弁護士 師子角允彬のブログ

師子角総合法律事務所(東京:水道橋駅徒歩5分・御茶ノ水駅徒歩7分)の所長弁護士のブログです

誇張された解雇理由、日時・場所・態様の特定を欠く解雇理由は恐れるに足りない

1.誇張・抽象的な主張 解雇の効力を争う事件は、使用者側に解雇理由の特定を求めることから始まります。第一次的には解雇理由証明書(労働基準法22条参照)の交付を求めますし、ここで十分な理由開示が得られなければ、訴訟提起等の法的措置をとったうえ…

退職勧奨の影響を受けてされた賃金減額の申出は無効/事後的であっても法律相談をしておく意義

1.賃金減額と自由な意思の法理 最二小判平28.2.19労働判例1136-6山梨県民信用組合事件は、 「就業規則に定められた賃金や退職金に関する労働条件の変更に対する労働者の同意の有無については、当該変更を受け入れる旨の労働者の行為の有無だ…

私生活上の非行と解雇の可否:ストーカー行為は懲戒解雇の根拠になるのか?

1.私生活上の非行を理由とする懲戒解雇 私生活でストーカー行為をした従業員を懲戒解雇することができるのでしょうか? こう問われると、当たり前だと考える一般の方は少なくありません。 しかし、法的に考察してみると、問題はそれほど簡単ではありません…

部下の私生活上の不祥事(飲酒運転の車に同乗)について、上司の監督責任を問うことはできるのか?

1.部下に連座する上司 従業員が社会的に非難を浴びるような行為をした時、批判の矛先が伸びて、勤務先が謝罪に追い込まれることがあります。仕事に関連した犯罪等であれば分からなくもありませんが、こうした現象は従業員が私生活上で非違行為に及んだ場合…

労働時間立証のための資料(日報等)のコピーを持ち出すことは許されるのか?

1.時間外勤務手当等(残業代)計算のための資料の持ち出し 時間外勤務手当等(残業代)を正確に計算するためには、タイムカードや業務日報等の資料が必要になります。相談者や依頼者に、こうした資料の写しを持ってきて欲しいというと、そのようなことをし…

労務管理を素人任せにしていた代表取締役に未払割増賃金額に相当する損害賠償義務が認められた例

1.代表取締役に対する割増賃金(残業代)請求 割増賃金(残業代)の支払義務を負うのは、飽くまでも労働契約の当事者である会社です。しかし、無資力である(強制執行の対象財産がない)などの理由から、裁判所で割増賃金の支払を命じる判決を言い渡しても…

労働時間を抑制するための制度を構築する義務-100時間分の固定残業代は安全配慮義務違反?

1.想定労働時間が異様に長い固定残業代 「時間外労働、休日および深夜労働に対する各割増賃金(残業代)として支払われる、あらかじめ定められた一定の金額」を固定残業代といいます(白石哲編著『労働関係訴訟の実務』〔商事法務、第2版、平30〕115…

退職(失業)後、約4か月を経過しての鬱病自殺に業務起因性が認められた例

1.退職(失業)後、相当期間が経過してからの自殺 鬱病そのものに業務起因性が認められる場合でも、退職(失業)した後、相当期間が経過した後に被災者が自殺しているケースでは、労災認定を受けることが必ずしも容易ではありません。それは退職(失業)に…

労働者派遣:労働契約申込みのみなし制度-偽装請負類型の「法律の規定の適用を免れる目的」の認定

1.労働契約申込みのみなし制度-偽装請負類型 労働者派遣法40条の6第1項5号は、労働者派遣の役務の提供を受ける者が、 「この法律又は次節の規定により適用される法律の規定の適用を免れる目的で、請負その他労働者派遣以外の名目で契約を締結し、第…

派遣類似の労働者への雇止めが無効とされた例

1.派遣労働者への雇止め 派遣労働者への雇止めの可否が問題になった事件に、最二小決平21.3.27労働判例991-14 伊予銀行・いよぎんスタッフサービス事件があります。 これは、 「派遣法は、派遣労働者の雇用の安定だけでなく、常用代替防止、…

役員(理事)に就任したら退職するという役員規程上の規定-これにより自動的に退職したことになるか?

1.役員への就任と退職(一般社団法人の理事) 以前、 取締役に就任したら退職するという就業規則-これにより自動的に退職したことになるか? - 弁護士 師子角允彬のブログ という記事を執筆しました。 これは、取締役に就任したら退職するという就業規則…

パワハラによる鬱病自殺に業務起因性が認められた例

1.精神障害の労災認定 精神障害の労災認定について、厚生労働省は、 平成23年12月26日 基発1226第1号「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(最終改正:令和2年8月21日 基発0821第4号) という基準を設けています。 精神障…

復職の意思表示にあたっては、常に復職可能性を裏付ける診断書が必要なのか?

1.復職の意思表示 休職していた労働者が復職するにあたっては、傷病が治癒している必要があります。 治癒とは、 「従前の職務を通常の程度に行える健康状態に回復した」 ことをいいます。 治癒の立証責任が労働者にあると解されていることもあり(佐々木宗…

有期労働契約に試用期間を設定する要件、試用期間中の解雇の可否に係る判断基準をどう理解するか?

1.有期労働契約の解雇規制 労働契約法17条は、 「使用者は、期間の定めのある労働契約・・・について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。」(1項) 「使用者は、有期労…

懲戒解雇後、予備的に行われた普通解雇について、社会的相当性が否定された例

1.懲戒解雇後に行われる普通解雇 労働者を代理して懲戒解雇が無効であることを指摘すると、使用者側から 懲戒解雇は有効である という反論とともに、 仮に懲戒解雇が無効であるとしても、普通解雇する といった回答を寄せられることがあります。 使用者側…

ポイント制退職金は余程のことがない限り全額不支給にはならない?

