弁護士 師子角允彬のブログ

師子角総合法律事務所(東京:水道橋駅徒歩5分・御茶ノ水駅徒歩7分)の所長弁護士のブログです

国際結婚斡旋業者による人身売買(にも等しい行為)が問題となった事案-国際結婚斡旋業者に物申すことはできないか?

1.国際結婚斡旋業者による人身売買

 仕事の関係で、日本語に不自由な外国人の手による協議離婚届への署名・押印が、裁判例において、どのように理解されているのかを調べていました。

 その過程で、たまたま国際結婚斡旋業者による人身売買が問題となった裁判例を見つけました。

 京都地判平5.11.25判例タイムズ853-249です。

 斡旋業者を介した国際結婚のトラブルは結構多いのではないか思われたのと、他のサイトであまり取り上げられていなさそうであったことから、参考までにご紹介させて頂くことにしました。

2.事案の概要

 この事件で原告になったのは、スリランカ人の女性です。

 被告になったのは、結婚相談所でスリランカから独身女性を来日させて日本人男性に紹介する事業をしていた方です。

 裁判所が認定した被告の業態は次のとおりです。

「被告は、昭和六一年(一九八六年)八月から昭和六三年(一九八八年)までの間に約六〇組ないし七〇組の日本人男性とスリランカ人女性の婚姻を成立させたが、その方式はおおむね以下のとおりに行われた。即ち、被告は、一度に一〇人ないし二〇人のスリランカ人女性を来日させ、結婚を希望する男性二、三人と右一〇数名のスリランカ人女性を集団で見合いさせ、男性側の指名に対し、女性側が承諾すれば結婚させることとし、スリランカで合同の結婚式を挙げる。結婚が成立した場合、日本人男性は、被告に対し報酬として二五〇万円ないし三〇〇万円を支払い、被告から花嫁側の家族に対し結納金五万ないし一〇万ルピーが支払われる、というものであった。

 ただ、被告は相当に問題のある業者であったようで、判決では次のような言及もなされています。

「被告による右花嫁斡旋は、紹介する日本人男性に関する情報(特に、年齢、職業、離婚歴)に関する偽りが多く、他方スリランカ人女性側に対してはパスポートを取り上げ、結婚を拒む者に被告が支出した費用の返済を要求するなどして、強制的に結婚を迫るものであり、熊谷大学教授中村尚司が調査したところによると、被告の紹介により結婚した三一組中二六組が被告の結婚斡旋の仕方に問題があると指摘し、こうした強引な結婚斡旋の結果、少なくとも三名のスリランカ人女性が現地で挙式しながら逃げ出し、一五名のスリランカ人女性が離婚してスリランカに帰国し、一二、三名の女性が離婚後、日本にとどまっている事態となった。
「そして、このような被害にあったスリランカ人女性らの訴えにより、昭和六三年(一九八八年)三月、在日スリランカ協会が国際結婚のあり方に関する提言を行い、平成元年(一九八九年)五月には在日スリランカ大使館が実態調査を行うに至っている。

 原告が来日した経緯は次のとおりです。

「被告は、昭和六二年(一九八七年)七月頃、スリランカの安価な労働力に着目し、スリランカに電子部品の組立て工場を経営するアポロ・エレクトロン社を設立し、研修名目でスリランカ人女性を日本の工場に派遣し、日本の工場主より斡旋料を得るとともに、前記スリランカ人花嫁斡旋事業の花嫁供給源とすることを企て、クスマ・ペレラを通じてシンハラ語の日刊紙「ディナミナ」紙に、アポロ・エレクトロン社名で、『日本で三か月間の技術研修を受ける者を募集する。研修を終えれば日本とスリランカの合弁会社である同社で働くことができる。応募の資格はOL課程を修了した女性である。』との広告を掲載した」

「原告は、・・・アポロ・エレクトロン社の前記新聞広告を見つけ、これまでコンピューターの勉強をしたことはなかったが、日本との合弁会社でOL課程修了の女性を募集するなら待遇も悪くないはずであると考え、また、外国に研修に行かねばならないが、三か月間と比較的短期間であったことから、家族の賛成も得られたので、被告の右研修生募集の広告に応募した。」

 要するに、研修目的だと騙されて来日されました。

 その後、被告から紹介された男性と結婚させられることになります。

 結婚に至る過程の中で、被告は、原告らスリランカ人女性を、

「帰りたいのであればこれまで被告が出した費用を返せ。そうしないとパスポートは返さないし、警察に訴える。」

と大声で脅したり、

「食事を減らしたうえ、シャワーや風呂も使わせず、更に、見合いに出たくないといっていた者に対し、帰国を認めるかわりに旅費を返還するように要求して、暗に、見合いに応じて結婚するように仕向け、それでも見合いを嫌がった原告ら八人のスリランカ人女性に対し、二人ずつ、事務所の前を通らなければ外出することができない部屋への移転を命じ、『旅費を払ってスリランカに帰れないのならこの部屋にじっとしているがいい。』といって、事務所から監視して原告らが部屋から出られないようにするなどの嫌がらせ」

をしたりしていたようです。

 このような過程で原告は訴外鈴木と婚姻しましたが、当然上手く行くはずもありませんでした。訴外鈴木は、被告から渡された原告の署名が偽造された離婚届を区役所に提出し、協議離婚を成立させ、被告から新たに紹介を受けたスリランカ人女性と結婚しました。

