弁護士 師子角允彬のブログ

師子角総合法律事務所(東京:水道橋駅徒歩5分・御茶ノ水駅徒歩7分)の所長弁護士のブログです

大学教員の公募-不合格者は団体交渉で採用選考過程や評価についての情報開示や説明を求められないか?

1.大学教員の公募は出来レースか?

 大学教員の公募に関しては、採用選考が適切に行われていないのではないかという懸念を抱く方が少なくありません。例えば、公募と銘打ってはいるものの、誰を採用するのかは既に決まっていたのではないかといったようにです。

 それでは、採用選考過程に疑義がある場合、不合格者は大学に対して採用選考過程や自身への評価についての情報開示や説明を求めることができないのでしょうか?

 昨日、応募者個人の権利性という観点からのアプローチが奏功しなかったことをお話しました。

 しかし、労働者が使用者に対して情報開示や説明を求める手段は、個別労働関係紛争の枠組に限られるわけではありません。労働組合を通じ、団体交渉によって情報開示や説明を求めることも考えられます。使用者には誠実交渉義務があるところ、誠実交渉義務の中には、

会見(交渉)の場で、単に労働組合の要求や主張を聴くだけでなく、その要求・主張の程度に応じて使用者としての回答や主張を行う義務

必要に応じて自らの回答や主張の論拠を示し、必要な資料を提示するなどして、相手方の理解と納得が得られるよう誠意をもって交渉する義務

が含まれると理解されているからです(水町勇一郎『詳解 労働法』〔東京大学出版会、初版、令元〕1079頁参照)。

 こうした誠実交渉義務を手掛かりとして、労働組合を通じ、採用選考過程や評価についての情報開示や説明を求めて行くことはできないのでしょうか?

 昨日ご紹介した東京地判例4.5.12労働判例ジャーナル129-48 学校法人早稲田大学事件は、この論点を考えるうえでも参考になる判断を示しています。

2.学校法人早稲田大学事件

 本件で被告になったのは、早稲田大学等を設置している学校法人です。

 原告になったのは、中国政治及び中国社会論を研究分野とする政治学者の方(原告A)と、その方が加入している労働組合(原告組合)です。

 被告は、

〔1〕原則として博士学位を有すること、

〔2〕博士学位取得後、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科の修士課程及び博士後期課程の研究指導、講義科目を担当できるに十分な期間の研究教育上の経験及び実績を有すること、

〔3〕博士後期課程で研究指導を担当できるに十分な質及び量の研究実績を有すること(具体的には、邦文又は英文による既刊研究論文7本以上の研究業績を有し、うち少なくとも3本は評価の高い学術誌に掲載された査読付き論文であること)、

〔4〕日本語及び英語の両方で授業を担当できること、

〔5〕科学研究費補助金など競争的外部研究資金を代表者として獲得した実績、又は同等の優れた職務経験を有すること、

〔6〕早稲田大学大学院アジア太平洋研究科及びアジア太平洋研究センターなどの業務運営の諸役職・委員等を、責任をもって遂行できること、

〔7〕早稲田大学大学院アジア太平洋研究科及びアジア太平洋研究センターの研究・教育活動に貢献できること」

との採用条件を掲げ、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科専任教員を公募しました(本件公募)。

 原告Aは本件公募に応募しましたが、書類審査で不合格となり、面接審査に進むこともできませんでした。

 選考過程の公正さに疑念をもった原告Aは、自分の応募が選考過程でどのように審査されたのか等の情報開示を求めました。

 これを被告から断られると、今度は労働組合に加入し、団体交渉の中で同様の情報を得ようとしました。

 しかし、被告は

「本件公募の選考過程に関する情報・・・については、団体交渉に応じる義務はない。」

として団体交渉を拒否しました。

 こうした経過のもと、原告Aが慰謝料(説明義務違反等)の支払いを請求すると同時に、原告組合も違法な団体交渉拒否(団交拒否)により団体交渉権を侵害されたとして無形損害の賠償を求める訴えを提起しました。

 原告A個人の請求が棄却されたことは昨日述べたとおりですが、裁判所は、次のとおり述べて、原告組合の請求も棄却しました。

(裁判所の判断)

「労働組合法7条2号は、使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなく拒むことを不当労働行為として禁止しているところ、これは、使用者に対して労働者の団体の代表者との交渉を義務付けることにより、労働条件等に関する問題について労働者の団結力を背景とした交渉力を強化し、労使対等の立場で行う自主的交渉による解決を促進し、もって労働者の団体交渉権(憲法28条)を実質的に保障しようとするものと解される。このような労働組合法7条2号の趣旨に照らすと、義務的団体交渉事項とは、団体交渉を申入れた労働者の団体の構成員である労働者の労働条件その他の待遇、当該団体と使用者との間の団体的労使関係の運営に関する事項であって、使用者に処分可能なものをいうものと解するのが相当である。」

「これを本件についてみると、前記前提事実・・・によれば、被告は、原告組合が被告に対して団体交渉を申し入れた平成30年11月当時、原告Aを非常勤講師として雇用していたことが認められるから、当時、原告Aの労働組合法上の使用者であったことが認められる。しかしながら、原告Aは、被告から非常勤講師として雇用されていたものであり、また、被告には原告Aに対する本件情報開示・説明義務が認められないことは前記1で説示したとおりであるから、専任教員に係る本件公募の選考過程は、原告Aと被告との間の労働契約上の労働条件その他の待遇には当たらない。したがって、別紙1記載の各事項は義務的団体交渉事項には当たらないから、原告組合が被告に対して別紙1記載の各事項について団体交渉を求める地位にあるとはいえず、また、被告が別紙1記載の各事項について団体交渉に応じなかったことは、原告組合に対する不法行為を構成するものではない。

参考:(別紙1)団体交渉事項目録

1 研究科専任教員採用人事内規の開示

2 早稲田大学大学院アジア太平洋研究科が平成28年1月に行った専任教員の公募(以下「本件公募」という。)につき「研究科運営委員会の定めた手続」資料の開示及び説明

3 本件公募手続における原告Aに対する評価の開示及び説明

4 原告Aが採用面接に至らなかった理由の開示及び説明

5 上記評価の根拠となった資料の開示

6 本件公募手続への前任者の関与の有無

7 本件公募から採用に至る過程に対する事後的検証の有無、方法、内容

8 採用審査の過程で開催された運営委員会の議事録の開示

3.義務的団交事項ではないとされた

 義務的団交事項とは、

「労働組合が団体交渉を申し入れた場合、使用者が団体高所うを行うことを法的に義務付けられる・・・事項」

をいいます(前掲『詳解 労働法』1072頁)。

 その外延は必ずしも明確ではありませんが、本件の裁判所は、義務的団交事項ではないからとの理由で団交を拒否したことは不法行為にはあたらないと判示しました。

 しかし、一般論として

「個々の労働者の採用・・・についても、日本では義務的団交事項に該当する」(前掲『詳解 労働法 1072-1073頁参照)。

と解釈されているなど、採用に関係することだれば直ちに要求を拒否してもよいということなのだと思われます。

 結論に疑義はあるし、残念な判断ではありますが、本裁判例は集団的労使紛争の限界を考えるうえで参考になります。

 

大学教員の公募-不合格者に対し採用選考過程や評価についての情報開示・説明義務を負うのか?

