弁護士 師子角允彬のブログ

師子角総合法律事務所(東京:水道橋駅徒歩5分・御茶ノ水駅徒歩7分)の所長弁護士のブログです

労災民訴(公務災害民訴)で死亡逸失利益の基礎収入が死亡者と同等又は上位にあった行政職員の給与平均額とされた例

1.労災民訴 労働災害(労災)や公務災害の被災者が、労働者災害補償保険法や国家公務員災害補償法、地方公務員災害補償法等で補償されなかった損害について、使用者に損害賠償を請求することを、一般に「労災民訴」といいます。 労働者災害補償保険法等に…

制服への更衣時間に労働時間性が認められた例

1.更衣時間の労働時間性 制服や作業服への更衣時間の労働時間該当性については、一般に、次のとおり理解されています。 「労働者が就業を命じられた業務を行う前段階の・・・作業服・作業靴への着替え・履替えなどの業務の準備行為は、労務提供そのもので…

主観的に性的関心に基づいていればセクハラ?-好意を持った部下の勤務中の横顔や後ろ姿を撮影することが不法行為に該当するとされた例

1.客観的に「性的な言動」といえるか疑義のあるタイプのハラスメント 平成18年厚生労働省告示第615号「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」【令和2年6月1日適用】は、 職場におけるセ…

好意を示す型のセクハラ-好意を伝えるメッセージ(「本当に好きだ花子」「ありがとう。好きだ♪」)が不法行為に該当するとされた例

1.セクシュアルハラスメント-好意を伝えるのもダメなのか? 平成18年厚生労働省告示第615号「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」【令和2年6月1日適用】は、 職場におけるセクシュア…

一方的に資料を全従業員に周知させても、書かれている内容は労働契約の内容にはならないとされた例

1.会社で作成される様々な社内文書 会社では様々な内規が作成され、従業員に周知されています。それは、必ずしも就業規則の形には限られません。 それでは、このような内規類、内規的な文書は、労働契約の内容となり、労働者を法的に拘束する効力を持つの…

就業規則かそうでない文書かは、どのように区別されるのか?

1.就業規則の意義 民間企業で働いている人の多くは「就業規則」という言葉を聞いたことがあるのではないかと思います。 しかし、何を以って就業規則と言うのかは、実は、それほど良く分かっているわけではありません。例えば、水町勇一郎『労働法』〔東京…

間接選挙型の過半数代表者の選出が否定された例

1.過半数代表者 労働基準法は過半数代表者に対し、様々な役割を与えています。 例えば、1年単位の変形労働時間制を定める労働基準法32条の4第1項は、 「使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、…

1か月単位変形労働時間制-業態、規模、職員数等からして就業規則において予め始業終業時間を決め手おくことが困難との主張が排斥された例

1.1か月単位の変形労働時間制 労働基準法32条の2第1項は、 「使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書…

自身が日々出勤時刻や退勤時刻等を書き写していたノートの記載をもって実労働時間が認定された例

1.労働時間立証と「機械的正確性がなく、業務関連性も明白でない証拠」 残業代を請求するにあたり、労働時間の立証手段となる証拠には、 機械的正確性があり、成立に使用者が関与していて業務関連性も明白な証拠 成立に使用者が関与していて業務関連性は明…

ツイッターのツイートによる労働時間立証が認められた例

1.労働時間の立証 残業代(時間外勤務手当等)を請求するにあたっては、 「日ごとに、始業時刻、終業時刻を特定し、休憩時間を控除することにより、(時間外労働等の時間が-括弧内筆者)何時間分となるかを特定して主張立証する必要」 があるとされていま…

無期契約から有期契約への切り替えについて、自由な意思の法理の適用可能性が認められた事例

1.自由な意思の法理 最二小判平28.2.19労働判例1136-6山梨県民信用組合事件は、 「使用者が提示した労働条件の変更が賃金や退職金に関するものである場合には、当該変更を受け入れる旨の労働者の行為があるとしても、労働者が使用者に使用さ…

正社員として募集され、就労を開始した後、有期の雇用契約書に署名、押印したとしても、有期労働契約であるとはいえないとされた例

1.求人票(募集要項)の記載、雇用契約書の記載 求人票(募集要項)の記載と、使用者から示された雇用契約書の労働条件が異なっていることがあります。 こうした場合、雇用契約書にサインしてしまった労働者は、求人票に書かれていた労働条件を主張するこ…

雇止めの通知は解雇の意思表示を兼ねられるか?

1.有期労働契約なのか、無期労働契約なのかをめぐる紛争 契約を更新することなく期間満了により有期労働契約を打ち切ることを「雇止め」といいます。この「雇止め」を通知することに、解雇の意思表示が含まれているといえるのかという論点があります。 読…

明示に合意したと認めるに足りる的確な証拠がないとして、3年に渡り異論を唱えていなくても合意退職の成立は認められないとされた例

1.合意退職の争い方 労働者と使用者とで退職を合意することを合意退職といいます。 合意退職は契約であって解雇ではありません。したがって、解雇権の行使を厳しく制限する労働契約法16条の適用を受けることはありせん。契約として民法上の意思表示理論…

不動産鑑定士の労働者性が問題になった事案(労働者性肯定)

1.契約書が作られていなくて雇用されているのかが分からないケース 業務委託契約を交わして働いている業務受託者(個人事業主)と労働契約を交わして働いている労働者とでは、法的な立場が全く異なります。より具体的に言うと、労働者は業務受託者よりも、…