 こうした一連の行為の行為を問題視し、原告が被告に対して損害賠償を請求したのが本件です。

3.裁判所の判断

 裁判所は次のとおり述べて、被告に1200万円の慰謝料の支払いを命じました。

「被告は、前記認定のとおり、日本人男性と結婚させる目的であったのに、右意図を秘し、日本において研修させると偽って原告を欺罔し来日させたうえ、原告に対し、日本人男性との見合いを強要し、結婚を拒絶するや、原告の到底支払うことのできない金額の支払を要求したり、食事の量を減らし、シャワーを浴びさせない等の脅迫・嫌がらせを行った末、極めて短期間のうちに、原告の意思に反して鈴木との結婚を承諾させたものである。」
「花嫁不足に悩む農村の独身男性等のために国際結婚を推進することそのものは、もし、これが、正確な情報を基に、両当事者の自由な意思決定により行われ、真の相互理解により結婚が実現するのであれば、国際交流の一つのあり方として是認しうるものである。」
「しかし、被告の原告に対し行った前記一連の行為は、その程度をはるかに超え、国際結婚推進の美名の下に、専ら被告の事業の利益のために、まさに人身売買にも等しい卑劣な方法により、日本語や日本の事情の全く分からない原告の人権を無視して強引に原告に対し結婚を押しつけたもので、人道的にも許し難い違法な行為であり、不法行為が成立するというべきである。」
「また、前記離婚届偽造及び届出行為についても、被告は、鈴木から原告との結婚生活がうまくいかないと相談を受けるや、原告の立場を全く考慮せず、一方的に離婚を勧め、原告がこれを拒むと、原告がスリランカに帰国した機会を利用して、原告の署名を偽造した離婚届を鈴木に渡し、鈴木において偽造であることを承知のうえこれをもって原告との離婚届出をしたものであって、被告の右一連の行為は、原告に対する人権無視も甚だしく、スリランカ人女性をまさに商品扱いした人道的にも許し難い違法な行為であって、鈴木との共同不法行為が成立するというべきである。」
「前記認定事実によれば、原告は、日本においてコンピューター技術を身につけ、スリランカ帰国後、日本との合弁企業に勤務することを夢見て来日したのが、右来日は被告に騙されたものであったうえ、被告によって、来日直後に鈴木との見合い及び結婚を強要され(人間にとって結婚相手を決めることは一生の問題であり、その決定の自由は極めて重要な基本的権利である。しかるに、面接をして二日も経ず、話も全くしたこともない者との結婚を強制した被告の行為は、原告の右結婚の自由を侵害したものである。)、結婚後は六か月弱の間険悪で不幸な夫婦生活を過ごした末、今度は勝手に偽造された離婚届により離婚届出をされ、妻たる地位を事実上喪失させられ、鈴木宅から放り出されてしまったものである。」
「被告は、このように、嫌がる原告を無理矢理婚姻させておきながら、今度はすぐに離婚届を偽造して無理矢理離婚させようとしたものであり、原告が被告のこのような人道的に許し難い違法な行為によって人生計画を狂わされ、甚大な精神的苦痛を受けたことは原告本人尋問の結果(第一回)により明らかであり、右精神的苦痛に対する慰謝料は、被告の行為の計画性、行為の方法、手段及び態様、行為の違法性の程度、原告の受けた精神的苦痛の程度など本件に表れた諸般の事情を総合勘案すると、被告固有の不法行為に対する慰謝料として七〇〇万円、被告と鈴木との共同不法行為に対する慰藉料として五〇〇万円と認めるのが相当である。

4.これほど悪質な業者は稀だとは思われるが・・・

 慰謝料額の高さもさることながら、裁判所が民事事件で「人身売買にも等しい」「人道的にも許し難い」といった強い表現を用いることは、それほどあるわけではなく、そのことからも、本件が極端な事案であることは間違いないと思います。

 流石にこれほど悪質な業者は稀だとは思います。しかし、相手方に関する情報や、結婚後の生活のイメージが、国際結婚斡旋業者を通じてきちんと共有されていなかったことにより不幸な夫婦生活を過ごさざるを得なくなったという方は、結構多いのではないかと思っています。

 また、この裁判例は外国人女性の側が被害者とみられる事案でしたが、高額なお金を払わされたものの、女性は結婚してすぐ何処かへ失踪してしまったといったような形で被害に遭っている日本人男性も相当数いるのではないかとも思います(実際、法律相談で、そういう事案を何度か見たことがあります)。

 国際結婚の斡旋業者が、いわゆる「悪徳」で、特に悪意のある誰かとつるんでいる場合、登場人物の誰が被害者になってもおかしくありません。外国人女性が人身売買の客体にされるケース、農村部の日本人男性が国籍や在留資格のダシに使われるケース、外国人男性との恋物語に憧れる日本人女性がお金を搾り取られるケース、色々な被害類型があると思います。

 業者の主観的な悪性まで立証できる事案はある程度限定されるとは思いますが、国際結婚の斡旋業者に何か一言物申せないのか、そうした思いをお抱えの方は、男性側・女性側、外国人側・日本人側を問わず、一度、弁護士のもとに相談に行ってみてもよいのではないかと思います。

 

自治体や国がなすべき人事上の措置をしてくれない場合の対抗手段

 

1.審査請求の放置

 懲戒その他不利益な処分を受けた公務員には、審査請求を行うことが認められています(地方公務員法49条の2、国家公務員法90条)。

 裁判所で処分の効力を争うためには、審査請求した後でなければならないとされているため(地方公務員法51条の2、国家公務員法92条の2)、司法判断による救済を受けたい方にとって、審査請求を行うことは義務的な意味合いも持ちます。

 しかし、審査請求を受けた場合、自治体や国がどのような時間感覚で調査を行い、結論を出さなければならないかを明示的に定めた規定はありません。不作為の適法性を争うための手続が用意されているわけでもありません。

 それでは、審査請求が放置された場合、請求者には全く打つ手がないのでしょうか。

 この点が問題になった事案に、横浜地裁平31.2.22労働判例ジャーナル89-56神奈川県事件LEX/DB25562979があります。

 裁判所は審査請求を放置したことに国家賠償法上の違法性を認め、神奈川県に各原告に対し慰謝料20万円を支払うよう命じました。

2.神奈川県事件

 この事件では約40年もの長きに渡り審査請求が放置されました。このような事態を受けて、審査請求人が神奈川県に慰謝料の支払いを求める国家賠償請求訴訟を起こしたのが本件です。

 裁判所が国家賠償法上の違法性を認めたのは、次のような理由によります。

本件審査請求が、昭和47年4月5日に受理されたにもかかわらず、平成24年7月20日に至るまで第1回口頭審理が開始されることがなく、受理から審理終結及び本件裁決まで約45年を要したことは、上記認定事実のとおりである。そして、上記認定事実によれば、昭和41年頃から昭和47年頃にかけては、知事らによる被告職員への懲戒処分に対する審査請求の申立てが多発し、知事及び人事委員会が共にその対応に追われ、知事が処分理由書を提出できなかったことに合理的な理由があったといえるが、昭和50年代に入ってからは、多くの事案は取下げ等により終了したというのであるから、その頃には、知事において長期間にわたって処分理由書を提出できないような事情は最早解消されていたと認めるのが相当である。そして、上記認定事実のとおり、人事委員会が、平成24年4月25日、知事に対して改めて答弁書の提出を求めたところ、同年6月22日に答弁書が提出され、同年7月20日以降本件審査請求に係る口頭審理が開始され、平成29年3月27日に本件裁決がされたことに鑑みれば、本件審査請求について、人事委員会が、昭和50年代に入ってから知事に対し処分理由書の提出を求めれば、遅くとも昭和50年代の半ばには、本件審査請求に対する判断を示すことができたと認めるのが相当である。しかし、人事委員会は、その頃、被告に対し、毎年1回程度、口頭で処分理由書の提出を要求していたに留まっていたというのであり、平成18年に至って、原告らから、審理を長期間にわたって放置した事実を重く受け止めてほしいなどといった意向を表明されてからも、被告に対しては、毎年1回程度、処理促進の要請をするに留まり、平成24年4月25日に至るまで、知事に対して処分理由書や答弁書の提出を求めることがなかったことは上記認定事実のとおりである。そうすると、本件審査請求について、人事委員会は、客観的に審理に必要と考えられる期間に比してさらに長期間にわたり審理を遅延させ、かつ、その間、知事に対して処分理由書の提出を求めるという人事委員会として通常期待される努力によって遅延を解消できたのに、これを回避する努力を尽くさなかったというべきである。そして、本件審査請求について、受理後相当期間内に裁決がされないことにより、原告らが不安感、焦燥感を抱き、内心の静謐な感情を害されたであろうことは明らかであるから、人事委員会には、国家賠償法1条1項における違法と評価すべき作為義務違反があったというべきであり、かつ、人事委員会の担当者には、少なくとも過失があったというべきである。