1.大学教員の公募は出来レースか?

 大学教員の公募に関しては、採用選考が適切に行われていないのではないかという懸念を抱く方が少なくありません。例えば、公募と銘打ってはいるものの、誰を採用するのかは既に決まっていたのではないかといったようにです。

 それでは、採用選考過程に疑義がある場合、不合格者は大学に対して採用選考過程や自身への評価についての情報開示や説明を求めることができないのでしょうか?

 この問題を考えるにあたり、近時公刊された判例集に参考になる裁判例が掲載されていました。東京地判例4.5.12労働判例ジャーナル129-48 学校法人早稲田大学事件です。

2.学校法人早稲田大学事件

 本件で被告になったのは、早稲田大学等を設置している学校法人です。

 原告になったのは、中国政治及び中国社会論を研究分野とする政治学者の方(原告A)と、その方が加入している労働組合(原告組合)です。

 被告は、

〔1〕原則として博士学位を有すること、

〔2〕博士学位取得後、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科の修士課程及び博士後期課程の研究指導、講義科目を担当できるに十分な期間の研究教育上の経験及び実績を有すること、

〔3〕博士後期課程で研究指導を担当できるに十分な質及び量の研究実績を有すること(具体的には、邦文又は英文による既刊研究論文7本以上の研究業績を有し、うち少なくとも3本は評価の高い学術誌に掲載された査読付き論文であること)、

〔4〕日本語及び英語の両方で授業を担当できること、

〔5〕科学研究費補助金など競争的外部研究資金を代表者として獲得した実績、又は同等の優れた職務経験を有すること、

〔6〕早稲田大学大学院アジア太平洋研究科及びアジア太平洋研究センターなどの業務運営の諸役職・委員等を、責任をもって遂行できること、

〔7〕早稲田大学大学院アジア太平洋研究科及びアジア太平洋研究センターの研究・教育活動に貢献できること」

との採用条件を掲げ、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科専任教員を公募しました(本件公募)。

 原告Aは本件公募に応募しましたが、書類審査で不合格となり、面接審査に進むこともできませんでした。

 選考過程の公正さに疑念をもった原告Aは、自分の応募が選考過程でどのように審査されたのか等の情報開示を求めました。

 これを被告から断られると、今度は労働組合に加入し、団体交渉の中で同様の情報を得ようとしました。

 しかし、被告は

「本件公募の選考過程に関する情報・・・については、団体交渉に応じる義務はない。」

として団体交渉を拒否しました。

 これに対し、原告Aが慰謝料(説明義務違反等)の支払いを請求すると同時に、原告組合も無形損害の賠償を求める訴えを提起しました。

 原告Aは情報開示・悦明を受けるために三つの観点から論証を試みましたが、裁判所は、次のとおり述べて、原告Aの請求を棄却しました。

(裁判所の判断)

・労働契約締結過程における信義則上の義務について

「前記前提事実・・・及び弁論の全趣旨によれば、本件公募は、アジア太平洋研究科の研究科専任教員採用人事内規に則り、

〔1〕応募者から自薦書、履歴書、教育研究業績リスト等を提出してもらい、

〔2〕審査委員会において、応募者の中から採用条件を充たしている者を選び出した上で、その中から、募集分野と応募者の研究分野の適合、研究の質的水準、授業遂行の能力と意欲、研究科業務への適性、人格見識などについて精査して、原則として複数の候補者を選抜し、当該候補者を対象として面接審査及び模擬授業を行って採用予定者を1名に絞り込み、

〔3〕人事研究科運営委員会において当該採用予定者の採否を決定し、

〔4〕被告において、人事研究科運営委員会が承認した採用予定者との間で労働契約を締結することが予定されていたことが認められる。」

「原告Aは、本件公募に応募したが、書類選考の段階で不合格になったものである(前記前提事実・・・。原告Aと被告との間で、原告Aを専任教員として雇用することについての契約交渉が具体的に開始され、交渉が進展し、契約内容が具体化されるなど、契約締結段階に至ったとは認められないから、契約締結過程において信義則が適用される基礎を欠くというべきである。」

「原告らの主張は、原告Aが本件公募に応募したというだけで、信義則に基づき、被告に本件情報開示・説明義務が発生するというに等しく、採用することができない。」

・公募による公正な選考手続の特殊性に基づく義務について

「大学教員の採用を公募により行う場合、その選考過程は公平・公正であることが求められており、応募者の基本的人権を侵害するようなものであってはならないということはできる。」

「しかしながら、原告Aは、被告との間で契約締結段階に至ったとは認められず、契約締結過程において信義則が適用される基礎を欠くことは上記・・・のとおりであり、このことは、選考方式が公募制であったことによって左右されるものではない。したがって、仮に、原告Aが本件公募について透明・公正な採用選考が行われるものと期待していたとしても、その期待は抽象的な期待にとどまり、未だ法的保護に値するとはいえず、被告が専任教員の選考方式として公募制を採用したことから、直ちに本件情報開示・説明義務が発生する法的根拠は見出し難い。」

・個人情報の適正管理に関する義務について

「職業安定法5条の4は、労働者の募集を行う者に対し、その業務に関し、募集に応じて求職者等の個人情報を収集し、保管し、又は使用するに当たっては、その業務の目的の達成に必要な範囲内で求職者等の個人情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用することを義務付けているが、求職者等に対する個人情報の開示に関しては、何ら規定していない。したがって、職業安定法5条の4は、本件情報開示・説明義務の法的根拠とはなり得ないというべきである。」

「個人情報保護法28条2項は、個人情報取扱事業者は、本人から、当該本人が識別される保有個人データの開示を求められたときには、遅滞なくこれを開示しなければならないと定めるとともに、同項2号において、個人情報取扱事業者が開示義務を負わない例外として、『当該個人情報取扱事業者の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合』を挙げている。そして、個人情報保護法における個人データとは、個人情報データベース等を構成する個人情報(特定の個人を識別することができる情報)をいい(個人情報保護法2条1項、6項)、個人情報データベース等とは、個人情報を含む情報の集合物であって、特定の個人情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの、又は、特定の個人情報を容易に検索することができるように体系的に構成したものとして政令で定めるものをいう(同条4項)。」

「原告Aが被告に対して開示を求めたとする別紙2記載の情報についてみると、同1記載の情報及び同4記載の情報のうち原告Aに言及がない部分が原告Aの個人情報に当たらないことは、明らかである。」

「また、別紙2の2及び3記載の情報並びに別紙2の4記載の情報のうち原告Aに言及する部分は、原告Aを識別可能であることから原告Aの個人情報に該当するものがあるとしても、本件全証拠及び弁論の全趣旨によっても、これらの情報が個人情報データベース等を構成していることをうかがわせる事情は何ら認められないから、個人情報保護法28条2項に基づく開示の対象となる保有個人データであるとは認められない。」

