弁護士 師子角允彬のブログ

師子角総合法律事務所(東京:水道橋駅徒歩5分・御茶ノ水駅徒歩7分)の所長弁護士のブログです

2024-11-01から1ヶ月間の記事一覧

診断名が違っていたことから適切な治療を受けていなかったとして、症状固定には至っていないとされた例

1.症状固定 治療をしても医療効果がそれ以上期待しえない状態を「症状固定」といいます。 例えば、腕を切断した場合に、幾ら治療を継続したところで、腕が生えてくるわけではないことを想像していただくとイメージしやすいのではないかと思います。 この「…

医療職(看護師)の仮眠時間の労働時間性-私法上の労働時間であった可能性高いが、労災法上の労働時間には含めないとされた例

1.労災と労働時間 労働時間の数は、労災認定が認められるのか否かと密接に関係しています。 例えば、 令和5年9月1日 基発0901第2号「心理的負荷による精神障害の認定基準について」は、 「極度の長時間労働、例えば数週間にわたる生理的に必要な最…

心停止だけれども労災の対象疾病に該当しないとされた例

1.脳・心臓疾患の労災補償 令和3年9月14日 基発0914第1号「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について」(令和5年10月18日改正)は、脳・心臓疾患の労災補償について、次のとおり規定していま…

夜間時間帯は全体として労働時間に該当するわけではないという争い方が裏目に出た例

1.夜勤時間帯における賃金単価が最低賃金以下とされた例-その後 以前、 夜間時間帯における割増賃金算定のための賃金単価を最低賃金以下にすることを認めた例 - 弁護士 師子角允彬のブログ という記事を書きました。 この記事の中で紹介した、千葉地判令…

廃棄食材の持ち帰りを理由とする懲戒免職処分の可否-標準例の枠内でなされた懲戒免職処分が取り消された例

1.公務員の懲戒処分の取消訴訟 公務員に対する懲戒処分が違法となる場合について、最三小判昭52.12.20労働判例288-22 神戸税関事件は、 「公務員につき、国公法に定められた懲戒事由がある場合に、懲戒処分を行うかどうか、懲戒処分を行うと…

時間外職能給の固定残業代としての効力が否定された例

1.固定残業代の有効要件 最二小判令5.3.10労働判例1284-5 熊本総合運輸事件は、固定残業代の有効要件について、 「労働基準法37条は、労働基準法37条等に定められた方法により算定された額を下回らない額の割増賃金を支払うことを義務付け…

固定残業代の整理-個別同意の効力と就業規則変更の効力との関係性

1.固定残業代 固定残業代とは、 「時間外労働、休日および深夜労働に対する各割増賃金(残業代)として支払われる、あらかじめ定められた一定の金額」 をいいます(白石哲編著『労働関係訴訟の実務』〔商事法務、第2版、平30〕115頁参照)。 固定残…

無効な固定残業代を合意に基づいて整理するためには、労働者に対してどのような説明が必要になるのか?

1.固定残業代 固定残業代とは、 「時間外労働、休日および深夜労働に対する各割増賃金(残業代)として支払われる、あらかじめ定められた一定の金額」 をいいます(白石哲編著『労働関係訴訟の実務』〔商事法務、第2版、平30〕115頁参照)。 固定残…

様々な業務を行わせていたにもかかわらず、賃金の支払を請求されるや連絡を絶った行為が不法行為に該当するとされた例

1.賃金の支払義務 労働基準法24条1項は、 「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」 と規定しています。 単純な債務不履行が犯罪とならないのに対し、賃金の不払いは労働基準法120条1号により、30万円以下の罰金に…

労働者性の考慮要素の優劣関係:時間的場所的拘束性<指揮命令関係

1.労働者性の判断基準 労働基準法を始めとする労働関係法令の適用の可否は、ある働き方をしている人が「労働者」に該当するのか否かによって判断されます。そのため、ある人が「労働者」か否かという問題は、実務上、極めて重要なテーマとなています。 あ…

雇用の提案を受けたにもかかわらず、フリーランスの形にこだわり、これを断るとは考え難いとされた例

1.当初からフリーランスの形であったと主張するパターン 令和6年11月1日、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(いわゆるフリーランス・事業者間取引適正化法)が施行されました。この法律は、フリーランスの就業環境の整備等を目的とする…

同僚からの暴力の業務起因性-「けんか」か否かの判断例

1.同僚からの暴力と労災 労働者災害補償保険法7条1号は、 「労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡」 に関し、保険給付を行うことを定めています。 同僚から暴力を振るわれたことが「業務上の」災害といえるのか否かに関し、 平成21年7月23日 …

同僚からの暴力の業務起因性-被害者の不適切な発言が先行している場合

1.同僚からの暴力と労災 労働者災害補償保険法7条1号は、 「労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡」 に関し、保険給付を行うことを定めています。 同僚から暴力を振るわれたことが「業務上の」災害といえるのか否かに関し、 平成21年7月23日 …

同僚からの暴力の業務起因性-加害者が「個人的に恨んでいた」と述べていることは、どう評価されるのか?

1.同僚からの暴力と労災 労働者災害補償保険法7条1号は、 「労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡」 に関し、保険給付を行うことを定めています。 同僚から暴力を振るわれたことが「業務上の」災害といえるのか否かに関し、 平成21年7月23日 …

新人の営業用日報に誤字脱字の指摘や否定的コメントばかりすること等が、自死につながりかねない不相当かつ適切性を欠くものとされた例

1.些細な揚げ足とりばかりの指導 令和2年厚生労働省告示第5号「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」は、パワーハラスメントの一類型である「精神的な攻撃」について、次の…

法定休憩時間を超える休憩時間の設定に潜む問題点-昼休憩とは別に設けられていた1日1時間の裁量休憩の休憩時間性が否定された例

1.サービス残業(無賃労働)の隠れ蓑としての「休憩時間」 労働基準法34条1項は、 「労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。」 と規…

精神障害発病後の期間も心理的負荷の評価期間に組み入れられた例

1.精神障害の労災認定 精神障害の労災認定について、厚生労働省は、 令和5年9月1日 基発0901第2号「心理的負荷による精神障害の認定基準について」 という基準を設けています。 精神障害の労災補償について|厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/co…

第二東京弁護士会労働問題検討委員会「ケーススタディでわかる フリーランス・事業者間取引適正化等法の実務対応」(第一法規)が発刊されました

第一法規から、 第二東京弁護士会労働問題検討員会「ケーススタディでわかる フリーランス・事業者間取引適正化等法の実務対応」 という書籍が発刊されました。 ケーススタディでわかる フリーランス・事業者間取引適正化等法の実務対応 / 第一法規ストア 以…