3.障害になる事情がないのに事件処理を放置することは許されない

 裁判所は障害になるような合理的な理由がない・解消されているにもかかわらず、事件処理を遅らせることは許されないと判示しました。また、事件処理の遅滞により、不安感・焦燥感を抱かされたり、内心の静謐な感情が害されたりしないことが、法的に保護されるべき利益であることを認めました。

 本件は審査請求の受理から第1回口頭審理までに40年が経過している極端な事案であることから、特殊な事例に対する判断という見方もあるかもしれません。

 しかし、本件の裁判所は、審理を行えなかったことに対する合理的な事情の存否と、その解消時期は何時なのかを検討するという方法で違法性を判断しています。昭和50年代半ばには判断を示すことができたのだから違法だと述べており、40年という期間に着目しているわけではないように思われます。

 合理的な事情が存在しない・解消されたにもかかわらず、行うべき人事上の措置をしてくれないことが違法だというロジックは、審査請求の場面以外にも汎用性を持ってくる可能性があると思います。

 例えば、非違行為を犯した公務員の方が、既に依願退職の意向を固めているにもかかわらず、国や自治体が懲戒手続の開始を示唆しながら何もしないといったケースが考えられます(実際、このような相談を受けたことがあります)。

 懲戒逃れを防止するため、公務員の身分は、講学上、退職発令・辞職承認などと呼ばれる行政行為がなければ消滅しない仕組みになっています。

 しかし、非違行為を犯した公務員の方といえど再就職して生活して行かなければならないため、何時まで経っても懲戒処分をしてくれないという事態には困ることがあります。

 このような場合、国家賠償請求を示唆することで、事態の打開を図れる可能性が出てくるかも知れません。

 

司法記者に仮処分申立書を提供した弁護士が名誉毀損で訴えられた事件(情報提供の相手方が名誉毀損の成否に与える影響)

1.司法記者に仮処分申立書を提供した弁護士が訴えられた事件

 司法記者に仮処分申立書を提供した弁護士が、名誉毀損を理由に損害賠償を請求された事件が判例データベースに掲載されていました。

 岡山地判平31.3.26労働判例ジャーナル89-56LEX/DB25563021です。

 情報提供の相手方の属性が名誉毀損の成否にどのような影響を与えるかに関し、興味深い判示をしています。

2.事案の概要

 本件の原告は岡山大学の准教授の方です。

 被告にされたのは、岡山大学から停職処分を受けた教授2名(B、C)と、B・Cを代理して停職処分の停止を求める仮処分を申し立てた弁護士(D)です。

 仮処分の申立書には、

「原告が本件研究科のウェブページへの掲載に関して虚偽の記載を要求した、学生らに対しハラスメント行為を繰り返している、岡大の予算を私的に流用した等の事実が記載されて」

いました(本件記載)。

 弁護士Dは、本件停職処分を知った司法記者クラブの幹事社記者から仮処分申立書を入手したいとの申出を受けました。

 弁護士Dは、

司法記者クラブ所属の報道機関の記者以外には配布しないこと、

その内容を口外しないこと

を告げ、幹事社記者の了承を取り付けたうえ、マスキング処理していない仮処分申立書をFAX送信しました。

 仮処分申立書は全20数頁の書面で、

〔1〕申立ての趣旨及び理由、

〔2〕本件停職処分の理由となった懲戒事由(本件懲戒事由)、

〔3〕被告B及び同Cの本件懲戒事由に対する反論、

〔4〕回復しがたい損害、

の記載部分から構成されるところ、

〔3〕の部分に本件記載がなされていました。

 その後、原告准教授は、司法記者クラブに所属する報道機関の記者から、仮処分申立書の写しの交付を受け、同申立書に本件記載があることを認識しました。

 そして、仮処分申立書のFAXでの送信行為が名誉毀損に該当するとして、教授B、教授Cのほか、弁護士Dを名誉棄損で訴えました。

3.判決の要旨

 判決は次のとおり述べて、FAXの送信行為が名誉毀損に該当することを否定しました。

「本件申立書には本件記載がある・・・が、これらの記載自体は、原告の社会的評価を低下させる事実に当たるというべきであるし、・・・本件申立書の写しを入手した司法記者クラブの幹事社記者が、同クラブ所属の他の報道機関全社に対し、本件申立書の写しを交付等したことも明らかといえる。」
「そのため、原告は、本件送信により、司法記者クラブの幹事社を通じて、同クラブ所属の報道機関全社が上記各事実を認識するに至ったのであるから、本件送信は名誉毀損に該当する旨主張する。」
「しかしながら、本件申立ては、被告B及び同Cが、本件停職処分を受けたことから、岡大を債務者として、同処分の仮の停止を求めたもので、本件申立書の記載内容も、〔1〕申立ての趣旨及び理由、

〔2〕本件懲戒事由、

〔3〕被告B及び同Cの本件懲戒事由に対する反論、

〔4〕回復したがい損害

の各部分から構成されている。」

「したがって、本件申立書は、本件停職処分の仮の停止を求める目的で作成されているものであるというべきところ、本件記載は、上記〔3〕の部分に当たり・・・、本件懲戒事由に対する反論がされている部分であることからすれば、専ら岡大による本件停職処分の不当性を訴える趣旨に出たものであって、本件記載の原告の行為を取立てて指摘することを目的とするものとはいえないというべきであるし、上記全体の構成からしても,そのようなものとは認められない。そして、民事裁判上の申立書の記載内容は、飽くまでも申立て時点の申立人の主張に過ぎず、その事実が証明されずに終わることも多々あることであり、司法記者であれば、そのことは熟知しているものと解される。
「また、前記・・・のとおりの経緯からすれば、本件送信は、被告Dが、本件停職処分を知った幹事社記者から、本件停職処分に対する被告Cらの方針等の問合せと併せて本件申立書を入手したい旨の申出を受けて行われたものに過ぎない。」
「以上のとおり、本件申立書の写しが幹事社記者に送信されるに至った経緯、本件申立書の記載内容等を総合すれば、本件送信は、被告B及び同Cが本件申立てをする予定であることや、本件停職処分が無効である根拠と主張する事実を摘示したに過ぎないというべきで、本件送信をもって、原告の社会的評価を低下させる事実を摘示したものとみることはできない。

「よって、原告の上記主張は理由がない。」

3.情報提供の相手方の属性と社会的評価の低下との関係性

 本件は、結果的に、

「原告の氏名や本件記載が報道された事実は見当たらなかった。」

という事実が認定されており、この点が効いている可能性もあると思います。

 属性の点だけをクローズアップするのはミスリーディングを招く可能性もありますが、裁判所は大意、

① 民事上の申立書面に記載されていることが立証できないことは十分あり得る、

② そんなことは司法記者なら十分知っているはずだ、

③ 一方当事者の言い分を話半分に聞いているだけなのだから、仮処分申立書が記者の間で回付されたところで、原告准教授の社会的評価は低下しない、

というロジックで名誉毀損の成立を否定しました。

 この話半分理論が認められるとすれば、必ずしも真実性の立証に踏み込む必要がなくなり、新聞記者への情報提供が許容される範囲が広範なものとなってくる可能性があると思います。