「さらに、仮に、別紙2の2及び3記載の情報並びに別紙2の4記載の情報のうち原告Aに言及する部分が保有個人データに当たるとしても、これらの情報を開示することは、個人情報保護法28条2項2号に該当するというべきである。すなわち、被告は、採用の自由を有しており、どのような者を雇い入れるか、どのような条件でこれを雇用するかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由にこれを決定することができるところ、大学教員の採用選考に係る審査方法や審査内容を後に開示しなければならないとなると、選考過程における自由な議論を委縮させ、被告の採用の自由を損ない、被告の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがあるからである。したがって、被告は、個人情報保護法28条2項2号により、これらの情報を開示しないことができる。」

「なお、厚生労働省政策統括官付労働政策担当参事官室の平成17年3月付け『雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針(解説)』は、『業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合』に該当するとして非開示とすることが想定される保有個人データの開示については、あらかじめ、必要に応じて労働組合等と協議の上、その内容につき明確にしておくよう努めなければならないとしていたが(甲28の1、乙14)、これは、あくまでも努力義務を定めたものであって、上記協議をしていないからといって、使用者が、『業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合』に該当する保有個人データを非開示とすることができなくなるわけではない。」
「以上によれば、職業安定法5条の4及び個人情報保護法は、いずれも、本件情報開示・説明義務の法的根拠にはなり得ないというべきである。」
3.出来レースの懸念のある事案だったが・・・

 本件は採用条件が特に細かく、原告の方が意中の方のみに応募させようとしたと考えても不思議ではないように思われます。

 しかし、裁判所は、採用選考過程や評価についての情報開示・説明義務の存在は認められないと判示しました。

 情報開示・説明義務が認められず、残念な事案ではありましたが、珍しい論点について判示した裁判例として参考になります。

 

挨拶をしないことは解雇理由になるか?

1.代表者・上長との挨拶ができなくなる

 勤務先会社の代表者や上長との関係性が悪化すると、職場で挨拶を交わすことがなくなりがちです。挨拶をしても無視されたり、代表者や上長の意向を忖度した同僚の態度が冷たくなったりするからです。労働者の側から何となく声を掛け辛くなるという場合もあります。

 解雇するという意思決定が先行して労働者に対する態度が冷淡になり挨拶ができなくなっていくのか、関係が悪化して挨拶ができなくなりますます職場で浮いて解雇に至るのかは事案によりますが、解雇事件で労働者のコミュニケーション能力の不足を基礎づける事情として挨拶をしないことが指摘される場合があります。

 それでは、このように職場で挨拶をしないことは解雇理由になるのでしょうか?

 昨日ご紹介した大阪地判例4.6.27労働判例ジャーナル129-42 栄大號事件は、この問題を考えるうえでも参考になる判断を示しています。

2.栄大號事件

 本件で被告になったのは、麺類の製造・販売等を業とする株式会社です。

 原告になったのは、被告との間で期限の定めのない雇用契約を締結し、営業部長の肩書で麺の配送等の業務に従事していた方です。

 従前、賃金として月額38万円が支払われていましたが、平成26年9月に賃金が減額され、従前431万円程度あった年収が平成27年度以降、148万2000円~296万2000円にまで落ち込みました。

 被告から令和2年12月31日付けで解雇されたことを受け、原告の方は、被告に対し、

解雇無効を理由とする地位確認等、

賃金減額の無効を理由とする未払賃金の支払、

を求める訴えを提起しました。

 本件の被告は、解雇理由として8項目を掲げました。その中の一つに、

コミュニケーションがとれないこと(挨拶をしても無視される等)

がありました(解雇事由〔7〕)。

 この解雇理由について、裁判所は、次のとおり述べて、解雇理由としての客観的合理性、社会通念上の相当性を否定しました。

(裁判所の判断)

・解雇事由〔7〕(コミュニケーションがとれないこと)について

「被告は、約3年前に、複数の従業員から、原告に挨拶をしても無視されコミュニケーションがとれないことを聞いた旨主張し、被告代表者もこれに沿う供述をする。」

「この点については、原告も、被告代表者とはお互いに挨拶をしない旨供述しており、また、従業員とは挨拶をする人も挨拶をしない人もいる旨供述していること・・・からすれば、原告が被告の従業員に対して挨拶をしないことがあったと認められる。」

・解雇の合理性、相当性について

「解雇事由〔1〕から〔4〕、〔6〕及び〔8〕がいずれも認められないことは既に説示したとおりであるが、その点をさておき、仮に、解雇事由〔1〕から〔8〕(ただし、〔5〕は欠番)のような事実があったとしても、そのことをもって、直ちに、本件解雇が有効となるものではなく、本件解雇が有効であるというためには、解雇することが客観的に合理的で、社会通念上相当といえることが必要である。」

「まず、事実が認められる解雇事由〔7〕についてみると、原告が、ほかの従業員に対して挨拶をしていないとしても、そのことをもって、直ちに、原告が仕事上必要なコミュニケーションがとれないことと同視できるものではなく、また、原告の態度が原因となって、被告の業務の遂行に支障が生じていたことや、被告が原告に対して繰り返し注意をしたにもかかわらず、原告が態度を改めなかったというような事情を認めるに足りる証拠もない。

「また、ほかの解雇事由についてみても、その中には、客観的に見ればそれほど問題性が高くない行為も含まれており、解雇事由として客観的に合理的とはいい難いものもある。」

「さらに、解雇事由〔1〕から〔8〕(ただし、〔5〕は欠番)のような問題行動があれば、被告とすれば、原告に対して、注意・指導して是正しようとすることが想定され、また、解雇事由〔1〕から解雇事由〔8〕(ただし、〔5〕は欠番)の内容に照らせば、そのようにするべきであり、特に、解雇事由〔1〕や解雇事由〔8〕のように極めて長期間にわたっていたのであれば、まずは、長年の慣行を改めることも必要である。ところが、本件において、被告が、原告に対して注意・指導したこと、原告が注意・指導を受けたにもかかわらず態度を改めなかったことなどをうかがわせる事実を認めるに足りる証拠はない。

「以上からすると、仮に、本件解雇事由〔1〕から〔8〕(ただし、〔5〕は欠番)が認められたとしても、本件解雇が客観的に合理的で、社会通念上相当であるということはできず、本件解雇は、解雇権を濫用したものとして無効である。」

3.相互に挨拶しない程度のことであれば問題ない

 本件は分かりやすい例ですが、コミュニケーション上の問題を理由とする解雇事案にでは、使用者側で業務遂行上の支障について十分に検討されていない例が散見されます。指摘するまでもありませんが、仕事で要求されるコミュニケーション能力と、日常生活で周囲と上手くやるためのコミュニケーション能力とは異なります。私生活で友人が豊富にいるからといって仕事ができるとは限りませんし、仕事ができる人が私生活で友人に囲まれた生活を送っているというわけでもありません。

