弁護士 師子角允彬のブログ

一般の方に向けて、法律や判例に関する情報を提供して行きます。

注意を要する弁護士を見分けるポイント

1.無断で和解、解決金を着服

 ネット上に、

「無断で和解、『訴訟終わってない』とウソ…弁護士が解決金を着服」

という記事が掲載されていました。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191107-00050114-yom-soci

 記事には、

「民事訴訟で依頼人に無断で和解し、解決金180万円を着服したとして、大阪府警は6日、大阪弁護士会所属の弁護士鈴木敬一容疑者(68)を業務上横領容疑で逮捕した。『横領はしたが、金額が違う』と供述しているという。」

「発表では、鈴木容疑者は2016年6月、大阪市の30歳代男性から依頼された未払い残業代の請求訴訟で、元勤務先から受け取った解決金を着服した疑い。」

「鈴木容疑者は男性に無断で和解し、『訴訟はまだ終わっていない』とウソの説明をしていた。男性は今年2月頃に鈴木容疑者と連絡が取れなくなり、府警に相談していた。」

「別の依頼人3人も、同様の手口で鈴木容疑者から計約800万円の被害にあったと府警に相談しており、府警が関連を調べる。」

などと書かれています。

 一般の方と弁護士とでは、裁判実務に対する情報力に大きな格差があります。そのため、いくら用心したとしても、一般の方が弁護士の嘘を見破り、被害を完全に予防することは、非常に困難なのではないかと思います。

 しかし、普通の弁護士がどのように事件を処理しているかを知っていれば、「この弁護士は、少しおかしいのではないか。」と気付くきっかけにはなると思います。

 同種被害の防止に多少なりとも役に立てばと思い、私なりに考えた注意を要する弁護士の見分け方を書かせて頂きます。

2.期日報告がきちんとなされているか

 記事にあるような被害を防ぐ契機があったとすれば、それは期日報告がきちんとなされているのかをモニタリングしておくことではなかったかと思います。

 民事裁判は期日を重ねて進んで行きます。

 期日というのは、簡単に言えば、原告・被告・裁判所が寄り集まって行う打ち合わせのことです。主張、立証が不足しているところを確認し、事件の実体を解明するために、今後どのような作業を進めて行けばよいのかを議論するための場です。期日間に準備をし、期日に打ち合わせる、裁判は、その繰り返しで進んで行きます。

 期日は概ね1か月強刻みで指定されます。準備事項が膨大である場合や、夏期休廷期間(裁判所の夏休み期間)などの特殊な時期には、2か月程度の間隔が置かれることもあります。裁判所提示の和解案を検討してくることだけが宿題であるような場合には、2週間程度しか間隔が空かないこともあります。期日の間隔には一定の幅がありますが、4か月先になるだとか、8か月先になるだとかいったことは、普通はありません。

 期日が行われると、概ねの弁護士は依頼人に期日の状況を報告します。

 原告・被告双方に代理人弁護士が選任されている事案では、専門的な議論が交わされるため、どこまで詳細な報告をするかは弁護士のキャラクターに左右されると思いますが、おそらくどの弁護士でも、

① どのような書面が提出されたのか、

② 次の期日に向けて、裁判所から各当事者にどのような宿題が出されたのか、

は外さずに報告するのではないかと思います。

 例えば、訴訟提起後、初めての期日で原告の訴訟代理人が依頼者に行う期日報告としては、

「当方からは訴状を陳述し、相手方からは答弁書が陳述されました。

また、当方は甲◯号証から甲◯号証までを提出しました。相手方からは乙◯号証から◯号証が提出されました。

相手方から送られてきた答弁書等は既にPDFファイルで共有させて頂いているとおりです。

裁判所は当方に対し、相手方から出された答弁書に反論するよう指示しました。

次回期日は◯月◯日の◯時からです。

次回期日の1週間前までに反論の書面を提出する必要があります。

相手の答弁書に記載されていることの真偽を確認したいので、一度、打ち合わせの機会を設けさせてください。

反論のポイントは・・・といったことなので、・・・など・・・の事実を裏付ける資料があれば持ってきてください。」

といった形が考えられます。

 このように訴訟の状況について依頼人と情報を共有しながら進めて行くのが、一般的な弁護士の仕事のスタイルではないかと思います。

3.期日報告がきちんとなされないのはおかしい

 以上のような進み方が普通であるため、訴訟が係属しているのに、何か月もの間、弁護士と連絡がとれなくなるというのは割と普通でないことだと思います。相手方にのみ宿題が出されていて、当方に特段の準備事項がない場合でも、相手方から書面が来れば、それはきちんと依頼者に回付します。そうしなければ相手の言い分の適否を精査できませんし、事件処理の方向性を確認することもできず、仕事にならないからです。

 報道されている事案では、2月に連絡がとれなくなって、6月に着服行為があって、11月に弁護士の逮捕に至っています。

 2月に連絡が途絶したとして、3月になっても4月になっても何の音沙汰もなく放置されていたとすれば、それが「この弁護士はちゃんと仕事をしてくれているのか?」と疑問に思う契機になったかも知れません。

 また、提出書面と進行状況を確認しておけば、弁護士が何か嘘を言ったとしても、各書面の作成日付や内容との整合性から違和感を覚えることができたかも知れません。 

 そうしたところから、事件番号(裁判所に提出する書面/提出された書面に書いてある、令和◯年(ワ)第◯◯◯◯号 といった番号のことです)を頼りに裁判所の係属部(これも書面に書いてあります)に問い合わせてみたり、セカンドオピニオンを求めて別の弁護士に相談に行ってみたりすれば、本件のような被害は防げた可能性があると思います。

4.期日報告のない理由の殆どは横領ではなくズボラなだけだと思われるが・・・

 弁護士の訴訟代理の仕事の標準形を押さえておくことは、依頼している弁護士がきちんと仕事をしてくれているのかを確認する一助になるだろうと思います。

 ただ、上記のように書きはしたものの、期日報告のない理由の殆どはズボラなだけであり、催促すればきちんと訴訟の現状と直近の期日の概要は報告してもらえるのではないかと思います。