1.パワハラに関する相談は多い
厚生労働省は個別労働紛争解決制度の施行状況を公表しています。
個別労働紛争解決制度とは、個々の労働者と事業主との間の労働条件や職場環境などをめぐるトラブルを未然に防止し、早期に解決を図るための制度をいいます。
平成29年度には、25万3005件もの民事上の個別労働紛争の相談件数があり、内7万2067件(23.6%)が、いじめ・嫌がらせに関するものとされています。
いじめ・嫌がらせは6年連続でトップとのことで、パワハラに関する状況の深刻さが窺われます。
2.公務員は原則として労働局の個別労働紛争解決制度を利用できない
個別労働紛争解決制度は労働局で実施されています。
しかし、公務員は、パワハラが行われても、労働局に相談に乗ってもらうことはできません。個別労働紛争解決制度の根拠法である個別労働紛争の解決の促進に関する法律で、
「この法律は、国家公務員及び地方公務員については適用しない。」
と規定されているからです(個別労働紛争の解決の促進に関する法律22条参照 なお、例外はあります)。
3.相談制度・行政措置要求
では、代わりにどういう制度があるかというと、相談制度や行政措置要求という仕組みがあります。
国家公務員の場合、人事院が相談を受け付けています。
https://www.jinji.go.jp/counseling/
また、行政措置要求という仕組みがあり(国家公務員法86条、人事院規則13-2)、これによって勤務環境の改善を求めることが可能です。
https://www.jinji.go.jp/kouheisinsa/gyouseisoti/gyouseisoti.html
地方公務員にも似たような仕組みはあります。
東京都では人事委員会が都職員のための相談制度を設けています。
http://www.saiyou.metro.tokyo.jp/kujyousoudan.html
また、地方公務員法46条の規定を受け、行政措置要求という制度のもとで執務環境の改善に関する要求を受け付けています。
http://www.saiyou.metro.tokyo.jp/sochiyoukyuu.html
4.行政措置要求はもっと活用されて良いのではないか
法律に根拠のあるきちんとした制度ではあるのですが、行政措置要求という仕組みはあまり利用されていないように思われます。
例えば、平成22年度から平成26年度の5年間に人事院が判断を行った行政措置要求は7件とされています(認容件数2件、棄却件数5件)。
民間の個別労働紛争解決制度の相談件数を考えると、公務員の勤務関係においても、ハラスメントは相当数生じているのではないかと思います。
ハラスメントの問題を解決するため、行政措置要求の仕組みは、もっと活用されても良いのではないかと思います。
公務員の労働問題は、その特殊性から相談でも敬遠されがちです。
お困りの方がおられましたら、ぜひ、一度ご相談ください。