「これが最後の練習です」では、能力が向上しなければ解雇する旨の注意や警告とは認められないとされた例

1.能力不足、職務適格性の欠如を理由とする普通解雇 勤務成績・態度が不良で、職務を行う能力や適格性を欠いていることを理由とする普通解雇の可否は、「①使用者と当該労働者との労働契約上、その労働者に要求される職務の能力・勤務態度がどの程度のもの…

教師の過労自殺事案において、部活動顧問は亡教師の生きがいであったとの過失相殺の主張が否定された例

1.過失相殺 民法418条は 「債務の不履行又はこれによる損害の発生若しくは拡大に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。」 と規定しています。 民法722条2項は、 「被害者に過失があった…

仕事(部活動指導)は自殺した教師の生きがいだったとの主張が排斥された例

1.部活動指導・部活動顧問業務 昨日お話させて頂いたとおり、公立学校教師の部活動指導・部活動顧問業務については、 法律上は業務(残業)として位置付けられていないにもかかわらず、 実体としては個々の教師に業務として重くのしかかっている、 という…

部活動時間の業務性-部活動の目標は教師が生徒と話し合って決めていたものであり、学校側が強いたわけではないとの主張が排斥された例

1.部活動顧問業務の位置付け 公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法6条1項は、 「教育職員・・・を正規の勤務時間・・・を超えて勤務させる場合は、政令で定める基準に従い条例で定める場合に限るものとする。」 と規定しています…

どの程度の休憩時間があったかについて使用者から具体的な主張がないとして休憩時間が認定されなかった例

1.休憩時間 労働基準法34条は、 1項で、 「使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。」と、 2項で、 「前項の休憩時間は、…

作業服様の制服の着用が義務付けられていても、通勤時の服装に関する指示がなければ着替え時間は労働時間ではなくなるのか?

1.着替え時間の労働時間性 着替え時間が労働時間に該当するかに関しては、 「労働者が就業を命じられた業務を行う前段階の、入門から作業場到着までの歩行や、作業服・作業靴への着替え・履替えなどの業務の準備行為は、労務提供そのものではなく、労務提…

残業代請求-社外持出禁止の記載のある業務日誌の証拠能力が認められた事案

1.労務提供していたことを立証するための資料 時間外勤務手当等(いわゆる残業代)を請求するにあたっては、大抵の場合、タイムカード等、始業時刻と終業時刻が特定できる資料で事足ります。 しかし、労働時間管理がされておらずタイムカード等の資料が存…

1か月単位の変形労働時間制-就業規則上に完全なシフトを記載することは困難・シフトパターンを変更する都度就業規則を変更するのは非現実的との主張が排斥された例

1.1か月単位の変形労働時間制 労働基準法32条の2第1項は、 「使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書…

ビル施設管理業務従事者の仮眠時間の労働時間性が肯定された例

1.不活動仮眠時間の労働時間性 不活動仮眠時間の労働時間性について、最一小判平14.2.28労働判例822-5大星ビル管理事件は、 「不活動仮眠時間であっても労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たるというべきである…

定年後再雇用拒否で地位確認を請求できる場合(労働契約の特定性)

1.定年後再雇用拒否の争い方 事業主には65歳までの高年齢者雇用確保措置をとることが義務付けられています(高年齢者雇用安定法9条1項)。 雇用確保措置には、①定年の引上げ、②継続雇用制度の導入、③定年の定めの廃止の三項目が掲げられていますが、多…

身体障害と安全配慮義務(積極的な申告がなくても業務負担軽減措置をとらなければならないのは精神障害の場合に限られない)

1.障害と安全配慮義務 精神障害者に対する安全配慮義務について、最二小判平26.3.24労働判例1094-22 東芝(うつ病・解雇)事件は、 「上告人が被上告人に申告しなかった自らの精神的健康(いわゆるメンタルヘルス)に関する情報は、神経科の…

セクシュアルハラスメントの成立が否定された例-女性従業員と妻子ある男性従業員との関係のもつれが被害申告に発展したケース

1.セクシュアルハラスメントと迎合的言動 最一小判平27.2.26労働判例1109-5L館事件は、管理職からのセクハラについて、 「職場におけるセクハラ行為については、被害者が内心でこれに著しい不快感や嫌悪感等を抱きながらも、職場の人間関係…

「嫌なら辞めろ」型の圧迫を加えて給与規程の不利益変更に同意させる手法が否定された例

1.賃金減額の方法 労働者の同意があれば、使用者は賃金を減額することができます。 ただ、最二小判平28.2.19労働判例1136-6山梨県民信用組合事件が、 「使用者が提示した労働条件の変更が賃金や退職金に関するものである場合には、当該変更を…

9日後の退職届(雇用契約の合意解約の申込みの撤回)が認められた例

1.退職届の撤回 退職届の提出には、二通りの理解の仕方があります。 一つは、雇用契約の解約申入れ(辞職)です。 民法627条1項は、 「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合におい…

食事会の場で他の従業員の面前で1年以上過去の出来事を蒸し返して叱責することが違法とされた例

1.パワーハラスメント パワーハラスメントの類型の一つに 「精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)」 があります。 この類型に関しては、 「他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行うこと」 が該当例として挙げられている…