弁護士 師子角允彬のブログ

師子角総合法律事務所(東京:水道橋駅徒歩5分・御茶ノ水駅徒歩7分)の所長弁護士のブログです

間接強制による面会交流(間接強制金)

1.面会交流

 子どもと同居していない親であったとしても、子どもとの面会交流を求めることは可能です(最一小判平12.5.1民集54-5-1607等参照)。

 しかし、現在子どもと同居している親(監護親)が、同居していない親(非監護親)と子どもとの面会を妨げることがあります。

 このような場合、家庭裁判所で調停・審判という手続をとることにより、面会交流の実現を図ることになります。

 調停や審判で子どもとの面会交流が義務化された場合、監護親は非監護親と子どもとの面会交流を実現させてあげなければなりません。

 それでも非監護親が子どもと面会交流させてくれない場合、一定の要件のもとで監護親は間接強制という手続をとることができます。一定の要件というのは、調停や審判で「面会交流の日時又は頻度、各回の面会交流時間の長さ、子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の特定に欠けるところがないといえる場合」をいいます(最一小判平25.3.28民集67-3-864参照)。

 間接強制というのは、義務の不履行1回につき金〇円を支払え、といったようにお金を支払わせることで義務の履行を確保する手段です。

 この間接強制金について、公刊物に目を引く裁判例が掲載されていました。大阪高裁平30.3.22判時2395-71です。

2.不履行1回につき20万円という高額の間接強制金の支払いが命じられた例

 この事案では、別居から約3年間に渡って面会交流に消極的な態度を取り続けた監護親に対し、義務の不履行1回につき20万円という高額の間接強制金の支払いが命じられました。

 具体的には、

「相手方は、…別居から三年間、抗告人と未成年者との面会交流を拒否し続け、本件決定後も、これにより定められた義務を任意に履行しなかった。」

「相手方の面会交流に対する約三年間にわたる拒否的な態度等に照らすならば、原決定後に相手方が本件決定により定められた義務を二回程度履行したからといって、相手方が今後もその義務を継続的かつ確実に履行することは困難である。」

「相手方に上記義務を継続的かつ確実に履行させるためには、相手方の収入や経済状況…等を踏まえ、相手方に面会交流を心理的に強制させるべき相応の額の強制金の支払いを命じる必要がある。」

「強制金の額については、相手方が歯科医師の資格を有し、現在まで歯科医師として稼働し続け、別件決定時点…において勤務医として年収五〇〇万円弱を得ており、その稼働能力が低減したとの事情は認められないことや、抗告人が相手方に対して支払うべき婚姻費用の分担金の金額(月額二一万円)などの事情に照らし、不履行一回につき二〇万円とするのが相当である。」

などと判示されています。

3.面会交流の不履行に裁判所は厳しい

 本件で特徴的なのは、面会交流に消極的な態度を取り続けた親が、特にお金持ちというわけでもないことです。

 従来も、不履行1回につき30万円という金額が定められた事案はありました(東京高決平29.2.8判タ1445-132)。

 しかし、これは監護親に「年額2640万円もの収入」があったとされている事案です。婚姻費用として月21万円の支払いを受けていることを考慮したとしても、年収500万円弱の相手方に対し、不履行1回について20万円もの金銭の支払いを命じるというのは、面会交流の実現を果たすことに対する裁判所の強い姿勢が看取されます。

 面会交流に関する義務の不履行に対する裁判所の姿勢は、年々厳しくなる傾向があるように思われます。

 理由もなく子どもと会わせてもらえない、そんなお悩みをお抱えの方がおられましたら、ぜひ、一度ご相談ください。