 解雇理由としてのコミュニケーション上の問題についていうと、

労働契約において求められているコミュニケーション能力がどういうものなのかがきちんと定義されたうえ、

コミュニケーション上の問題、業務上の支障が具体的に記述され、

両者に明確な結びつきが認められる場合でなければ、

大して警戒する必要はありません。日常生活の延長線的な感覚で、ただ単に挨拶をしないからコミュニケーションに問題がある言われたところで、本件のように裁判所から一蹴されるのが関の山であるように思われます。

 孤立して解雇を言い渡されたというだけであれば、その解雇は法的に十分争う余地があります。それほど悲観的になる必要はありません。

 

賃金減額の効力は結構昔のものでも争えるⅡ-6年以上前の賃金減額が無効とされた例

1.積み重なった既成事実の重み

 一般論として言うと、不本意な合意を押し付けられても、時間が経つと争うことは難しくなります。不服を述べなかったという既成事実の積み重ねが、合意に納得していたという方向に、裁判所の心証を傾けさせるからです。

 しかし、賃金減額の合意に関しては、かなり昔のものでも、蒸し返して争うことができます。以前、約1年前の賃金減額の効力が否定された裁判例を紹介させて頂きましたが、

賃金減額の合意の効力は結構昔のものでも争える - 弁護士 師子角允彬のブログ

近時公刊された判例集に6年以上前の賃金減額の効力が否定された裁判例が掲載されていました。大阪地判例4.6.27労働判例ジャーナル129-42 栄大號事件です。

2.栄大號事件

 本件で被告になったのは、麺類の製造・販売等を業とする株式会社です。

 原告になったのは、被告との間で期限の定めのない雇用契約を締結し、営業部長の肩書で麺の配送等の業務に従事していた方です。

 従前、賃金として月額38万円が支払われていましたが、平成26年9月に賃金が減額され、従前431万円程度あった年収が平成27年度以降、148万2000円~296万2000円にまで落ち込みました。

 被告から令和2年12月31日付けで解雇されたことを受け、原告の方は、被告に対し、

解雇無効を理由とする地位確認等、

賃金減額の無効を理由とする未払賃金の支払、

を求める訴えを提起しました。

 被告側は賃金減額について黙示の合意を主張しましたが、裁判所は、次のとおり述べて、被告の主張を排斥しました。

(裁判所の判断)

「使用者と労働者は、その同意の下に労働契約の内容である労働条件を変更することができるところ、使用者が提示した労働条件の変更が賃金や退職金に関するものである場合には、当該変更を受け入れる旨の労働者の行為があるとしても、労働者が使用者に使用されてその指揮命令に服すべき立場に置かれており、自らの意思決定の基礎となる情報を収集する能力にも限界があることに照らせば、当該行為をもって直ちに労働者の同意があったものとみるのは相当でなく、当該変更に対する労働者の同意の有無についての判断は慎重にされるべきである。そうすると、就業規則に定められた賃金や退職金に関する労働条件の変更に対する労働者の同意の有無については、当該変更を受け入れる旨の労働者の行為の有無だけでなく、当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容及び程度、労働者により当該行為がされるに至った経緯及びその態様、当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容等に照らして、当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも、判断されるべきものと解するのが相当である(最高裁平成28年2月19日第二小法廷判決・民集70巻2号123頁)。」

「本件についてみると、確かに、認定事実・・・のような事情、被告代表者の供述内容、原告が、本件減額後、前提事実・・・のとおり減額が無効であるとして未払賃金の支払を申入れるまでの6年以上という長期間にわたって異議を述べていなかったこと(なお、原告は、生活できないと不満を述べたと供述する一方で、本件減額について抗議はしていない、経営がしんどいというのはずっと聞いていた旨も供述している・・・などからすれば、被告が主張するとおり、本件減額当時の被告の経営状態は苦しいものであったことがうかがわれるといえる。」

「しかし、他方で、被告の主張を前提としても、本件減額についての合意は黙示の合意であるというのであって、原告が本件減額を受け入れることを明らかにした行為は存在しない。また、本件減額の前で金額が判明している平成23年の原告の年収が431万円(月額38万円を前提とすれば38万×12か月=456万円となるはずであるが、その点はさておく)であったのに対し、本件減額後の平成27年から令和2年の収入は148万2000円から196万2000円となっており・・・、従前の約34から45%まで減額になっていることに照らせば、その不利益の程度は大きいものといわざるを得ない。さらに、被告が、本件減額に先立ち、原告を含む従業員に対し、事前に経営状況を明らかにする資料を示すなどして説明会を開催したというような事情はうかがわれず(なお、被告代表者の供述を前提としても、経営破綻を理由に一律で日給6000円にするという説明をしたというにとどまる・・・、本件減額の理由・必要性について、十分な情報を提供したことをうかがわせる事情もない。」

以上を総合考慮すれば、本件減額に係る黙示の合意が成立したと認めることはできず、その点をさておくとしても、本件減額に合意することについて、自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するということもできない。

3.賃金減額は、かなり昔のことまで掘り返せる

 固定残業代の合意に関しては提訴から8年以上前の導入を争えた例があります。

固定残業代の合意-提訴から8年以上前に導入されたものでも争えた例 - 弁護士 師子角允彬のブログ

 本件で6年以上前の賃金減額の効力が否定されていることからも分かるとおり、賃金減額に関しては、労働契約が継続している限り、かなり昔のことまで掘り返して争うことができます。

 減額幅によっては結構な金額になりますので、心当たりのある方は、法的措置をとってみても良いだろうと思います。昔の出来事は事件化しにくいのが原則ですが、賃金減額に限って言えば問題にできる可能性があります。もちろん、ご相談は当事務所でも承っています。

 

公表事案では慰謝料請求が狙える?-懲戒免職処分の取消のほか、高額(100万円)の慰謝料請求が認められた例

1.解雇・懲戒免職処分の無効と慰謝料

 解雇や懲戒免職処分(懲戒解雇の公務員版)が違法無効であったとしても、必ずしも慰謝料請求が認められるわけではありません。

 その理由は、大きく二点あります。

 一つ目は「故意・過失」という主観的要件の問題です。

 不法行為に基づいて損害賠償を請求する場合でも、国家賠償法に基づいて国家賠償請求を行う場合でも、金銭賠償を求めるにあたっては「故意又は過失」という主観的要件が必要になります。

 違法行為(違法な解雇権の行使・違法な懲戒権の行使)が立証できたとしても、そのことに故意や過失を立証することができなければ、慰謝料請求が認められることはありません。この故意、過失は、違法行為があれば当然に立証されるものではなく、その立証には一定のハードルがあります。

 二つ目は「損害」の問題です。

 解雇無効や懲戒免職処分の取消が認められると、使用者や国は解雇時・処分時に遡及して賃金・給与を支払うことになります(いわゆるバックペイ)。多くの裁判所では、これにより違法な解雇・懲戒免職処分を受けたことで通常生じる精神的苦痛は慰謝されるという考え方が採用されています。そのため、慰謝料請求が認めてもらうにあたっては、バックペイによっては慰謝されないほど甚大な精神的苦痛を受けたことが立証できる必要があります。

