弁護士 師子角允彬のブログ

師子角総合法律事務所(東京:水道橋駅徒歩5分・御茶ノ水駅徒歩7分)の所長弁護士のブログです

2020-01-01から1年間の記事一覧

有期アルバイト職員と無期正職員との間での賞与の支給に係る労働条件の差異が不合理とは認められないとされた例

1.旧労働契約法20条 労働契約法20条に、 「有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場…

有期契約社員と無期正社員との間での扶養手当の付与に係る労働条件の差異が不合理とされた例

1.旧労働契約法20条 労働契約法20条に、 「有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場…

有期時給制契約社員と無期正社員との間での年末年始勤務手当・有給病気休暇の付与に係る労働条件の差異が不合理とされた例

1.旧労働契約法20条 労働契約法20条に、 「有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場…

有期時給制契約社員と無期正社員との間での夏期冬期休暇の付与に係る労働条件の差異が不合理とされた例

1.労働契約法旧20条 労働契約法20条に、 「有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場…

社会保険労務士の方を対象とした能力担保研修講師を経験して

社会保険労務士の方が紛争解決手続代理業務(社会保険労務士法2条1項1号の4ないし6参照)を行うためには、特定社会保険労務士である必要があります(社会保険労務士法2条2項)。 特定社会保険労務士になるためには、紛争解決手続代理業務を行うのに必…

労働者派遣(偽装請負)-直接雇用の要望では、みなし申し込みに対する「承諾」にはならない?

1.労働契約の申込みのみなし制度 一定の行為を行った派遣先は、派遣労働者に対し、労働契約の申込みをしたものとみなされます(労働者派遣法46条の6第1項)。 一定の行為には、禁止業務に従事させること、無許可事業主から労働者派遣の役務の提供を受…

労働契約の申し込みのみなし制度と労働者派遣法の適用を免れる目的

1.労働契約の申し込みのみなし制度 一定の行為を行った派遣先は、派遣労働者に対し、労働契約の申込みをしたものとみなされます(労働者派遣法40条の6第1項)。 労働契約の申込みとみなされる行為は五類型あり、その中の一つに、 「この法律又は次節の…

弁護士に見せるため・訴訟の証拠にするための会社からの資料の持ち出し

1.会社からの資料の持ち出し 労働事件で法的手続をとるにあたっては、会社内に存在する資料を持ってきてもらう必要があることが少なくありません。しかし、法律相談をしながら、持参(複製)してきてほしい資料を伝えていると、 「社内の資料を勝手に持ち…

残業代請求-検証実験による労働時間の反証活動が否定された例

1.労働時間であることの反証活動 残業代請求訴訟をしていると、使用者側から、 「もっと短い時間で作業を終えられたはずなのに、これほど長く働き続けているのはおかしい。」 といった形で労働時間に関する主張に反論されることがあります。 そうした反論…

マタハラ-妊娠中、労働能率の低下を理由に雇用形態の変更を打診されても、早まったらダメ

1.妊娠を理由とする雇用形態の変更の強要はダメ 男女雇用機会均等法9条3項は、 「事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しく…

標準例に掲げられていない非違行為(ハラスメント加害者による関係者に対する圧力)の処分量定

1.懲戒処分の標準例 公務員の懲戒処分に関しては、どのような行為をすれば、どのような処分量定になるのかについての標準例が定められているのが一般です。 例えば、国家公務員について言うと、「懲戒処分の指針について(平成12年3月31日職職-68…

処分事由説明書に記載する事実に求められる具体性-被害者の氏名等の記載は必要的か

1.処分事由説明書 地方公務員法49条1項は、 「任命権者は、職員に対し、懲戒その他その意に反すると認める不利益な処分を行う場合においては、その際、その職員に対し処分の事由を記載した説明書を交付しなければならない。」 と規定しています。 国家…

社宅の明渡義務の不履行に伴う賃料相当損害金は、どのように理解されるのか?

1.社宅の賃料相当損害金 解雇等に伴い、使用者が、労働者に対して、社宅の明渡を求めてくることがあります。労働契約の終了に争いがなければ、速やかに退去・明渡をするだけですが、解雇等の効力に争いがある場合、しばしば明渡は円滑には進みません。 労…

親族経営の会社での縁故採用者の立場は弱い-暴行を理由とする解雇

1.規律違反行為を理由とする普通解雇の有効性 規律違反行為を理由とする普通解雇の有効性については、 「規律違反行為の類型に当たる場合としては、暴行・脅迫・誹謗、業務妨害行為、業務命令違反、横領・収賄等の不正行為が考えられる。その態様、程度や…

小規模企業には管理監督者は存在しない?-管理監督者を置く必要性

1.管理監督者 労働基準法41条は「監督若しくは管理の地位にある者」(管理監督者)に該当する労働者について、労働時間に関する規定の適用を除外しています。結果、管理監督者には時間外割増賃金が支払われません。そのため、残業代を請求する時、しばし…