 私自身は事件処理に第三者(マスコミを含む)を巻き込む手法には慎重な見解を持っており、こうした裁判例が出たからといってこれに依拠して報道機関を武器に使おうという発想はありません。

 判決では、

「被告Dは、本件送信に先立ち、被告B及び同Cの了解を得ておらず、独断で行ったものであることが認められる。」

という事実が認定されています。これが本当のことなのか、弁護士Dが依頼人を庇ったのかは分かりませんが、例え依頼人の了承があったとしても、私であればマスコミに受任中の情報を流すことはないと思います。

 また、この裁判例がどこまで通用力を持つのかは疑問があり、これに依拠して何かをするというのは決して安全なことではないとも思います。

 ただ、情報提供の方法と相手方の属性に気を遣うことを、名誉毀損のリスクをコントロールする手段として承認した先例として、学術的に興味を惹かれます。

 

売上・収入と紐づけられた歩合型手当は、固定残業代といえるのだろうか?

1.手当型の固定残業代の有効性が問題になった事案

 固定残業代(定額残業代)とは「時間外労働、休日および深夜労働に対する各割増賃金(残業代)として支払われる、あらかじめ定められた一定の金額」をいいます(白石哲編著『労働関係訴訟の実務』〔商事法務、第2版、平30〕115頁参照)。
 割増賃金の支払いに代えて一定の手当を支給する類型(手当型)と、基本給の中に割増賃金を組み込んで支給する類型(基本給組込型)があります。

 固定残業代は濫用的に用いられることが多いため、その有効性に関する争いは、至るところで頻発しています。

 8月20日発行の判例集に掲載されていた、大阪高判平31.4.11労働経済判例速報2384-3 洛陽交通事件も固定残業代の有効性が問題になった事件の一つです。

 本件では手当型の固定残業代の有効性が問題になりました。

2.大阪高判平31.4.11労働経済判例速報2384-3 洛陽交通事件

(1)事案の概要

 この事件で原告になったのは、タクシー乗務員の方です。

 被告は自動車運送事業を営む株式会社です。

 原告が残業代を請求する訴訟を起こしたところ、幾つかの手当について、それが固定残業代をいえるかが争点となりました。

 固定残業代を言えなければ、それは割増賃金を計算するうえでの基礎となる賃金に組み込まれます。また、その手当の支払いが割増賃金の支払いになることもありません。

 他方、固定残業代と言えれば、それは割増賃金を計算するうえでの基礎となる賃金からは除外されます。また、その手当の支払いは残業代の支払いに充当されます。

 ある手当が固定残業代に該当するかどうかは、残業代請求の可否・金額に大きく影響するため、激しく争われることが珍しくありません。

 この判決で興味深かったのは、「基準外手当Ⅰ」「基準外手当Ⅱ」「時間外調整給」の各手当が固定残業代としての有効要件を満たすかに関する判示です。

 裁判所で認定された各手当の計算方法は次のとおりです(裁判ではA期間、B期間二つの期間について問題になっていますが、本記事では事案の単純化のためA期間に対応するものを取り上げて紹介しています)。

〔基準外手当Ⅰ〕

① 月間運送収入が35万円以上の場合に35万円を超える額の42.5%相当額

② 月間運送収入が45万円以上の場合に45万円を超える額の46.0%相当額、及び、低額4万2500円

〔基準外手当Ⅱ〕

 月間運送収入額に定められた割合を乗じた金額。

 その割合は、月間運送収入が50万円未満で6%、50万円以上55万円未満で9%、55万円以上60万円未満で10%、60万円以上65万円未満で11%、65万円以上で12%。

〔時間外調整給〕

 月間運送収入が、

① 35万円以上50万円未満の場合に、35万円を超える額の3.0%相当額

② 50万円以上の場合に一律2000円。

(2)裁判所の判断

 裁判所は次の通り述べて、基準外手当Ⅰ及びⅡ、時間外調整給のいずれも割増賃金の基礎となる賃金に当たる(固定残業代の有効要件を満たさない)と判示しています。

〔基準外手当Ⅰ及びⅡ〕

「①上記アのとおり、『本給』が最低賃金額に抑えられ、『基準外手当Ⅰ』及び『基準外手当Ⅱ』は、いずれも、時間外労働等の時間数とは無関係に、月間の総運送収入額を基に、定められた割合を乗ずるなどして算定されることになっていること、②前期認定のとおり、1審被告において、実際に法定計算による割増賃金額を算定した上で『基準外手当Ⅰ』及び『基準外手当Ⅱ』の合計額との比較が行われることはなく、単に、上記アの各手当等の計算がされて給与明細書に記載され、その給与が支給されていたこと、③前期認定のとおり、1審被告の求人情報において、月給が、固定給に歩合給を加えたものであるように示され、当該歩合給が時間外労働等に対する対価である旨は示されていないこと・・・、④上記のような賃金算定方法の下において、1審被告の乗務員が、法定の労働時間内にどれだけ多額の運送収入を上げても最低賃金程度の給与しか得られないものと理解するとは考え難いことからすると、『基準外手当Ⅰ』及び『基準外手当Ⅱ』は、乗務員が時間外労働等をしてそれらの支給を受けた場合に、割増賃金の性質を含む部分があるとしても、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することはできない。

「したがって、『基準外手当Ⅰ』及び『基準外手当Ⅱ』は、いずれも通常の労働時間の賃金として、割増賃金の基礎となる賃金に当たるというべきである。」

〔時間外調整給〕

「『時間外調整給』は、月間の総運送収入に一定の割合を乗ずるなどして算定されるものであり、時間外労働等の対価であることをうかがわせる定めも見当たらない。また、1審被告の乗務員が時間外労働等をして『時間外調整給』の支給を受けた場合に、『時間外調整給』に割増賃金の性質を含む部分があるとしても、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することはできない

「したがって、『時間外調整給』は、割増賃金の基礎となる賃金に当たるというべきである。」

3.売上・収入と紐づけられた歩合型手当は、固定残業代といえるのだろうか?

