弁護士 師子角允彬のブログ

師子角総合法律事務所(東京:水道橋駅徒歩5分・御茶ノ水駅徒歩7分)の所長弁護士のブログです

2019-07-01から1ヶ月間の記事一覧

勤務時間中の送別会呼びかけと公務員の職務専念義務

1.勤務時間中の送別会呼びかけで処分を検討 ネット上に、 「“公用メールで送別会呼びかけ”はNG?! 大阪府が処分検討に街の声は・・・」 という記事が掲載されていました。 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190730-00010013-fnnprimev-life 記事には…

人の死に直面した医療従事者への精神的なサポートの重要性

1.死亡事故が医療従事者に与える精神的負荷 新生児の死亡事故によって鬱病に罹患したことが、公務災害(労災)に該当するかが争われた事案が公刊物に掲載されていました(那覇地判平31.3.26労働判例ジャーナル88-25公務外災害認定処分取消請求…

ブラック企業での勤務は生死に関わる

1.歯科技工士の自殺 歯科医院で勤務していた歯科技工士の自殺が問題となった判例が、公刊物に掲載されていました。 福岡地判平31.4.16労働判例ジャーナル88-16損害賠償等請求事件です。 この事件では、自殺した歯科技工士の両親が原告となって…

過去の懲戒処分歴を理由に懲戒処分の量定を加重することはどこまで許されるのか?

1.過去の処分歴と懲戒処分との関係性 一般論として言うと、過去に懲戒処分を受けたことは、次に似たような非違行為を犯したときに、懲戒処分を重くする事情として考慮されます。 荒木尚志ほか『詳説 労働契約法』〔弘文堂、第2版、平26〕159頁は、懲…

固定残業代の有効性と社会保険労務士の責任

1.固定残業代の有効性が問題となった事案 固定残業代の有効性が問題となった事例が公刊物に掲載されていました。大阪地判平31.2.14労働判例ジャーナル88-40ウェーブライン事件です。2.問題となった固定残業代 本件で原告になったのは、特大…

「所定時間外賃金」は時間外割増賃金(残業代)か?

1.「所定時間外賃金」は時間外割増賃金か? 残業代を請求する事件においては、使用者側から、特定の賃金項目・手当項目が時間外割増賃金(残業代)に該当すると主張されることが珍しくありません。 こうした主張に対し、当該賃金項目・手当項目について、…

低賃金・労働条件格差を放置することの労災リスク

1.低賃金・労働条件格差を放置することの労災リスク 業務上の心理的負荷で精神障害を発症することがあります。 それを労災と認定するか否かに関して、厚生労働省は一定の基準を設定しています。 平23.12.26基発1226第1号「心理的負荷による精…

吉本興業は下請法違反?

1.吉本興業は下請法違反? ネット上に、 「吉本興業は下請法違反? ギャラの認識で芸人と食い違い、書面のやりとりもなし」 という記事が掲載されていました。 https://www.bengo4.com/c_5/n_9922/ 記事は、 「仮に下請法の適用対象となる場合、ギャラにつ…

無断録音、「法的に問題ナシ」と断定していいのか?

1.無断録音の法的問題 ネット上に、 「吉本社長『テープ回してないやろな』発言が波紋 『無断で録音』法的には問題ナシ」 という記事が掲載されていました。 https://www.bengo4.com/c_5/n_9915/ 記事の、 「こっそり上司の言動を録音した場合、裁判の証拠…

短時間パートと給食手当・食事手当、正社員との格差の許容性

1.短時間パートと給食手当・食事手当 ネット上に、 「短時間パートだけ、今年から『手当カット』 これってあり?」 という記事が掲載されていました。 https://www.bengo4.com/c_5/n_9912/ 記事は、短時間パート労働者とフルタイムの労働者との間の手当の…

巨大企業における管理監督者性-労働時間に裁量があり、年収1200万を超えても残業代請求できる場合がある

1.管理監督者には残業代(深夜割増賃金を除く)が支払われない 労働基準法41条2号は、 「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」(管理監督者) には 「労働時間、休憩及び休日に関する規定」 の適用が除外…

配転命令の争い方(勤務地限定合意)

1.配転命令の争い方(勤務地限定合意) 配転命令には使用者の広範な裁量が認められています。 最二小判昭61.7.14労働判例477-6東亜ペイント事件は、 「転勤、特に転居を伴う転勤は、一般に、労働者の生活関係に少なからぬ影響を与えずにはおか…

通勤手当の不正受給と懲戒処分-就業規則の変更によらず用語の解釈を変更することは可能なのか?

1.通勤手当の不正受給 通勤手当の不正受給を理由に懲戒処分が出されることがあります。 この種の紛争は、住民票上の住所地と、実際の住所地が異なる場合に、しばしば問題になります。 近時も、こうした場合に、懲戒処分をすることができるかが問題になった…

取引先の女性従業員に対するセクハラ、反対尋問を経なくても供述に信用性が認められた事例

1.セクハラ被害者が声を挙げることを躊躇する理由 セクハラ被害者が声を挙げることを躊躇する理由の一つとして、厳しい反対尋問に晒されることへの不安感・負担感が挙げられることがあります。 反対尋問とは、その人が言っていることの信用性を否定するた…

