1.パワハラの慰謝料は伸びにくい
以前、労働局に寄せられる相談の中で、いじめ・嫌がらせ(パワハラ)の件数が6年連続で最多となっているというお話をしました。
平成29年度では、25万3005件の相談の中で、7万2067件が、いじめ・嫌がらせに関するものとされています。
パワハラに関する相談は、私のもとにも相当数寄せられています。
しかし、十分な慰謝料がとれる事案となると、相当程度、限られてきます。
裁判所が、パワハラに対して、それほど高額の慰謝料を認定しない傾向にあるからです。
2.近時の参考裁判例
労働経済判例速報という判例集の今年2月20日に発刊された号にパワハラに関する裁判例が掲載されていました(福岡地裁平30.9.14労経速2367-10大島産業事件)。
この事案では、次のようなパワハラが認定されています。
(1)落ち武者風カット→丸刈り、高圧洗浄、洗車用ブラシで身体を洗う
(判決文引用)
「被告Cは、原告の帰社が遅れたことに腹を立て、原告の頭頂部及び前髪を
刈り、落ち武者風の髪型にした上、洗車用スポンジで原告の頭部を洗髪し、最終的に原告を丸刈りにした。」
「引き続いて、原告は他の被告会社従業員から、下着姿にさせられた上、洗車用の高圧洗浄機を至近距離から身体に向けて噴射され、洗車用ブラシで身体を洗われたが、この様子を被告Cはその場で黙認し、制止しなかった。」
(2)ロケット花火での狙撃、投石
(判決文引用)
「原告の主張ウに係る事実を認めることができる。」
(以下「原告の主張ウ」部分)
「被告Cは、平成25年9月16日、社員旅行から帰った後、被告会社本店において、原告に対し、車内からロケット花火を持ってくるように命じた上、下着一枚になって裏の川に入るように命じた。そして、被告Cは、他の従業員に対し、当てたら賞金を与えるとして原告に向けてロケット花火を発射するように命じ、従業員をして、至近距離からロケット花火を原告に向けて発射させ、逃げ出した原告に対して石を投げさせた。」
(3)数時間に渡る土下座
(判決文引用)
「原告は、本件失踪1の後に復職を認めてもらおうとして被告会社に戻った際、E常務に指示されて、社屋入口前で、被告Cが出社して来るまで土下座をし続け、出社して来た被告Cはこれを一瞥したが土下座を止めさせることなく、原告はその後も数時間にわたり土下座を続けた」
(4)ブログでの晒し
(判決文引用)
「被告C名義のブログ・・・野中には、原告が同僚の従業員からいじめ行為を受けたり土下座したりしている写真や、『ホラ吉』『葉山子亀夫』といった原告を侮蔑するような表現が含まれていた。」
これだけの事実が認定されていながら、裁判所が認定したパワハラの慰謝料は100万円でしかありません。
3.パワハラ以外の問題と併せて問題にすることで訴訟にはしやすくなる
ただ、パワハラを先導したり放置したりする会社は、それ以外にも問題があることが珍しくありません。
上述の大島産業事件では、未払賃金902万5361円(うち割増賃金部分756万1092円、それ以外の部分146万4269円)、付加金494万8855円の支払いなどが命じられており、被告に対して支払いが命じられた金額は合計すれば1500万円以上に及びます。
弁護士費用を考慮して赤字にさえならなければ良いということであれば、事件化できる例は相当数あります。そうでなくても、残業代の未払いなど他にも問題がある場合、それらと併せて問題にして行けば、パワハラは訴訟事件として取り扱いやすくなります。
お悩みの方がおられましたら、ご相談をお寄せください。