弁護士 師子角允彬のブログ

師子角総合法律事務所(東京:水道橋駅徒歩5分・御茶ノ水駅徒歩7分)の所長弁護士のブログです

2025-06-01から1ヶ月間の記事一覧

元々の労働契約に固定残業代の合意があり、賃金台帳で残業代への割り付けがされていても、改定後の日給に固定残業代は含まれないとされた例

1.固定残業代 固定残業代とは、 「時間外労働、休日および深夜労働に対する各割増賃金(残業代)として支払われる、あらかじめ定められた一定の金額」 をいいます(白石哲編著『労働関係訴訟の実務』〔商事法務、第2版、平30〕115頁参照)。 固定残…

未払残業代についての訴訟提起で、未払役職手当の時効完成を阻止できるか?

1.訴訟中の請求の拡張(訴えの追加的変更) 労働事件には、 契約(ないし就業規則等の諸規程類)で定められている内容が多岐に渡っており、法律関係が複雑である、 契約の存続期間が長期に渡っていて、その間、しばしば法律関係が変更されている、 資料の…

その賃金減額の合意、就業規則の変更を伴っている?

1.強く保護されている賃金 最二小判平28.2.19労働判例1136-6山梨県民信用組合事件は、 「使用者が提示した労働条件の変更が賃金や退職金に関するものである場合には、当該変更を受け入れる旨の労働者の行為があるとしても、労働者が使用者に…

管理監督者であるために必要な「権限」が厳格に理解された例

1.管理監督者性 管理監督者には、労働基準法上の労働時間規制が適用されません(労働基準法41条2号)。俗に、管理職に残業代が支払われないいといわれるのは、このためです。 残業代が支払われるのか/支払われないのかの分水嶺になることから、管理監…

自由な意思の法理を彷彿とさせる論理展開で、大学講師(無期非常勤講師)の担当コマ数削減の決定が違法無効とされた例

1.大学講師の担当コマ数削減 シフト制の労働者は大抵の場合、時給制で働いています。そのため、シフトに入れてもらえないと、収入の途を絶たれることになります。しかし、シフト制の労働者に限らず、一般論として労働者に就労請求権は認められません。誰を…

職種が限定されている大学非常勤講師への整理解雇について、解雇回避努力を尽くしたと評価することはできないとされた例

1.職種限定契約と配転の可否 最二小判令6.4.26労働判例1308-5 社会福祉法人滋賀県社会福祉協議会事件は、 「上告人と被上告人との間には、上告人の職種及び業務内容を本件業務に係る技術職に限定する旨の本件合意があったというのであるから、…

当然終了事由を労働契約に組み込むことの可否及び限界-無期転換後の非常勤講師との労働契約を授業担当をさせないことによって一方的に終了させることが否定された例

1.大学の非常勤講師の働き方 大学の非常勤講師の方は、 担当授業1コマあたり○円、 といった賃金形態で働いていることが少なくありません。 しかし、開講授業やカリキュラムの編成、担当教員の割当は、基本的には大学側に決定権限があります。 それでは、…

出勤頻度が過去より増加しているシフト制労働者のバックペイを解雇前3か月の平均勤務時間に基づいて算出した例

1.シフト制労働者のバックペイ 解雇されても、それが裁判所で違法無効であると判断された場合、労働者は解雇時に遡って賃金の請求をすることができます。いわゆるバックペイの請求です。 バックペイの請求ができるのは、民法536条2項本文が、 「債権者…

賃金の支払がない状況下において、金銭の領得行為を理由とする懲戒解雇が否定された例

1.金銭的不正行為を理由とする解雇 労働契約法16条は、 「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」 と規定しています。客観的合理的理由、社会通念上の相当性の有…

解雇無効の判決を勝ち取った後、すぐに出勤できなかったことは労働契約を終了させる理由になるのか?

1.解雇無効の判決を勝ち取ったその後・・・ 労働契約法16条は、 「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」 と規定しています。 違法、無効な解雇がなされ、裁判…

期間の有無が争いとなる訴訟における「労働契約の終了通知」の位置付け

1.期間の有無をめぐる争い 労働契約に期間の定めがあったのかどうかが争われることがあります。 労働者側が無期労働契約であることを主張するのに対し、使用者側が期間満了や雇止めによる労働契約の終了を主張するといったようにです。 なぜ、そのような争…

求人票⇒採用内定通知⇒労働契約書の作成⇒就労開始という事実経過に対し、労働条件変更法理を適用した例

1.求人票と労働条件通知書・雇用契約書の内容が異なっている問題 過去にも何度か取扱ったことのあるテーマですが、求人票(募集要項)の記載と、使用者から示された雇用契約書の労働条件が異なっていることがあります。 こうした場合、雇用契約書にサイン…

普通解雇であっても、疑念を明示的に説明した上でその言い分を聴取するなどの手続を経ていないことなどから解雇の社会通念上の相当性が否定された例

1.問題行為を理由とする普通解雇に弁明の機会付与は必要か? 懲戒解雇を行うにあたっては、弁明の機会付与など適正な手続を踏むことが必要だと理解されています。例えば、水町勇一郎『詳解 労働法』〔東京大学出版会、第3版、令5〕600頁には、次のよ…

正式な職制・地位等として存在しない呼称・肩書を経歴書に記載したことが経歴詐称と評価できるか疑問とされた例

1.正式な職制・地位等ではない呼称・肩書 会社に限ったことではありませんが、組織の中で、正式な職制・地位等とは別に、一定の肩書を与えられることがあります。組織内での役割を明確にするだとか、外部との交渉で軽んじられないようにするだとか、その目…

転職時に前職の年収を盛ることは、どの程度まで許容されるのか?