脱サラしてフランチャイズ契約を結ぶ方への情報提供義務

1.ビジネスセミナーでの起業の勧め サラリーマンを対象に起業を勧めるセミナーが行われることがあります。 セミナーでは、フランチャイズ契約を結べば、簡単に高収入が得られるなどとして、独立・起業が勧められます。 これを真に受けて会社を辞め、高額の…

飲み会の帰りの事故と会社の損害賠償責任

1.内定飲みの帰りの事故 ネット上に、 「『内定飲み』の帰りに事故で大けが 会社の責任や労災は認められる?」 との記事が掲載されていました。 https://www.bengo4.com/c_5/n_9888/ 記事は、 「『内定飲み』のあとで大ケガをしたら、会社に責任はあるのか…

細切れでの短期雇用契約と年次有給休暇

1.年次有給休暇の継続勤務要件 年次有給休暇について、法律は、 「使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。」 と規定していま…

解雇されたと思ったのに、「解雇してない」と言われたら

1.「解雇してない」の反論 勤務先から「もう来なくていい。」などと言われたことを受け、労働者側から解雇が違法無効であることを通知すると、「あの言葉は解雇ではない。」といった反論が返ってくることがあります。 労働者が勤務先の真意を図りかねて出…

交代バス運転手の車内仮眠時間の労働時間性

1.交代バス運転手の車内仮眠時間の労働時間性 交代バス運転手の車内仮眠時間の労働時間性が争われた判例が公刊物に掲載されていました(東京高判平30.8.29労働経済判例速報2380-3 K社事件)。 裁判所は次のとおり述べて、車内仮眠時間の労働…

若年性認知症に罹患している人の労働問題(懲戒処分)

1.若年性認知症に罹患していた公務員の窃盗行為と懲戒処分 窃盗行為を理由とする懲戒免職処分の有効性が争われた事件が公刊物に掲載されていました(東京地判平30.10.25労働判例1201-85国・防衛大臣(海上自衛隊厚木航空基地隊自衛官)事件…

体罰(傷害罪)で有罪になった教員の定年後再任用

1.体罰で有罪になった教員の定年後再任用 ネット上に、 「体罰で傷害罪→定年→再任用→また体罰 そんな先生を教壇に立たせる、県教委の言い分は?」 という記事が掲載されていました。 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190711-00000012-jct-soci 記事…

配置転換にあたっての家庭の事情への配慮

1.社会生活や家庭の事情への配慮が不足していた配転命令等 社会生活や家庭の事情への配慮が不足していた配転命令等の適法性が争われた事案が判例集に掲載されていました(東京高判平31.3.14労働経済判例速報2379-3)。 この事案では、結論と…

家の保証人になってしまい、多額の滞納賃料等を請求されている方へ

1.家の賃貸借契約の保証人 家を借りたいという親族から依頼されて保証人になったことがある方は、決して少なくないと思います。 しかし、保証人になることには、結構なリスクを伴います。 賃借人が賃料を払わなくなってしまった場合、滞納賃料や、違約金、…

離婚をするか、死去まで待つか

1.夫が愛人に入れ込んだら・・・ ネット上に、 「高齢の義父が『離婚して、恋人と一緒になる』家族は騒然 財産を守る方法は?」 という記事が掲載されていました。 https://www.bengo4.com/c_4/n_9854/ 記事は、 「単身赴任していた高齢の義父が、突然、妻…

仕事の量が少ないからと帰された場合の賃金

1.仕事の量が少ないと帰された場合の賃金 ネット上に、 「『仕事がないから、有給休暇つかって休んで』 そんな指示、従うべき?」 という記事が掲載されていました。 https://www.bengo4.com/c_5/n_9842/ 記事では、 「『仕事の量が少ないため、今日は昼で…

法律的に許される悪口なんてあるのか?

1.法律的に許される悪口? ネット上に、 「法律的に許される"最強の悪口"をいう方法」 なるものが掲載されています。 https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190706-00029102-president-soci 記事には、 「職場で仕事のできない部下や上司にガツンと…

幼い子を養育している方の潜在的稼働能力

1.幼い子を養育している方の潜在的稼働能力 婚姻費用や養育費の金額は、義務者と権利者の双方の収入を比較して決められるのが一般です。 家庭裁判所は婚姻費用や養育費の算定表を作成・公表し、その趣旨を明らかにしています。 http://www.courts.go.jp/to…

準委任契約類似の無名契約の解除の可否の判断に解雇権濫用法理の考え方が取り入れられた例

1.準委任契約と解雇権濫用法理 法律行為を委託することを委任契約といいます(民法643条)。法律行為とはいえない事務を委託することを準委任契約といいます。準委任契約には委任契約に準じたルールが適用されます(民法656条)。 企業とフリーラン…

義務者の年収が極めて高い場合(1億5000万円超)の婚姻費用・不貞と婚姻費用の関係

1.義務者が超高額所得者である場合の婚姻費用・不貞と婚姻費用の関係 義務者の年収が極めて高い場合に婚姻費用をどのように算定するかが問題になった事案が公刊物に掲載されていました(東京高判平29.12.15判例タイムズ1457-101)。 実務…

セクハラ・アカハラ等で不幸になる人を減らすには

1.セクハラ・アカハラ等をした大学教授が懲戒解雇された例 セクハラ・アカハラ等を理由としてなされた女子大の大学教授への懲戒解雇の効力が争われた事例が公刊物に掲載されていました(東京高判平31.1.23判例タイムズ1460-91)。 裁判所は…