 以上のような理由から、解雇、懲戒免職処分が違法であった場合に、慰謝料請求まで認められる事案は限定的に理解されています。

 このような状況の中、違法な懲戒免職処分を行ったとして、懲戒免職処分の取消が認められるとともに、100万円と比較的高額の慰謝料請求が認められた裁判例が近時公刊された判例集に掲載されていました。昨日もご紹介させて頂いた、福岡地判例4.7.29労働経済判例速報2497-3 糸島市事件です。

2.糸島市事件

 本件で被告になったのは、普通地方公共団体である糸島市です。

 原告になったのは、他の職員に対してハラスメント行為を行ったことなどを理由として懲戒処分を受けた方2名です(原告A1、原告A2)。原告A1は懲戒免職処分を、原告A2は戒告処分を受けました。

 原告A1、A2は、いずれも、糸島市消防本部の職員の方でした。

 原告A1は懲戒免職処分の取消と違法な懲戒免職処分を行ったこと等を理由とする慰謝料を請求する訴えを提起しました。

 原告A2は戒告処分の取消を求める訴えを提起しました。

 この二名の訴えが併合されたのが本件です。

 この事件の裁判所は、次のとおり述べて、原告A1の慰謝料請求を認めました。

(裁判所の判断)

・争点2(本件免職処分が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したか)について

「地方公務員につき、地方公務員法所定の懲戒事由がある場合には、懲戒事由に該当すると認められる行為の原因、動機、性質、態様、結果、影響等のほか、当該公務員の上記行為の前後における態度、懲戒処分等の処分歴、選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等、諸般の事情を考慮して、懲戒処分をするか否か、また、懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択するかを決定する裁量権を有しており、その判断は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したと認められる場合に、違法となるものと解される(最高裁昭和47年(行ツ)第52号同52年12月20日第三小法廷判決・民集31巻7号1101頁、最高裁平成23年(行ツ)第263号、同年(行ヒ)第294号同24年1月16日第一小法廷判決・裁判集民事239号253頁等参照)。」

「A1非違行為1については、本件懲戒指針の別表のうち、勤務態度不良(勤務時間中に職場を離脱して職務を怠り、公務の運営に支障を生じさせた職員)に該当し、標準的な懲戒処分の種類は、減給又は戒告に相当するものといえる。次に、A1非違行為3、5~7については、本件懲戒指針の別表のうち、職場内秩序を乱す行為(他の職員に対する暴行により、職場の秩序を乱した職員)又はこれに準ずる行為に該当するものと解され、標準的な懲戒処分の種類は停職又は減給に相当するものといえる。そして、A1非違行為8については、本件懲戒指針の別表のうち、セクシャルハラスメント(相手の意に反することを認識の上で、わいせつな言辞等の性的な言動を行った職員)に該当するものと解され、標準的な懲戒処分の種類は減給又は戒告に相当するものといえる。さらに、A1非違行為9、10、11の第2及び第3、13、16~20については、本件懲戒指針の別表のうち、職場内秩序を乱す行為(他の職員に対する暴言により、職場の秩序を乱した職員)又はこれに準ずる行為に該当するものと解され、標準的な懲戒処分の種類は減給又は戒告に相当するものといえる。」

「本件懲戒指針によれば、職員が非違行為を2以上行ったとき(第3条)や、

(1)非違行為の態様が極めて悪質であるとき、

(2)非違行為が他の職員及び社会に与える影響が特に大きいとき等(第4条)

には、別表に掲げる懲戒処分の種類のうち最も重い懲戒処分よりも重い懲戒処分を行うことができるところ、原告A1は、少なくとも2以上の非違行為を行ったものと認められるから、標準的な懲戒処分の種類のうち最も重い懲戒処分である停職よりも重い懲戒処分である免職を選択することが可能であると解される(第3条2項参照)。」

「そこで、本件懲戒指針第2条に定める懲戒処分の基準を踏まえて、免職を選択することが懲戒権者の裁量権の範囲内であるかを検討する。」

「原告A1は、主に係長級の役職に就き、部下や後輩の消防職員を適切に指導等すべき立場にありながら、数年にわたって、部下や後輩等の消防職員に対し、通常の範囲を逸脱ないし過剰にわたる訓練やトレーニングを行わせ、暴言や叱責等に繰り返し及んでおり、部下等に対する嫌悪や苛立ち、悪感情等を主な動機として感情の赴くままに非違行為に及んだ部分が多かったものと認められる。A1非違行為は、訓練やトレーニングの場面で行われることもあり、被害を受けた職員の中には、宙吊り等による身体的苦痛を受けた者がおり、また、暴言等により精神的にも苦痛を受けた者が相当数に上るものであったといえる。また、被告においては、ハラスメントに関するQ&A集を作成・更新し・・・、ハラスメントの防止措置に努めてきたこと・・・が認められ、原告A1は、ハラスメントに関する研修を繰り返し受けた・・・にもかかわらず、非違行為に及んでおり、ハラスメントに関する意識の低さもうかがえる。これらに加えて、原告A1は、A1非違行為1にあるように、離席による職務懈怠があり、日頃の勤務状況についても芳しくない面もある。」

「もっとも、訓練やトレーニングにおいて、逸脱ないし過剰にわたった程度としては、特段大きいとまではいい難く、原告A1には、部下等の訓練や指導等を目的とする部分があったこともうかがえ、部下や後輩の消防職員に対する指導等の度が過ぎた面があったといえなくはない。暴言や叱責等についても、過剰に言い過ぎた面や、表現が適切でなく、いわゆる口が悪い面が現れたにすぎないところもあったといえる。また、結果として、被害を受けた職員に重大な負傷等も生じていない。これらを踏まえると、A1非違行為は長年にわたり多数に上るものであるものの、極めて悪質である、又は、他の職員及び社会に与える影響が特に大きいとまではいえない(本件懲戒指針第4条1項(1)、(2)参照)。」

「また、原告A1は、本件免職まで、懲戒処分を受けたことがなく、また、通常の範囲を逸脱ないし過剰にわたる訓練やトレーニング、暴言や叱責等について、個別的に注意や指導を受けたとの事情も見当たらず、本件免職前の原告A1の能力考課シートに関しても、離席の点の他は特段の評価やコメントはされていなかったことが認められる・・・。」

「以上の各事情のほか、その他の本件懲戒指針第2条に定める事情を総合的に考慮すると、原告A1の非違行為は長年にわたり、多数に上るものではあるものの、それぞれの内容自体は上記・・・の事情が見受けられることからして、これまで懲戒処分歴がない中で、処分行政庁(消防本部消防長)が、原告A1に対する懲戒処分として、本件懲戒指針に定める標準的な懲戒処分のうち最も重い停職よりも重く、かつ懲戒処分の中でも最も重い免職処分を選択した判断は、処分の選択が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠き、本件免職は懲戒権者としての裁量権の範囲を超えるものとして違法と評価せざるを得ない。」

