弁護士 師子角允彬のブログ

師子角総合法律事務所(東京:水道橋駅徒歩5分・御茶ノ水駅徒歩7分)の所長弁護士のブログです

2025-11-01から1ヶ月間の記事一覧

管理監督者に相応しい待遇-男性平均年収額を下回ることが待遇を否定する根拠とされた例

1.管理監督者性 管理監督者には、労働基準法上の労働時間規制が適用されません(労働基準法41条2号)。俗に、管理職に残業代が支払われないいといわれるのは、このためです。 残業代が支払われるのか/支払われないのかの分水嶺になることから、管理監…

管理監督者に相応しい待遇-一般正社員の待遇が低すぎて比較が意味をなさなかった例

1.管理監督者性 管理監督者には、労働基準法上の労働時間規制が適用されません(労働基準法41条2号)。俗に、管理職に残業代が支払われないいといわれるのは、このためです。 残業代が支払われるのか/支払われないのかの分水嶺になることから、管理監…

口頭での「不本意ではあるが契約社員として更新契約を締結することに応じる」旨の回答では確定的な意思表示であったとは認められないとされた例

1.確定的な意思表示の法理の射程 労働法の領域では、労働者が立場の弱さから外形的に承諾を与えてしまっていたとしても、後日、その効力を争えることが少なくありません。 例えば、外形的に受け入れてしまっていたとしても、賃金減額に関する同意は、自由…

自治体職員が職務命令で部下に偽装請負の実行を指示したことがハラスメントに該当するとされた例

1.国や地方公共団体に蔓延する偽装請負 偽装請負とは、 「書類上、形式的には請負(委任(準委任)、委託等を含む)契約ですが、実態としては労働者派遣であるもの」 を言います。 偽装請負について|東京労働局 かみ砕いて言うと、注文者が、請負人(業務…

懲戒免職処分を受けた公務員の退職手当-1000円の着服行為でも1211万円の退職手当を不支給にすることを是認した最高裁判例

1.公務員の懲戒免職処分と退職手当支給制限処分 国家公務員退職手当法12条1項は、 「退職をした者が次の各号のいずれかに該当するときは、当該退職に係る退職手当管理機関は、当該退職をした者(当該退職をした者が死亡したときは、当該退職に係る一般…

能力と人脈は別-富裕層の人脈を持っていないことを理由とする本採用拒否が否定された例

1.試用期間中の本採用拒否が許容される場合 最大判昭48.12.12最高裁判所民事判例集27-11-1536、労働判例189-16三菱樹脂本採用拒否上告事件は、試用期間の法的性質を解約権の留保と位置付けています。 そのうえで、 「留保解約権の…

「税金」名目での支給額からの10%の控除が、所得税の源泉徴収とは認められず、不当利得の返還が命じられた例

1.源泉徴収 個人に対して業務委託報酬を支払うにあたっては、支払額のうち、 100万円までの部分には10.21%の 100万円を超える部分には20.42%の 源泉徴収が行われます。 No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁 No.2792 源泉…

キャバクラのキャストの労働者性-売上ノルマがなく、接客を断ることが可能であっても、労働者であるとされた例

1.クラブママ、ホステス、ホスト、キャバクラキャスト等の労働者性 比較的昔からある問題の一つに、クラブのママ、ホステス、ホスト、キャバクラのキャスト等、夜職や水商売と言われる職業に就いている方の労働者性があります。 当たれば高収入が見込める…

日給に法内残業の対価が含まれるという主張が否定された例

1.法内残業 「1日の所定労働時間が7時間とされているときに1日8時間労働した場合の1時間の残業のように,所定労働時間を超えるが法定労働時間を超えない残業」を法内残業といいます(佐々木宗啓ほか『労働関係訴訟の実務Ⅰ』〔青林書院、改訂版、令3…

休日に多数勤務していることを理由に1年単位変形労働時間制の効力が否定された例

1.1年単位の変形労働時間制 1年単位の変形労働時間制を適用するにあたっては、「対象期間における労働日及び当該労働日ごとの労働時間」を特定しておく必要があります(労働基準法32条の4第1項4号参照)。労働日を特定するというのは、裏を返すと、…

自宅から会社を経由して現場に出勤するにあたり、会社から現場への移動時間に労働時間性が認められた例

1.移動時間の労働時間性 一般に通勤時間は労働時間ではないとされています。 他方、勤務先営業所と用務先との間の移動時間は、特段の事情がない限り労働時間になると理解されています(以上、佐々木宗啓ほか『類型別 労働関係訴訟の実務Ⅰ』〔青林書院、改…

重過失がないとして、実験室等を全焼させたことによる大学教員の億単位の損害賠償義務が否定された例

1.割合的な請求権の制限では救済されないケース 使用者から被用者に対する損害賠償請求は、信義則上相当と認められる限度に制限を受けます。その根拠となっているのが最一小判昭51.7.8最高裁判所民事判例集30-7-689です。この最高裁判例は、…

パワハラで部下を自殺させた公務員に求償義務の要件である重大な過失が認められた例

1.パワハラをした公務員の個人責任 民間の場合、ハラスメントの被害者(被害者が自殺してしまった場合は遺族)は、会社を訴えるとともに、加害者個人を訴えることもできます。 これに対し、公務員の場合、ハラスメントの被害者が加害者個人を訴えることは…

パワハラで部下を自殺させた公務員に対し、5000万円以上の求償義務が課された例

1.パワハラをした公務員の個人責任 民間の場合、ハラスメントの被害者(被害者が自殺してしまった場合は遺族)は、会社を訴えるとともに、加害者個人を訴えることもできます。 これに対し、公務員の場合、ハラスメントの被害者が加害者個人を訴えることは…