 最高裁は手当型の固定残業代の有効要件について、時間外労働等に対する対価として支払われたものであることを掲げています(最一小判平30.7.19労判1186-5日本ケミカル事件参照 以下「対価性要件」といいます)。

 ただ、日本ケミカル事件の最高裁判決が言い渡される以前に、最高裁は基本給組込型の固定残業代の有効要件について、通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外の割増賃金に当たる部分とを判別できることを掲げていました(最一小判平24.3.8労判1060-5テックジャパン事件、最二小判平29.7.7労判1168-49医療法人社団康心会事件参照 以下「判別要件」といいます)。

 通常の労働時間の賃金との判別が可能でなければ、それが時間外労働の対価かどうかは検討しようがありません。

 時間外労働の対価としての性質を有していると検証可能であるためには、通常の労働時間の賃金ときちんと判別可能であることが前提になるはずです。

 対価性要件と判別可能性要件との関係について、

結局のところ同じことを言っているのか、

それとも、

別のことを言っていて、論理的に整理することが可能なのか、

はあまり良く分かりません。

 本件の判示も、対価性要件の問題としているのか、判別要件の問題として理解しているのかは、少し分かりにくいように思われます。

 しかし、論理的な問題はともあれ、売上や収入と紐づけられた手当について、時間外労働等の時間数とは無関係であることを理由として、固定残業代としての有効性を否定したことは、応用可能性のありそうな判示であるように思われます。

 歩合を固定残業代だと強弁する例は、本件に限らず比較的多くみられるからです。

 賃金水準の問題は本件でも言及されていますが、歩合が固定残業代として扱われていて長時間・低時給に渡る働き方を強いられている、そのような状態に疑問を感じた方は、果たして歩合を本当に固定残業代として扱うことが許されるのかを弁護士に相談してみてもいいように思われます。

 固定残業代の有効性を否定できれば、それを基礎賃金に含ませることができるうえ、固定残業代が未払いの残業代に充当されることもなくなるため、かなりまとまった額の請求に繋げられる可能性があるからです。

 

アマチュア同士の契約で注意しておいた方がいいこと(住所・氏名確認の重要性、違約金の意味、紛争解決コストの認識)

1.アマチュア同士での契約

 ネット上に、

「セクハラなどのトラブル防止、カメラマンと被写体モデルに『契約書』整備の動き」

との記事が掲載されていました。

https://www.bengo4.com/c_18/n_10076/

 記事によると、

「Instagramなどへの投稿作品として、アマチュアカメラマンが、被写体モデルに依頼し、写真撮影することが広がりつつあるが、被写体モデルから『予定になかったポーズを要求されたが断りきれなかった』、『指図の目的を超えたボディタッチがあった』などの困惑の声があがることが少なくないという。」

「一方、カメラマン側も、どこまでの利活用や演出が認められるのかは『空気を読みながら』行うしかないという問題を抱えている。トラブルが発生するのは、カメラマンと被写体モデルの間で『契約』が交わされることがなかったためでもある。」

「そこで、写真作品を制作している一部のアマチュアカメラマンと、これに協力する被写体モデルが、契約書のひな型を共同で整備する取り組みを行っている。」

とのことです。

 契約書は上手に作れば、紛争を予防する機能を果たせます。

 紛争は解決するコストよりも予防するコストの方が遥かに安いのが一般的であり、アマチュア間での取引においても、作成された方が望ましいのは確かだと思います。

 記事に目を通していて、アマチュアの方が契約を交わすにあたり、留意しておいた方がよいと思われた情報を参考までに提供させて頂きます。

2.住所・氏名確認の重要性

(1)住所・氏名を確認させてくれない相手とは関係を持たないでいいと思う

 記事では、契約書を交わすにあたっての課題として、

「契約書に書かれたカメラマンさんの住所・氏名が正しいかをどうやって確認をするのかです。私は、これまでに運転免許証で確認しようとしたことがありますが、不快感を示されたことがあります。また、一人暮らしの女性の方などで、自分の住所・氏名を明かしたくないという場合はどうすればよいのかも気になります」

という点に触れられています。

 問題点の指摘に留められているようですが、相手方の住所・氏名は公的な書類で確認しておくことを強く推奨します。それで不快感を示してくるような相手方であれば、端的に言って関係を持たない方がいいと思います。

 理由は、法的措置をとるためには、住所・氏名が必要になるからです。

(2)住所・氏名は法的な手続の基礎、何をするにも必要になってくる

 当事者の住所・氏名は訴状の必要的記載事項です(民事訴訟規則2条1項1号)。裁判所は、訴状記載の住所地に宛てて訴状や期日への呼出状を被告に送達し(民事訴訟法138条1項)、審理を開始して行きます。

 民事訴訟は上記のような構造を持っているため、トラブルの相手方が、どこの誰なのかが分からないことは、法的救済を得るうえでの著しい支障になります。

 ポイントになるのは、氏名だけではダメだということです。

 法律相談をしていると、ネットで知り合った人とトラブルになったという方から、

「相手の名前は分かるけれど、それ以上のことは分からない。」

と言われることがあります。

 これでは法的措置をとることは困難です。電話番号など相手方の住所を知るうえでの手掛かりになるような情報でもあれば別ですが、本当に名前しか手掛かりがないという場合、そこで行き詰まってしまう可能性が高いです。

 刑事事件が成立するような場合に関しても、

「どこの誰から被害を受けた」

というのと、

「氏名不詳者から被害を受けた。」

「〇〇と名乗る人から被害を受けたが、どこにいるのかは分からない。」

というのとでは、捜査機関の受け止め方は大分異なります。

 相手方の住所・氏名を確認することは、あらゆる法的手続の基礎になるため、非常に重要だということは押さえておく必要があります。

3.違約金の意味

(1)5万円の違約金では効果は限定的

 記事には、

「(この契約書の)ピリッとするポイントは、5万円の違約金を定めたところです。仮に1万円だとすると、それならセクハラしてしまおうという悪質なアマチュアカメラマンがいるかもしれない。50万円ではアマチュアの写真制作では現実味がなく、死文化してしまう。5万円は地味に嫌な額なので、効果があると考えました。」

という記載があります。

 しかし、私の感覚で言うと、5万円の違約金が効果を持つ場面は限定的です。

 理由は紛争の解決コスト(弁護士費用)の方が高くつくからです。

(2)5万円の違約金の回収にどこまでコストをかけられる?

 幾ら違約金を定めても、相手が任意に支払わなければ裁判をするしかありません。

 しかし、専門家以外の方が訴訟をやるのは、端的に言って難しいです。

 ごく単純な事件であればともかく、密室での性的接触の立証が関係してくる事件を素人の方が自力でやるのは、技術的な巧拙の問題で敗訴するといった事態を招きかねないため、本当に勧めません。

 しかし、裁判をすることは結構な大仕事であるため、小規模なものでも数十万円規模の弁護士費用が発生するのが普通です。

 民事法律扶助(通称:法テラス)という資力に乏しい方向けの国の立替制度を利用して裁判を起こ場合でも、最低、

実 費・・・2万5000円

着手金・・・6万4800円

報酬金・・・入手金額の10%+税程度

の費用が発生します(訴額 ~50万円の事件の場合)。

https://www.houterasu.or.jp/housenmonka/fujo/index.html

https://www.houterasu.or.jp/housenmonka/fujo/index.files/100861468.pdf

 5万円というのは最も小規模な訴訟を、最も安上がりな方法で済ませる場合(訴訟の難易度・手間は必ずしも訴額には比例しないため、上記の訴額50万円以下の請求に係る法テラスの報酬水準では採算との関係で受任してくれる弁護士を見つけるのが難しいかも知れませんが。)の着手金を賄うことすらできない額です。

