弁護士 師子角允彬のブログ

師子角総合法律事務所(東京:水道橋駅徒歩5分・御茶ノ水駅徒歩7分)の所長弁護士のブログです

ストーカー被害について

1.ストーカー事件の相談

 法律相談をしていると、ストーカー被害について相談を受けることが、それなりにあります。

 数日前にも、ストーカー被害に遭っているという男性から相談を受けました。別れ話に気を悪くした女性から、大量の脅迫的なメッセージを送りつけられたり、金銭を要求されたり、第三者に「恋人がいながら別の女と浮気している。」といった名誉棄損的な事実を吹聴されたりして、ほとほと参っているとのことでした。

 少し前の新聞報道によると、昨年1年間に警察が把握したストーカー被害は2万1556件あったとのことです。

https://www.asahi.com/articles/ASM3X4V23M3XUTIL02R.html

 法律相談業務を受けている弁護士の実感としても、そんなに珍しい事件類型でもないのかなという印象を持っています。

2.ストーカー事件の殆どは比較的簡単に解決する

 ストーカー被害に遭っている人は疲弊している方が多いです。自分で解決しようとしてもどうにもならず、「いつになったら開放されるのか?」「どうすれば助かるのか?」という閉塞感にとらわれている方が多いように思います。

 しかし、ストーカー事件の殆どは比較的簡単に解決します。

 弁護士名で警告書を出したり、警察に警告してもらったりすれば、殆どの人はストーカー行為を自制するからです。

 少し古い資料になりますが、平成26年8月5日に警察庁の「ストーカー行為等の規制等の在り方に関する有識者検討会」が「ストーカー行為等の規制の在り方に関する報告書」という文書を出しています。

https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/stalker/index.html

https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/stalker/report/report.pdf

 これによると、平成25年4~6月に警察が認知したストーカー事案においては、指導警告で88.1%、文書警告で84.8%、禁止命令で63.6%が「その後行為が継続せず効果があった」とされています。

 指導警告というのは、口頭注意のようなストーカー規制法外の措置のことで、文書警告というのはストーカー規制法に基づく警告措置です。

 指導警告では止まらなかったものの、その後の文書警告で行為を止めるという事件があることを考えると、大雑把に見ても9割以上は警察から警告してもらえば被害は止まっているとみて良いのではないかと思います。

 禁止命令に関しても、警視庁の最新の統計によれば、平成29年中に28件の禁止命令が出されているところ、禁止命令違反は2件しか検挙されていません。

https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/about_mpd/jokyo_tokei/kakushu/stalker.html

 なかなか制止させるのが難しかった悪質事案においても、年を追う毎に実効性のある措置がとられつつあるようになっていると言っても良いのだろうと思います。

3.ストーカー事件の解決のポイント

 上述のとおり、ストーカー事件を解決するにあたっては、いかに迅速に警察という第三者に介入してもらうかが重要なポイントになります。

 弁護士が事件の依頼を受けた時には、先ず、速やかに相手方にストーカー行為を止めるように警告を出します。

 それと同時にストーカー被害が止まなかった時に備え、それまでに行われたストーカー行為をまとめるとともに、関係各証拠を整理しておきます。

 ストーカー行為が止めばそれでよしですし、止まなければ整理した主張・証拠を警察に引き継ぎ、速やかな警告措置などの介入を求めて行きます。

 ここまですれば殆どの事案で解決します。

 解決しない場合には、警察に禁止命令を出してもらえるように求めたり、刑事告訴をしたり、損害賠償などの民事的な措置をとっていったりします。毅然とした対応を取り続けて被害が止むに至らなかった事件は、今のところ経験したことはありません。

4.友人より専門家・警察への相談を

 内閣府男女共同参画局によると、ストーカー被害の相談は、友人・知人に相談したが48.8%で最も多く、警察に連絡・相談したのは8.1%、民間の専門家や専門機関(弁護士含む)に相談したのは0.8%でしかありません。

http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h27/zentai/html/honpen/b1_s04_06.html

http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h27/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-04-17.html

 それほど解決に手間がかかる例が多くないこともあり、個人的には、もっと弁護士を頼ってくれても良いのではないかという印象は受けます。警察に介入してもらうにしても、法の要領を得た説明ができる分、弁護士が関与した方がコミュニケーションは円滑に行くとも思っています。

 病気になっても医師資格を持たない友人に診断や治療を頼ろうという人は少ないと思います。それと同じで、トラブルに巻き込まれたら紛争解決の専門家に処理を委ねた方が適切な結果に繋がるように思います。

 お困りの方がおられましたら、ぜひ、一度ご相談ください。