アカデミックハラスメントー授業料及び教育運営費の損害賠償が認められた例

1.アカデミックハラスメントによる損害 アカデミックハラスメントを受けた学生は、学校に通えなくなってしまうことがあります。通学できない期間が長くなると、単位の取得に影響が出て、留年したり、卒業年度が遅くなったりすることに繋がります。 こうし…

アカデミックハラスメント-一発アウトの言動「お前は猿だよ。人間らしいことやってみろ。それ拭け。」

1.アカデミックハラスメント 大学等の教育・研究の場で生じるハラスメントを、アカデミックハラスメント(アカハラ)といいます。 多くの大学はアカデミックハラスメントをハラスメント防止規程等で禁止しています。しかし、セクシュアルハラスメントやパ…

降格の判断枠組の一例Ⅱ

1.降格の判断枠組み 降格とは「役職(職位)または職能資格・資格等級を低下させることをいう」と理解されています。降格には「人事権の行使としてのものと,懲戒処分としてのもの」があります(水町勇一郎『詳解 労働法』〔東京大学出版会、第3版令5〕…

派遣期間の途中で派遣先から就労を拒否され、派遣元から契約終了を告げられながら、休業手当の請求が認められた例

1.派遣契約の解除と派遣労働者の解雇 派遣先と派遣元との間で交わされる労働者派遣契約と、派遣元と派遣労働者との間で交わされている労働契約とは別個の契約です。 派遣先から労働者派遣契約を解除されたとしても、派遣元は当然に派遣労働者を解雇できる…

解雇撤回を求めてから約1年10か月後に訴訟提起するまでの間、使用者に連絡していなくても一定限度で就労意思が認められた例

1.解雇の効力を争う地位確認請求訴訟の提起は早めに行うこと 過去にも何度も言及していますが、実務上、古い事件を掘り起こすことは簡単ではありません。 在職中の労働条件の不利益変更の効力は、時間が経過しても争える場合がありますが、解雇のように従…

雇入れから時間が経っていないことは、整理解雇の可否を判断するにあたってのどの要素として位置付けられるのか?

1.雇入れ直後の整理解雇 整理解雇とは「企業が経営上必要とされる人員削減のために行う解雇」をいいます(佐々木宗啓ほか編著『類型別 労働関係訴訟の実務Ⅱ』〔青林書院、改訂版、令3〕397頁)。 整理解雇の可否は、①人員削減の必要性があること、②使…

「他社からの誘いがあり、そこに行きたいと思っていたから、ちょうどよかった」などの発言による合意退職が認められなかった例

1.退職の意思表示の慎重な認定 労使間でトラブルになっている時に、売り言葉に買い言葉で辞意を口にしてしまうことがあります。こうした軽率な発言によって、本意ではないにもかかわらず退職扱いされてしまった場面で労働者を保護する法律構成の一つに、 …

転籍合意について、慎重に判断すべきであるとしつつも、自由な意思の法理の適用が否定された例

1.自由な意思の法理の射程 最二小判平28.2.19労働判例1136-6山梨県民信用組合事件は、 「使用者が提示した労働条件の変更が賃金や退職金に関するものである場合には、当該変更を受け入れる旨の労働者の行為があるとしても、労働者が使用者に…

労働時間の通算規定を根拠とする割増賃金請求が否定された例

1.兼業労働者による割増賃金請求 労働基準法38条1項は、 「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」 と規定しています。 「労働時間に関する規定」には割増賃金を請求するための根拠規定も含まれ…

解雇を無効とする判決が確定した後も、労働者に自宅待機命令を出し続けることが不法行為に該当するとされた例

1.解雇を無効とする判決が出たその後 解雇の効力を争って地位確認請求訴訟を提起して勝訴すると、通常は、使用者との間で復職に向けた協議が行われます。ここで就労条件や就労環境が調整され、労働者は職場復帰して行きます。 しかし、労働者の職場復帰を…

民法536条2項は任意規定であるから会社都合の休業の場合でも平均賃金の60%以上の手当を支払っておけば足りるとの主張が排斥された例

1.民法536条2項 解雇されても、それが裁判所で違法無効であると判断された場合、労働者は解雇時に遡って賃金の請求をすることができます。いわゆるバックペイの請求です。 バックペイの請求ができるのは、民法536条2項本文が、 「債権者の責めに帰…

感染症流行時、労働者において出勤せず在宅勤務とする方針を使用者に伝えたことが違法行為とはいえないとされた例

1.生命、身体への危険を伴う出勤命令 使用者から生命や身体への危険を伴う業務を命じられた時に、これを断ることができるのかという論点があります。 最三小判昭43.12.24労働判例74-48電電公社千代田丸上告事件は、日韓関係の緊張により出航…

トランスジェンダー当事者(男性から女性に性別変更)を「おっさん」と揶揄することが不法行為に該当するとされた例

1.相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動 令和2年厚生労働省告示第5号『事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針』は、パワーハラスメントの典型例を示しています。 その…

賃金水準が維持されていても、定年退職までの片道切符となる出向命令について不利益性が大きいとされた例

1.関連会社への出向 比較的規模の大きい企業では多くの新人が採用されます。 しかし、経営幹部まで昇進するのは、そのうちの一部でしかありません。 残りの人たちはどうなっているのかというと、そのまま定年を迎えたり、関連会社に転籍したり、関連会社に…

出向の必要性を判断するにあたり7年以上前のセクハラ発言を重視することは相当ではないとされた例

1.非違行為、問題行為はどこまで尾を引くのか? 最近では転職も一般的になりつつありますが、伝統的な日本企業には、依然として終身雇用(長期雇用)と呼ばれる慣習が色濃く存在します。 雇用期間が長期間に及ぶと、非違行為やミスが積み重なって行きます…