弁護士 師子角允彬のブログ

師子角総合法律事務所(東京:水道橋駅徒歩5分・御茶ノ水駅徒歩7分)の所長弁護士のブログです

無期転換ルールを避けるための雇い止めは許されるのか?

1.横浜の私立高で大量退職

 横浜の私立高で大量退職「非正規教員を使い捨て」との記事が掲載されていました。

 http://news.livedoor.com/article/detail/16309557/

 学校法人の中高一貫校で、非正規雇用の教員の雇い止めが相次ぎ、大量の退職者が出ているとのことです。

 「学苑側は昨年度までの6年間で72人が退職したとしている。一方、複数の学校関係者は退職者は120人近いと訴えている。」

とのことですが、いずれにせよ相当数の教員が雇い止めになっていることには変わらないのではないかと思います。

 そして、記事は、

「改正労働契約法には、非正規労働者の雇用安定を図るため、有期契約が5年を超えれば無期に移行できる『無期転換ルール』がある。」

と労働契約法上の無期転換ルールに言及しています。

2.無期転換ルール

 労働契約法18条1項本文は、

「同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約・・・の契約期間を通算した期間・・・が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。」

と規定しています。

 これが一般に言われている無期転換ルールの法的根拠です。

3.無期転換を避けるための雇止めは許されるか?

 それでは、無期転換を避けるため、5年を超えそうになった有期労働者を、それだけの理由で雇い止めにすることができるのでしょうか?

 私の知る限り、この点を明示した裁判例はないと思います。

 ただ、少なくとも、行政解釈上は、そのような雇止めは許容されないと考えられているのではないかと思います。

 平成27年8月7日に、厚生労働省大臣官房地方課長・厚生労働省労働基準局長・厚生労働省職業安定局長名で「労働契約法の『無期転換ルール』の定着について」という通知が出されています。
 ここには、参議院厚生労働委員会の附帯決議を指摘したうえ、
「政府は『無期転換ルールの本格的な適用開始に向けて、労働者及び事業主双方への周知、相談体制の整備等に万全を期すとともに、無期転換申込権発生を回避するための雇止めを防止するため、実効性ある対応策を講ずること』を求められている」
と書かれています。

https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc2180&dataType=1&pageNo=1

 無期転換権の発生を回避するための雇止めについて、少なくとも行政はこれを防止されるべきものと考えていると言ってよいのではないかと思います。

 実際、昨年には無期転換ルールの適用直前に男性講師を雇止めにした大手予備校に対し、労働局が助言という形で介入したとの報道もなされています。

https://www.sankei.com/region/news/181028/rgn1810280004-n1.html

4.雇止めは無制約にできるわけではない

 有期雇用契約であるからといって、全く自由に期間満了で終了させられるわけではありません。

 労働契約法は、反復更新が続いて期間の定めのない契約と同視できる場合であるとか、契約が更新されるとの期待に合理的な理由がある場合であるとかいったときには、雇止めには客観的に合理的な理由・社会通念上の相当性が必要であるとしています。そして、客観的に合理的な理由、社会通念上の相当性が欠ける場合、更新の申し込みさえすれば、従前の契約が更新されたものとして取り扱われることとされています(労働契約法19条)。

 無期転換ルールを免れるために雇止めにあったのではないかという懸念のある方は、一度、弁護士のもとに相談に行っても良いかも知れません。

 もちろん、東京近郊にお住まいの方であれば、私にご相談頂いても大丈夫です。