弁護士 師子角允彬のブログ

師子角総合法律事務所(東京:水道橋駅徒歩5分・御茶ノ水駅徒歩7分)の所長弁護士のブログです

能力不足を理由とする解雇-即戦力・高水準の給与の労働者であっても能力評価に3週間では短すぎるとされた例

1.能力不足を理由とする解雇 一般に、能力不足を理由とする解雇に関しては、 「長期雇用システム下の正規従業員については、一般的に、労働契約上、職務経験や知識の乏しい労働者を若年のうちに雇用し、多様な部署で教育しながら職務を果たさせることが前…

自動車運転手の駐停車時間の労働時間性(自宅にいても労働時間性が認められた事案)

1.自動車運転手の駐停車時間の労働時間性 使用者の指示があれば直ちに作業に従事しなければならない状態にある時間を一般に「手待ち時間」といいます。自動車運転手の駐停車時間は、手待ち時間の典型であるとされています。 手待ち時間は、現象的に何もし…

コロナ禍での会社解散に伴う整理解雇-雇用調整助成金を利用して再就職のあっせん等の時間を稼ぐ義務はあるか?

1.会社解散と整理解雇 既に流行に慣れてきつつある感も否めませんが、新型コロナウイルスに関連する企業倒産は今も少なくありません。帝国データバンクが公開している新型コロナウイルス関連倒産の発生累計件数は、右肩上がりになっており、令和4年4月段…

休職開始日を休職命令の到達時よりも前の日付に遡らせることは可能なのか?

1.意思表示の効力発生時期 民法97条1項は、 「意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる」 と規定しています(到達主義)。 この規定に従うと、休職命令も、使用者からの通知が労働者に対して到達した時に発生するということにな…

使用者から私用を命じられた時に与えてしまった損害でも、賠償義務の制限を主張できるのか?

1.使用者に対する損害賠償義務 労働者が職務を遂行するにあたり、必要な注意を怠って労働契約上の義務に違反して使用者に損害を与えた場合、債務不履行に基づく損害賠償責任を負うことがあります。 しかし、労働者の職務遂行にかかる損害賠償責任には、二…

社用車で自損事故を起こした労働者は、会社にどの程度の損害賠償責任を負うのか?

1.使用者に対する損害賠償義務 労働者が職務を遂行するにあたり、必要な注意を怠って労働契約上の義務に違反して使用者に損害を与えた場合、債務不履行に基づく損害賠償責任を負うことがあります。 しかし、労働者の職務遂行にかかる損害賠償責任には、二…

無期転換ルールの適用を主張するタイミング 在職中に「研究者」該当性を争えるのか?

1.無期転換ルールとその例外 労働契約法18条1項本文は、 「同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約・・・の契約期間を通算した期間・・・が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日…

無期転換ルール 授業要員としての非常勤講師は「研究者」か?

1.無期転換ルールとその例外 労働契約法18条1項本文は、 「同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約・・・の契約期間を通算した期間・・・が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日…

配転の効力を争う仮処分における保全の必要性-住居の確保ほか経済的負担が生じることだけでは弱い

1.配転の効力の争い方 違法・無効な配転の効力を争うにあたっては、大きく言って二つの方法があります。 一つ目は、異議を留保したうえで配転命令に服し、配転先で働きながら、その効力を争って行く方法です。 二つ目は、仮処分です。本案に先立ち、配転先…

労働密度・労働強度の問題から不活動時間の労働時間性が否定された例

1.不活動時間の労働時間性 不活動仮眠時間の労働時間性について、最一小判平14.2.28労働判例822-5大星ビル管理事件は、 「不活動仮眠時間であっても労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たるというべきである。そ…

賃金仮払い仮処分-保全の必要性の理解が厳しすぎではないだろうか

1.賃金仮払いの仮処分 解雇にしても賃金減額にしても、判決が言い渡されるまでの間には、かなりの時間を要するのが通例です。 このタイムラグによって労働者が致命的な損害を受けることを避けるための仕組みに「賃金仮払いの仮処分」という手続があります…

労災の不支給処分に対する取消訴訟-組合活動の労働時間性

1.心理的負荷による精神障害の認定基準(長時間労働) 精神障害の発症が労働災害に該当するのか(業務に起因するのか)を判断する基準として、平成23年12月26日 基発1226第1号「心理的負荷による精神障害の認定基準について(最終改正:令和2…

行政措置要求の却下判定に対する取消訴訟の勝訴要件

1.行政措置要求 公務員特有の制度として「行政措置要求」という仕組みがあります。 これは、 「職員は、俸給、給料その他あらゆる勤務条件に関し、人事院に対して、人事院若しくは内閣総理大臣又はその職員の所轄庁の長により、適当な行政上の措置が行われ…

管理運営事項と行政措置要求の対象としての適格性

1.行政措置要求 公務員特有の制度として「行政措置要求」という仕組みがあります。 これは、 「職員は、俸給、給料その他あらゆる勤務条件に関し、人事院に対して、人事院若しくは内閣総理大臣又はその職員の所轄庁の長により、適当な行政上の措置が行われ…

