2022-08-01から1ヶ月間の記事一覧
1.休憩時間とされている時間の労働時間性の立証 1日の労働時間が8時間を超える場合、使用者には少なくとも1時間の休憩時間を付与する義務があります(労働基準法34条1項)。そのため、多くの企業では1日8時間労働の労働者に対し、1時間の休憩時間…
1.固定残業代の有効要件としての合意 最一小判令2.3.30労働判例1220-5 国際自動車(第二次上告審)事件は、固定残業代の有効要件について、 「通常の労働時間の賃金に当たる部分と同条の定める割増賃金に当たる部分とを判別することができるこ…
1.退職妨害への対抗手段 人材が不足している会社・業界では、労働者の退職妨害が行われることがあります。 退職妨害には幾つかの類型がありますが、その中に、 ①極端に長い予告期間を設定する、 ②退職の意思表示を受けたことを頑として否認する、 といった…
1.管理監督者性 管理監督者には、労働基準法上の労働時間規制が適用されません(労働基準法41条2号)。俗に、管理職に残業代が支払われないいといわれるのは、このためです。 残業代が支払われるのか/支払われないのかの分水嶺になることから、管理監…
1.自由な意思の法理の論理構造をどうみるか 最二小判平28.2.19労働判例1136-6山梨県民信用組合事件は、 「使用者が提示した労働条件の変更が賃金や退職金に関するものである場合には、当該変更を受け入れる旨の労働者の行為があるとしても、…
1.実労働時間の主張立証責任 割増賃金(残業代)を請求するにあたっての実労働時間の主張立証責任は、原告である労働者の側にあります。したがって、割増賃金を請求するにあたっては、労働者の側で始業時刻・終業時刻を特定し、その間、労務を提供していた…
1.労働時間の把握・管理義務 労働安全衛生法66条の8の3は、 「事業者は、第六十六条の八第一項又は前条第一項の規定による面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第一項に規定する者を除く。)の労働時間の状況を把握…
1.素因減額 被害者が有していた身体的・精神的要素(素因)が損害の発生・拡大に寄与した場合に、これを過失相殺の対象にすることができるかという問題があります。一般に「素因減額」と呼ばれている問題です(我妻榮ほか『我妻・有泉 コンメンタール民法 …
1.安全配慮義務違反・過失相殺 労働契約法5条は、 「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」 と規定しています。これを安全配慮義務といいます。 安全配慮義務…
1.通勤時間・移動時間の労働時間性 通勤時間の労働時間性は、一般的には否定されています。 例えば、佐々木宗啓ほか編著『類型別 労働関係訴訟の実務Ⅰ』〔青林書院、改訂版、令3〕156-157頁にも、 「労働者が債権者である使用者に対して労務を提供…
1.セクハラの立証-供述の信用性評価に係る裁判例を検討する意義 一般論として言うと、セクシュアルハラスメント(セクハラ)は、第三者の目に触れない場所・態様で行われる傾向にあります。そのため、セクハラに関しては、主要な証拠が被害者の供述しかな…
1.雇用管理上の措置 男女雇用機会均等法11条1項は、 「事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることの…
1.有利なのか不利なのか? 労働事件の相談に限ったことではありませんが、法律相談をしていると、 「有利ですか、不利ですか?」 という質問を受けることがあります。 しかし、このような問いを投げかけられても、回答困難であることが殆どです。なぜなら…
1.勤務成績・態度の不良を理由とする解雇 勤務成績・態度の不良を理由とする解雇は、 「①使用者と当該労働者との労働契約上、その労働者に要求される職務の能力・勤務態度がどの程度のものか、②勤務成績、勤務態度の不良はどの程度か、③指導による改善の余…
1.労災保険制度とメリット制 労働者災害補償保険法は、業務災害や通勤災害により被災した労働者に対し、手厚い保険給付を行うことを規定しています。 この保険給付を行うための費用は、原則として事業主が負担する保険料によって賄われています。事業主が…
