1.コンビニの店主が本部に24時間営業の見直しを求めた件
昨今、コンビニの店主に24時間営業を義務付けるフランチャイズ契約の在り方が話題になっています。
これに関連し、
「コンビニの店主が24時間営業の見直しを求め、本部がこれを一方的に拒んで店主に不利益を与えた場合、公正取引委員会は独占禁止法の適用対象とする方向で検討に入った。」
「公取委の複数の幹部によると、バイトらの人件費の上昇で店が赤字になる場合などに店主が営業時間の見直しを求め、本部が一方的に拒んだ場合には、独禁法が禁じている『優越的地位の乱用』にあたり得る、との文書をまとめた。」
とのネット記事が掲載されていました。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190424-00000006-asahi-soci
2.従前は24時間営業の義務付けは適法とされていた
この問題は今になって生じたわけではありません。かなり以前から議論されていました。
しかし、私の知る限り、24時間営業の義務付けを違法だと判示した裁判例はありません。
むしろ、裁判所は24時間営業の義務付けは優越的地位の濫用には該当しないとの立場を示していました。
例えば、東京地判平23.12.22判タ1377-221は、
「被告(本部 括弧内筆者)が本件基本契約等の変更を拒み、本件深夜営業を行うことを原告ら(コンビニ店主 括弧内筆者)に求めることは、正常な商慣習に照らして不当に原告らに対して不利益を与えるものではなく、独占禁止法2条9項5号ハ所定の『不公正な取引方法(優越的地位の濫用)』に当たるということはできない。」
と判示していました。
この事件で原告となったコンビニ店主の一人は、
「開業以来、月400時間前後も店内に拘束される過重労働を続けてきた」
などと過重労働を訴えていました。
しかし、裁判所は、
「原告X1の現在の労務が上記のような状況にあるとしても、このような状況に陥ったのは同原告が借財(コンビニ開業時の建築費等7000万円の借入金など 括弧内筆者)を負担するに至ったことに由来するものというべきであり、このことをもって上記状況が本件深夜営業それ自体の負担によってもたらされたものということはできない。」
とコンビニ店主の主張を排斥していました。
3.時代が変われば法解釈も変わる可能性があるので諦めてはいけない
以前、このブログで、公正取引委員会が「『人材と競争政策に関する検討会』報告書」という文書を出し、フリーランスや個人事業主を保護するための方法として競争法(独占禁止法)の適用を示唆したことをお話ししました。
https://sskdlawyer.hatenablog.com/entry/2019/04/14/120606
https://www.jftc.go.jp/cprc/conference/index.html
https://www.jftc.go.jp/cprc/conference/index_files/180215jinzai01.pdf
報告書が作成・公表されたのは平成30年2月15日です。報告書の公表以降、独占禁止法の解釈や適用の在り方に何等かの変化が生じるのかを注目していました。
今回、公正取引委員会が24時間営業の義務付けに関して、優越的地位の濫用に該当する可能性を示唆したことは、随分と踏み込んだ判断をしたなという印象を持っています。この公正取引委員会の判断は、今後の司法判断にも影響を及ぼす可能性があります。
これは、従来、法的な救済が困難であったケースでも、時代が変わることで救済の途が開かれる可能性があることを示す一例ではないかと思います。
フリーランス・個人事業主の働き方に関する問題は、白熱している話題の一つです。既に判例のある問題であったとしても、お困りの方がおられましたら、諦めずに、ぜひ、一度ご相談頂ければと思います。