退職後に行った損害賠償額を予定する契約の合意の効力

1.賠償予定の禁止 労働基準法16条は、 「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」 と規定しています。 この規定があるため、在職中に会社から「不手際があったら〇円払え。」といった契約の…

違法解雇-地位確認・未払賃金請求構成より損害賠償請求構成に利点があるかもしれない場合

1.違法解雇の争い方-地位確認と損害賠償請求 労働契約法16条は、 「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」 と規定しています。 労働契約法16条との関係で解…

長時間労働の是正-実体を伴わない指導(「早く帰れ」「健康に留意するように」)に意味はない

1.長時間労働による疾病と安全配慮義務 過去、恒常的な長時間労働で鬱病に罹患し、自殺した労働者の遺族が会社に対して損害賠償を請求した事件がありました。最二小判平12.3.24労働判例779-13電通事件と呼ばれている事件です。 この事件で最…

持ち帰り残業の労働時間性が認められた事例(自由意思でやっていたとの反論が排斥された事例)

1.持ち帰り残業の労働時間性の立証 業務過多から家に仕事を持ち帰って働いている方がいます。 こうした持ち帰り残業についても、客観的にみて「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」(最一小判平12.3.9労働判例778-11三菱重工業長…

雇止め-接触事故を起こして現場から離れても自主申告すれば救済の余地はある

1.交通事故 その場から立ち去るのはダメ 少し前、交通事故を起こした俳優が、その場から立ち去ったことで逮捕された事件が報道されました。 俳優の伊藤健太郎容疑者を逮捕(共同通信) - Yahoo!ニュース 交通事故は自動車を運転している誰もが加害者になり…

雇用契約から業務委託契約に変わるタイミングの認定

1.店長への業務委託 徒弟制の業界などでは、雇用主が、労働者に対し、費用分担や収益分配についての取り決めをしたうえ、一定の店舗の経営権限を移譲することがあります。 労働契約の終了日や業務委託契約の開始日が書面等で明確になっていれば迷う余地は…

欠勤の連絡は会社所定の様式の書面でしなければならないのか?

1.各種届出に関する様式の定め 欠勤の届出、有給休暇の取得、退職の意思表示など、勤務先に対して一定の連絡をとるにあたり、就業規則等で様式が指定されている場合があります。 しかし、不動文字で労働者側に好ましくない記載があるなど、何らかの理由で…

休職からの復職判断に際しての配慮義務

1.復職させてくれない問題 私傷病休職した方が会社に復職しょうとした時、何だかんだと理由をつけられて復職を拒まれることがあります。 私傷病の性質にもよりますが、持病を持った方に働いてもらうには相応の配慮が必要になることがありますし、再発によ…

責任著者は共著者が不正をしていないか要注意-論文不正に対する責任著者の法的責任

1.責任著者 「筆頭著者」(first author)という言葉を聞いたことがある人は少なくないと思いますが、これは「発表された研究成果にもっとも貢献した人物で、研究アイデアの提供から実験や研究全般にかかわりのあった人」をいいます。 このように論文の共…

一部有利・一部不利な就業規則の変更は、就業規則による労働条件の不利益変更に該当するか?

1.就業規則による労働条件の不利益変更に関する法規制 労働契約法9条は、 「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。」 と規定しています。 そのた…

労働者に不利益となる人事評価区分を導入し、年度初めに遡って評価することの可否

1.法の不遡及の原則 「一般に、法令は国民の権利義務に影響を与えるものであるので、既に発生し、成立した状態に対して新しい法令を、その施行の時点よりも遡って適用すること、すなわち法令の遡及適用は、法的安定性を害し、国民の利益に不測の侵害を及ぼ…

就業規則の周知性立証が崩れるパターン-備置の欠缺

1.就業規則の周知性 労働契約法7条本文は、 「労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとす…

リストラ代行と非弁行為

1.非弁行為の禁止 弁護士法72条本文は、 「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他…

切札を出す手順-証拠提示は提訴前の段階から計画的に

1.適時提出主義 民事訴訟法156条は、 「攻撃又は防御の方法は、訴訟の進行状況に応じ適切な時期に提出しなければならない。」 と規定しています。いわゆる適時提出主義を規定した条文です。こうした条文があるため、訴訟の帰趨を左右するような重要な証…

早出残業が労働時間としてカウントされにくいのは労災も同じか?

1.始業時刻の認定 始業時刻前に出勤して稼働していたとしても、それを労働時間として認定してもらうことは決して容易ではありません。そのことは、以前、 業務開始時刻(早出残業)の認定は厳しい - 弁護士 師子角允彬のブログ という記事で述べたとおりで…