1.労災保険制度とメリット制 労働者災害補償保険法は、業務災害や通勤災害により被災した労働者に対し、手厚い保険給付を行うことを規定しています。 この保険給付を行うための費用は、原則として事業主が負担する保険料によって賄われています。事業主が…
1.出張のための移動時間をどうみるか 通勤時間は一般に労働時間性が否定されています。 他方、出張時間の労働時間性は見解が分かれています。例えば、水町勇一郎『詳解 労働法』〔東京大学出版会、初版、令元〕653-654頁には、 「出張に伴う移動時…
1.持ち帰り残業 終業時刻後、家に仕事を持ち帰って残業することを、俗に「持ち帰り残業」といいます。持ち帰り残業については、 「労働者が所定労働時間外に業務に従事するいわゆる残業時間は、まさに職務性が認められる時間であり、これを使用者が明示的…
1.歩合給からの控除 歩合給から割増賃金を差引く賃金体系について、最一小判令2.3.30労働判例1220-19 国際自動車事件は、 「割増金の額がそのまま歩合給・・・の減額につながるという上記の仕組みは、当該揚高を得るに当たり生ずる割増賃金を…
1.固定残業代の有効要件 最一小判令2.3.30労働判例1220-5 国際自動車(第二次上告審)事件は、固定残業代の有効要件について、 「通常の労働時間の賃金に当たる部分と同条の定める割増賃金に当たる部分とを判別することができることが必要であ…
1.タクシー運転手の労働時間性 タクシー運転手の方は、基本的には、出庫してから帰庫するまでの時間のうち休憩時間を除いた時間が労働時間になるといっても良いように思います。 しかし、休憩時間外の車を走らせている時間といっても、常に客を乗せている…
1.労働者派遣法上のみなし申込み制度 労働者派遣法は、違法派遣による役務の提供を受けた者について、派遣労働者に対する労働契約の申込みを擬制する仕組みを設けています(労働者派遣法40条の6)。 みなし申込み制度の適用対象になる違法派遣行為の類…
1.労働者派遣法上のみなし申込み制度 労働者派遣法は、違法派遣による役務の提供を受けた者について、派遣労働者に対する労働契約の申込みを擬制する仕組みを設けています(労働者派遣法40条の6)。 みなし申込み制度の適用対象になる違法派遣行為の類…
1.人事権の行使としての降格/懲戒処分としての降格 降格とは、 「役職(職位)または職能資格・資格等級を低下させること」 をいい、 人事権の行使としてのものと、 懲戒処分としてのもの とがあると理解されています(水町勇一郎『詳解 労働法』〔東京大…
1.残業代不払を理由とする個人責任の追及 株式会社の取締役は、会社に対する善管注意義務ないし忠実義務として、会社に労働基準法24条及び37条を遵守させ、労働者に対して割増賃金(残業代)を支払わせる義務を負っていると理解されています(東京地判…
1.健康確保の観点からの労働時間を適正に把握・管理する義務 労働安全衛生法66条の8の3は、 「事業者は、第六十六条の八第一項又は前条第一項の規定による面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第一項に規定する者を…
1.労働契約の成否は必ずしも明確ではない 民法623条は、 「雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。」 と規定しています。つまり、労働契約…
1.懲戒処分と弁明の機会付与 労働契約法15条は、 「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められな…
1.カスタマーハラスメント 企業で働く従業員に対する顧客からの嫌がらせを「カスタマーハラスメント」といいます。クレームに疲弊する人が増えてきたことを受け、数年前から注目されている概念です。 法令上、カスタマーハラスメントは、令和2年厚生労働…
1.年次有給休暇と法定外の有給休暇 労働基準法39条は、一定期間、一定割合以上出勤した労働者に対し、年次有給休暇を取得する権利を付与しています。年次有給休暇は労働者の指定した時季に付与しなければならず、使用者には「事業の正常な運営を妨げる場…