 そのため、このような水準の違約金は、象徴的な意味合いを持つものに近く、約束を破るような相手に対する効果としては限定的ではないかと思います。

(3)消費者被害がたくさんの被害者を出しやすいのは・・・

 なお、余談ではありますが、紛争解決コストの問題は、悪徳業者による消費者被害が広がりやすいことにも関係しています。

 手慣れた悪徳業者は被害金額を

「弁護士に依頼するには割に合わない。」

と感じる程度の金額に抑えてきます。比喩的に言えば、骨董品と偽ってガラクタを5万円で売るといったようにです。

 それでも、消費者被害に関しては、消費者庁が取り締まりにあたるほか、国民生活センターなどの行政が低コストな紛争解決機関として一定の役割を果たしてくれます。

https://www.caa.go.jp/about_us/about/main_function/

http://www.kokusen.go.jp/map/

 しかし、事業者-消費者間の契約であればともかく、アマチュア同士の契約の場合、必ずしも行政を頼れるわけでもないため、違約金水準をどのように設定しておくのかは慎重な検討が必要です。

(4)違約罰と違約金の違いにも注意

 記事で紹介されている契約書では、5万円とあるのは「違約罰」であって、別途損害賠償請求が可能という建付けになっています。

 受けた被害が大きいケースでは、一定のまとまった金額を別途損害賠償として請求できるため、弁護士費用を考慮しても割に合うかもしれません。

 しかし、「違約金」という場合、それは通常は損害賠償額の予定を意味します(民法420条3項「違約金は、賠償額の予定と推定する。」参照)。

 予定された損害賠償額は基本的に増減することができません(民法430条1項「当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合において、裁判所は、その額を増減することができない。」参照)。

 そのため「違約金」を低額な水準に抑える場合には、相手が任意に違約金を払ってくれない場面を想像したうえで意思決定を行う必要があります。

 法律関係の用語には似たような響きなのに意味が違うといったものが結構あります。

 アマチュア同士で契約を結ぶ場合には、きちんと相手方との間で共通認識ができているのかの擦り合わせも必要です。

4.紛争解決コストをどう考えるか

 契約上の義務の不履行が問題になる場面では、弁護士費用は自弁が原則です。

 基本的に相手方に請求することはできません。

 そのため、低額の違約金に法的措置による実効性を伴わせようと思った場合、紛争解決コストをサービスの提供価格に予め広く薄く上乗せしておくといった対応をとることが基本になります。

 違約金の請求に要する弁護士費用を契約書で相手方の負担としてしまうという対応も理論上考えられはします。

 例えば、国土交通省のマンション標準管理規約(単棟型)には、次のような規定があります。

(管理費等の徴収)
第60条 管理組合は、第25条に定める管理費等及び第29条に定める使用料について、組合員が各自開設する預金口座から口座振替の方法により第62条に定める口座に受け入れることとし、当月分は別に定める徴収日までに一括して徴収する。ただし、臨時に要する費用として特別に徴収する場合には、別に定めるところによる。
2 組合員が前項の期日までに納付すべき金額を納付しない場合には、管理組合は、その未払金額について、年利○%の遅延損害金と、違約金としての弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用を加算して、その組合員に対して請求することができる。

(以下略)

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000052.html

https://www.mlit.go.jp/common/001202416.pdf

 この種の合意に関しては、有効性を承認する裁判例もあります。

(東京高裁平26.4.16判例タイムズ1417号107頁)

「国土交通省の作成にかかるマンション標準管理規約(甲8)は、管理費等の徴収について、組合員が期日までに納付すべき金額を納付しない場合に、管理組合が、未払金額について、『違約金としての弁護士費用』を加算して、その組合員に請求することができると定めているところ、本件管理規約もこれに依拠するものである。そして、違約金とは、一般に契約を締結する場合において、契約に違反したときに、債務者が一定の金員を債権者に支払う旨を約束し、それにより支払われるものである。債務不履行に基づく損害賠償請求をする際の弁護士費用については、その性質上、相手方に請求できないと解されるから、管理組合が区分所有者に対し、滞納管理費等を訴訟上請求し、それが認められた場合であっても、管理組合にとって、所要の弁護士費用や手続費用が持ち出しになってしまう事態が生じ得る。しかし、それは区分所有者は当然に負担すべき管理費等の支払義務を怠っているのに対し、管理組合は、その当然の義務の履行を求めているにすぎないことを考えると、衡平の観点からは問題である。そこで、本件管理規約36条3項により、本件のような場合について、弁護士費用を違約金として請求することができるように定めているのである。このような定めは合理的なものであり、違約金の性格は違約罰(制裁金)と解するのが相当である。

 これは弁護士費用の敗訴者負担に近い考え方だと思います。

 しかし、弁護士費用の敗訴者負担に関しては批判的な見解も強く、どこまで通用力があるのかは不分明です。

https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2000/2000_22.html

 自分が違約したときのリスクも考慮する必要はあるものの、それを許容できるのであれば、紛争解決コストの負担について契約書で定めてしまうのも一考に値するのではないかと思います。

 事業者-消費者間の契約で、こういう条項を入れることは問題ありと判断される可能性が高いのではないかと思いますが、アマチュア同士の対等な契約で違約金に実効性を持たせる趣旨であるとすれば、許容される可能性はあるのではないかと思います。

非正規公務員が雇止め(再任用拒否)された理由を知る方法としての裁判

1.非正規公務員の雇止め(再任用拒否)

(1)民間の雇止め法理

 雇止めという言葉があります。

 これは

「期間の定めのある雇用契約により雇用される者について、当該期間の満了の際に、使用者が契約の更新を拒否すること」

をいいます(法令用語研究会編『法律用語辞典』〔有斐閣、第4版、平24〕1119頁参照)。

 民間の場合、労働者を雇止めから保護する仕組みがあります。

 大雑把に言うと、

① 有期契約が反復更新されていて期間の定めのない労働契約と同視できるような場合

② 契約が更新されることに合理的な期待がある場合

のいずれかに該当する場合、労働者側が更新を希望しているにもかかわらず有期労働契約を終了させるためには、客観的に合理的な理由・社会通念上の相当性が必要になります(労働契約法19条)。

 客観的に合理的な理由・社会通念上の相当性が認められない場合、労働契約は従前と同じ条件で更新したものと扱われます。

 解雇された場合、労働者は使用者に対して解雇理由の証明書の交付を求めることができます(労働基準法22条1項)。

 雇止めの場合にも、一定の場合には、労働者からの請求に応じて、使用者は契約を更新しない理由についての証明書を交付しなければならないとされています(有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準 平成15年10月22日 厚生労働省告示357号)。

https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=73aa5469&dataType=0&pageNo=1

 こうした仕組みを利用して、契約を更新してもらえなかった労働者は、その理由を知ることができます。そして、使用者側が提示した理由の客観的合理性・社会通念上の相当性に疑義があれば、法的措置をとるかどうかを検討することになります。

