弁護士 師子角允彬のブログ

師子角総合法律事務所(東京:水道橋駅徒歩5分・御茶ノ水駅徒歩7分)の所長弁護士のブログです

有期契約の大学講師の無期契約に移行してもらうことに向けられた期待を雇止め法理で救済できるか?

1.大学講師の特殊性と雇止め法理 大学講師の方は、任期制のもと、有期の労働契約を交わして働いている方が少なくありません。こうした方の多くは、好んで有期契約を結んでいるというよりも、無期契約に移行してもらうことを期待しながら働いています。 こ…

大学非常勤講師の労働者性が否定された例

1.大学非常勤講師 大学非常勤講師の方は、不安定な働き方を強いられている例が少なくありません。 大学との間で交わされている労働契約は、雇用期間が細分化されていたり、賃金が極端に低かったりすることが多くみられます。 それでも、労働契約が結ばれて…

部下の多さでは管理監督者かどうかは決まらない-従業員数20名の会社で8名の部下を有する地位にあっても管理監督者性が否定された例

1.管理監督者性 管理監督者には、労働基準法上の労働時間規制が適用されません(労働基準法41条2号)。俗に、管理職に残業代が支払われないいといわれるのは、このためです。 残業代が支払われるのか/支払われないのかの分水嶺になることから、管理監…

管理監督者に相応しい賃金-各手当の性質の分析が重要(賃金月額72万円・従業員中2位でも待遇が否定された例)

1.管理監督者性 管理監督者には、労働基準法上の労働時間規制が適用されません(労働基準法41条2号)。俗に、管理職に残業代が支払われないいといわれるのは、このためです。 残業代が支払われるのか/支払われないのかの分水嶺になることから、管理監…

会社経営者が解雇と辞職の区別さえ知らないのは不合理であるとされた例

1.解雇か辞職か 労働契約法16条は、 「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」 と規定しています。一般に解雇権濫用法理と言われるもので、この条文により、解雇…

形だけ労働契約書があっても労働者ではないとされた例

1.家族経営の法人・給与名目での金銭の交付 家族経営の法人や会社では、身内を役員や従業員にして、役員報酬や賃金の名目で金銭を支給している例が、しばしば見受けられます。家族関係が円満なときはいいのですが、ひとたび関係が険悪になると、法人や会社…

提訴記者会見の真実性の対象をどうみるか?

1.提訴記者会見と真実性の抗弁 訴訟提起した事実を記者会見をして広く告知することを、一般に提訴記者会見といいます。労働事件に限った話ではありませんが、提訴記者会見をすると、名誉毀損だとして、被告側から逆に訴え返されることがあります。 提訴記…

評価を獲得したい等の心情を利用することはセクシュアルハラスメントか?

1.対価型セクシュアルハラスメント 平成18年厚生労働省告示第615号「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」は、対価型セクシュアルハラスメントを、 「職場において行われる労働者の意に反…

詐欺・背任・横領を認める書面の効力を否定できた例

1.詐欺等を認める書面を作ってしまったら・・・ 事実に反しているにも関わらず、会社に対する損害賠償義務を認めることを内容とする書面を作成してしまった場合、どのように対処すればよいのでしょうか? この問題は、しばしば労働者側で事件を取り扱って…

自由な意思の法理による賃金減額合意の否定例(今年よりやったら元に戻すのではなくて、それより上げてもらえますか)

1.自由な意思の法理による外形的同意の否定 最二小判平28.2.19労働判例1136-6山梨県民信用組合事件は、 「使用者が提示した労働条件の変更が賃金や退職金に関するものである場合には、当該変更を受け入れる旨の労働者の行為があるとしても、…

社会保険労務士の方を対象とした能力担保研修講師を経験してⅢ

社会保険労務士の方を対象とした能力担保研修講師を務めました。能力担保研修の講師を務めるのは、一昨年、昨年に引き続き三度目になります。 これは社会保険労務士の方が、特定社会保険労務士になるための研修です。 特定社会保険労務士は通常の社会保険労…

労災-海外出張者と海外派遣者との区別

1.海外派遣者/海外出張者 労働者災害補償保険は、属地主義を採用しています。 言い換えると、保険関係の成立する範囲は、国内に限られるのが原則です。 ただし、労働者災害補償保険法33条7号は、 「この法律の施行地内において事業・・・を行う事業主…

違法派遣を受けた国や地方公共団体に対する採用不作為の違法確認訴訟・採用義務付け訴訟の可否(消極例)

1.違法派遣を受けた国や地方公共団体の義務 労働者派遣法40条の7第1項は、 「労働者派遣の役務の提供を受ける者が国又は地方公共団体の機関である場合であつて、前条第一項各号のいずれかに該当する行為を行つた場合・・・においては、当該行為が終了…

違法派遣を受けた国や地方公共団体に派遣労働者を採用する義務はあるか?

1.労働契約申込みみなし制度 労働契約申込みみなし制度とは、派遣先等が違法派遣を受けた時点で、派遣先等が派遣労働者に対して、その派遣労働者の雇用主(派遣元事業主)との労働条件と同じ内容の労働契約を申し込んだとみなす制度をいいます(労働者派遣…

事業場外みなし労働時間制の適用の否定例-労働時間を把握されている方へ

1.事業場外みなし労働時間性 労働基準法38条の2は、 「労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労…

管理監督者だと言われて納得して入社したら、残業代を請求できなくなるのか?