「以上によれば、本件免職は、争点3(本件免職の手続の違法の有無)について検討するまでもなく、裁量権の行使を誤った違法があるといわざるを得ず、取消しを免れない。」

・争点4(国家賠償法1条1項所定の違法行為の有無)について

「前記・・・の判断のとおり、本件免職は、裁量権の行使を誤った違法があるというべきであり、これは違法な公権力の行使に該当し、かつ、上記のとおり、懲戒処分の選択について、少なくとも過失があったと認められるから、被告は、国家賠償法1条1項に基づき、原告A1に生じた損害を賠償すべき義務を負うといわざるを得ない。

(中略)

・争点5(損害の発生及び額)

「前記・・・のとおり、本件免職は、違法な公権力の行使に該当するといえるところ、原告A1は、本件免職により消防職員としての地位を失い、給与等を受け取ることができなくなった上、本件記事(西日本新聞の記事 括弧内筆者)や情報番組において、匿名ではあるものの、中心メンバー等として『係長級』ないし『43歳係長』等と報道され、消防本部及び消防署関係者には容易に原告A1を指し示すものと分かる内容となっていたことが認められ、相応の精神的苦痛を被ったものということができる。

「もっとも、A1非違行為とされた原告A1の行為の相当部分が懲戒事由に該当すること自体は認められ、本件免職は、A1非違行為の内容と比較して懲戒処分の選択が重きに失したことによって違法と評価されるものであること、本判決において本件免職が取り消されることにより、上記の精神的苦痛の相当部分が慰謝されることになること、その他本件に現れた一切の事情を考慮すると、原告A1のその他の主張を踏まえても、原告A1の精神的苦痛に対する慰謝料は100万円とするのが相当である。

3.公表が効いたのか?

 国家公務員の懲戒処分に関しては、人事院総長発 平成15年11月10日総参-786『懲戒処分の公表指針について』という文書があります.

 この文書には、

「公表対象

次のいずれかに該当する懲戒処分は、公表するものとする。

(1) 職務遂行上の行為又はこれに関連する行為に係る懲戒処分

(2) 職務に関連しない行為に係る懲戒処分のうち、免職又は停職である懲戒処分」

「公表内容

事案の概要、処分量定及び処分年月日並びに所属、役職段階等の被処分者の属性に関する情報を、個人が識別されない内容のものとすることを基本として公表するものとする。」

「公表方法

記者クラブ等への資料の提供その他適宜の方法によるものとする。」

などと書かれています。

 人事院の指針は地方公共団体が地方公務員を管理するうえでも参考にされることが多く、地方公務員との関係でも事実上の影響力を持っています。本件に関しても、これと似たような仕組みのもと、マスコミに情報提供された可能性があります。

 本件では職場関係者において容易に個人を識別できる情報がマスコミ報道された事実が重視され、損害賠償請求が認められているように思われます。

 個人的観測の範囲内では、懲戒解雇の際、事案を公表したがる使用者は少なくありません。

 しかし、組織内の風紀の引き締めを図るにしても、見せしめのように個人を特定できる形で社内周知を図る必要はないはずです。本件は公務員関係の事件ではありますが、100万円もの慰謝料を認定した背景には、

「公表に踏み出すのであれば、誤った判断をした場合、相応の責任が発生することを覚悟するように」

という考え方があるようにも思われます。

 冒頭に述べた二つの理由があることを踏まえ、認容可能性が低いとの見込みのもと、地位確認請求事案において、慰謝料の請求までは行わないとする事案は少なくありません。

 しかし、今後、使用者からの公表を伴っている事案においては、本裁判例を根拠に慰謝料請求を付加することが検討されても良いかも知れません。

 

長期間かつ多数に及ぶパワーハラスメントを理由とする懲戒免職処分が取り消された例

1.パワーハラスメントによる懲戒処分

 人事院総長発 平成12年3月31日職職-68「懲戒処分の指針について」(最終改正:令和2年4月1日職審-131)は、パワーハラスメントに関する懲戒処分の標準例を、次のとおり定めています。

「パワー・ハラスメント(人事院規則10―16(パワー・ハラスメントの防止等)第2条に規定するパワー・ハラスメントをいう。以下同じ。)を行ったことにより、相手に著しい精神的又は身体的な苦痛を与えた職員は、停職、減給又は戒告とする。」

「パワー・ハラスメントを行ったことについて指導、注意等を受けたにもかかわらず、パワー・ハラスメントを繰り返した職員は、停職又は減給とする。」

「パワー・ハラスメントを行ったことにより、相手を強度の心的ストレスの重積による精神疾患に罹(り)患させた職員は、免職、停職又は減給とする。」

https://www.jinji.go.jp/kisoku/tsuuchi/12_choukai/1202000_H12shokushoku68.html

 この規定を素直に読むと、パワーハラスメントをしたことが理由で懲戒免職される場面は、

「相手を強度の心的ストレスの重責による精神疾患に罹患させた」

といえる事案のうち、

その中でも更に情状が悪いもの

と極めて限定的に理解されているかのように思われます。これは国家公務員の懲戒処分の標準例ですが、地方公共団体の多くが同様の標準例を定めているため、地方公務員の懲戒処分に対しても事実上の影響力を有しています。

 こうした状況の中、停職処分についてのものではありますが、ハラスメントの加害者が被害者を威迫したことを理由とする懲戒処分(停職6か月)の効力について、これを違法とした原審の判断を破棄した最高裁判例が現れました。以前、このブログでも紹介したことのある、最三小判令4.6.14労働判例ジャーナル126-1、労働経済判例速報2496-3 氷見市消防職員事件(氷見市事件)です。

標準例に掲げられていない非違行為(ハラスメント加害者による関係者に対する圧力)の処分量定Ⅲ - 弁護士 師子角允彬のブログ

 この判例は、それほど厳しく扱われてこなかったパワーハラスメント関係の非違行為について、従来の実務運用を見直す契機となるものかという観点からも注目されていました。氷見市消防職員事件(氷見市事件)以降、懲戒免職処分のハードルも下がるのかと個人的に注目していたところ、パワーハラスメントを理由とする懲戒免職処分が取り消された裁判例が、近時公刊された判例集に掲載されていました。福岡地判例4.7.29労働経済判例速報2497-3 糸島市事件です。氷見市消防職員事件(氷見市事件)以降の懲戒免職処分の運用に関わる参考裁判例としてご紹介させて頂きます。

2.糸島市事件

 本件で被告になったのは、普通地方公共団体である糸島市です。

 原告になったのは、他の職員に対してハラスメント行為を行ったことなどを理由として懲戒処分を受けた方2名です(原告A1、原告A2)。

 原告A1、A2は、いずれも、糸島市消防本部の職員の方でした。

 原告A1は懲戒免職処分を、原告A2は戒告処分を受けたことについて、それぞれの処分(本件各処分)が違法であると主張し、その取消等を求める訴えを提起しました。

 本件で注目されるのは、原告A1の行為です。

 原告A1は、被告から、

平成15年頃から平成28年にかけて、

22項目(しごき、いじめ、暴言、侮辱など)、49もの行為

を非違行為として指摘されました。

 そのうち、裁判所でハラスメント防止規程違反と認定されたのは、

非違行為1、3、5~10、11の一部、13、16~20

の15項目に留まりましたが、裁判所は、次のとおり述べて、懲戒免職処分の効力を否定しました。

(裁判所の判断)