1.退職金不支給 懲戒解雇された場合など、一定の場合に退職金を不支給とすることを定めている会社は少なくありません。 ただ、「退職金を不支給は又は減額支給とすることができるのは、労働者の勤続の功を抹消ないし減殺してしまうほどの著しく信義に反す…

アカデミックハラスメントと教育的指導の境界線-きついメッセージ・チャットワークからの除外

1.アカデミックハラスメント 大学等の養育・研究の場で生じるハラスメントを、アカデミックハラスメント(アカハラ)といいます。 セクシュアルハラスメント、マタニティハラスメント、パワーハラスメントとは異なり、法令上の概念ではありませんが、近時…

外資系企業における管理監督者性-親会社外国法人からの指示・拘束・制約をどうみるか?

1.管理監督者性 管理監督者には、労働基準法上の労働時間規制が適用されません(労働基準法41条2号)。俗に、管理職に残業代が支払われないいといわれるのは、このためです。 残業代が支払われるのか/支払われないのかの分水嶺になることから、管理監…

解雇・雇止めの撤回の否定例-「問題があったことを認めて今後素直に改善するということであれば、受け入れを検討する」はダメ

1.解雇・雇止めの撤回 解雇や雇止めが無効であると主張して、地位確認等を求める通知を出すと、使用者側から、解雇や雇止めを撤回するので働きに来るようにと言われることがあります。 これが、真摯に判断を誤ったことを認め、労務提供を受け容れるという…

報酬月額80万円で他社の代表取締役に就任しても、就労意思が否定されなかった例

1.他社就労と就労意思 解雇が無効とされた場合に労働者が労務を提供していなくても賃金を支払ってもらえるのは、 「債権者(使用者)の責めに帰すべき事由によって債務(労務提供義務)を履行することができなくなった」 と理解されるからです。 この場合…

解雇後に作成された報告書、送信されたメールによるハラスメント(解雇理由)の立証が否定された例

1.解雇後に作成される陳述書、報告書等 訴訟で解雇の効力を争っていると、使用者側から、原告労働者の勤務態度に問題があったことの証拠として、在職中の同僚労働者の供述をまとめた書面が提出されることがあります。書面は、報告書、陳述書、メールなど、…

懲戒処分としての降格-雇入れの際の初任給の決定に関する規定を根拠に基本給を減額できるのか?

1.懲戒処分としての降格 「労務遂行上の懈怠や服務規律違反行為に対する制裁として、労働者の職位や資格を引き下げること」を「懲戒処分としての降格」といいます。(佐々木宗啓ほか編著『労働関係訴訟の実務Ⅰ』〔青林書院、改訂版、令3〕84頁参照)。 …

基本給の固定残業代への振り替え-疑問点はメールに残しておくこと

1.基本給の固定残業代への振り替え 実務上、かなり強引に固定残業代が導入される例を目にすることがあります。その一例が、基本給を固定残業代に振り替える方法による固定残業代の導入です。これは、基本給30万円を、基本給20万円と固定残業代10万円…

腕相撲大会は、従業員の腕力、俊敏さ、性格などをみて給与・人事評価をする目的であったとの説明が採用されなかった例

1.労働者災害補償保険のメリット制 労働者災害補償保険の保険料には「メリット制」という考え方が採用されています。これは、事業場の労働災害の多寡に応じて、一定の範囲内で、労災保険率・労災保険料額を増減させる仕組みをいいます。 https://www.mhlw.…

代表取締役・労務管理担当の取締役とその他の取締役の注意義務の差

1.取締役の善管注意義務 株式会社と役員の関係は委任に関する規定によって規定されます(会社法330条)。そのため、取締役(役員)は会社に対し「善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務」(善管注意義務)を負います(民法644条)。 …

診療録・カルテの写しを提供しなくても、復職要件が満たされていると判断された例

1.私傷病休職からの復職 私傷病休職をしていた方が復職するためには、傷病が「治癒」している必要があります。「治癒」とは「従前の職務を通常の程度に行える健康状態に回復した」ことを意味します(佐々木宗啓ほか編著『労働関係訴訟の実務Ⅱ』〔青林書院…

就労を拒否された時に他社就労をしたことは解雇理由になるか?

1.兼業・副業の禁止 厚生労働省では「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日 働き方改革実現会議決定) を踏まえ、副業・兼業の普及促進を図っています。 副業・兼業|厚生労働省 しかし、兼業や副業に対して消極的な姿勢をとる会社は、依然として少…

就業規則の規定について誤記との主張が排斥された例

1.法適合性に疑義のある規定を含んだ就業規則 小~中規模の事業者の就業規則には、法適合性に疑義のある規定を含んでいるものが少なくありません。専門家に依頼せず、自分で作成・変更するから、このような現象が生じるのではないかと思います。 こうした…

不利益緩和措置としての調整給(特別手当)の法的性質

1.激変緩和措置・不利益緩和措置 降格や就業規則の変更など、賃金の減額が行われる場面において、激変・不利益を緩和するため、調整給等の名目で金銭が支給されることがあります。 それでは、この調整給等の名目で支給される金銭の法的性質は、どのように…

違法な譴責処分を理由とする損害賠償請求が認容された例

1.違法な譴責処分・戒告処分を理由とする損害賠償(慰謝料)請求のハードル 違法な譴責処分・戒告処分を理由とする損害賠償(慰謝料)請求には、三つのハードルがありあす。 一つ目は、故意・過失です。 客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当である…