1.管理監督者の判断枠組と「納得」「合意」 時間外勤務手当等(残業代)の請求の可否に関する相談を受けている時に、 「会社から説明を受けて納得して管理監督者になったのに、今更、管理監督者性を否定して残業代を請求することができるのか?」 という質…

職場から貸与されたパソコンデータは消去しないで返す方が無難-復元費用の損害賠償請求が認められた例

1.パソコンデータの消去 退職する際、職場から貸与されたパソコンを初期化して返却する方がいます。 こうした方を代理して、退職後、時間外勤務手当等(残業代)を請求したり、ハラスメントを理由とする損害賠償を請求したりすると、会社から、 「退職にあ…

シフト制労働者の管理監督者性

1.管理監督者性 管理監督者には、労働基準法上の労働時間規制が適用されません(労働基準法41条2号)。俗に、管理職に残業代が支払われないいといわれるのは、このためです。 残業代が支払われるのか/支払われないのかの分水嶺になることから、管理監…

退職手当支給制限処分(全部不支給)の一部取消が認められる場合

1.退職手当支給制限処分の取消 懲戒免職処分を受けた公務員に対しては、原則として退職手当の支給がありません(国家公務員退職手当法12条1項1号、昭和60年4月30日 総人第 261号 国家公務員退職手当法の運用方針 最終改正 令和4年8月3日閣…

公務員の飲酒運転-懲戒免職処分は有効とされながらも、退職手当支給制限処分(全部不支給)が違法とされた例

1.懲戒免職処分と退職手当支給制限処分 国家公務員退職手当法12条1項は、 「退職をした者が次の各号のいずれかに該当するときは、当該退職に係る退職手当管理機関は、当該退職をした者(当該退職をした者が死亡したときは、当該退職に係る一般の退職手…

非違行為の直後に行われた嘘の言い訳はどのように評価されるのか

1.咄嗟の嘘 非違行為を犯した時、それを糊塗するため、咄嗟に嘘をついてしまう労働者は少なくありません。こうした苦し紛れの言い訳は稚拙なものが多く、大抵の場合、すぐに嘘であることが露見します。 嘘は倫理的に不適切とされていることもあり、人の目…

指導・処分歴のない公務員に対しパワハラを理由として行われた分限免職処分が有効とされた例

1.分限制度 公務の能率の維持や適正な運営の確保という目的から、職員の意に反する不利益な身分上の変動をもたらす処分を、分限処分といいます。分限処分には、降任、免職、休職、降級の4種類があります(国家公務員法78条、79条、人事院規則11-1…

長期間(20年以上)に渡って事故等がなかったことはどのように評価されるのか

1.過失責任と予見可能性 労働契約法5条は、 「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」 と規定しています。これは一般に「安全配慮義務」と呼ばれています。 安…

遺書の証拠力-遺書に書いてあるストレス因でも事実として認められないことがある

1.遺書の証拠力 職場でのストレスが背景にある自死・自殺事案では、遺書に上司や同僚等の心ない言葉が書かれていることがあります。 このような内容の遺書を目にした遺族には、 当該心ない言動が存在したに違いない、 当該心ない言動が自死・自殺の原因に…

新人であることは個体側要因(個人の脆弱性)か?

1.精神障害の労災認定 精神障害の労災認定について、厚生労働省は、 平成23年12月26日 基発1226第1号「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(最終改正:令和2年8月21日 基発0821第4号) という基準を設けています。 精神障…

ターゲットを選んでいたことがパワハラ成立の根拠とされた例

1.相手を選ぶパワハラ パワーハラスメント(パワハラ)の加害者の中には、誰に対しても一様に加害的である方もいます。 しかし、個人的な経験の範疇でいうと、そのような方は多数派ではありません。多くの加害者は、反抗してきそうにない相手・反抗できな…

一覧表形式でミスを思いつく数だけ記載させることの適法性

1.具体的な指示の伴わないミスの申告を求める行為 使用者側から、何を意図しているのかが明確にされないまま、ミスを自主的に申告するように求められることがあります。 このような命令を受けた労働者は、難しい判断を迫られます。 ミスがないと申告すれば…

労働時間に裁量があったとしても、役職就任前からのことであれば管理監督者性を基礎づける要素にはならない

1.管理監督者性 管理監督者には、労働基準法上の労働時間規制が適用されません(労働基準法41条2号)。俗に、管理職に残業代が支払われないいといわれるのは、このためです。 残業代が支払われるのか/支払われないのかの分水嶺になることから、管理監…

就業規則で「超過勤務手当として取り扱う」とされた手当型固定残業代の効力が否定された例

1.手当型固定残業代の有効要件 固定残業代とは、 「時間外労働、休日および深夜労働に対する各割増賃金(残業代)として支払われる、あらかじめ定められた一定の金額」 をいいます(白石哲編著『労働関係訴訟の実務』〔商事法務、第2版、平30〕115頁…

研究活動に係る不正行為の公表が許される場合

1.研究不正ガイドライン 研究活動の不正行為に対応するため、平成26年8月26日、文部科学省は「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(研究不正ガイドライン)という文書を作成しました。 https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/…