の不正行為に対して、法は極めて厳格な立場をとっています。 国家公務員の場合、公金を横領、窃取、詐取した職員は、基本的に免職になります(「懲戒処分の指針について」(平成12年3月31日職職―68)(人事院…

労災が否定されても民事訴訟での損害賠償請求は可能?-業務起因性がないことは不法行為法上の相当因果関係がないことを意味しないとされた例

1.相当因果関係概念の相対性 民法709条は、 「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」 と規定しています。 ここでいう「よって」とは、加害行為と権利利益の侵害(損…

職業人として生きて行く自信を喪失させるような注意をする先輩を新人から引き離すべき注意義務

1.新人指導に向かない先輩「〇〇に向いていない」 新人時代、上司や先輩から「お前は、〇〇(教師・弁護士・営業等)に向いていない。」という叱責を受けた人は少なくないと思います。 何一つ具体的な課題の解決に結びつかないうえ、経験不足から先輩の言…

97時間分の固定残業代の合意が有効とされた例-裁判所は小規模零細事業者に甘すぎないか

1.裁判所の問題点-小規模事業者・素人に甘い 以前、 裁判所は素人による逸脱した行為(弁護士の頭越しに行う直接交渉)に甘すぎではないだろうか - 弁護士 師子角允彬のブログ という記事を書きました。 私の個人的な実務経験の範囲内で言うと、素人や小…

休業命令の濫用-就業できる労働者に対する休職命令は許容されない

1.休職命令 メンタルヘルスの不調等が疑われ、業務状況の低下が認められる場合、使用者から私傷病休職を命じられることがあります。 このとき就業規則等に定められている休職命令を出すための要件が満たされていれば問題ないのですが、扱いにくい労働者を…

労働時間管理が緩やかでありながら管理監督者性が否定された事例

1.管理監督者 管理監督者には時間外勤務手当(残業代)を支払う義務がありません(労働基準法41条2号参照)。しかし、法律概念としての管理監督者に該当しないにもかかわらず、管理監督者に該当すると強弁したところで(いわゆる名ばかり管理職)、時間…