1.転職時に前職の年収を聞かれたら・・・ 転職する時、前職の年収を聞かれることは少なくありません。 これは、勤務先において、転職者の年収を決めるにあたっての参考にするためだと思われます。 それでは、年収を聞かれた時、前職の年収を盛ることは、ど…

売上金の領得行為を理由とする解雇-一部説明困難な金銭取得の事実を、どう手当てすべきか?

1.金銭的不正行為を理由とする解雇 労働契約法16条は、 「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」 と規定しています。客観的合理的理由、社会通念上の相当性の有…

労働者性の判断基準-業務の内容及び遂行方法に対する指揮命令と「事業組織への組入れ」

1.「事業組織への組入れ」は指揮命令の代替要素になるか? 働き方が多様化するとともに、労働者とフリーランス(個人事業主)の境目が曖昧で連続的になっています。こうした世相を反映してか、労働者性を争点とする事件が目立つようになっています。 労働…

専門労働者・裁量労働者に対する「一般的な指揮監督」の意義

1.労働者性の判断基準(業務の内容及び遂行方法に対する指揮命令の有無) 労働法の適用を受けないようにするため、業務委託や請負といった法形式が使われることがあります。 しかし、こうした法形式を使いさえすれば適用を免れることができるとなると、労…

労働契約を業務委託契約に切り替える旨の合意の成立が否定された例

1.労働者と業務受託者 労働者は労働基準法をはじめとする労働関係法令の保護を受けます。 これに対して、業務委託契約を交わして業務を遂行する個人事業主(フリーランス)は、労働関係法令の保護を受けることができません。個人事業主を保護するための仕…

出産手当金を受給できなかったことが損害として認められた例

1.出産手当金 労働基準法65条1項2項は、 「使用者は、六週間(多胎妊娠の場合にあつては、十四週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。」 「② 使用者は、産後八週間を経過しない女性を就業させ…

通勤不可能圏内への居住と就労の意思

1.解雇紛争と就労の意思 解雇されても、それが裁判所で違法無効であると判断された場合、労働者は解雇時に遡って賃金の請求をすることができます。いわゆるバックペイの請求です。 バックペイの請求ができるのは、民法536条2項本文が、 「債権者の責め…

就業規則にも作成者不利の原則は及ぶのか?-定年後再雇用契約の労働者にも、退職金規程の適用が認められるとされた例

1.作成者不利の原則 「契約条項の意味に疑いがある場合において・・・契約条項を作成しまたは使用した者に不利な解釈がとられるべきとする準則」を「作成者不利の原則(条項使用者不利の原則)」といいます(奥田昌道ほか編『法学講義民法 総則』〔勁草書…

業務用のメールアドレスを使って弁護士と民事裁判に係るやりとりをする危険性

1.業務用の機器を利用することの危険性 在職中に勤務先と争うにあたり、事件に関する連絡に業務用端末・業務用メールアドレスを利用することの危険性は、ある程度想像できるのではないかと思います。業務用端末にしても業務用メールアドレスにしても、勤務…

懲戒解雇が有効とされつつ、退職金請求が一部認められた例

1.勤続の功を抹消ないし減殺してしまうほどの・・・ 懲戒解雇される場合、退職金を不支給とされることが少なくありません。 しかし、退職金の不支給は無条件に認められるわけではありません。 退職金の法的性質は企業毎に様々ですが、賃金の後払い的な性格…

職種限定契約のもとにおいても、整理解雇するには解雇回避努力として配置転換を打診するなどの措置が必要とされた例

1.職種限定契約と解雇回避努力としての配置転換の打診 整理解雇とは「企業が経営上必要とされる人員削減のために行う解雇」をいいます(佐々木宗啓ほか編著『類型別 労働関係訴訟の実務Ⅱ』〔青林書院、改訂版、令3〕397頁)。 整理解雇の可否は、①人員…

就業規則の変更や労働協約の締結によらずして労使慣行を変更することが許されるのか?

1.労使慣行の変更 一定の厳格な要件をクリアした労使慣行には、法的な拘束力が認められます。これは、民法92条が、 「法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において、法律行為の当事者がその慣習による意思を有しているものと認められ…

労働組合に対して引下げ・減額が提示された事実があっても、賞与や手当の支給について労使慣行の成立が認められた例

1.労使慣行の主張 長年に渡って維持されてきた労働者にとって好ましい事実状態が使用者から変更されそうになったとき、労使慣行が成立しているという反論を提示することがあります。 これは、 「法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合にお…

退職勧奨に続くキャリアを無視した配転(マーケティング部マネージャー⇒掃除、片付け、粗大ごみ担当)が違法とされた例

1.退職勧奨に引き続いて行われる配転命令 退職勧奨については、 「基本的に労働者の自由な意思を尊重する態様で行われる必要があり、この点が守られている限り、使用者はこれを自由に行うことができる。・・・これに対し、使用者が労働者に対し執拗に辞職…

違法な退職勧奨・退職強要-契約の変更を提案しただけだという使用者側の主張が排斥された例

1.違法な退職勧奨・退職強要 退職勧奨については、 「基本的に労働者の自由な意思を尊重する態様で行われる必要があり、この点が守られている限り、使用者はこれを自由に行うことができる。・・・これに対し、使用者が労働者に対し執拗に辞職を求めるなど…