(2)非正規公務員はかなり多い

 非正規で働く方が多いのは民間に限ったことではありません。公務員もかなりの割合を非正規の方が占めています。

 総務省の資料によると、平成28年の地方公務員の総数は、273万7263人です。

http://www.soumu.go.jp/iken/kazu.html

http://www.soumu.go.jp/main_content/000608426.pdf

 平成28年4月1日時点での地方公務員の臨時・非常勤職員の総数が64万3131人なので、全職員の約23.4%は非正規である計算になります。

 また、内閣官房の一般職国家公務員在職状況統計表によると、平成30年7月1日時点の常勤職員の総数が26万5835人であるのに対し、非常勤職員数は14万8076人います(ただし、内2万1382人は比較的問題が少ないと思われる「委員顧問参与等職員」)。

https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/jinji_toukei.html

https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/files/joukin_toukei.pdf

https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/files/hijoukin_toukei.pdf

(3)非正規公務員の雇止め(再任用拒否) 

 非正規公務員の方も、任期満了により再任用されないという方がいます。

 しかし、公務員の場合、民間のような保護はありません。

 労働契約法22条1項は

「この法律は、国家公務員及び地方公務員については、適用しない。」

と労働契約法19条の適用がないことを明記しています。

 雇止め法理を類推することを肯定した確定判決もありません。

 信義則等を根拠に雇止めを無効として地位確認を認めた判例が一例(東京地判平18.3.24労働判例915-76 情報・システム研究機構(国情研)事件)だけありますが、上級審(東京高判平18.12.13労働判例931-38)で取り消されています。

 実際の運用はともかく、法の建付け上、任期付き公務員には、身分の継続性という発想がありません。

 雇止め法理の適用も類推適用もないため、雇止めされた理由の開示を求めるための仕組みがあるわけでもありません。

 非正規公務員の方は、再任用されなかった場合、その理由を知る方法が制度的に担保されていないのが実情ではないかと思います。

2.東京地判平29.6.14判例タイムズ1462-190

 非正規公務員の方が、再任用されなかった理由を知ろうと思った場合、個人情報保護法や個人情報保護条例に基づいて、保有個人情報の開示請求を行うという手段が考えられます。

 しかし、これも情報が十分に開示されなかったり、文書自体の存否の回答が得られなかったりするなど、必ずしも十分に機能しないことがあります。

 こうした状況のもと、再任用をしなかった理由を開示しなかった自治体の措置の適法性が争われた裁判例が判例集に掲載されていました。

 東京地判平29.6.14判例タイムズ1462-190です。

 この事案で原告になったのは、東京都で定年後再任用されていた教員の方です。

 被告になったのは東京都です。

 定年退職後、1年間は教員として再任用してもらえましたが、被告東京都から翌年度の再任用はしないとの通知を受けました。

 原告は、東京都教育委員会に対し、

「非常勤教員採用選考にあたって好調が提出した書類一式(本人が提出したものを除く。)平成26年度要」

という内容で保有個人情報の開示請求をしました。

 被告東京都は、対象文書を

「非常勤教員採用選考推薦書兼業績評価書」

「推薦しない理由書の有無に関する情報」

と特定したうえ、

「非常勤教員採用選考推薦書兼業績評価書」

に関しては校長の率直な意見の表明がされなくなるおそれがあるなどとして

「性格欄」

「推薦項目のうち校長が記載する評価、判断の部分」

の部分を非開示としました。

 また、

「推薦しない理由の有無に関する情報」

については存否応答拒否としました。

 本件では非常勤教員の地位にあることの確認とともに、こうした取扱いをしたことの国家賠償法上の違法性の有無が争点になりました。

 なお、裁判では、

「非常勤教員採用選考推薦書兼業績評価書」

「推薦しない理由書」

のいずれも、非開示とされた部分も含めて全体が書証として提出されました。

 裁判所は次の通り述べて非開示決定・存否応答拒否決定はいずれも違法ではないと判示しました。

「証拠(甲4、乙5の1)によれば、本件業績評価書の非開示部分には、校長による採用申込者についての評価、判断に関する情報が、相当程度具体的に記載されていることが認められる。」
「しかるところ、当該情報が採用申込者に開示されると、所属長において、自らの評価、判断が採用申込者に伝わること、特に当該申込者の希望しない評価、判断がされる場合に当該申込者からの反発を恐れて、ありのままの執務状況を報告しなかったり、それに基づく所属長の率直な評価をしなかったりすることがあり得るのであり、その結果、都教委がする試験、選考に関し、公正な判断が行えなくなるおそれがあるというべきである。」
「そうすると、本件業績評価書の非開示部分に記載された情報を開示した場合には、『試験、選考、診断、指導、相談等に係る事務』に関し、公正な判断が行えなくなるおそれがあり、その事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあったといわざるを得ない。」
「また、証拠(乙5の2)によれば、本件理由書には、校長による採用申込者についての評価、判断に関する情報が本件業績評価書以上に詳細かつ具体的に記載されていることが認められるから、これを開示した場合には、前記(ア)と同様、『試験、選考、診断、指導、相談等に係る事務』に関し、公正な判断が行えなくなるおそれがあり、その事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるといえる。」
「また、推薦しない理由書は、前提事実(8)イのとおり、採用申込者を非常勤教員に推薦しない場合に限って作成されるため、その存否が明らかにされると、そのこと自体から当該所属長が当該採用申込者を非常勤教員に推薦しなかったことが明らかになるのであり、『試験、選考、診断、指導、相談等に係る事務』の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報を開示してしまうことになる。」
「そうすると、推薦しない理由書は、それが存在しているか否かを答えるだけで、非開示情報を開示することとなるといえるから、本件個人情報保護条例17条の3が適用されるというべきである。」

3.理由を知る方法としての裁判

 最高裁は日々任用職員の雇止めが問題になった事案において、

「任用予定期間の満了後に再び任用される権利若しくは任用を要求する権利又は再任用されることを期待する法的利益を有するものと認めることはできないから、大阪大学学長が上告人を再び任用しなかったとしても、その権利ないし法的利益が侵害されたものと解する余地はない。」

という判示をしています(最一小判平6.7.14労働判例655-14大阪大学(図書館事務補佐員)事件)。

 理由がどうだろうが、どうせ再任用されることはないのだから、再任用されなかった理由を知ったって意味なんかない、再任用拒否された理由を知る制度的な担保がない背景には、そうした発想があるように思われます。

 この発想は、個人情報保護条例に基づく保有個人情報の不開示等を適法とした判断にも通じるものがあります。

 しかし、法の建付けはどうあれ、再任用拒否が違法であると訴訟を起こせば、国や自治体も再任用拒否の理由を文書できちんと主張・立証してくるようです。少なくとも、本件では、そうした応訴活動(非開示部分も含めた文書提出、存否応答拒否とされた文書の提出)がなされています。

 大阪大学(図書館事務補佐員)事件は、上述の判示に続いて次のようにも述べています。

「任命権者が、日々雇用職員に対して、任用予定期間満了後も任用を続けることを確約ないし保障するなど、右期間満了後も任用が継続されると期待することが無理からぬものとみられる行為をしたというような特別の事情がある場合には、職員がそのような誤った期待を抱いたことによる損害につき、国家賠償法に基づく賠償を認める余地があり得る

 地位確認の請求は難しくても、再任用拒否に対しては、国家賠償請求の余地は残されています(実際、認容例も幾つかはあります)。

 再任用拒否に思い当たる節がない、どうしても納得できない、理由を知りたい、そうした思いを抱えている方は、保有個人情報の開示だけではなく、訴訟提起も選択肢の一つとして検討してみてもよいかも知れません。そう簡単に勝てる訴訟類型ではありませんが、少なくとも自分が再任用されなかった理由は知ることができるのではないかと思います。

 

就活における学歴差別-出身校の校名「だけ」を理由に差別することは許されるのか?