「地方公務員につき、地方公務員法所定の懲戒事由がある場合には、懲戒事由に該当すると認められる行為の原因、動機、性質、態様、結果、影響等のほか、当該公務員の上記行為の前後における態度、懲戒処分等の処分歴、選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等、諸般の事情を考慮して、懲戒処分をするか否か、また、懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択するかを決定する裁量権を有しており、その判断は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したと認められる場合に、違法となるものと解される(最高裁昭和47年(行ツ)第52号同52年12月20日第三小法廷判決・民集31巻7号1101頁、最高裁平成23年(行ツ)第263号、同年(行ヒ)第294号同24年1月16日第一小法廷判決・裁判集民事239号253頁等参照)。」

「A1非違行為1については、本件懲戒指針の別表のうち、勤務態度不良(勤務時間中に職場を離脱して職務を怠り、公務の運営に支障を生じさせた職員)に該当し、標準的な懲戒処分の種類は、減給又は戒告に相当するものといえる。次に、A1非違行為3、5~7については、本件懲戒指針の別表のうち、職場内秩序を乱す行為(他の職員に対する暴行により、職場の秩序を乱した職員)又はこれに準ずる行為に該当するものと解され、標準的な懲戒処分の種類は停職又は減給に相当するものといえる。そして、A1非違行為8については、本件懲戒指針の別表のうち、セクシャルハラスメント(相手の意に反することを認識の上で、わいせつな言辞等の性的な言動を行った職員)に該当するものと解され、標準的な懲戒処分の種類は減給又は戒告に相当するものといえる。さらに、A1非違行為9、10、11の第2及び第3、13、16~20については、本件懲戒指針の別表のうち、職場内秩序を乱す行為(他の職員に対する暴言により、職場の秩序を乱した職員)又はこれに準ずる行為に該当するものと解され、標準的な懲戒処分の種類は減給又は戒告に相当するものといえる。」

「本件懲戒指針によれば、職員が非違行為を2以上行ったとき(第3条)や、

(1)非違行為の態様が極めて悪質であるとき、

(2)非違行為が他の職員及び社会に与える影響が特に大きいとき等(第4条)

には、別表に掲げる懲戒処分の種類のうち最も重い懲戒処分よりも重い懲戒処分を行うことができるところ、原告A1は、少なくとも2以上の非違行為を行ったものと認められるから、標準的な懲戒処分の種類のうち最も重い懲戒処分である停職よりも重い懲戒処分である免職を選択することが可能であると解される(第3条2項参照)。」

「そこで、本件懲戒指針第2条に定める懲戒処分の基準を踏まえて、免職を選択することが懲戒権者の裁量権の範囲内であるかを検討する。」

原告A1は、主に係長級の役職に就き、部下や後輩の消防職員を適切に指導等すべき立場にありながら、数年にわたって、部下や後輩等の消防職員に対し、通常の範囲を逸脱ないし過剰にわたる訓練やトレーニングを行わせ、暴言や叱責等に繰り返し及んでおり、部下等に対する嫌悪や苛立ち、悪感情等を主な動機として感情の赴くままに非違行為に及んだ部分が多かったものと認められる。A1非違行為は、訓練やトレーニングの場面で行われることもあり、被害を受けた職員の中には、宙吊り等による身体的苦痛を受けた者がおり、また、暴言等により精神的にも苦痛を受けた者が相当数に上るものであったといえる。また、被告においては、ハラスメントに関するQ&A集を作成・更新し・・・、ハラスメントの防止措置に努めてきたこと・・・が認められ、原告A1は、ハラスメントに関する研修を繰り返し受けた・・・にもかかわらず、非違行為に及んでおり、ハラスメントに関する意識の低さもうかがえる。これらに加えて、原告A1は、A1非違行為1にあるように、離席による職務懈怠があり、日頃の勤務状況についても芳しくない面もある。

もっとも、訓練やトレーニングにおいて、逸脱ないし過剰にわたった程度としては、特段大きいとまではいい難く、原告A1には、部下等の訓練や指導等を目的とする部分があったこともうかがえ、部下や後輩の消防職員に対する指導等の度が過ぎた面があったといえなくはない。暴言や叱責等についても、過剰に言い過ぎた面や、表現が適切でなく、いわゆる口が悪い面が現れたにすぎないところもあったといえる。また、結果として、被害を受けた職員に重大な負傷等も生じていない。これらを踏まえると、A1非違行為は長年にわたり多数に上るものであるものの、極めて悪質である、又は、他の職員及び社会に与える影響が特に大きいとまではいえない(本件懲戒指針第4条1項(1)、(2)参照)。

また、原告A1は、本件免職まで、懲戒処分を受けたことがなく、また、通常の範囲を逸脱ないし過剰にわたる訓練やトレーニング、暴言や叱責等について、個別的に注意や指導を受けたとの事情も見当たらず、本件免職前の原告A1の能力考課シートに関しても、離席の点の他は特段の評価やコメントはされていなかったことが認められる・・・。

以上の各事情のほか、その他の本件懲戒指針第2条に定める事情を総合的に考慮すると、原告A1の非違行為は長年にわたり、多数に上るものではあるものの、それぞれの内容自体は上記・・・の事情が見受けられることからして、これまで懲戒処分歴がない中で、処分行政庁(消防本部消防長)が、原告A1に対する懲戒処分として、本件懲戒指針に定める標準的な懲戒処分のうち最も重い停職よりも重く、かつ懲戒処分の中でも最も重い免職処分を選択した判断は、処分の選択が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠き、本件免職は懲戒権者としての裁量権の範囲を超えるものとして違法と評価せざるを得ない。

3.糸島市の戦略が不適切だったから取消請求が認容されたのか読みにくいが・・・

 労働者側で事件を処理していて、しばしば思うことの一つに、使用者側で懲戒事由の選定が適切に行われていないケースが、かなりあるということです。

 懲戒事由を長年に渡って大量に列挙するのは、その典型です。

 懲戒事由は枯れ木も山の賑わい的な発想で考えられるものではありません。懲戒事由として掲げられた事実が認定できないということは、判断の基礎事情が揺さぶられることを意味します。証拠上不確かな事実は、労働者側の反証活動により、裁判所で認定される事実から削りとられることになります。22項目中、7項目も削り取られてしまったら、単純計算で判断の基礎事情の3分の1が削り取られてしまうわけですから、「判断の前提条件が最早全然違ってきますよね。」という話になります(実際の事件では項目ごとの濃淡があるため、本来こう単純に行かないはずなのですが、「枯れ木も山の賑わい」型の主張をする使用者は、「何が大事なのか、何が重視されたのか」と求釈明で少し揺さぶりをかけるだけで、芋版で押したように「全部大事だ、全部重視した」と答えてくれることも多く、「等しく重視された項目のうち〇分の〇が・・・」という主張に繋げられることは結構あります)。

