弁護士 師子角允彬のブログ

一般の方に向けて、法律や判例に関する情報を提供して行きます。

詐欺業者・悪徳業者に携帯電話を貸したレンタル業者の法的責任

1.詐欺業者・悪徳業者への責任追及の困難性

 一般論として、詐欺業者・悪徳業者(以下「悪徳業者等」といいます)への責任追及は、それほど簡単ではありません。

 それは法解釈上・法制度上の問題というよりも、むしろ、相手方を特定したり、特定した相手方から金銭を回収したりすることが難しいことに原因があります。

 悪徳業者等も決して馬鹿ではありません。身元の特定に繋がるような情報は、できるだけ被害者には渡さないようにして、捕まらないように注意するのが普通です。

 また、悪徳業者等の身元を特定できたとしても、そのころには奪われたお金が全て使われた後だったということも珍しくありません。

 そのため、詐欺や悪徳商法の被害者から被害回復の相談を受ける弁護士には、悪徳業者等に協力した業者に対する責任追及ができないかという発想が生じます。

 具体的には、悪徳業者等に、事務所を貸したり、携帯電話を貸したりしていた事業者に対して、責任を問えないかを考えることになります。

 この問題について、近時の判例集に注目すべき裁判例が掲載されていました。

 仙台高裁平30.11.22判例時報2412-29です。

2.デート商法詐欺の加害者に携帯電話を貸した業者への責任追及

 この事件で原告・控訴人になったのは、デート商法詐欺の被害者の方です。

 平成27年9月ころ、実在しないA株式会社を名乗る者から、

「女性とのデート等の希望に対応することで金銭が得られる」

と嘘を言われました。

 そして、そのためにはA社への供託金の支払いや、女性との独占契約金の支払いが必要であるなどと説明を受け、合計579万9000円をだまし取られました。

 一連の詐欺行為に使われたのが、被告・被控訴人が貸与した携帯電話です。

 原告・控訴人は、共同不法行為の成立を主張して、被告・被控訴人に対し、損害賠償を請求する訴訟を提起しました。

 裁判所は次のとおり判示し、レンタル業者である被告・被控訴人に対し、詐欺による被害金579万9000円を含む損害賠償の支払いを命じました。

「被控訴人Y2は、携帯電話、とりわけ『〇三』や『〇一二〇』で始まる番号で都内の事務所を仮装できる転送サービス付きの携帯電話が、電話を利用した詐欺等の犯罪に悪用される事例が多くあり、携帯電話のレンタル業を営むには、このような携帯電話を悪用する犯罪防止の観点から、法規制により貸与時本人確認等の悪用防止策が講じられていることを十分に認識しながら、被控訴人会社を設立して携帯電話のレンタル業を始めた。」

「しかも、被控訴人Y2は、被控訴人会社がレンタルした携帯電話が実際に犯罪に悪用されていることを警察からの指摘を受けて知りながら、契約の態様としては、被控訴人Y2の供述を信用したとしても、被控訴人会社の事務所ではなく、公園でBと会い、支払履歴などの物的証拠が残りにくい現金払いによるものとし、かつ領収証は交付しないこととした上、具体的な使用目的も確認しないで、約四箇月の間に合計一〇台もの電話転送サービス付き携帯電話を貸与した。」

「このような事実関係に照らせば、被控訴人Y2は、Bに貸与した携帯電話が本件で控訴人が被害を受けた電話勧誘によるデート商法詐欺を含む詐欺等の犯罪行為に悪用される可能性が極めて高いことを具体的に認識しながら、そのような犯罪行為を助ける結果が生じてもやむを得ないものと少なくとも未必的に認容した上で、被控訴人会社からBに貸与したものと認めるのが相当である。」

「したがって、被控訴人らには、控訴人が被害を受けた・・・詐欺被害について、そのような詐欺行為を助け、詐欺による被害が生ずることについて、包括的かつ未必的な故意があったと認めるのが相当である。なお、仮に、故意がなかったとしても、上記認定判断によれば、被控訴人らには、上記詐欺被害が生ずることについて具体的な予見可能性があったということができ、それにもかかわらず携帯電話を貸与したことには過失があるといいうべきである。」

「そうすると、被控訴人らは、・・・控訴人が前記詐欺行為によって被った損害を連帯して賠償すべき義務がある。」

3.レンタル業者の故意・過失を問える事案は限定されてはくるだろうが・・・

 レンタル業者に責任を問うために最も問題になるのが、「犯罪に使われるものだとは知らなかった。」という言い分を排斥できるかです。

 本件は極めて杜撰な本人確認、非常に怪しい契約態様がとられていたことからレンタル業者に未必的故意や過失を認定することができ、それが被害者の請求を認容することへと繋がりました。

 レンタル業者への責任を問える事案は、ある程度限定されてくるとは思いますが、こうした裁判例は、無責任な事業活動に対する警鐘となるとともに、被害者救済に資するものであり、実務的な価値は大きいのではないかと思います。

 本件のように直接的な加害者の身元の特定はできなくても、被害回復の可能性を切り開ける事案はあるだろうと思います。

 お困りの方がおられましたら、ぜひ、一度ご相談ください。