1.学歴を理由に不採用にすること

 ネット上に、

「『よくそんな学歴で応募しようと思ったね』就活生への露骨な差別発言、法的問題は?」

という記事が掲載されています。

https://www.bengo4.com/c_5/n_10057/

 記事は、

「インターネットのQ&Aサイトにも、今年7月、『面接で、学歴のことで露骨に嫌味を言われたり、遠回しに馬鹿にされたりして、落ちることが多いです』という投稿が寄せられている。」

「投稿者によると、あるメーカーのグループ面接では、MARCHなどの学生と、国士舘大学に通う投稿者とで、面接官の態度があからさまに違ったのだという。」

「『私以外の学生に対しては、フレンドリーで、大学生活について興味津々に聞いていました。しかし、私に対しては質問もほとんどなく、「よくそんな学歴でウチに応募しようと思ったね」というようなことまで言われました』と投稿者はいう。」

との設例をもとに、学歴を理由に不採用にすることの法的問題について解説しています。

 回答者の弁護士の方は、

「結論として、違法ではないと考えられます。」

「たしかに、『学歴』のみで特定の応募者の機会を奪ってしまうことは、差別のようにも思われます。公正な採用選考という観点でいうと、『性別』での差別を禁止する男女雇用機会均等法や、『年齢』制限を禁止する雇用対策法などの各種規制がありますから、学歴を理由に不採用とすることも許されないのではないか、と考える人がいてもおかしくありません。」

「しかし、企業には『経済活動の自由(憲法22条および29条)』が認められています。最高裁判決では、これを根拠に、企業の『採用の自由』を広く認めています(三菱樹脂事件・昭和48年12月12日判決)。」

「そのため、採用時の学歴による選別自体が、違法になるとは考えられないのです」

 ただ、

「学歴を踏まえた差別的な発言がなされた場合、これが違法と判断される可能性は大いにあります。採用担当者が学生に対して、人格的非難を行ったとして、人格権侵害により民事上違法とされるリスクが高いためです。」

と回答しています。

 私の感覚では、この回答は法律家・弁護士としての一般的な理解を記述したもので、決して誤りではないと思います。

 ただ、一方で、本当に学歴「のみ」を理由に差別的な扱いをされた場合に、法的に何も言えないかに関しては、検討の余地があるかも知れないなとも思います。

2.東京地判平21.1.28労働判例1057-128エクソンモービル事件

 学歴差別の存否が問題になった労働事件として、東京地判平21.1.28労働判例1057-128エクソンモービル事件があります。

 複雑な事案ではありますが、関係する部分だけを要約すると、本件は「事務・技能職」にあった原告らが、「専門職」に位置づけられている従業員との比較において、賞与一時金の支給基準に差異が設けられているのはおかしいとして会社を訴えた事件です。

 被告会社は

「エッソ石油及びモービル石油の時代から、従業員を学歴に応じて四年制大学又はそれ以上の教育課程を修了した者を『専門職』、それに満たない教育課程を修了した者を『事務・技能職』として区別するコース別人事管理を採用して」

いました。

 これを根拠として、原告らが、

専門職と事務・技能職の区別は学歴のみによるものであるが、従業員は大卒かそれ以外の学歴かに関わらず同等の職務に従事して貢献しているから、非専門職であることを理由とする一時金支給月率の引下げは不合理な学歴差別であ(る)

などと学歴差別を主張しました。

 裁判所は次のとおり述べて、専門職と事務・技能職で賞与の支給基準に差異を設けても違法ではないと判示しました。

「四年制大学以上の教育課程を修了するなど高度の教育を受けた者に対し、これに満たない教育課程を修了した者に比して、その従事する職務について高度の専門性、職務遂行能力、判断力及び責任を期待し、その職務内容及び職責に応じた厚遇をすることは、わが国に存在する企業に数多く見受けられることは顕著な事実であり、一般に企業が高度の教育を受けた者に対し、上記のような期待及び処遇をすることが、企業運営上、その裁量を逸脱した不合理なものとはいえない。かかる取扱いをもって学歴のみを理由とする不合理な差別ということはできない。

「よって、原告らの上記主張は理由がない。」

3.学歴「のみ」を理由とする差別は問題になり得るかもしれない

 結果として労働者が敗訴した事案ではありますが、この「学歴のみを理由とする」という文言は注目しても良いのではないかと思います。

 裁判所は四年生大学の卒業者に対し、高度な教育を受けた者として、高校卒業以下とで処遇を変えることには問題ないと判示しました。教育によって獲得されている能力に基づく差異であって、学歴のみが理由になっているわけではないからいいのだという発想ではないかと思います。

 しかし、これは裏を返せば、本当に「学歴」のみを理由に差異を設けたとすれば、違法となり得ることを含意しているという見方もできるのではないかと思います。

 また、一般的な弁護士であれば、依頼人である企業から、

「総合職を出身大学の偏差値帯でランク付けし、賞与の額に差異を設けたいと思うが、どうか。」

という相談を受けたら、

「そんな無意味なことは止めた方がいいです。訴訟リスクもあると思います。」

と制止すると思います。

 そういったことを考えていくと、四年生大学の卒業者同士との関係で、出身校という意味での学歴「のみ」を理由に採否を決めるということは、ひょっとしたら法的に争える余地があるかも知れないなとも思います。

4.ただ、実際には立証上の難点があるし、無理に差別構成をとる必要もないであろう

 個々の人格には、学歴だけではなく色々な差異があります。学歴「だけ」を理由に採用を拒否した・不利に扱ったことを認定できるような事案は、極めて限定的ではないかと思います。

 考えられるとすれば、採用権を持っている面接担当者の

「大学名だけみれば十分。それ以外のところは全く見る必要がありません。あなたを採用することは絶対ありません。」

などという発言が録音媒体に記録されているようなケースではないかと思います。

 しかし、今日では、学歴至上主義的な価値観を持っている方が面接担当者になることも、上記のような発言がなされることも、それほどあるのかなと言う気はします。

 また、仮に、問題発言が取れた場合も、わざわざ立証の困難な差別の問題に立ち入らなくても、普通に人格権侵害を理由とする不法行為構成で被害救済は図れるため、実務家的な発想として差別かどうかを考えなければならない場面は相当限定されるだろうとも思います。

 採用前の場面と既得権を得た採用後の場面とでは全く状況が異なりますし、私が記載したようなエクソンモービル事件の判旨の理解は、それほど一般的ではないとも思います。

 また、学歴や出身校名だけで人の採否を決めるような時代でもないため、思考実験的な意味合いが強いものの、リンク先の記事を読んで、ひょっとしたら出身大学のみによる不利益取扱いは法的に争う余地もあるかもしれないなと思いました。