労働者派遣:労働契約申込みのみなし制度-承諾の意思表示の内容

1.労働契約申込みのみなし制度 労働者派遣法40条の6第1項は、一定の行為を行った派遣先について、派遣元と同一の労働条件で派遣労働者に契約の締結の申込みをしたものとみなすという仕組みを規定しています。 例えば、労働者派遣法の適用を免れる目的…

労働者派遣:労働契約申込みのみなし制度-偽装請負類型の「法律の規定の適用を免れる目的」の認定Ⅱ

1.労働契約申込みのみなし制度-偽装請負類型 労働者派遣法40条の6第1項5号は、労働者派遣の役務の提供を受ける者が、 「この法律又は次節の規定により適用される法律の規定の適用を免れる目的で、請負その他労働者派遣以外の名目で契約を締結し、第…

第二東京弁護士会 労働問題検討委員会 労働実務研究部会 部会長に選任されました

第二東京弁護士会に設置されている労働問題検討委員会は、労働実務研究部会、労働法制部会、社会保障部会、労働法教育部会の四つの部会に分かれています。 本日、労働実務研究部会の部会長に選任されました。 労働実務研究部会では、最新判例の研究、労働相…

退職の意思表示の撤回は、撤回の効力を主張するだけでは足りない

1.退職の意思表示の撤回 退職の意思表示をしてしまったけれど、撤回したい-このような相談を受けることは、実務上少なくありません。このような相談を受けた場合、兎にも角にも早く退職の意思表示を撤回する通知を出すように助言するのが通常です。 退職…

勤務成績不良を理由とする解雇の思考手順

1.勤務成績不良を理由とする解雇 高度の技術能力を評価され、特定の職務のために即戦力採用されたような場合を除き、「長期雇用システム下の正規従業員については、一般的に労働契約上、職務経験や知識の乏しい労働者を若年のうちに雇用し、多様な部署で教…

敬語のパワハラ「ここは学校じゃないので、同じことを言わせないでください」「本俸が高いのだから、本俸に見合う仕事をしなさい」

1.パワーハラスメント 事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)は、 「事業主が職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業…

精神障害(適応障害)の発症と因果関係が認められるレベルの暴行の参考例

1.精神障害を発症させられたことを理由とする損害賠償請求 使用者側の不適切な行為により精神障害を発症した労働者が、被った損害の賠償を請求しようとする時、しばしば不適切な行為と精神障害の発症との間に相当因果関係が認められるのかどうかが問題にな…

効力発生日が試用期間経過後である解雇の効力はどう考えるのか

1.試用期間中の解雇 試用期間中または試用期間終了時の解雇(本採用拒否)は、 「実際の就労状況等を観察して従業員の適格性を判定するという留保解約権の趣旨・目的に照らし、本採用後の解雇の場合よりも広い範囲の解雇の自由が認められる」 と理解されて…

コミュニケーション能力不足を理由とする解雇-当事者尋問がコミュニケーション能力の不足の裏付けとなってしまった例

1.コミュニケーション能力不足を理由とする解雇事件と当事者尋問 コミュニケーション能力不足を理由とする解雇の効力を争うにあたり、気を遣う手続の一つに「当事者尋問」(本人尋問)と呼ばれる手続があります。 「当事者尋問」というのは、当事者本人に…

雇止め-無期転換ルールの潜脱目的であることが認定されなかった例

1.無期転換権に関する法規制 労働契約法18条1項本文は、 「同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約・・・の契約期間を通算した期間・・・が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日…

雇止め-無期転換ルールの潜脱目的であることが認定された例

1.無期転換権に関する法規制 労働契約法18条1項本文は、 「同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約・・・の契約期間を通算した期間・・・が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日…

雇止め-使用者が更新年数上限を一方的に宣言しても、一度抱いた合理的期待は否定されないとされた例Ⅱ

1.雇止めと不更新条項 労働契約法19条2号は、 「当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められる」 場合(いわゆる「合理的期待」が認められ…

TV局の視聴者コールセンターの不適切な電話からコミュニケーターを守る義務

1.安全配慮義務 コールセンターに勤務している方は、しばしば電話口で罵倒されたり中傷されたりしています。また、同一人物から膨大な回数の電話を受けたり、わいせつな言葉を浴びせられたりすることもあります。 業務上、コールセンターで処理できなくな…

TV局の視聴者コールセンターは大変?-視聴者からの不適切発言に反撃して失職した例

1.コールセンターは大変? 「感情労働」という言葉があります。 これは、 「顧客などの満足を得るために自身の感情をコントロールし、常に模範的で適切な言葉・表情・態度で応対することを求められる労働」 を言い、 「旅客機の客室乗務員をはじめとする接…

アカデミックハラスメント-指導教授からセクハラを受けた大学院生に対する事後措置

1.ハラスメントに対する事後措置 職場におけるセクシュアルハラスメント(セクハラ)の場合、事業主には「事後の迅速かつ適切な対応」を行うことが義務付けられています(事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等に…

アカデミックハラスメント-研究室主催の飲み会でのセクハラについて、大学に責任を問えるのか?

1.飲み会の業務関連性 大学に所属している教職員からセクシュアルハラスメント(セクハラ)を受けた人が、加害者だけではなく大学にも責任を問うにあたっては、セクハラ行為が大学の事業と関連していることが必要になります。 これは被用者の不法行為につ…