 また、長期間に渡って非違行為を掘り下げて行くというのも、あまり大した意味があるとは思えません。「非違行為がありながらも労働契約を存続させてきた」という事実と折り合いをつけることが難しくなるからです。特に、非違行為に対して何の処分もしてこなかったのであれば猶更です。当たり前ですが、本件の判決文からも、この点が問題になった形跡が見て取れます。

 本件に関しても、懲戒事由の構成が基盤の3分の1を削り取られるほど粗っぽいものであったため自滅しただけではないかという読み方ができる可能性があると思います。

 そのため、氷見市消防職員事件(氷見市事件)以降も、懲戒免職処分の厳格さは維持されたと判断してよいのかは、やや慎重になる必要があると思います。

 とはいえ、緩むかもしれないと思われていた状況下において、なお、懲戒免職処分の可否が厳格に司法審査され、長期間かつ多数に及ぶハラスメントに及んでなお、懲戒免職処分が違法とされた裁判例が出現したことは注目に値します。

 ハラスメントを理由とする懲戒処分の効力を争う局面において、本裁判例は厳罰化への歯止めとして活用することが考えられます。

 

外国人労働者の解雇事件-文化的背景の差異は解雇権行使を制限する理由になるか?

1.文化的背景の差

 当たり前のことですが、人種・民族は、それぞれ異なる文化的背景を持っています。

 日本人が外国に行って働くにあたり、当該国の雇用慣行への適応に苦労する話はよく聞きます。外国人労働者が日本の雇用慣行に馴染めずに苦労している話も、同じくらいよく耳にします。

 それでは、コミュニケーションギャップが文化的背景の差異に由来している場合、そのことは、解雇権行使の可否の判断との関係で、どのように評価されるのでしょうか?

 郷に入りては郷に従えという発想のもと、特段何の考慮もされないのでしょうか?

 それとも、宥恕すべき事情、ギャップ解消により改善可能性の余地があることを示す事情として、解雇権の行使を制限する方向での考慮要素として評価されるのでしょうか?

 この問題を考えるうえで参考になる裁判例が、近時公刊された判例集に掲載されていました。一昨々日、一昨日、昨日とご紹介させて頂いている、大阪地判例4.7.22労働判例ジャーナル129-30 カワサキテクノサービス事件です。

2.カワサキテクノサービス事件

 本件で被告になったのは、科学・工業技術に関する情報提供サービス業、コンサルタント業等を目的とする特例有限会社です。

 原告になったのは、中華人民共和国出身の男性であり、被告との間で無期労働契約を締結し、調査・コンサルティング業務等に従事していた方です。入社翌月である平成30年7月分からは基本給20万円に業務手当7万円を加えた合計27万円を賃金として支給されていました。しかし、令和元年7月分以降、基本給16万3000円、業務手当5万7000円の合計22万円にまで賃金を減額され、休業を命じられるなどした後、令和2年8月31日付けで解雇されてしまいました。その後、解雇が無効であるとして労働契約上の地位の確認等を求めて原告が被告を提訴したのが本件です。

 本件の被告は多数の解雇理由を主張しましたが、その中に勤務態度・協調性不足がありました。勤務態度・協調性不足を根拠付けるエピソードも複数主張されましたが、その中の一つに上司(被告代表者)に対する配慮のない言動がありました。

 これについて、原告は、

「原告が被告代表者に対して送信したメールが日本社会の常識を基準とすれば不適切であったことは否定しないが、中国においては、上司と部下との関係が日本よりもフランクであり、原告が送信したメールの内容も、中国であれば問題視されるようなものではなく、原告なりにユーモアを利かせたものにすぎなかった。上記メールを捉えて原告の姿勢が不真面目であったと判断するのは適当でない。」

と反論しました。

 しかし、裁判所は、次のとおり述べて、原告の主張を排斥しました。結論としても、解雇は有効だと判示しています。

(裁判所の判断)

「原告は、適応障害を理由とする休職期間中に友人に会いに行くとの理由で上海に出掛けた上、帰国時に検疫のためにホテルに隔離されることになった際、被告代表者に対し、自身がホテル内でくつろぐ写真やホテルの内装写真等を添付した上で、『飛行機降りた途端、政府に無差別ハイジャックされまして、14日間貸切の5星ホテルの個室に全員隔離検疫されています。』とのメールを送信した・・・。また、原告は、被告代表者から休職期間の満了日が休職開始日から3か月後の令和2年5月21日までである旨を伝えられた際には、同人に対し、『え?6ヶ月じゃなかったですか?もうちょっと3ヶ月くらい優雅に紅茶飲みたいですよ。』とのメールを送信した・・・。上記のような原告の態度は、被告代表者に対する配慮を欠くものであることが明らかである。」

原告は、被告代表者に対して送信した上記各メールは、中国では上司と部下との関係が日本よりもフランクであることを背景とする単なるジョークであって、原告なりにユーモアを利かせたものにすぎず、それをもって原告の姿勢が不真面目であると評価することはできない旨主張する。

しかし、原告が被告代表者に対して送信した『え?6ヶ月じゃなかったですか?もうちょっと3ヶ月くらい優雅に紅茶飲みたいですよ。』とのメールは、休職期間が自分の予想よりも短かったことを捉えて、休職中の原告に対して休職期間の終期を通知してきた被告代表者に向けられた、被告の対応を揶揄するメッセージと捉えられても仕方がない。文面上相手を揶揄するものであるように見えるメッセージを単なるジョークとして軽く受け流すことができなかった責任を、当該メッセージの受け手である被告代表者に帰責させ、自らの行動によって誤解を与えてしまったたことを一切顧みようとしない原告の態度そのものに問題があるといわざるを得ない。原告の主張する中国と日本との文化的背景の差異は、原告の態度の問題性に係る上記の結論を左右するものではない。

3.文化的背景に差異があるのは仕方のないことなのであろうが・・・

 中国籍の方に関していうと、職場の上司であってもフラットにコミュニケーションを取りたいと考える傾向にあるという話を見聞きすることがあります。

中国の仕事の文化とは?日本と異なる仕事観やビジネスマナー - TENJeeコラム

 筆者も海外の雇用慣行に関してはそれほど詳しくなく、真偽のほどは分かりませんが、原告のメールも中国であれば、問題視されなかったことなのかもしれません。

 しかし、日本法を準拠法とする労働契約のもと、日本で働く限り、やはり労務提供の内容も日本の雇用慣行を基準に解釈されて行くのであって、「外国ではこうだ」という理屈は通じにくいのだと思われます。

 文化的背景に差異があることから、コミュニケーションギャップがあるのは仕方のないことですが、解雇を回避するという観点からは、それを現地国(日本)の代表者にのみ帰責することは避けた方が良さそうです。